【体験入学レポ】アラ還世代も大興奮、音楽好きがドはまりするDJの魅力

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東京・渋谷に居を構えるOTAIRECORD MUSIC SCHOOL(オタイレコードミュージックスクール)は、“DJを勉強する。”を掲げて、DJの育成に特化した音楽スクールだ。同校では、DJに興味のある人を対象とした無料の「体験入学」を実施している。ということで、今回は、JMN統括編集長の烏丸哲也(からすまるてつや)が実際に体験してみることに。音楽は大好きなものの、世代的にDJカルチャーには触れてこなかった彼だが、「今日からDJカラスを名乗ります!」と興味津々の様子。果たして、90分の体験入学で、見事DJカラスになれるのか?

■DJって、アナログ盤を
■“キュッキュッ”やるんじゃないんですね……


烏丸を出迎えてくれたのは、講師を務めるDJ REN氏。渋谷宇田川町にあるレコードショップの元バイヤーならではの豊富な知識から生まれる選曲を主軸に、スクラッチ、2枚使い、ビートジャグリングなどのギミックを織り交ぜるプレイスタイルに定評のあるDJであり、RedBull Thre3Style 2014 JAPAN CHAMPION、WORLD FINALIST AZERBAIJANなど輝かしいタイトルを保持するバトルDJでもある。

▲JMN統括編集長・烏丸哲也

そんなDJ RENに挨拶もそこそこに烏丸が話を切り出す。

「僕の世代の生徒さんって、いますか?」。

烏丸は音楽を愛し、プロのギタリストとしても生らしてきた“アラ還世代”の音楽通なのだ。

「40代〜50代の生徒もいますよ。でも、烏丸さんが最高齢かもしれません。ただ、その世代の方は音楽が好きな人が多いですよね。DJも体験してみたら、きっと興味を持っていただけると思います」。

そんな先生の言葉を聞いて、がぜんやる気を漲らせる烏丸。すると、バッグから何やら取り出して……。

「どうせなら自分の好きな曲でDJをやりたいと思って、アナログ盤を持ってきました」と、ロッククラシックの名盤を数枚開帳。しかしながら、先生は困惑気味の様子。

「実は、体験入学ではアナログ盤は使わないんですよ」。

▲DJ REN

近年のクラブDJでは、ミキサーとPCをつなぎ、ターンテーブルにはコントロールバイナルと呼ばれる専用ディスク(見た目はアナログ盤にそっくり)を置いてDJプレイを行うのが主流なのだそう。細かい解説は省くが、これを使うとPC内のデジタル音源をアナログレコード同様に操ることができるのだ。

「DJって、アナログ盤を“キュッキュッ”やるんじゃないんですね…」と烏丸は驚き顔。

「アナログ盤は持ち運べる数に限界がありますが、これなら何万曲も持ち運べます。それに貴重なアナログ盤に傷をつけることありませんよ」。

ちなみに、現在もアナログ盤でプレイするDJも多く、その場合は同じレコードを複数枚所有するのが定番なのだとか。


さて、前置きが長くなったが、いよいよ体験レッスンがスタート。「今日は3つのことに挑戦してもらいます」と先生から体験レッスンの課題が告げられる。

1.レコードを実際にかけてみる
2.DJ MIXにトライ
3.スクラッチにトライ

アナログ世代の烏丸は「レコードをかけてみる」はもちろん難なくクリア。続いて、DJ MIXに挑戦してみることに。


まずは、実技に入る前に座学。DJとはクラブなどのフロアを盛り上げるのが役割で、そのためには音楽を止めてはいけないことや、音楽を止めずに流し続けるためにDJ MIXという手法を用いること、そして、DJ MIXを行うためには、つなぐ2つの曲のBPM(編註:「Beats Per Minute」の略で1分間の拍数を表すテンポのこと)を合わせることが大前提(BPMが違う曲をつなぐと、客は違和感を覚えて動きが止まってしまうのだそう)。さらに、曲の構成を把握しておくことが必要になることなどが説明された。

「AとBの2曲をつなげるときに、まずは2つの曲のテンポを合わせます。そして、例えば、Aのサビの終わりでBが歌い出すようにつなぎたい場合、Aのサビの終わり8小節と、Bのイントロ8小節をMIX=同時に流すわけです。これがDJ MIXです」。

このあたりの解説は、さすがにミュージシャンとして生らす烏丸だけに飲み込みも早い様子。さらには「DJミキサーを使ってBPMを揃えるとわけですよね? そうすると曲のキーが変わってしまいますよね?」と疑問をぶつけていく。

「PC上でBPMを上げてもキーは変わらないようにできるんですよ」と、これまたテクノロジーの進歩が問題を解決していることを知らされ、三度、驚き顔の烏丸であった。

▲DJソフトウエアのSerato DJ Pro



■音楽が好きなら、絶対、DJを体験してみるべき。
■ほんとにすごく楽しい。

さて、いよいよ実践へ。「AC/DCのTシャツを着ているので、AC/DCの曲を使いましょう」と、AC/DCの代表曲「バック・イン・ブラック」を例題として使うことに。PCでそのBPMを調べると93だったので、同じくBPM93の曲をPCで検索。先生はいろいろな曲を探し出しては、試しにMIXしてみるのだが、これが意外とうまくいかない。

「クラシックロックは基本的に生演奏なので、リズムが揺れるんですよね。MIXのときはキックとスネアが合うようにするんですけど、どうしてもそれがズレてしまうんです」。

なるほど、そのリズムの揺れがロックの味だったりするのだが、DJの基礎を学ぶにはあまり向いていないようだ。少々の試行錯誤があり、結局、DJ用にBPMがクオンタイズされたバージョンのクイーン「ウィ・ウィル・ロック・ユー」とグリーンデイの「ホェン・アイ・カム・アラウンド」をチョイス。この2曲で、烏丸がDJ MIXに挑戦することとなった。「ホェン・アイ・カム・アラウンド」のサビ終わりに、「ウィ・ウィル・ロック・ユー」のバースがつながるようにDJ MIXを行うことが今回のミッションだ。

ちなみに、実際の授業では、2つの曲のBPMを、耳で聴いて合わせる練習からスタートするそうだが、マスターするのに時間がかかるため、「体験レッスン」ではBPMが近い曲を使って行っているそうだ。確かに、聴いただけでその曲のBPMを把握し、さらには2つの曲のBPMを揃えていくというのは、なかなか難しそうである。

ターンテーブルやDJミキサー、そしてコントロールバイナルの使い方を、先生が実演しながらレクチャーしていく。そして、サビの終わりとバースの始まりを合わせるときに、必要になるのがベイビースクラッチと呼ばれるテクニック。ついにスクラッチの登場である。

「曲のアタマの部分を合わせるために細かいスクラッチを入れて調整するんです」。

DJ REN先生はレコードの動かし方など、ベイビースクラッチの基本テクニックをていねいに指導していく。最初はおっかなびっくりコントロールバイナルを扱っていた烏丸だが、曲のBPMに合わせてスクラッチする練習を繰り返すうちに、コツをつかんだ様子。なんと、あっという間に習得してしまった。


「うまい!うまい!やっぱり楽器をやっているだけあって、センスがいいですね。いきなり出来る人、あまりいないですよ」と先生からも称賛の声が上がった。その言葉に乗せられながら、スクラッチを繰り返す烏丸は楽しそうな表情で、「これは面白い」を連発。「音楽が好きなら、絶対、DJを体験してみるべき。ほんとにすごく楽しい」とDJの魅力に引き込まれたようだった。

これにて90分におよぶ「体験入学」は無事終了。しかし、烏丸の興味は尽きないようで、終わってからも先生に次々と質問を投げかける。

▲ベイビースクラッチに挑戦!

烏丸:DJ MIXはどのくらいの時間でつなげていくものなんですか?

DJ REN:音楽のジャンルによりますね。ハウスなどの4つ打ち系の音楽だと、1分くらいずっとMIXしていることもあります。

烏丸:今回は2つの曲のBPMを揃えてMIXしましたけど、まったくBPMが違う曲をつなげることもありますか?

DJ REN:カットインですね。そういうテクニックもありますよ。でも、BPMが違い過ぎる曲はMIXしないのが基本。自分の場合は、お客さんの反応を見てDJをしているので、あまり盛り上がっていないときに、カットインしてまったく違うBPMの曲をかけることもあります。

烏丸:場の雰囲気を一気に変えるんですね。

DJ REN:そうです。やっぱりDJはお客さんに楽しんでもらうためにいるので、例えば、今日は海外のお客さんが多いから、ヒップホップとロックをかけようとか、そういうことは考えていますね。それに、お客さんはDJのテクニックなんて気にしていないんですよ。あくまでも音楽を楽しみに来ているので、あまり尖ったつなぎはしないようにしています。

烏丸:DJを教えるときに、心がけていることはありますか?

DJ REN:ここに通っている生徒は、DJ MIXできれいに曲をつなげたいと思っている人が多いんです。やっぱり曲をつなげていくことがDJの醍醐味ですからね。なので、きれいにつなげられるようにしてあげたいなと。僕に習ったのに、“MIXが汚いね”って言われてしまうのは、僕も嫌ですから(笑)。

烏丸:DJは、普段から音楽をたくさん聴いて、この曲はこういうときに使えそうだなとか、あの曲とつなげたら良さそうだなと研究しているんですか?

DJ REN:そうですね。あとは経験値ですね。海外の方だとこういう曲が盛り上がるとか、日本人だとこういう感じとか、現場でそういう反応を体験して、それを次に生かしていく。そうやってDJとしてのスキルが上がっていくんだと思います。

烏丸:アマチュアバンドの場合は、まずはライブハウスでライブをやるという感じで始めますけど、DJの場合は?

DJ REN:僕は、学生のときに近所のバーに機材を持ち込んでやらせてもらっていました。ライブハウスを借りて友達とイベントをやったり、そんなふうにDJできる場所を開拓していきましたね。最近はインターネット上で発表する人もいます。ロックDJだと、ライブの転換時にプレイすることが多いかな。

烏丸:テクニックはもちろん、どの曲をつなぐかというセンスや、カットインの使い方など、さまざまな要素があると思いますけど、理想のDJというのはどういうものですか?

DJ REN:人それぞれなんですけど、やっていて思うのは、場の雰囲気を作れる、フロアメイクできるのが良いDJではないかと。いろいろな音楽ジャンルに対応できて、人種、世代、性別を超えてどんなお客さんでも楽しませることができる。それが理想です。プラス、そこにスクラッチとかギミックが加わると自分のやれることの幅が広がるので、さらに楽しくなりますよね。

アラ還世代をも虜にしてしまうDJ。興味がある人は、一度、体験入学を受講してみてはいかがだろうか。自身の音楽生活に新たなる楽しみがみつかるはずだ。


OTAIRECORD MUSIC SCHOOL"ISM"

〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-16-1 福よしビル2F
Tel: 0568-48-1610
(OTAIRECORD HEAD OFFICE。11:00-16:00、水木以外)

◆OTAIRECORD MUSIC SCHOOL"ISM" オフィシャルサイト
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