【インタビュー】Dear Chambers「僕らは友達から親友になり今度は“ひとつ”になりました」

ポスト

■ライヴでこの1日に懸けられていない自分がいたりうまくいかないとき
■もういいんじゃね?っていうモードになったりするんですよ、バンドなんで


──どの曲も「you & me」という構図になっていますが、「DIVE」に関しては、ひとりでひたすら沈んでいく曲になっていて。そういう曲もアルバムには入れたかったんですか?
モリヤマ:いや、単純に疲れていたんですよ、この曲を作ってるとき。

しかぎ:精神状態が出てる(笑)。

モリヤマ:この曲が最後にできたんですけど、自分でも結構驚いたんです。こんな曲も書けるんだ?って。やっぱり、やってみないとわからないじゃないですか。13曲とか作ったりしない限り、筆まで疲れたって書く感情って出てこないと思うんで。それが素直に出てきたのって、結構革命的だったんですよね、自分の中では。

──リズムも変拍子だったりしておもしろいですね。

モリヤマ:コードも変なやつを使ってるんですよ。で、絶対に誰もシンガロングしたくないようなシンガロングを最後にやろうと思って、この歌詞にしました。〈心は海に沈んでく〉ってシンガロングしてたら、なんかおもしろいじゃないですか。

ペレ:意味わかんねえ(笑)。

モリヤマ:そうそう。でも、こいつ本当にそう思ってるんだろうなっていう(笑)。それを言う人がいたらおもしろいなと思って、アンチテーゼじゃないけど、そんな感じもありましたね。


──「Alabama」も、こういったことを歌うことってあまりなかったかもと思いました。これまでは、失ってしまったものとか、バンドが目指していくものが歌詞に出ていたけど、この曲はすごく幸せな状況というか。一目惚れのことを歌っていて。

モリヤマ:この曲は、『トゥルー・ロマンス』っていう映画を観て作ったんです。ヒロインの名前がアラバマなんですよ。出会って一瞬で恋に落ちて、最後は銃撃戦になっちゃうみたいな映画なんですけど、前半のロマンティックな感じがすごく好きで。で、俺らがライヴハウスでいろいろな人と出会うのも、一瞬がすべてなんじゃないかなって。だから、映画のことと自分の目の前で起こっていることを、ある程度リンクさせて書いた感じですね。その映画を観ているときはすごく幸せな気持ちなんで、さっきの「疲れた」っていうのと一緒で、幸せな気持ちのまま書いたっていう(笑)。

ペレ:わかりやすいな(笑)。

モリヤマ:なにか自分にあったとかではないんですよ。ただ、こうなったらロマンティックだよなっていうことを書いていったらこうなりました。ライヴハウスで出会うのも、結局ロマンティックじゃんって。

──バンドの今のモードを綴った曲もありますが、「in my dreams」には、〈いつ終わってもおかしくはないよね それが心地いいのさ〉という一節があって。

モリヤマ:「明日やめてもいいよね?」っていう話を3人でよくするんですけど、それが心地いいんですよ。この曲の歌詞は、〈それが心地いいのさ〉っていうのが最初に出てきたんですけど、なんでなのかなって思ったら、俺らがやっていることって、当てのない旅みたいなもんじゃないですか。でも、昨日のことなんて忘れちゃうぐらい、前に進まなきゃいけないことが多くて。それで周りが見えなくなる瞬間もあるけど、俺達はいつやめるかわかんないし、永遠なんてないし。でも、今が一番心地いいんですよ。心地いいよね?

ペレ:うん。いつも話している内容ではあるからね、この歌詞って。

しかぎ:そうだね。


▲モリヤマリョウタ/Vo&G

──これだけ前を向いて突っ走っているからこその言葉なんですね。そこに不安があるとかではなく。

モリヤマ:未来を見たら不安だけど、今しか見ないとなったら不安は出てこないです。なんか、みんな「今しかない」ってよく言うじゃないですか。綺麗事みたいに。でも結局、「じゃあまた明日」とか言っちゃうんですよ。いや、今日を見てないよね?って。俺達は本気で今日に懸けているんで、本当に明日やめてもいいっていう感じではあるんですよ。なんなら「やめるか」って言っちゃったときもあるんですけど。

──どんなときにです?

