【ライブレポート】新生defspiral、「まだ見ぬ物語をこれからも紡いでいきましょう!」

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3人体制のdefspiralが初めて迎える周年ライヴ<defspiral 12th Annivrsary live “DEAR FREAKS”>。これまでの周年ライヴでは交流のあるミュージシャンをゲストに迎えたり、生の弦楽器や鍵盤を加えた編成で魅せたりと、趣向を凝らした演出で華やかなステージを披露してきた。ただ、今回の周年ライヴに関しては特筆するような事前アナウンスもなければ、ライヴタイトルもファンの呼称、“Freaks”を引用した極めてシンプルなもの。そのあまりにもストレートすぎるネーミングゆえ、裏をかいてくるのでは?と勘ぐってしまう。defspiralの周年ライヴに何もトピックがないはずはない、と。

◆ライブ写真

ライヴは「DIVE INTO THE MIRROR」から。ちょうど12年前の同日(正確には5月26日)、この曲でdefspiralはスタートした。あらためてここで彼らの歴史をひもとけば、TRANSTIC NERVEからthe Underneathと名前を変え活動した後に一度、解散している。長年、不動のメンバーで波風立てず活動してきたようなイメージはあるものの、実は彼らの活動の歴史には空白の時間があるのだ。

しかし、そんな彼らにチャンスが舞い降りる。“『仮面ライダードラゴンナイト』主題歌を作ってくれないか? もちろん、キミらならバンドやってくれるよね?”と。それがきっかけとなり4人でスタートしたのがdefspiralなのだ。

それから10年活動したタイミングでドラムのMASAKIが脱退──そんな経緯があるだけに、バンド始動日の今夜、3人でdefspiralの原点であるこの曲が演奏されることに一抹の寂しさがないと言えば嘘になってしまう。それでも、音と真っ正面から向き合い、目の前のオーディエンス、画面の向こう側のファンに伝えようとする姿は、それまで同様、強く美しく目に映り、彼らが放つ音楽に込められたエネルギーが我々が抱くよからぬ感情を払拭してくれる。続いて「READY OR NOT」「トワイライト」と間髪入れずに演奏。この時点で、年代順に演奏されていることに気づいた人も少なからずいただろう。


「ようこそ! 会いたかったぜ、Freaks! 思いのままに楽しんで帰ってください。楽しんでいきましょう! さあ、頭空っぽにして、裸になっていつもの調子で見せてください!」──TAKA(Vo)

そんな前ふりから始まった「MASQUERADE」。メロディーの合間にフェイクをいれて会場を煽り、MASATO(G)もRYO(B)も生でコーラスをとる。昨今では多くのバンドがコーラスも同期に頼りがちだが、可能な限り生で唄うことで演奏がよりみずみずしいものとなっていることはいうまでもない。MASATOのギターソロに、リズミカルに甘い吐息を添え、1つ1つの歌詞に沿った仕草と目線で表現するTAKA。指先まで神経を行き届かせた所作の美しさは観る者を心酔させるには十分だ。

“運命は無情に また同じ時代 生きた友を連れ去っていくよ”というフレーズから始まる「GLARE」。もう何年も前に作られたこの楽曲の歌詞が、defspiralの心情とも重なっているように思えて時に心が痛くなるものの、彼らの楽曲は決して悲しいだけでは終わることなく、視線は必ず前を向いているから救われるのだろう。「Voyage」の力強い唄と変拍子を取り入れたウネリのあるサウンドは、運命の荒波の中も力強く突き進むdefspiralというバンドの生き様そのものといっていい。

「ようこそ。今夜、親愛なるFreaksに向けてのFreaksのためのライヴです。もう長い間、Freaksをやってる人も、今日からFreaksっていう人も楽しんでいきましょう。もっともっとたくさん感じ合っていきましょう。味わい尽くしていきましょう」──TAKA


流れるような同期のイントロから重々しい楽器陣の音が加わり、ドラマティックに楽曲が展開する「DREAM OF YOU」へ。情感溢れるTAKAの唄が観る人の心に響く。箇所箇所でMASATO、RYOが交互にコーラスをとる「SILVER ARROW」では、Freaksへ向けて放たれた矢のごとく真っ直ぐに伝える。あらためて歌詞に注意を払えば、そこにあるのは男気ある熱き想いが満ち満ちていることに気づく。また、「ESTRELLA」のサウンドが表すような、すべてのものを柔らかく包み込むような寛大さも。

