【対談】MATSURI × Moeco、シンガーとチョークアーティストの異種混合に漲る「作品の輝かせ方とそれぞれの物語」

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沖縄在住Z世代のシンガーMATSURIが4月20日、自身初のコンセプトミニアルバム『ハレノヒ』をリリースする。同作品のジャケットデザインはMoecoによる鮮やかなチョークアートとMATSURIの写真のコラボレーション作品であり、前作となる4thデジタルシングル「ハレノヒ」のジャケットは全面的にチョークアーティストのMoecoが手がけたものだ。

◆MATSURI × Moeco 画像

チョークアートとは、⿊板にオイルパステル等で絵や⽂字を描く視覚芸術であり、カフェやレストランのメニューボード等に使われる看板アートとして知られている。Moecoはニューヨークや香港、ソウルなどでも個展を開いている世界的チョークアーティストほひとりだ。MATSURIとMoecoの初対談では、ふたりの出会いやコラボが実現した経緯、アーティストとしての素顔、世界へ発信するということについて、それぞれの立場からじっくりと語り合ってもらった。

   ◆   ◆   ◆

■自分の羽根を入れ込んで作っていく感覚
■1つ1つの作品には物語があるんです

──おふたりの最初の接点は、テレビドラマ『私の夫は冷凍庫に眠っている』主題歌に起用された1stデジタルシングル「金魚すくい」ですよね?

MATSURI:はい。『私の夫は冷凍庫に眠っている』の監督さんが、「金魚すくい」という曲にインスパイアを受けてくださったそうで、Moecoさんの“金魚のチョークアート”を劇中の一場面に飾ってくださったんです。それを観た時、“すごく綺麗だなあ”と思ったのをよく覚えています。

Moeco:あのドラマの後にも、どこかで私の作品を見てくれたんですよね?

MATSURI:そうなんです。テレビ番組で偶然観たことがあって、“素敵な絵だな”と思っていました。その後に、“「ハレノヒ」のジャケットでチョークアートを使用したい”となり、Moecoさんに辿り着いた時に、”あのアーティストさんだ!”ってなったんです。

Moeco:私も『私の夫は冷凍庫に眠っている』を観ていたので、「ハレノヒ」のジャケットのお話をいただいた時、“あのドラマの主題歌を歌っていたMATSURIちゃんだ!”って繋がって嬉しかったんです。「金魚すくい」という曲はアンバランスなところがあるのが面白い歌だなと思っていました。今っぽいと同時に昔っぽいし、MATSURIちゃんの声もかわいいんだけど大人っぽさもあって、そのミックスのバランスが印象深かったんですよね。

MATSURI:ありがとうございます。めちゃくちゃ嬉しいです。私がMoecoさんのチョークアートにすごく惹かれたのは、“絵なのに動きを感じる”というか。例えば金魚も生きているみたいですから。繊細なタッチがすごく綺麗です。

Moeco:ありがとうございます。嬉しい(笑)。


▲MATSURI、Moecoギャラリーにて

──Moecoさんも以前、音楽活動をされていたんですよね?

Moeco:お恥ずかしい(笑)。今はもうやっていないんですけど、MATSURIちゃんの年齢くらいの頃は、歌手としてお仕事をしていました。だから今回、こういうお仕事をさせていただいたことに対して、不思議な気持ちとご縁を感じています。

MATSURI:Moecoさんが歌手からチョークアーティストになった経緯とか、ぜひお伺いしたいです!

Moeco:私のデビューは歌手で、2001年にエイベックスからCDリリースしたんですけど、その後、ドラマやミュージカルにも出演させていただくようになったんです。だから私にとって歌手というのは、様々なことの最初のきっかけだったんですね。今でも音楽関係のお友達が多かったりします。

──歌手になりたくて芸能のお仕事を志したんですか?

Moeco:もともとは14歳の時、『国民的美少女コンテスト』(オスカープロモーション主催オーディション)でマルチメディア賞をいただいたのが最初の一歩でした。当時は歌手になりたいというよりは、芸能人のみなさんに憧れている感じでしたね。例えば広末涼子さん、ともさかりえさんとか、女優さんもして歌手活動もしている方々のようになりたいと思っていました。

──『国民的美少女コンテスト』は、錚々たる方々を輩出していますよね。

Moeco:そうですね。第1回のグランプリは藤谷美紀さん。米倉涼子さんも、このオーディション出身です。私の同期は上戸彩ちゃんです。

──お子さんの頃はどういう音楽を聴いていたんですか?

Moeco:J-POPですね。

MATSURI:私もずっとJ-POPが好きで、結構昔の曲を聴いていたりもするんです。

Moeco:歌謡曲も好きですか?

