【ライブレポート】T-BOLAN、全国ツアー開幕「今、こうして30周年を迎えました」

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T-BOLANが4月15日の千葉・成田市国際文化会館公演を皮切りに、全国ツアー<T-BOLAN 愛の爆弾 PROJECT♡MESSAGE FROM アインシュタイン LIVE TOUR 2022>をスタートさせた。同ツアー3公演目となる5月1日の神奈川県民ホール公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆T-BOLAN 画像

森友嵐士(Vo)の心因性発声障害により1999年に解散を余儀なくされたT-BOLAN。その後、歌うことを決して諦めなかった森友が歌声を取り戻し、2009年にソロ活動を開始、2012年にT-BOLAN再始動、2017年にT-BOLANとして完全復活を果たした。そして今年3月14日、約28年ぶりにオリジナルアルバム『愛の爆弾=CHERISH 〜アインシュタインからの伝言〜』をリリース。その最新作を引っさげ、全国ツアー真っ只中というわけだ。

この日披露されたのは、ツアータイトルが物語るように新作アルバムからの楽曲はもちろん、1990年代を彩ったヒット曲も満載。長い間待ち続けてくれた往年のファンに向けて、“若かりし頃に聴いて、歌っていた曲を今夜のライブで聴いて欲しい!!”という感謝の思いがセットリストに表れていた。


開演17時30分。巨大スクリーンに映し出されたオープニングムービーの後、本ツアーの主題であり、彼らが今最も届けたいメッセージを詰め込んだアルバムタイトル曲「愛の爆弾=CHERISH ~アインシュタインからの伝言~」で幕を開けると、客席は一斉に総立ちになった。天才物理学者のアルベルト・アインシュタインが生前娘に宛てた最後の手紙に遺した「愛のチカラ」について、森友が感銘を受けて歌詞を書き上げたこの曲。シンプルな言葉の裏に秘められた強烈な言霊が、タフなバンド演奏に乗って投下され、ド頭からすごい熱気だ。

「<愛の爆弾 PROJECT♡MESSAGE FROM アインシュタイン ライブツアー2022>へようこそ!」──森友嵐士

森友が第一声を放った後は、ロックフィーリング溢れるイントロのリフがクセになる「Re:I」。コロナ対策で声を上げられないオーディエンスは、メンバーに興奮を伝えたいとばかりに、手に持った色とりどりのペンライトをステージに向けて勢いよく振りかざしている。双方向に放たれた愛のパワーで、早くも場内は大揺れだ。

「神奈川県は、広島から出て来て最初に暮らした場所で、ドラムの青木(和義)と出会ったライブハウスもあったり、話せないプライベートネタもいっぱいあって、俺にとっては庭みたいな街です。そんなゆかりの場所で、みんなと最高の一夜が過ごせたらと思っています。今日ここにいるみんなは『愛の爆弾プロジェクトの共犯者』です。最後までヨロシク!」──森友嵐士


1st MCの後は、「Bye For Now」をはじめ1990年代のヒットナンバー5曲を惜しげもなく披露。活動休止中の青木に代わりツアー初参加となるドラムのTOSHI NAGAI(氷室京介ライブやGLAYのサポートドラムとして活躍)、復活後のツアーからバンドを支え続けているベースの人時(黒夢)と、コーラスの坪倉唯子(B.B.クィーンズ)といったサポートメンバーと作り上げる確固たるバンドフォーメーションが無敵のサウンドを生み出していく。ギターヒーロー然とした五味孝氏のギタープレイを堪能できるのもライブならではの醍醐味だ。特に一聴して彼だと分かる泣きのギターは今回も格別である。

続いて、ニューアルバムに収録されたバラード曲「祈りの空」。「全ての魂へのレクイエム」と紹介されたこの曲。地球上で今起こっているさまざまな悲劇を弔い、祈りを捧げる、そんな慈悲深き生身の歌声が、会場の隅々にまで力強く響き渡った。

「T-BOLANは1999年に一度解散したけど、今こうして30周年を迎えました。支えてくれた全ての仲間たち、メンバー、スタッフ、そしてファンのみんなが待っていてくれてたのは大きい。30(周年)という大きい数字を聞いて、改めて沢山の力をもらっての今があるんだなっていうのを強く実感している。本当にありがとう。サンキュー」──森友嵐士