「今夜はスペシャルな夜なので、たくさん演奏しますよ。どうぞ楽しんで」──TAKA

目の前のオーディエンス、配信を観ている人に静かなトーンの語りから始めたのは「GHOST」。ダークな部分が際立つこの曲では、TAKAの指先まで神経の行き届いたしなやかな動き、溜息交じりの最後の歌詞でファンを心酔させる。テンポを上げた「PLUSE」でTAKAが唄に合わせて上着をはだけて肩を見せたりしてオーディエンスを挑発すれば、観ている我々のPLUSE(=脈)も一気に爆上がり。

「PHANTOM」を挟んで演奏された「GALAXY」の歌詞にある“ありがとう”は唄ではなく言葉として発しているかのようで心に刺さる。1年前、悲しみに打ちひしがれ、喪失感にさいなまれたメンバー、そしてFreaks。それだけに“このまま時よ止まれ”という歌詞の1節は涙を誘ったが、あれから1年、メンバーは次へと1歩、歩み出せてることは演奏から痛いほど伝わってきた。


“あれは幻、あれは悪い夢”そんなことを言っている「STARDUST」の歌詞も、まるで自分に言い聞かせているかのよう。こうして何年も前の曲が今のdefspiralの心情にもマッチしているように感じられるのは、広く解釈できる歌詞というのもひとつにあるが、今のTAKA、今のMASATO、今のRYOの想いが音に乗って伝わってくるからに他ならない。つまり、それこそがTAKAがよく言う“今を感じ合う”ということなのかもしれない。

「HYSTERIA」では異常なまでの興奮状態を剥き出しにし、「HALO」では穏やかに愛情で包み込み、「IRIS」ではダンサブルなビートで同じ空間を楽しむ喜びを存分に放つメンバー。既存の曲を並べてステージで新たなストーリーを紡ぎ出すことを得意とするdefspiralにしては珍しく、今夜の曲順はテンション感の上げ下げが激しい並びだと思いつつ観ていたが、本編が終了した時点でやはり時系列に沿ったセットリストであると確信。と同時に、もしかしたら4人で歩んできたdefspiralの歴史、作り上げてきた音楽に対する敬意を表すため?という考えが頭を過る。


声なき手拍子のみのアンコールを求めるオーディエンスの声なき声に応え、再びメンバー登場。

「アンコールありがとうございます。声のないアンコールも慣れてきたというか。待っていてくれるみんなの想いは伝わっていてます。12周年のワンマン・ライヴ…あ、彼の紹介を忘れてました。サポート・ドラムの和樹です。本来なら和樹コールの1つや2つ、飛んでるはずですね。12周年ライヴということで皆さん気づいてるかもしれないですけど、12年の歴史を辿るライヴでした。頭のSEもね?」──TAKA

「そう。あれは1stライヴのSEなんですよ。それに、これまでのライヴのSEをコラージュしたものなんですね」──RYO

「そういう意味合いのライヴということで、アイディアを投げたら想像を超えるものを作り上げてくれてね。マジで鳥肌が立った。いろいろ思い出すね…1年前、“あんなこと”がありまして、そこから1年間、3人で歩んできましたけれど。今日、新しいメンバーを迎えいれたいと思います。紹介しましょう、新しいドラムの和樹です」──TAKA

その瞬間、すくっと立ち上がるドラムの和樹。と同時に会場からワーッと心の声がうっすら湧き上がる(声出しNGだが、反射的なもので致し方ない)。

「みんなにも、いろんなところで観てもらえたと思うしね。半年という期間でしたが濃密な期間を過ごす中で、ドラムももちろんですけど、人間も素晴らしい男だなと思って迎え入れることにしました。あらためて紹介しましょう、ON Drums、和樹!」──TAKA


会場からは割れんばかりの拍手が沸き起こる。

「今日からdefspiralのメンバーになりましたドラムの和樹です。これからは4人で1つとなって頑張っていきますので、皆様、応援よろしくお願いいたします」──和樹

「みんなも知ってのとおり、defspiralは12周年とはいえ、私とMASATOとRYOはバンドを組んで26年。この長いバンド人生でも、新しいメンバーを迎え入れるというのは初めてでね。まだ不思議な気持ちがあります。きっと、みんなはもっとあるかもしれませんけど、これからもステージを重ねて、いろんな音楽を作ることが、バンドの血となり肉となり骨となり、より強いバンドになれると思ってますので。よろしくお願いします。新生・defspiralです!」──TAKA

