【コラム】OUTRAGEデビュー35周年、記念アルバム、オーケストラとの共演、そして映画

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4月20日に発売されたOUTRAGEのアルバム『SQURE,TRIANGLE,CIRCLE & FUTURE』 がオリコンのデイリー・チャートで21位を記録するという快調な滑り出しをみせている。この作品は彼らのデビュー35周年を記念するアニヴァーサリー・アルバムであると同時に、公開が迫りつつある話題の映画『鋼音色(はがねいろ)の空の彼方へ』で使用されている楽曲により構成されたサウンドトラック盤的な成り立ちのものでもあり、『OFFICIAL BOOTLEG III』と題された秘蔵映像集のDVDとの2枚組仕様となっている。

◆OUTRAGE 動画 / 画像

アニヴァーサリー・イヤー到来に伴い、バンド自体もこれまでにない特別な動きをみせている。まずこの4月24日(日)には、彼ら自身の地元である名古屋のZEPP NAGOYAにて<35th Anniversary Special Live:OUTRAGE&Outrageous Philharmonic Orchestra>と銘打たれた一夜限りの特別公演が実施される。これはOUTRAGEとセントラル愛知交響楽団との共演によるもの。彼らは1991年に発表した名盤『THE FINAL DAY』の30周年記念盤を昨年10月に発売しているが、そのDISC-2に同楽団の演奏が収録されていたことも記憶に新しい。同作発表当時、メンバーたちは、「オーケストラにより演奏された音源を聴いて、自分たちの楽曲について改めての発見が多々あった」と語っていたが、今度はステージ上での両者のコラボレーションが実現に至るわけである。当然ながら彼らがフル・オーケストラ共演するのは史上初のこと。この歴史的瞬間を見逃すわけにはいかないだろう。バンドのフロントマンであるNAOKIは、今回の画期的共演について次のように語っている。

「果たしてちゃんとできるんだろうか、という意味での不安がないとは言えないけども、オーケストラと一緒に演奏すること自体に関しては楽しみでしかない。なにしろ演奏家として最高峰の人たちとコラボすることができるわけで、それによって自分たちが引き上げられる部分もあるはずだし、むしろオーケストラにしがみついてでも向上しなければ、という気持ちがありますね。しかもそれがバンドの35周年を象徴するライヴになる、という嬉しさもありますし」



そしてこのスペシャル・ライヴの翌日にあたる4月25日(月)には、同じく名古屋のミッドランドスクエアシネマにおいて、『鋼音色の空の彼方へ』の舞台挨拶付き先行プレミア上映会が開催されることも決定している。この映画は5月20日(金)に名古屋で先行公開され、6月3日(金)からは東京や大阪をはじめ各地で順次公開されることになっているが、今回のプレミア上映は、それに先駆けて一般に向けて上映される非常に貴重な機会ということになる。ちなみに舞台挨拶ではメンバーの丹下眞也、阿部洋介に加え、映画の中で丹下を演じている秋田卓郎、NAOKIを演じている岡陽介、そして山田貴教監督が登壇する予定だ。

正確を期すために改めて説明すると、劇中において秋田卓郎は“丹下を演じるサブカル俳優の山内聡”、岡陽介は“NAOKIを演じるネット配信歌手の前田徹”という役どころを務めている。少々混乱を招きそうな話だが、まずこの映画はドキュメンタリー作品ではない。OUTRAGEの歴史をそのまま俳優たちが演じているわけでもない。その歴史に基づいた映画の制作を進めていくなかで演者や関係者たちが繰り広げる物語になっている。いわば劇中劇のような形でOUTRAGEの歴史が描かれるという二重、三重の構造になっているのだ。名古屋を舞台とし、OUTRAGEとヘヴィ・メタルをキーワードにしながら繰り広げられる青春群像劇ともいえるだろう。この作品のそうした独特の構造について、NAOKIは以下のように説明している。

「台本を読んだ時点で、劇中劇のような構造になっていることは理解できていたんですけど、どんな仕上がりになるかは予想もできませんでした。いわゆるドキュメンタリーは以前にも作ったことがあるわけで、今回の作品は、OUTRAGEの映画というよりも、それをテーマの一部とする娯楽作品というか。だからこのバンドを知らない人たちでも楽しめるはずだし、実際、そうした人たちに観て欲しいものでもあるんです。この映画を観たうえで『ああ、OUTRAGEって実在するバンドなんだね』と知ってもらえればいいというか」


