【ライブレポート】佐野元春のピュアネスをリアルに感じ取れるツアー

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2022年4月16日(土)、札幌市教育文化会館にて、佐野元春&THE COYOTE BANDがコンサートを行った。4月9日(土)埼玉・三郷市民文化会館から始まり、7月2日(土)東京・TOKYO DOME CITY HALLでファイナルを迎える、全12本のホール・ツアー『WHERE ARE YOU NOW』の2公演目が、この日である。

世の中が新型コロナウィルス禍に陥って以降も、佐野元春&THE COYOTE BANDは、その時々の状況を鑑みながら積極的にライブ活動を行ってきたが、こうして全国規模でツアーを開催するのは、2018年の『Maniju』のリリースの時以来、実に3年半ぶりになる。

ということもあってか、オーディエンスにとって特別な日になるようにしたいというアーティストとスタッフの気持ちが、セットリストやパフォーマンスといったライブの内容についてはもちろんのこと、それ以外の部分にも、こめられていた。たとえば、全40ページのツアー・パンフレットを始め、グッズがバラエティに富んだとても充実していたものになっていたり。あるいは、電子チケットの人にも紙チケットの人にも…つまり入場者全員に、このツアーのために作られたメモリアル・チケットが入場時にプレゼントされたり。

集まったオーディエンスも、久しぶりに佐野元春&THE COYOTE BANDを観に来たという以前に、コロナ禍前以来久しぶりにコンサートというものに足を運んだのではないかということが見て取れるような、興奮と緊張が相俟った空気が開場後のロビーに漂っている。ただし、声は出さないので「静かなお祭り」とでも言えばいいのか、そんないい意味でちょっと不思議で幸福な雰囲気が、早くも開演前の時点でできあがっていた。


佐野元春(Vo、G)

ツアー初日の前日=4月8日(金)には、コロナ禍以降にデジタルで発表されてきた5曲に新曲5曲を加えた、佐野元春&THE COYOTE BANDとして5作目にあたるニュー・アルバム『ENTERTAINMENT!』が、配信限定でリリースされている。

となると、そのニュー・アルバムのお披露目を主軸にしたメニューになりそうなものだが、今回は、そこにさらに別の意味や意義が込められている、見せたいもの・聴かせたいもの・伝えたいことが、幾重にも重なっている、そんな多面的で濃厚なステージになっていた。

まず、先に書いたように、佐野元春&THE COYOTE BANDが各地のコンサート会場に戻って来たし、オーディエンスもロック・コンサートの現場に戻って来たという機会であること。よって、もちろん『ENTERTAINMENT!』からの曲もプレイされるが、それ以外の、各時代の楽曲も次々と演奏される。

特に、本編後半からアンコールにかけては、「佐野元春の代表曲」というよりも「日本のロックのスタンダード」と化している歴代の名曲が畳み掛けるように放たれ、オーディエンスを熱狂させた。佐野元春は普段から、みんなが聴きたいヒット曲を敢えて避けるようなコンサートはしないが、それにしてもここまで連発することはそうそうないのではないか。


そして今年2022年は、佐野元春の存在を決定づけたサード・アルバム『サムデイ』のリリースからぴったり40年という節目の年であること。なお、その年には『サムデイ』の2ヵ月前に、大滝詠一・杉真理・佐野元春の『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』もリリースされている…という説明から、その2作の収録曲も披露されるというサプライズもあった。

そんなバラエティに富んだ楽曲群の中でも、特に中盤から後半にかけてライブのピークを担っていたのが、『ENTETAINMENT!』からの曲だったことが印象的なライブでもあった。

既にデジタル・シングルとしてリリースされており、これまでのライブでも演奏されてきた「愛が分母」や「エンタテイメント!」といった曲はもちろん、このツアーで初めて披露される新曲たちも、同様にステージの流れの中においてとても重要なポイントになっている。


小松シゲル(Dr)


深沼元昭(G)

「コロナ禍に生きる僕ら。こんなときだからよりみんなとシェアしたい曲がある」

『ENTERTAINMENT!』の特設サイトに、佐野元春はそんな言葉を寄せているが、そのことを、特に色濃く表している楽曲が、同アルバムから選ばれている、そんなふうにも感じられた。また、それらの曲の時は、今まで佐野元春&THE COYOTE BANDのコンサートでは用いられなかった新しい照明の演出が施され、ホール内がトリップ感覚に包まれた。

「札幌、3年ぶりですね。いや、4年ぶりか。たくさん集まってくれてうれしいです」

最初のMCでそう言った佐野元春は、後半のMCでは「このツアー、実現できてうれしい。みんなのおかげです」とお礼を言った。コロナの状況によっては開催できないかもしれない、という危機感を、常に持ちながら活動してきた…いや、今現在もそうであることに、その言葉で気付かされる。

ゆえに、アンコールで彼がオーディエンスに言った「ありがとう。うれしい」という、簡潔極まりない言葉が、本当に実感を持って響いた。


藤田顕(G)


高桑圭(B)


渡辺シュンスケ(Key)

もともと昔から、こうしたシンプルな言葉を発した時や、ステージで笑顔を見せた時、「ああ、今、本当にそういう気持ちなんだな」ということがオーディエンスに伝わるという点でも稀有なアーティストが佐野元春だが、そんな佐野のピュアネスを、いっそうリアルに感じ取れるツアーがこの『WHERE ARE YOU NOW』なのかもしれない。

なお、このツアーが終わる2022年7月には、次のニュー・アルバムがドロップされる、つまり『ENTERTAINMENT!』と2作連続リリースであることが、既に発表されている。アンコールを終え、去り際にメンバーをひとりずつ紹介したあと、改めてそのことを告げた佐野元春は、ちょっと間をとって「…ヤバいアルバムです」と言った。

歓声が出せない分、曲が終わるごとに(時には曲の途中でも)何度も湧き上がってきたオーディエンスの拍手が、もっとも大きくなったのは、この時だったのではないか、と思う。



写真◎アライテツヤ
文◎兵庫慎司

佐野元春 & THE COYOTE BAND『ENTERTAINMENT!』

2022年4月8日発売
iTunes Store ほか ¥2,500
1.エンタテイメント!
2.愛が分母
3.この道(additional recorded ver.)
4.街空ハ高ク晴レテ(additional recorded ver.)
5.合言葉 - SAVE IT FOR A SUNNY DAY
6.新天地
7.東京に雨が降っている
8.悲しい話
9.少年は知っている
10.いばらの道

<佐野元春 & ザ・コヨーテバンド WHERE ARE YOU NOW>

2022年4月9日(土)
埼玉・三郷市文化会館 大ホール
2022年4月16日(土)
北海道・札幌市教育文化会館 大ホール
2022年4月23日(土)
愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
2022年5月7日(土)
熊本・市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
2022年5月8日(日)
福岡・福岡市民会館 大ホール
2022年5月14日(土)
新潟・新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ)劇場
2022年5月22日(日)
宮城・仙台電力ホール
2022年5月28日(土)
広島・JMSアステールプラザ 大ホール
2022年5月29日(日)
大阪・フェスティバルホール
2022年6月12日(日)
神奈川・神奈川県民ホール 大ホール
2022年6月26日(日)
兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
2022年7月2日(土)
東京・TOKYO DOME CITY HALL

全席指定席:9,900円(税込)
※感染症対策ガイドラインを遵守
※年齢制限:3歳未満入場不可・6歳以上チケット必要 おひとり様4枚まで
一般前売り発売:《4月公演》3月19日(土)《5月公演》4月9日(土)《6月・7月公演》5月7日(土)




◆佐野元春オフィシャルサイト
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