感慨深げに語る森友に惜しみない拍手が送られた。そして、歌声を取り戻した森友に、尊敬する先輩ミュージシャンの近藤房之助が歌詞を贈った「声なき声がきこえる」、二十数年振りに帰って来たT-BOLANを温かく迎えてくれたファンに向けた、全ラブソングのアンサーソングの「ずっと君を」を披露。T-BOLANの真骨頂とも言えるバラードセクションは、彼らの真価を象徴する特別な時間であることを改めて感じさせられる。

そして、これまた彼らの代表曲の一つである「じれったい愛」のイントロでは、2015年にくも膜下出血を発症し、壮絶なリハビリの末に奇跡の復活を遂げたベースの上野博文が呼び込まれた。“神様にもらった2つ目の命。一番やりたいことはライブ。まだ全曲は弾けないけれど、一歩一歩上がっていく姿をみんなに見せよう”──そんな上野の意志やステージごとに進化していく姿が、今後も多くのオーディエンスを励まし、力を与えていくことだろう。



ここでサプライズ。最新アルバムのジャケット写真に出演している、アルベルト・アインシュタインのひ孫世代にあたるマーク・アインシュタインがゲストで登場した。もともと森友と釣り仲間だったという彼だが、アルバムの趣旨に賛同し、『愛の爆弾プロジェクト』に参加。この日も、アインシュタインが遺した「愛のメッセージ」をT-BOLANと共に届けたいと、自ら駆けつけてくれたのだ。

スクリーンに映し出された愛に溢れたメッセージ、「愛のために 愛の中で」。世界が混沌とする今、“愛”こそが本当に必要としている物、そしてそれが子供たちの未来を作る。許すこと、与えることからはじめよう、みんなが一つになるために。青と黄色で彩られたライティングの中、この曲をパフォーマンスすることで、その場にいる人たちその思いは十二分に伝わったことであろう。大きな拍手と共に会場全体が“愛”に包まれたのだから。

ここまですでに何度もクライマックスを迎えたライブは後半戦へ突入し、ベテランでありながらこのバンドが今なお可能性に溢れた永遠のチャンレンジャーであることを証明した最新アルバムの曲をドロップ。スタイリッシュなサウンドに、森友の人生哲学を感じる歌詞が大きなインパクトを与える新曲たちは、ライブで観るとますますクールでカッコいい。さらに本編ラストに向かって、自分たちの根源であるロック魂溢れる往年のライブ定番曲「傷だらけを抱きしめて」など数曲を一気に炸裂させた。バンドと客席が一体化し、終始途切れぬテンションでライブの理想郷を描き出していった。

鳴り止まぬアンコールを求める拍手の中、スクリーンには懐かしい若き日の貴重な映像が流れ、そして届けられたのは不朽の名曲「離したくはない」だ。唯一無二の歌声が再び大きな感動を巻き起こした。そして森友からこの日のラストメッセージ語られた。「愛の爆弾プロジェクトの共犯者」──このメッセージはぜひ会場でリアルに感じてほしい。全23曲にわたった熱いライブはフィナーレを迎えた。

28年ぶりに完成させたオリジナルアルバムを携えた今回のライブ。ツアーロゴはハートの形をしており、ステージと照明は全編通して“愛”を想起させる“赤”で統一するなど、一貫して愛の尊さを問い、伝えてくれる、LOVE & PEACEなステージだった。と同時に、彼らの生き様における美意識や信念をも感じ取れる“カッコいい大人のライブ”であり、キャリアや年齢を言い訳にせず新しいチャレンジをし続ける姿から、このバンドの現在地がポジティブな方向に向かっていることを明瞭に示したステージでもあった。ツアーはまだ続く。

■<T-BOLAN 愛の爆弾 PROJECT♡MESSAGE FROM アインシュタイン LIVE TOUR 2022>

4月15日(金) 千葉・成田市国際文化会館
4月23日(土) 京都・舞鶴市総合文化会館 大ホール
5月01日(日) 神奈川・神奈川県民ホール
6月03日(金) 熊本・荒尾総合文化センター 大ホール
6月04日(土) 福岡・福岡市民会館 大ホール
9月18日(日) 長崎・長崎ブリックホール 大ホール
9月19日(月・祝) 大分・大分iichikoグランシアタ
※ツアースケジュールは今後も随時発表

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