彼の発言にもあるように、2010年には『SHINE ON -TRAVELOGUE OF OUTRAGE-』と題されたドキュメンタリー作品(こちらも山田監督によるもの)が公開されている。今回の作品はそれとは異なり、実話や逸話がちりばめられてはいつつも、あくまでフィクションということになる。ただ、メンバー4人は映画の中にも登場するし、彼ら自身も撮影を楽しんだようだ。NAOKIは次のように振り返っている。

「撮影はとても楽しかった。というか、それ以前に映画撮影というものの規模感に驚かされましたね。ちょっとしたシーンの撮影ひとつにも、こんなにも大勢の人たちが関わっているものなのか、と。その現場の雰囲気というのにも興味深いものがありましたし、実際に完成後に自分で観てみても面白かった。どこか昭和の学園ドラマのような匂いも感じましたね、それこそ中村雅俊さんとかが出てくるような。俳優さんたちが演じている自分たちの姿にも納得できたというか、まるで過去の自分たちを見ているかのような感覚をおぼえました。劇中の自分の描かれ方を見て、“ああ、きっと僕はこんなふうに見られていたんだろうな”と感じた部分も多々ありますし、他のメンバーにも“途中からホンモノのNAOKIにしか見えなくなった”と言われたくらいなんです。丹ちゃん(=丹下)の惚れっぽい感じのキャラクターとかも、まさに当時の彼そのままだったし(笑)」

こうした発言からも、この映画が笑いとリアリティに富んだものであることは読者にも想像できることだろう。筆者自身もすでに試写を観ているのだが、どこまでが実話でどこからがフィクションなのかがわからなくなるような面白さがあり、なおかつホロリとさせられる場面もあった。ことに『SQURE,TRIANGLE,CIRCLE & FUTURE』にも収録されている新曲、「Summer rain」はこの作品の後味を決める絶好のスパイスになっているので、この楽曲が流れるシーン自体にも注目して欲しいところだ。


この映画の物語の中では、バンドを演じる若者たちが“35年もバンドが続いている”という事実について考えながら、自分たちの人生を顧みている。そうした様子をスクリーン上に観ながら、OUTRAGEをよく知る人たちもそうでない人たちも、さまざまな思考をめぐらせることになるのだろう。デビュー35周年を迎えたOUTRAGEのこうした一連の特別な活動に注目することにとどまらず、このバンドの生きざまや地元・名古屋への愛着といったものが伝わることを願いたいところだし、それがあなた自身にとって何らかの新たな発見に繋がることになれば幸いだ。

取材・文◎増田勇一



■35th Anniversary Album『SQUARE, TRIANGLE, CIRCLE & FUTURE』

2022年4月20日(水)リリース
【CD+DVD】UICN-1109 ¥3,960-(税込)
▼CD
01. Psycho flowers (New Song 映画『鋼音色の空の彼方へ』THEME SONG)
02. Under Control Of Law(Outrage 1st Mini Album)
03. Wings(The Final Day)
04. Sad Survivor(The Final Day)
05. Lookin' At Time(Blind To Reality)
06. Bearing Down(The Great Blue)
07. The Truth(The Great Blue)
08. Eos(Black Clouds)
09. Hammer Down And Go(Raging Out)
10. Machete III(Run Riot)
11. Great Blue(The Great Blue)
12. Under Control Of Law (Demo 1985 Demo with Kazutoyo Ito)
13. Edge Of Death (Live 1988.8.8 Fukuoka Drum Be-1 未発表ライブ音源)
14. Summer Rain(New Song 映画『鋼音色の空の彼方へ』THEME SONG)
▼DVD
01. Wasted(1986.1.10 Nagoya HeartLand with Kazutoyo Ito)
02. Death Trap(1987.7.15 Nagoya Electric Lady Land)
03. Name Your Poison(1989.8.12 Nagoya Flex Hall)
04. Blind To Reality(1990.5.6 Tokyo Meguro Rockmaykan)
05. Curtain Of History(1990.5.11 Osaka Am Hall)
06. My Final Day(1992.8.30 Kyoto Muse Hall)

■35th Anniversary Special Live<OUTRAGE & Outrageous Philharmonic Orchestra>

2022年4月24日(日) Zepp Nagoya
open17:00/ start18:00
▼チケット
指定席 ¥8,800-(税込/全席指定/1ドリンク代別途)
▼Outrageous Philharmonic Orchestra
・指揮:柴田 祥
・編曲:小塚 憲二
・演奏:セントラル愛知交響楽団 http://www.caso.jp/

■『鋼音色の空の彼方へ』舞台挨拶付き先行プレミア上映会

日時:2022年4月25日(月) 開場18:30
場所:名古屋ミッドランドスクエア シネマ スクリーン3
▼チケット
¥2,100-(税込)
※前売券・各種割引・招待不可、プレミアシート別途+800円

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