【インタビュー】Kaya、性別やジャンルの壁を飛び越えてきた歴史そのままを表現したアルバム『ROSE』

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ソロ活動15周年を迎えたKayaが、アルバム『ROSE』を完成させた。オリジナル・アルバムとしては8年半ぶりとなる本作には、Kayaが敬愛するアーティストや親交の深い盟友達が一挙集結し、楽曲を提供。デカダンなEDMからゴシックなダンスチューンといったKayaの真骨頂とも言えるものから、ロック、メタル、歌謡曲、シャンソンなど、バラエティに富んだサウンドが納められた1枚は、性別やジャンルの壁を、歌とドレスであざやかに飛び越えてきた、Kayaというシンガーの歴史そのままを表現したものといえるだろう。本作のリリースを記念して、タイトル曲の「ROSE」と「Pray」の2曲を制作したシンガーソングライター、天野月との対談を実施。お互いの性格や制作スタンスなど、とにかく“真逆”なことが多いと語る2人に、制作エピソードをじっくりと聞いた。

■人が作ったものを自分のカラーでどう歌うかというのが楽しくて
■作詞ももちろん好きなんですが、そこまでこだわりがないというか


──アルバム『ROSE』のお話に行く前に、まずはお2人の関係性についてお聞きしたいです。Kayaさんが発表されたカバーアルバム『DRESS』には、天野月さんの「鮫」が収録されていましたけども、以前より敬愛されていた、と。

Kaya:はい。もう大好きで、CDが出たら買って聴かせていただいて。『DRESS』では、私が影響を受けた歌姫、女性シンガーの方々の楽曲をカバーさせていただいたのですが、天野さんの曲は絶対に入れたいと思っていました。そのカバーからご縁が繋がって、ライヴに呼んでいただいたりして。コロナ禍になってからは、私がツイキャスでお家からおしゃべりを配信しているときに、コメントしてくださったりとか。

──天野さん、コメントされてたんですね。

天野月(以下、天野):フツーにしていましたね(笑)。

Kaya:「どうもー」みたいな感じで。もうびっくりして、座っていたソファから飛び上がって“ギャー!”って。ファンの子達も大騒ぎになって。

──なりますよね(笑)。天野さんのどういったところに魅力を感じていました?

Kaya:もう本当に唯一無二の方で。メロディも歌詞もサウンド面も全部好きですし、特に歌詞に関してはすごく影響を受けています。研ぎ澄まされた素晴らしい言葉が多いですし、私には思い付かないような言葉の使い方や観点から描かれるので、どういう視点からこんな言葉が生み出されるんだろうと思って。実際にお会いして、いろいろなことをお話しするようになってから分かったんですが、結構真逆なところがたくさんあったんです。だから自分には思いつかないような言葉がたくさんあるのかなと思いました。


▲天野月

──なるほど。天野さんとしては、Kayaさんからカバーのお話が来たときにどう思われましたか?

天野:Kayaさんは、自分の曲をカバーをしてくださった初めての方だったんですよ。もうひとかたいらっしゃるんですけど、Kayaさんのほうが先だったんです。

Kaya:そうだったんですね! やった!

天野:お会いする前にMVを拝見したりして、男性なのか女性なのかわからないところもいいなと思いましたし、カバーアルバムのラインナップを見たときに驚いたというか、この中に私がいるのは大丈夫なのか!?と思って(笑)。歌っていただけたことがすごく光栄でしたし、ありがとうございます、と。そこからお互いのライヴを観たこともあったんですが、その半年後にはコロナ禍が始まってしまったので、ツイキャスをしたり配信ライヴをするようになったりしたのを観ていたという感じでしたね。あとは、こういうときってどうやるんですか?って質問したりとか。

Kaya:お互いに情報を共有しあったりして。

天野:私は私で、所属事務所から独立したんですが、Kayaさんは自分でずっと切り盛りされているじゃないですか。だから、同じように長い間活動してきて、自分で切り盛りしている先輩でもあるんですよ(笑)。女性アーティストで、自分で全部切り盛りしている人ってほとんどいないんですよね。どこかに所属していたり、事務所は自分で設立するけどスタッフがいたりすることが多くて。でも、私の場合そうではないので「ちょっと教えてください!」みたいな(笑)。それも含めて、Kayaさんのツイキャスを、研究がてら拝見させていただいていた感じだったんです。

──それでコメントも残していたと。

天野:今回のことも、配信中に「何かコラボしませんか?」って私のほうから持ちかけたんですよ。

Kaya:そうなんです。ずっと憧れていましたし、ソロになって今年で16年なんですけど、始めた頃から友達に「いつか天野さんに曲を書いてもらうんだ」ってずっと言ってたんです。だから、ついに念願が叶いました。

──しかも、ご本人から話があったという。

Kaya:はい。ファンの子達にも「みんな、証人になってね!」って。スクショしとこみたいな(笑)。

──証拠を残すために(笑)。

Kaya:最初は配信を賑やかすために言ってくださったのかなと思ったんですけど、その後すぐに連絡をくださって。

天野:ファンの人の前で言って、既成事実を作っちゃうというか。逃がさないぞって(笑)。

Kaya:ははははは(笑)。そこからトントンと進んで、今回のアルバムに繋がった感じでした。

──先ほど、お2人は真逆だというお話がありましたけど。

天野:結構違うと思います。Kayaさんと直でやりとりをするようになったり、書かれている歌詞や歌っている姿を見ていて、とても主観を大事にされている方だなと思ったんですよね。歌詞も、自分の感情を掘り起こして、「このときはこんな感情だったかしら」と、言葉に置き換えていらっしゃる感じを受けたんですけど、自分はそのタイプではないんですよ。こういう作品で、この言葉は届くだろうか、届くとしたらどう届くのかというのを、すごく俯瞰で見ている自分と、そこに主観を織り交ぜようとしている自分がせめぎ合いながら作っているので。だから、これだけ違うと、一緒に何かをしたらおもしろいかもしれないと思ったんですよね。歌を歌うことで表現されるのがKayaさんの人生なのだとしたら、私の人生はものを作ることに重きがあったので、餅は餅屋じゃないですけど(笑)。

Kaya:私は作るということにまったく興味がないんですよ。それもあって、この10年ぐらいシャンソンを歌っているんですけど、人が作ったものを自分のカラーでどう歌うかというのが楽しくて。作詞ももちろん好きなんですが、そこまでこだわりがないというか。

天野:歌うためのアイテムのひとつが歌詞なんですよね、きっと。

Kaya:そうです。だから、歌詞を書くにしても、実体験じゃないと私は歌えなくて。

天野:気持ちが入らないから。

Kaya:はい。人の曲を歌うのも好きなんですけど、自分が感じたことのない言葉は歌えないんです。だから、歌詞は完全に主観。逆に、ライヴの最中は客観的なんですよね。こういうふうに見られているなとか、ここの空間が空いているからこっちに手を伸ばそうとか。

天野:あ、そこは逆ですね。私、ライヴはめちゃくちゃ主観なんですよ(笑)。ここだけは曝け出します!っていう感じなので。


──本当に違いますね(笑)。今回リリースされたアルバム『ROSE』で、天野さんは「Pray」と「ROSE」の2曲を作曲されていますけども、歌詞はお2人の共作になってますね。

Kaya:「Pray」に関しては、実は1年近くかかってしまったんです。たぶん、いま思うと、コロナ禍の見えないダメージといいますか。歌も配信で一応歌えたりはしていたんですけど、なんかこう……あったんでしょうね。せっかく素敵な曲をいただいたのに、言葉がまったく生まれてこず、ひたすら曲を聴いて過ごす日々を送っていて。いざ作り始めてからも、ここはちょっと違うんじゃないかというやり取りをメールでしたり。

天野:これまでも何曲か楽曲を提供しているんですけど、「歌詞を入れるのがすごく難しい」といつも言われていて(苦笑)。クセがあるんですよね。自分の中には、ここにこういう歌詞をはめると、この音が引き立つみたいなノウハウがあるんですけど、「ここは5文字、ここは7文字」という指定はしないじゃないですか。それを言ってしまうのもナンセンスだし、どう感じたかを書いて欲しいなといつも思っているんですが、これだととっ散らかってしまうかもと思うことが、ないわけでもないんですよね。とっ散らかるということは、歌詞が聴き取りにくくなるということにもなりますし、せっかく書かれたのにもったいないなと思って、ここはこの言葉にしてみたらどうですか?とか、この言葉尻にしてみたらどうですか?って、音に沿わせるようなやりとりをちょっとさせてもらった感じでした。

──細かい調整も含めてやっていったと。

Kaya:はい。「Pray」の歌詞の3~4割ぐらいは月さんですよね?

天野:ですね。まずKayaさんが全部書いたものをパっと見て、歌えるかを試して、この譜割りはどうなんだろうって疑問に感じたところを手直しをするというか。

Kaya:あと、耳に届くときに、こっちの言葉のほうがいいよというアドバイスもしていただいたりとか。それをそのまま使わせていただいたりして、結果、2人で書いた歌詞になりました。「Pray」はそういう形だったんですが、「ROSE」に関しては、早い段階で月さんから仮の歌詞をいただいたんです。

天野:あくまでも仮なので、使っても使わなくても全然大丈夫ですけど、こうやって音がハマると聴き取りやすいし、メロディも言葉もバランスが取れますよ、みたいなことをプレゼンしておこうと思って。ただ、私のほうがちょっと忙しくて、すごくギリギリになってしまったんです。その申し訳なさもあって、仮歌詞のある状態でワンコーラスだけ作って、Kayaさんに送らせていただいて。

Kaya:私のクセとかもわかっていただいた上で「ROSE」を作ってくださいましたし、私はこういう思いで歌っていて、こういう葛藤もあったし、挫折したこともあって、というお話も、結構な長文でやり取りしたんです。それを汲み取ってくださった上での仮歌詞だったので、私が言いたいことをすごく的確に表現してくださっていたので、できればこのまま歌いたいですという相談をしたら、「じゃあ2番は書いてくださいね」ということになって。だから「ROSE」のほうは7割ほどが天野月さんで、「Pray」とは割合が逆になっています。

──おもしろいですね。それこそ主観と客観が良い混ざり方をしたというか。

Kaya:本当にそうなんですよ。

天野:「ROSE」は出だしのメロディ部分が、1番はLieに聴こえて、2番がLoveに聴こえていたから、2番はKayaさんの愛し方について書いてみてくださいというお話をしたんです。それはKayaさんにしか書けないものだから、よろしくお願いしますってバトンタッチをしたんですけど、届いたのが……私は恋愛のほうのLoveばかり考えていたんです。薔薇の恋愛観みたいなものを思い浮かべていたら、Kayaさんから家族愛みたいなものが出てきて。

Kaya:ファンの方だったり、家族やお友達に向けた、大きな意味での愛を書いたんです。

天野:そうそう。ただ、それだと1番は孤高な感じだったけど、2番はみんなのことが大好きで、どれだけ離れていても愛しているという感じになるので、なんていうか、薔薇とは違う花になってくるかもしれないと思って(笑)。

Kaya:そうそう、「花が変わっちゃう」って言われて。急なひまわり感というか(笑)。

天野:薔薇だともうちょっとツンとしてたほうがよくないですか?って。

Kaya:それこそ私が主観でドーン!っていっちゃうところを、薔薇だったり、Kayaというアーティストが歌うことだったりを客観的に見て、こっちの言葉のほうが届くというのを整えてくださって。主観と客観がすごく綺麗に混ざり合ったのが「ROSE」かなと思います。

──作曲に関しても時間はかなりかかったんですか?

天野:「ROSE」に関しては本当にあっという間に作れたんです。1日半ぐらいとかで。

Kaya:速かったですよね! 「作ります!」から「できました!」がすごく速かった。

天野:パっと出てきましたね。『ROSE』というアルバムタイトルになることは知っていたので、どこからしらで“ROSE”っぽさみたいなものを出そうと思ったけど、他の方も楽曲を提供される中で、私がROSEの座を奪うわけにはいかないから、そこは念頭に置きつつも、なるべく避けたいなと思っていたら、メロディと一緒に冒頭の一行(I'm a lofty rose)が出てきちゃって、ごめんなさい……って(苦笑)。

──(笑)。確かにすごくROSE感がありますね。美しさ、気高さ、麗しさがあって。

天野:Kayaさんから「白い薔薇の歌にしたい」というお話があったんです。アルバムジャケットも白い薔薇をイメージしようと思っているということも聞いていたので、夜の闇に咲いている白いバラみたいなものがイメージとしてはありましたね。

Kaya:「Pray」の歌詞のやりとりをしているときに、どうしても共感できないというと言葉が強いんですけど、自分の感情にはあまりないものというか、嘘になってしまう言葉があって。

天野:そうでしたね。私が手直しさせてもらったところで。

Kaya:ちょっと強めな形だったんです。私は、傷ついた人がいるときに、何も言わずに側にいたいんですということをお話ししたら、それを活かした歌詞にしてくださって。私のそういう考えに沿ったものをということで、「ROSE」を書いてくださったんです。

天野:私としては、傷ついていたり、元気がない人に対して、落ち込んでいる状態を続けさせたくなくて。一瞬でも気持ちが明るくなってほしいから、なるべく笑わせたろう!って思うんですよ。直接「頑張って!」っていう感じではないんですけど、「かわいい! もう! そんなに泣いちゃって!」みたいな感じで励ましたくなっちゃう(笑)。そうではなく、Kayaさんは「落ち込んでいる人がいたら、一緒に泣きたい」と。元気づけるわけでも、奮い立たせるわけでも、カッコ悪い!って怒るわけでもなく、ただ寄り添っていたいって。なんか、そういうのってお花みたいだなと思ったんですよ。何も言わずにそこで寄り添ってくれる感じが。

Kaya:ほんとだ!と思って。自分でも気づかなかったんです。

天野:Kayaさんってそういう人だなと思って、それを「ROSE」に入れました。

──なんというか、励まし方も真逆ですね。

Kaya:気持ちとしてはどうにかしたいっていうのはあるんですけどね(笑)。

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