【インタビュー(後編)】マルシィ、1本の物語を描ききった1stアルバム『Memory』

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Z世代女性リスナーが大注目のマルシィがメジャーデビュー。1stアルバム『Memory』は、「絵空」「白雪」「プラネタリウム」など初期の代表曲から、最新ヒット「最低最悪」「未来図」まで大ヒットを記録した楽曲に加えて、新曲を含む全11曲(ボーナストラック含む)を収録している。バンドの魅力を全方向から伝えるアルバムインタビューの後編をどうぞ。

■今の自分の当たり前というものに目を向けたら
■大切なものが見えてくるんじゃないかな

――もう1曲の新曲が「牙」。これはもう、ガンガン行っていますね。ロックバンドですね。

右京:そうですね(笑)。これもちょっと悩んだというか、この曲を出した時にどういう反応をしてもらえるかな?ということは、曲を作る段階から考えてはいました。「牙」は攻撃的な印象を持たせるような楽曲なので、どうだろうな?とも思ったんですけど、攻撃的なサウンドと、ちょっと強がっている感じの歌詞なので、アルバムに深みを持たせるような1曲になるというか、この曲があるおかげでほかの曲とも引き立て合うみたいな、そういうふうになったらいいなと思って書きました。それとこの曲は、悲しさとは別の感情というか…当てはまる言葉が難しいんですけど、怒りや悔しさに悲しさが混じっているみたいな複雑な感情を攻撃的な音に合わせて表現したかったんです。この曲はたぶん、アルバムを作るということになっていなかったら、こういうふうにはなっていなかったかもしれない。アルバムがあったおかげでできた楽曲だと思います。

――インタビューの前編の最後で「対になる」という言い方がありましたね。この「牙」と、一つ前の「最低最悪」は、対になる要素が多いような気がします。世界観的に。

右京:ああ、それは…そうですね(笑)。

――当てちゃった? じゃあ、なかったことに(笑)。でも主人公の感情的に、対になっているような感じはしますよ。それはたぶん、聴いた人はけっこう感じ取れると思う。

右京:歌詞とサウンド感もそうですね。気づいてもらえたらうれしいです。

――演奏面で言うと、「牙」みたいな曲は、もうイケイケでギター弾くでしょう。良い意味であんまり細かく考えないというか。

shuji:そうですね。ライブでも無心になって弾けるというか、曲の世界観にひたるという感じです。サウンド的には僕が前にやっていたバンドに近いかな。僕のルーツはX JAPANなので、歪んだ音の作り方にはすごくこだわりましたし、右京からデモをもらった段階からそういうバンドサウンドを作れたらいいなと思っていて、「牙」はそれが具現化できた曲ですね。今までのマルシィにないサウンドを作れたかなと思います。

タクミ:僕もルーツがロックバンドなので、「牙」では本当にバリバリ弾かせてもらって、たぶんアルバムの中で一番ベースがデカイんですよ。

shuji:ぐいぐい来てるよね。

右京:「ちょっと下げるか」みたいな案もあったんですよ、ミックスの時に。Shujiさんと僕がそう言ったら、タクミが「いや、これ以上は下げたくない」って、すごい強い口調で(笑)。

shuji:「これぐらいは欲しいです!」って。

右京:なので、めちゃめちゃベースが大きいんですけど。でも楽曲にも合ってるし、そういう曲があってもいいかなと思ったので、タクミのアイデンティティを大事にしました(笑)。

タクミ:ベースは自分のものではなくて、ビンテージのプレベ(プレシジョンベース)を使わせてもらって、太く弾かせてもらったのですごく楽しかったです。1曲ぐらいはベースがデカクてもいいよね?みたいな感じで(笑)。

――良いと思います。ちなみに、shujiくんのアピール曲ってあります? タクミくんの「牙」のように、俺のここを聴け!みたいな。

shuji:そうですね(笑)。「ピリオド」「絵空」みたいに、感情の起伏が激しい曲のギターソロは、すごい歪んだ音でガーッ!と鳴らしています。そこが僕の見せどころというか、僕が一番注目してもらえるシーンだと思うので、感情の起伏が激しく表れている楽曲のギターソロは、ぜひ聴いてほしいと思います。アピールポイントです(笑)。あとは、インタビュー前編で言ったように歌に寄り添っているところ、旋律に寄り添っているところも、アピールポイントかもしれないですね。


――それと今回、島田昌典、本間昭光、百田留依さんさんなど、錚々たるアレンジャー/プロデューサーに参加しています。それもすごく勉強になったんじゃないですか。

shuji:めちゃくちゃ勉強になりますね。レコーディング現場で「もっとこうしたほうがいいよ」というアドバイスをいただいて、その場で修正したこともありましたし、そういった意味ですごい勉強になりました。特にストリングスがフワッと鳴っている時に、僕のギターの位置はどこにいればいいんだろう?みたいな、ちんぷんかんぷんなところがあったんですけど、「ここはこうなっているから、こういうボイシング(音の重ね方)でやろうね」と言ってもらって、すぐにコードを替えて「こういう感じですか?」とか、そういうやりとりをした記憶があります。そういったアドバイスは、すごく勉強になりました。そこで学んだことを、セルフプロデュース楽曲でもけっこう使っています。

――それはすごい授業ですよ。タクミくんも同じ感じ?