モリヤマ:それこそライヴをしていて、この1日に懸けられていない自分がいたりとか、何もうまくいかないし、もういいんじゃね?っていうモードになったりとか。やっぱそういうのはあるんですよ、バンドなんで。

──波みたいなものが。

モリヤマ:うん。ずっと上を向いているわけでもないし、自分達もすぐに結果が出る動き方をしているわけでもないし。だけど、それが好きでやっているんで。だから、いつか「もうつまんなくない?」ってなったらやめると思うんです。それでもずっとこうやって道を歩んできて、ちょっと心がブレるじゃないけど、そういう瞬間があっても、それすら心地いいんですよ。1日を生きているなっていう感覚があるっていうか。どう? そんな感じ?

ペレ:うん。いつもの感じ(笑)。

しかぎ:ライヴの帰りによく話してるやつ(笑)。

モリヤマ:ああ。ライヴの後の帰りの車の中で、「俺達、今日何かできたか?」って。「もうやめたほうがいいじゃない?」「いや、まだやりたいしな」って。それがずっと続いてるっていう。だから、このバンドのことがよく表れてますよ、この曲。

──そういう意味では、この曲はもちろん、すごく素直な1枚になりましたね。

モリヤマ:素直になったんですよ(笑)。昔はほんとに素直じゃなかったんで。こういうふうに笑うこともあんまりなかったじゃないかなって思うぐらい。あんなにライヴしてなかったら、やっぱりこういう歌詞は出てこないですね。だからすごく気に入ってるんですよ、今の自分っぽいなと思って。


▲秋吉ペレ/B&Cho

──ペレさんも、モリヤマさんが変わってきているなって感じます?

モリヤマ:感じますね。変わってきてるんだなと思うし、一緒に動いている分、そうなるよねって思うことも多いし。

──この経験をしていたら、それはそうなるだろう、と。

ペレ:そうそう。だから、今まで出てこなかった言葉が出てきても全然違和感がないというか。同じ時間を共有している分、納得って感じですかね。そういう方向に僕らも向かっているんだなって。

──前作から、歌詞をもうちょっといろんな方向に変えていきたいという話はしていたけど、それがいろんな経験を通して、その蕾が開いてきている感じありますね。

ペレ:そうですね。前作で、1曲目から5曲目にかけて変化していったものが、そのまま広がった感じがする。

しかぎ:確かに。前作からその感じはあったけど、個人的には包み込むような曲が増えたかなってちょっと思っていて。なんか、ライヴハウス全体がふわってなるような曲が増えた気がする。一体感っていうのは変だけど、「俺はこう思っているよ」っていうのを伝えることが増えたかなって。

──ライヴへのモチベーションや向き合い方も変わってきたんですか? 昔は3人が楽しいことが大事という感じではあったけど。

モリヤマ:だいぶ変わってきたっすね。とにかく一生懸命やるっていうのは変わってないんですけど、人の目を見て歌っていなかったんですよ、俺。でも、さっきのアルバムの話と一緒で、どれだけ対等でいられるかっていうことを考えるようになって。そこは共有っていう感じじゃなくて、「俺はこう思っているんだよね、どうなの?」っていうのを、横にいる奴の肩を叩くぐらいの距離感でやれるバンドになりたいって思ったんですよ。

──なるほど。

モリヤマ:近距離に行けないじゃないですか、物理的には。でも、曲とかMCで何かを言うときに、(手のひらを顔の前に持っていって)ここまで来れるようなバンドになりたいから、3人ともライヴ中はずっと集中していますね。だから、楽しいっていうよりは、一瞬も気が抜けない感じ。そういう感じじゃない? 楽しいのは楽しいんだけど。