MATSURI:大好きです、音楽を聴くのはずっと以前から。歌うことは苦手だったんですけど(笑)。でも、ある日を境に“歌うのって楽しいんだな”って思うようになりました。


▲チョークアート作品『華蓮』


▲チョークアート作品『碧』


▲チョークアート作品『陽菜』

──Moecoさんは女優として映画や舞台の仕事を続けながら、2011年頃からチョークアートを描き始めたそうですが、どのようなきっかけだったんですか?

Moeco:もともと絵を描くのは好きだったんですけど、大人になるにしたがって描く機会もなくなっていて。でも、“何か習いたいな”って考え始めた頃、ちょうどチョークアートの特集をテレビで観て、“やってみたい!”って思ったんです。

MATSURI:チョークアートのどんなところに魅力を感じたんですか?

Moeco:白い紙とかではなくて、黒板に描くところが私はとっても好きです。あと、チョークで描いた後に指でグラデーションをつけていくんですけど、筆とかを使うのではなくて、指で直に触れながら体温でグラデーションをつけていくんですね。先ほどMATSURIちゃんが「生きているみたい」とおっしゃってくれましたけど、それもそういう技法から生まれているのかもしれないですね。指でグラデーションをつけるのは、“体温を入れ込める” “命を込める”みたいな方法なので。

MATSURI:ギャラリーにお邪魔させていただいた時、Moecoさんの作品をたくさん観させていただいたんですけど、それぞれの輝き方があるのを感じました。1つ1つに、その作品の物語があるというか。“どういうことをイメージしながら、この完成形になったのかな?”とか考えるのが楽しかったです。そして、さっきも言ったように、とにかく綺麗だったんですよね。

Moeco:嬉しいですね。私が作品を描く時にいつもイメージするのは、『鶴の恩返し』の鶴の機織りなんです。自分の羽根を入れ込んで作品を作っていくような感覚があって。1つ1つの作品には物語があるんです。

──チョークアートを描き始めてからのMoecoさんの行動力も素晴らしいです。2012年から1年間ニューヨークに留学してチョークアートのインストラクターの資格を取得したそうですね。そして帰国してからチョークアーティストとしての活動をスタートしたんですよね?

Moeco:はい。その頃の私は、放たれた弓矢のようでしたね。溜め込んでいた力が一気に弾けたような感覚がありました。それまではマネージャーさんがスケジュールを管理してくださっていたんですけど、ある程度大人になって、いろいろ自由にできるようになってきたこともなって、“全部を自分で決めて行動したい”と思うようになったんです。それがチョークアートとの出会いと同時期で、自分で道を切り拓きたい気持ちも強くなって、ニューヨークに留学したんですよね。チョークアートはもちろん、語学や歌を学ぶために。でも現地に知り合いは1人もいなくて、友達の友達くらいしかツテがない感じだったんですけど。

MATSURI:その行動力、カッコよすぎます! “こういうことやってみたいな”と思っても、なかなか行動に移せないですから。


▲MATSURI

Moeco:“やらないで後悔するよりもやって後悔するほうがいい”っていう感覚は、今でも私の中にあるんですよ。MATSURIちゃんはさっき、「歌うことは苦手だった」と言ってましたけど、最初は抵抗があった?

MATSURI:はい。人前で歌うことがずっと苦手だったんです。家族と一緒にカラオケに行っても歌わなかったくらいで。「何飲む?」って訊いてグラスに飲み物を注ぎに行くだけのドリンクバー係をずっとやっていました(笑)。

──“歌いたい”という方向に変化したのは、Moecoさんとチョークアートとの出会いのように“やってみたい!”と思うきっかけがあったんでしょうか。それは具体的にどのようなものだったんですか?

MATSURI:ドリンクバー係をずっとやっていた私を見かねた母から、「さすがにそろそろ歌ったら?」って言われたんです(笑)。それで歌ってみたら拍手をもらって、単純にそれが嬉しかったんですよね。“歌うのって意外と楽しいかも”って思えてから興味を持つようになりました。

Moeco:歌うことが好きになったのは、何歳くらいの時でした?

MATSURI:小学校低学年の頃だったと思います。4年生くらいの学芸会ではすでに、歌うことが楽しくて仕方ない感じになっていました。

Moeco:周りの人に褒めてもらえると、自信に繋がりますよね。私は子供の頃、たまに水族館に行って絵を描いて、その作品が入賞したりしたんです。あまり褒められという記憶はないんですけど、そういうことはありましたね。

──水族館で絵を描いていたということは、昔から魚に心惹かれる感覚はあったんですね。

Moeco:はい。お花だったり、動物だったりとか、命あるものが好きです。

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