「本当にメンバー・チェンジなしで長いことやってきたんで、このバンドに入ってくれる人なんて果たしているのかな?と思っていたら…いましたね。defspiralのドラムが彼で間違えてないってことを、これから音とパフォーマンスで証明してくれると思うので。彼に期待してます」──MASATO

それに引き続き、和樹が加入するに至った経緯を包み隠さずRYOが語る。和樹がRYOにdefspiralのドラマーに立候補してもいいですか?とRYOに連絡してきたこと、町のスタジオで初めて一緒に音を出した時のこと、正式にdefspiralから結論を伝えるまでの半年の間、和樹から2週間に1度くらい“僕はどうしたらいいですか?”と心配そうに連絡があったこと、などなど。


「彼に感化されて今、新しくバンドをやり始めるワクワク感がありまして。彼に可能性を感じています。胸を張って新しいdefspiralのドラムですって紹介できる日が今日でよかった。なので、来月から始まるツアーはこの4人でdefspiralを魅せていこうと思います」──RYO

そう語るRYO、そして背後に控える和樹の目が心なしか潤んでいるようにも見える。話の切れ目で会場から沸き起こる拍手。Freaksも大歓迎しているのは間違いなさそう。


「これからの4人に期待してください。皆さん、これからも一緒に夢を観ましょう。まだ見ぬ物語をこれからも紡いでいきましょう! 俺たちの未来へ受けて!」──TAKA

新しい血が入った新生・defspiralの一発目の曲は「AURORA」。ちょっと前と同じメンツ、同じステージのはずなのに、TAKA、MASATO、RYOを支える和樹のドラムが一段と活き活きと力強く感じられるのは気のせいではないだろう。サポートとメンバーという立ち位置の違い、意識の変化は一打一打の音に現れ、これまで幾度となく観ているはずの楽曲が1トーンも2トーンも明るく輝く。続く「LOTUS」の演奏では、ビートに合わせて飛び跳ねるFreaksたちの満開の笑顔がフロアに咲き乱れた。そして、ダブルアンコールの「CARNAVAL」は文字通り、陽気なお祭り騒ぎのまま大団円に終わった。


このハッピーな空気を携え、新しい命が吹き込まれたdefspiralは新生・defspiralとして、6月5日からスタートする<TOUR 2022 "ALTER VISION">で全国を飛び回る。今さら和樹の加入に異を唱える人はいないだろう。2021年12月のMASATOバースデーからdefspiralのライヴにサポートで参加し、去る5月2日、YOSHIKIも急遽出演したhideトリビュートライブ<hide Memorial Day 2022 Sing along Live "Hi-Ho!”>でPATA(X JAPAN、Ra:IN)、J(LUNA SEA)、綾小路翔(氣志團)、松岡充(SOPHIA)、柩(NIGHTMARE)、GRANRODEO、JUON、The Brow Beat、木村世治(ZEPPET STORE)、CUTT(SPEED OF LIGHTS/shame)…など名だたるアーティストらを迎え入れるバックバンドという重責をもdefspiralのサポートという立ち位置でまっとうしたのだから。

新生・defspiralとして輝きだした彼らの未来。だからといって、これまで12年間の活動をないがしろにしてはいないことは、今夜のバンドの歩みをなぞるセットリストが示すとおりだ。過去も大切にしつつ、これから4人で未来を歩んで行く。確固たる決意の元、新生・defspiralの歴史は今、動き出した。

文◎増渕 公子[333music]
写真◎堅田ひとみ[株式会社LINKSOLU(リンクソルウ)]

<TOUR 2022 "ALTER VISION">

2022年6月05日(日) 柏ThumbUp 開場17:00/開演17:306月11日(土) 仙台spaceZero 開場17:00/開演17:306月24日(金) 川崎Serbian Night 開場18:30/開演19:006月25日(土) 西川口Hearts開場17:00/開演17:307月02日(土) 名古屋ell.FITS ALL 開場17:00/開演17:307月03日(日) 静岡Sunash 開場17:00/開演17:307月17日(日) 姫路Bata 開場17:00/開演17:307月18日(月祝) OSAKA RUIDO 開場17:00/開演17:30上記公演 全自由6,500円(税込/D別)
TOUR FINAL7月26日(火)Spotify O-WEST開場18:30/開演19:00全自由7,000円(税込/D別)先行受付は6月中旬頃実施予定

[問]サイレン・エンタープライズ03-3447-8822

◆defspiral オフィシャルサイト
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