ペレ:うん。それすらも楽しいって感じ。

しかぎ:昔と変わってきたところもあるけど、やっぱりヒリヒリしていたいなっていうのはあるんですよ。たとえば、セトリが変わったりすることないけど、今そう行くんだねっていう瞬間がバチっとハマったときに、なんかライヴしてるなと思ったり。

モリヤマ:俺が決めていた繋ぎをやらないときとかあるんですよ。で、どう?ってやったら付いてくるんで、そういうドキドキとかも楽しい。


▲しかぎしょうた/Dr&Cho

──そういう意味でのヒリヒリってことですね。怒声が飛び交う感じじゃなくて。

3人:ははははははは(笑)。

モリヤマ:やってみたいですけどね、そういうのも(笑)。

──お話にもあった通り、アルバムのリリースツアー『Dear you & me TOUR 2022』がすでにスタートしています。

モリヤマ:なんか、好きな人は好きなんだなって思いますね、改めて。そういう人を増やすために、時間はかかるけど、ライヴするしかないんだなって思ってます。

──好きな人というのは?

モリヤマ:俺達のことを好きって言ってくれる人ですね。「Dear Chambersっていいよね」って、ライヴハウスに足を運んでくれる人にしか、今の僕らは相手にする術がないんで。サブスクに曲を出してないし。だから、目の前の人を思いっきり抱きしめるツアーですね、今まで以上に。

──最後に、過去に2回インタビューさせていただいたんですが、最初のときに、俺達はメンバーじゃなくて友達だって言ってたんですよ。

3人:(笑)。

──2回目のインタビューでは、友達から親友になったと言っていて。今回はどうなりました?

3人:なんだろうね?

モリヤマ:……最近「メンバー」なのかな? 遊ぶことがなくなったっすね(笑)。そんな時間もないし。

ペレ:会いすぎちゃってるしね。

モリヤマ:うん。だから、これを「メンバー」と呼ぶのか、「同志」と呼ぶのか、よくわかんないけど……何なんだろうね?

しかぎ:…………共同体とか?

モリヤマ:あぁ……「ひとり」かな。「ひとり」になりました。

ペレ:あぁ(笑)。これ(3人)でひとつってこと?

モリヤマ:そうそう。僕らは「ひとつ」になりました(笑)。

3人:ははははははははは!(笑)

取材・文:山口哲生

リリース情報

1st Full Album『you & me』
発売中
PADF-026 \2,500+tax
1.桜の唄
2.one lover
3.to day
4.ベイビー・ドント・クライ
5.夜に消えないで
6.あの丘の上
7.Alabama
8.29
9.In my dreams
10.DIVE
11.ずっと心だけは
12.さよならを覚えている

ライブ・イベント情報

Dear Chamber 1st full album 「you & me」Release Tour
<Dear you & me TOUR 2022>
5月3日(火/祝)香川 高松DIME
5月4日(水/祝)愛媛 松山double-u studio
5月5日(木/祝)高知 高知X-pt.
5月7日(土)徳島 徳島GRIND HOUSE
5月25日(水)東京 八王子RIPS
5月28日(土)青森 八戸FOR ME
5月29日(日)岩手 the five morioka
6月10日(金)埼玉 秩父ladderladder
6月17日(金)新潟 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
6月18日(土)長野 上田Radius
6月19日(日)栃木 宇都宮HELLO DOLLY
6月24日(金)大阪 福島2nd LINE
6月25日(土)兵庫 神戸KINGS X
6月26日(日)石川 金沢vanvan v4
7月1日(金)岡山 岡山CRAZY MAMA 2nd Room
7月2日(土)広島 広島ALMIGHTY
7月3日(日)三重 鈴鹿ANSWER
7月18日(月/祝)群馬 高崎SUNBURST
7月22日(金)神奈川 F.A.D YOKOHAMA
7月23日(土)静岡 静岡UMBER
and more…

◆インタビュー(1)へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報