タクミ:そうですね。確実に引き出しは増えると思ったし、実際に増えてきました。「歌がこうなっている時はベースはこう行くんだ」とか、「ここでローポジションに戻って落ち着いたら気持ち良いんだ」とか、本当にいろんな発見がありました。

――どんどん吸収して成長している。頼もしいメンバーですね。

右京:そうですね。これからも頑張ってもらわないといけないですね(笑)。

――という、新曲も既発曲も聴きどころがいっぱいで、ストーリーとしても想像力が刺激される、力の入った1stアルバムです。

右京:付け加えると、インタビュー前編でお話した通り、2曲目「プラネタリウム」から本当のストーリーが始まって、1曲目の「ラブストーリー」は、ストーリー的には最後の楽曲なんです。その1番で歌っている“♪当たり前に笑顔に触れた日々の”や、2番の“♪当たり前はかけがえのないものだった”その“当たり前に過ごしていた日々”を、「プラネタリウム」から歌っていく、という構成になっているので。アルバムを通して伝えたいことの一つとして、これは恋愛のストーリーではあるんですけど、僕の気持ちとしては、“当たり前というものはないな”と思うことが最近多いので、そういうことに気づいてほしいという意味もあります。

――ああ。なるほど。

右京:大きな幸せとか、めっちゃうれしいこととか、それがあったら本当に幸せだと思うんですけど、「当たり前に流れていく日常の中にも大切なものはあるんだよ」というか。たとえば学生の時がそうだと思うんですけど、その時は気づかないんですよね、学生であることの幸せさというものに。でもそれに気づけたらいいなと思うし、その中では楽しいことだけじゃなく、悲しいことも起きると思うんですけど、今の自分の当たり前というものに目を向けたら、大切なものが見えてくるんじゃないかな?というか、今の生活において、そういうことに気づいてもらえたらうれしいとは思っています。

――それはすごく大きなメッセージじゃないですか。確かにそうで、当たり前の中にある大切なものって、その時には気づかなくて過ぎてから気づいたりするものだから。すごくわかります、その感覚。

右京:今の、この時間もそうだと思うんです。当たり前なことはないというか、回を重ねることで慣れていくことはあると思うんですけど、それでも当たり前とは思いたくない。曲でもそういうふうに伝えたいと思っているんですが、自分の中でも「今が当たり前だと思わないようにしよう」ということは、定期的に意識しています。忘れかけている時も、もしかしたらあるかもしれないですけど、そのたびに思い出しながら、そこは大切にしていきたいところですね。

――たぶんこのアルバムを何年後かに聴くと、思い出すんじゃないですか。初心と言うか原点と言うか、そういう意味でもすごく大切なアルバムになるんじゃないかなと思います。

右京:そうですね。いろんな思い出が詰まったアルバムになったと思います。

――素晴らしい。あと一つ思ったのは「Drama」を入れなかったでしょう。

右京:はい。そうですね。

――右京くんが初めて作った曲で、人気曲だし、入ってないのがちょっと意外でした。何か理由があるのかな?って。

右京:理由は、『Memory』というアルバムに一本の筋を通したいという思いがあって、それはストーリー的な意味なんですね。さっき言っていただいた、1本の映画じゃないですけど、1本の物語を描く上で、「Drama」という曲を入れると、自分の中でストーリーの辻褄が合わなくなってきちゃうので。この11曲は完全に1本の線で繋がっているんです。「Drama」も繋がっていると言えばそうなんですけど、今回描きたかったのはこの11曲の繋がりのほうだったので。

――なるほど。すごく納得しました。バンドにとって大事な曲だけど、ストーリーに合わないから入れない。かっこいいと思います。

右京:なんで入ってないの?という声もあるかなとは予想していました。でも、この11曲を聴いてもらったら、納得してもらえるかなと思います。

――という、自信作のメジャー1stアルバムを引っ提げて、このあとリリースツアーがあります。7月に大阪、愛知、福岡、東京を回る〈マルシィ one man live tour 2022 Memory〉です。楽しみですね。どんなツアーにしたいですか。何を見せたいですか。

右京:まずは、アルバムがメインになっているツアーで、アルバムで描いていることをダイレクトに伝えられる機会なので、そこをしっかりと表現できたらいいなと思っています。それと、ツアーをやることがバンドを始めてからの目標だったので、ちょっと時間はかかってしまったんですけど、初めてのツアーなので、どんな感じなんだろうな?という、期待と不安がありながら楽しみたいなということです。僕たちはライブをたくさんやってきたバンドではないので、このツアーの4か所を通して、メンバーそれぞれの個人力もそうですが、バンドとして一皮むけられたらいいなと思っています。それに向けて、どういう演出でどういう見せ方をしていくかを今話しているところなので、このツアーでそれを実現したいと思っています。

――楽しみにしています。必ず行きます。

右京:ありがとうございます。頑張ります。

取材・文:宮本英夫

リリース情報

1st ALBUM『Memory』
2022.06.01(Wed) Release
CD:3,300円(税込) UMCK-1713
1. ラブストーリー
2. プラネタリウム
3. ワスレナグサ
4. 君のこと
5. ピリオド
6. 花びら
7. 未来図
8. 最低最悪
9. 牙
10. 白雪
11. 絵空(CD のみのボーナストラック)

ライブ・イベント情報

<one man live tour 2022“Memory”>
7/1(金)大阪 music club JANUS
7/10(日)愛知 名古屋クラブクアトロ
7/22(金)福岡 福岡DRUM LOGOS
7/28(木)東京 渋谷クラブクアトロ
【全公演】指定席 \3,500( 税込) / 当日券未定
※政府/ 自治体のガイドラインに基づき、各会場収容人数の定員で実施致します。
※チケットはお一人様2枚まで(複数公演申込み可)※全公演
※未就学児童は入場不可、小学生以上はチケットが必要となります。
※転売チケット入場不可

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