【ライブレポート】今なお不変、スリージーでもバッドボーイズでもない、神を賛美するストライパーの偉業

ツイート

クリスチャンメタルの先駆者、ストライパーが5月5日からアメリカツアーを開幕した。

2019年の来日公演以降、2020年には欧州のフェスティバルにもエントリーされていたが、コロナ禍により音楽フェスティバルの延期は周知の通り。その出演ラインナップは今年2022年にほとんどがスライドされているが、そこにストライパーのクレジットはなかった。

そして新たに<Calling On You Tour 2022>としてアメリカツアーが発表され、ファンならばもれなく惹かれるであろうそのツアータイトルに高揚したのは自分だけではないはずだ。バンドの象徴的なMTVチャートのトップヒットに加えて、ファンのお気に入り曲から35周年を祝う内容のツアーのようだ。


実際には、バンドはまもなく40周年を迎えるはずだが、1980年代MTVでの成功とバンドで最もセールスした『To Hell With The Devil』アルバムのアニバーサリーとなっている。そのツアーの中盤に差し掛かるフロリダ公演初日を観る事ができた。




オープニングアクトが2組演奏し、場内が暖まった21時過ぎに彼らが姿を現した。ステージ上にはキャビネット等は無く、イエローアンドブラックのパネルで壁面造作、足元にはギターアンプシミュレーター+マルチエフェクターが置かれている、そういう時代だ。

驚いたのは、オープニング曲に「In God We Trust」を持って来た事で、1989年同曲のアルバムツアーでは、オリジナルのコーラス部分をテープで始めたものの、武道館公演で失敗した事も良き思い出である(当時リリースされたライブVHSでは編集されている)。近年はショートバージョンの「IGWT」が定番となっていたが、イントロ部分は違えどフル演奏されたのは嬉しい。



2017年に新加入した元ファイアーハウスのペリー・リチャードソン(B)も随分と馴染み、持ち前の華やかさを上手くアピールしていて、彼の加入は正解だったとようやく思えてきたのは正直なところ。

最新の情報では、片目の視力を失っているマイケル・スウィート(Vo、G)と、片耳の聴力を失っているオズ・フォックス(G)、当然ながらメンバーはそれなりに歳を重ねているわけだけれど、良くも悪くも変わらない音楽性とそこに向き合う姿勢、真摯なプレイにもいつも感動させられる。ハンディキャップがあるにもかかわらず、歌唱力も演奏力も衰えていない。

MTVチャートのトップヒット曲では、「もう40年近く演っているなんて信じられないよね」とマイケル。そこにはクリスチャンメタルというジャンルでの偉業を成し遂げた自信を今も感じさせる。アメリカのロサンゼルスやニューヨークといった都会でのライブとはまた違った雰囲気のオーディエンスたちもヒット曲の大合唱はどこも同じで、親子での来場者も数組見られた。



また一段と派手になったセットでのロバート・スウィート(Dr)は、変わらぬ横向き配置に背後からの送風になびくヘドバンドラミング。ドタバタにも感じる特有のノリは独特で、ほとんどMCがなく進行した休憩せずのプレイを披露。

2019年来日時には脳腫瘍からの病み上がりで多くのファンが心配をした記憶も新しいオズだが、実は今回の方がパフォーマンスが控えめに感じた部分もあった。



ステージ立ち位置がペリーと左右入れ替わっている事も耳の障害のせいなのかはわからないが、それをカバーするかのようにマイケルの気迫を物凄く感じた。当時からLAメタルムーブメントの中でもギターヒーローではないバンド。スリージーでもなく、バッドボーイズでもない、神を賛美する歌詞というジャンルを確立したメインフロントマンのマイケルを中心とした形は今なお不変である。

バンドは<MONSTERS ON THE MOUNTAIN>や<THE KISS KRUISE XI>等、複数のフェスティバル出演も含め、11月までツアーは続く。願わくば遠くないうちに日本でも再び観たいものだが。最後に、現在アメリカのライブ会場ではマスク義務が撤廃されており、思う存分に歌えるライブの楽しさを久しぶりに体感できた事もお伝えしておく。




文・写真◎Sweeet Rock / Aki

<STRYPER Calling on You Tour 2022>

2022.5.21 Destin Florida USA
1.In God We Trust
2.Revelation
3.Rock That Makes Me Roll
4.Loving You
5.More Than a Man
6.Surrender
7.Calling on You
8.Free
9.Sorry
10.Honestly
11.All for One
12.Always There for You
13.Divider
14.This I Pray
15.The Way
16.The Valley
17.YAHWEH
~Encore~
18.Soldier Under Command
19.To Hell With the Devil
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス