【ライヴレポート】L'Arc-en-Ciel、30周年の締め括りとなる東京ドームで「ここに連れてきてくれてありがとう」

ツイート

L'Arc-en-Cielが2022年5月21日(土)および22日(日)、結成30周年を祝した一連のライヴ活動のフィナーレを飾る東京ドーム2Days公演<30th L'Anniversary LIVE>を開催した。L'Arc-en-Cielが東京ドームのステージに立つのは、2018年12月のコンセプトライヴ<L'ArChristmas>以来、約3年半ぶり。

◆<30th L'Anniversary LIVE>画像

また、振り返ればアニバーサリーイヤーは先行き不透明なものでもあった。2020年1月、約8年ぶりのツアー<ARENA TOUR MMXX>が開幕するも、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる影響でツアーが中断。しかし、L'Arc-en-Cielはライヴ再開の道を模索し続け、2021年5月、再び動き始めた。30年前に初ライヴを実施した当日と、その前夜にバースデーライヴ<L'APPY BIRTHDAY!>(2021年5月29日(土)、5月30日(日)@千葉 幕張メッセ国際展示場1-3ホール)を開催。その後、9月より結成の地である大阪を皮切りとしてアリーナツアー<30th L'Anniversary TOUR>をスタートさせ、感染対策に万全を期しながら8ヵ所19公演を完走した。世界中が立ち止まることを余儀なくされたコロナ禍でも、少しずつ歩みを進め、成功例を積み重ねてきた30周年の締め括りとして実施される東京ドーム2Daysが<30th L'Anniversary LIVE>だ。彼らが繰り広げた万感のフィナーレ、5月22日のレポートをお届けする。





▲2022年5月21日(土)@東京ドーム

東京ドームのライトポールとレフトポールを結ぶように設置された巨大LEDヴィジョン。また、ステージ上を覆うLEDヴィジョンに1991年からのカウントアップが表示され、30年の歴史を紐解くように歴代アルバムジャケットやMusic Clipをコラージュした映像が映し出された。アッパーなEDMサウンドに煽られて、オーディエンスもお馴染みアイテムとなった“バットマラカスライト”を振り、それに応える。“30th L'Anniversary”という大きな文字がLEDヴィジョンに現れ、真っ白な光を放つステージから流れてきたのは、30周年の幕開けとともにリリースされたシングル「ミライ」だ。煌びやかなサウンドに乗せてhydeの澄んだ歌声が響き、そのラストでは“撃ち放つミライへ”という歌詞に合わせてhydeが矢を放つ仕草をみせると、さっそく東京ドームを祝祭感が包み込んだ。そこから“ARE YOU READY?”の文字とともにステージを覆っていたLEDヴィジョンが上方へ移動し、ステージから客席へ向かって色とりどりの銀テープが放たれると、kenの鋭いカッティングとyukihiroの跳ねるビートに乗せて「READY STEADY GO」へ。tetsuyaは花道に駆け出し、hydeが「東京! Are You Fuckin’ Ready!?」とシャウト。続く「New World」の疾走感を追い風に、会場の温度がどんどん上昇していくことが肌で感じられた。

「L'Anniversaryへようこそ! L'Arc-en-Cielです。30周年の最後を飾る場所にやってきた! まだカワイイ声が聞けないのは残念だけど、ハミングしたり、身体を使って楽しんでいってください」──hyde


▲2022年5月21日(土)@東京ドーム

バットマラカスライトの様々な色彩が揺れる会場を笑顔で見渡し、hydeが宣言。久しぶりの東京ドームにもかかわらずステージ上から和やかなムードが漂ってくるのは、東京ドーム公演2日目であることに加え、昨年のツアーの経験が大きいに違いない。L'Arc-en-Cielとして全国19公演を巡り、30周年の祝福を分かち合った4人の結束が表情と音からしっかりと伝わってくるようだ。円形センターステージスタイルだったツアーと比べれば、もちろん客席とステージの距離は遠いのだが、hydeが「遠いと思ってたけど近いね」と発言したのも素直な気持ちだろう。ドームであろうが、声が出せない状況下であろうが、“30th L'Anniversary”で培ってきたオーディエンスとの絆は強い。

その想いに応えるように、「一緒に楽園へ行きましょう。さぁ楽園はどこにあるでしょう? ここだろ!」と始まった「SEVENTH HEAVEN」から、tetsuyaのベースが牽引し、kenの16ビートカッティングが鋭く、yukihiroのビートが高揚する「Lies and Truth」へ。hydeのファルセットが美しい「瞳の住人」が序盤から5万人を感動の渦に包み込まれるなど、ツアーでは演奏されていなかったシングル曲群を次々と披露。さらに、「まだ外は明るいんですね。だけど、だんだんオトナの時間になってくるよ」というhydeの言葉に続いて、ヘヴィなリフと妖艶なサウンドで空気を塗り替えた「X X X」。そして「fate」から「finale」へ。「finale」もまたレアな1曲だ。不穏なアルペジオと重厚なストリングス、破滅的な物語を綴る歌声に圧倒され、和風ホラーテイストな映像も相まってL'Arc-en-Cielのダークサイドに心地よく飲み込まれた。その空気を浄化させるようなkenのギタープレイに続く「MY HEART DRAWS A DREAM」では5万人の美しいハミングが響き渡った。





▲2022年5月21日(土)@東京ドーム

kenが口火を切って始まったMCタイムでも、全員参加の自由な掛け合いに笑顔が溢れてアットホームな雰囲気に。エンジンの音が響き渡り、ステージ前方に火柱が上がった「Driver's High」、hydeのギターから始まる「HONEY」などのキラーチューンを次々に畳みかけた中盤では、磨き上げられたバンドサウンドで名曲たちがよりアグレッシヴに躍動しているのを実感した。hydeが花道の端の柵から身を乗り出して歌ったり、hydeとtetsuyaが肩を組んだり、パフォーマンスもいっそう熱を帯びる。また、「HONEY」で黄色、ポップな「Pretty girl」でピンク色など、曲ごとにバットマラカスライトの色を自発的に変えて盛り上げるオーディエンスの熱が加わり、広大なドーム会場とは思えないほど一体感が高まっていった。

そこに投下されたのは、L'Arc-en-Ciel屈指のドラマチックナンバー「いばらの涙」だ。ジャジーなピアノフレーズから始まったアレンジは新しく、照明とオーディエンスのライトで会場が真っ赤に染まる。炎が燃え上がるステージで絶唱するhydeの姿に息を呑んだ。さらに、kenのエモーショナルなギタープレイから繋いだ「Shout at the Devil」では黒い旗を振りかざしたhydeがセンターに君臨。繊細なファルセットと鬼気迫るシャウトを自在に使い分け、映画のワンシーンのような世界を作り上げてしまう表現力はつくづく唯一無二だ。その歌と共鳴するkenのギターはもちろん、tetsuyaのエモーショナルなベースフレーズ、タイトかつダイナミックなyukihiroのドラムも、一つ一つの音が豊かな感情を孕んでいる。演奏と歌声でここまでの情景を描くことができるL'Arc-en-Cielの凄みに酔いしれた。


▲2022年5月21日(土)@東京ドーム

インターバルでは、LEDヴィジョンにアルバム『ark』のジャケットに描かれた飛行船や宇宙を思わせる映像が映し出される。すると、実際の飛行船がドーム内に出現。バットマラカスライトの星が瞬く空間をゆったりと飛行してアリーナ後方へ着地すると、飛行船で旅してきたようにスモークの中からメンバーが姿を現すという粋な演出だ。そのままサブステージに登ったメンバーを、オーディエンスが大きな拍手で迎え入れた。

「飛行船に乗ってやって来ました。1999年のアルバム『ark』のジャケットに出てきた飛行船ですね。当時はノストラダムスの大予言とかがあって。飛行船に乗って脱出しようという計画がL'Arc-en-Cielにはありました。それから20数年経って完成しました」──hyde

小さな円形サブステージに4人が着席。hydeが「(バットマラカスライトの色を)水色にしましょう」と提案した青い光の中で、ジャジーな「Singin' in the Rain」を披露。一転して、「赤とオレンジで」と告げての「LOST HEAVEN」では情熱的なムードに。メンバーが肩を寄せ合うような近い距離感ならではの音のやりとりを楽しんでいるような雰囲気が心地よい。サブステージでの3曲目は、hydeがスマホライトを光らせることをオーディエンスに促し、今度は真っ白な光に埋め尽くされた会場。その光景を見渡して、「いろいろと物騒なことになっちゃってますが、こんな綺麗な景色があるのにね」とつぶやくhyde。世界の情勢に想いを馳せつつ「平和を願って」と珠玉のバラード「星空」を届けた。優しい歌声にkenのエレアコによるアルペジオが寄り添い、祈りのメロディのもとで5万人の心がひとつになるのを感じた。


▲2022年5月22日(日)@東京ドーム

飛行船が再びメンバーを乗せて飛び立ち、LEDヴィジョンに『WAVE GAME』の文字が映し出された。これは、お馴染みのウェーヴをゲーム形式で行うというもの。ウェーヴ先導する映像がLEDヴィジョンに流れ、虹色に彩られた人の波がドームの客席に生み出された。インターバルでもこうした遊び心を見せてくるのがL'Arc-en-Cielらしい。

LEDヴィジョンに最新のバンドロゴが表示され、30周年第二弾シングル「FOREVER」から終盤戦へ突入。放たれるサウンドがどこまでも加速していく。その後、虹色の照明からLEDヴィジョンがゴシックな背景を映し出して始まったのは、音源未収録だった長い期間を経て『DUNE 10th Anniversary Edition』で初リリースとなった初期ナンバー「予感」だ。LEDヴィジョンの最新ロゴが初期の書体のロゴへ切り替わるという演出が、2つの曲をより対照的に浮かび上げる。そして印象的なカッティングリフとリズムのキメで始まったレア曲「予感」だが、令和の時代にドームで甦るとは、まさにサプライズと言っていいだろう。緻密なアレンジと耽美な世界観の美しさが今なお色褪せず心に染み渡る。結成当初から確立していたこの独創性と完成度を礎に、30年の歩みが積み重なっていったのだと感じずにはいられないワンシーンとなった。





▲2022年5月22日(日)@東京ドーム

<30th L'Anniversary LIVE>はいよいよ佳境へ。「予感」のアウトロを妖艶なギターソロが彩り、「Blurry Eyes」のイントロへ──と思いきや突然演奏が停止した。どうやらドラムのフィルインにトラブルが生じたようで、ドラムスローンから立ち上がって何度も謝罪するyukihiro、というある意味貴重なシーンに喝采を送るオーディエンス。ハプニングを笑顔で仕切り直して始まった間奏のブレイクでは、tetsuyaが「やっほー! お元気?」と語りかけてお馴染みのMCのコーナーへ。『WAVE GAME』にて虹色に敷き詰められた客席のバットマラカスライトの美しさを称賛し、それを先導する映像を作り上げたスタッフの労をねぎらった。

「L'Arc-en-Cielってフランス語で虹っていう意味でしょ。こういうカラフルなことができるバンド名をつけてよかった。30年も愛され続けるバンドになれて嬉しい。一回しか言わないから聞いて。ラルクを好きになってくれてありがとー!」──tetsuya

と、創始者だからこその言葉でバンドへの愛情を滲ませ、MCを笑顔で締め括って「Blurry Eyes」を再開させ、ポジティヴな勢いに乗せて「GOOD LUCK MY WAY」になだれ込む。“追い風に煽られ 新しい旅が始まる いつかまた会えるよう 振り返らずに明日へ向かうよ”という歌詞に導かれ、残された時間を惜しむように熱狂は頂点を迎えた。





▲2022年5月22日(日)@東京ドーム

「すごくいい眺めです。これはただの光じゃなくて、ひとつひとつに背景があって、ここに辿り着いた。そしてそれぞれの光がまた帰って行く。胸に刺さるというか嬉しいです。30年、いろいろな出来事がありまして。ここまで来るのは奇跡的で、いろいろなものを重ねて、いろいろな人の力を借りながら、努力して、そしてみんながいたから辿り着くことができました。僕も大きなステージで声が出ないときもあったし、最近だとtetsuyaさんがステージから落ちたこともありましたし、kenさんは銀テープに撃たれたこともありました。そして、yukihiroさんも(「Blurry Eyes」をさして)間違えることもあるんですね(笑)。30年やってこなければ見られませんでしたからね。つらいときにやめていたら、悲しい記憶だけ、悔しい記憶だけが残るかもしれませんけど、乗り越えたから、こういう素敵な景色が待ってたんだと思います。ここまで来れたのは、みんながいてくれたから、支えてくれたからだと思います。ここに連れてきてくれてありがとうございます」──hyde

hydeが感謝を告げ、「30周年、1年かけてライヴを続けてきましたが、世界的にも大変な時期と重なってしまって。僕らもみんなも大変だったと思うんですけど、“虹”っていうのは雨が止む時にできるんですよ」と未来への希望を込めて、ラストナンバーの「虹」へ。バンドの歴史の節目を彩ってきた名曲が、今いちばん力強い音と確信を持って響き渡った。その最後にはステージ上から白い羽根が降り注ぎ、会場を虹色の照明が染め上げた。



▲2022年5月22日(日)@東京ドーム

何度も投げキスを贈り、「また会える日までみんな元気ですごしてください。次は一緒に歌おうね!」とhyde。tetsuyaはセルフィーを持って花道を駆け抜け、「まったねー!!」と手を振る。降り注ぐ白い羽根と5万人が灯す虹色のライトが30周年の完走を讃えると同時に、ステージには希望がたしかに輝いていたようだ。

取材・文◎後藤寛子
撮影◎Takayuki Okada/Toshikazu Oguruma/HIdeaki Imamoto/Yuki Kawamoto/Hiroaki Ishikawa

■<L'Arc-en-Ciel「30th L'Anniversary LIVE」>2022年5月22日(日)@東京ドーム SETLIST

01. ミライ
02. READY STEADY GO
03. New World
04. SEVENTH HEAVEN
05. Lies and Truth
06. 瞳の住人
07. X X X
08. fate
09. finale
10. MY HEART DRAWS A DREAM
11. Driver's High
12. Pretty girl
13. STAY AWAY
14. HONEY
15. いばらの涙
16. Shout at the Devil
17. Singin' in the Rain
18. LOST HEAVEN
19. 星空
20. FOREVER
21. 予感
22. Blurry Eyes
23. GOOD LUCK MY WAY
24. 虹

この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス