【ライブレポート】Mr.Children、2022年という「今」を生きるバンドの姿を刻んだ30周年ツアー

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▲<Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス>日産スタジアム公演の様子

Mr.Childrenは、30年のレガシーに頼るバンドではなく、2022年を現在進行形で生きるロックバンドである──そう高らかに宣言したかのようだったのが、<Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス>日産スタジアム公演だった。

◆<Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス>日産スタジアム公演 ライブ写真

日産スタジアム2DAYSの初日である2022年6月11日の公演は、天気予報の降水確率も高く、雨が心配されるなか当日を迎えた。日産スタジアムのキャパシティは、今回のツアーで最大規模となる7万人。しかもソールドアウトだ。2021年に予定されていたツアーは、コロナ禍によって発表前に中止になっただけに、今回のツアーにおける日産スタジアムは、ファンにとっても、Mr.Childrenのメンバーにとっても、重要な公演だったはずだ。

開演のアナウンスに、ファンの拍手が波のように会場に広がっていく。そして、定刻を迎えるとステージ上の立体的なスクリーンにはベストアルバムのジャケットをモチーフにしたエントランス映像、そしてMr.Childrenの30年の歴史を物語る映像が映し出されると、誰もが高揚感とともに立ち上がりだした。

ギターのストロークとともに「終わりなき旅」が始まった。サポート・キーボードにSUNNYを迎えたMr.Childrenは5人編成。端正さとラウドさをあわせもつ演奏が鳴り響く。桜井和寿のヴォーカルは衰えを知らず、青い竹のようにしなやかだ。サビでは、満場のファンが掲げる両手が前後に揺れた。桜井は、どんなものにも終わりがあると語り、だからこそ人生で最高の音を届けたいと語った。桜井のロングトーンとともに「終わりなき旅」が終わると、間髪入れずに「名もなき詩」が始まった。鈴木英哉のドラムがもたらすスケール感の大きさとバンド全体のダイナミックさ、桜井の甘い歌声、そしてメロディーの美しさに酔いしれた。「海にて、心は裸になりたがる」では、桜井はファンに「心の中で叫んで!」と呼びかけ、無言のコールアンドレスポンスが会場を満たした。そして、桜井はステージから伸びた花道を歩んでセンターステージへと向かった。ファンのもとへと歩み寄ったのだ。











「シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜」のイントロが鳴ると、ファンの熱気がさらに増した。桜井が「見てよ、この人数を!」と呼びかける。冴えわたるメロディーとともに、ステージ上でライブのボルテージをさらに加速させる花火の演出も。日本のエンターテインメントのひとつの頂点が、この場所にあることを雄弁に物語っていた。「僕らMr.Childrenの代表曲をお届けします」という桜井の言葉とともに始まったのは「innocent world」。ピアノの伴奏のみで歌いだす桜井の歌声に、会場はさらに熱を帯びていく。メロディーの爽快さだけではなく、聴き手の日常に寄り添うような優しさもこの楽曲にはある。ファンたちが掲げている両腕が左右に揺れた。

「彩り」には、「ただいま / おかえり」という歌詞がある。この日は、ライヴがある日常への「ただいま / おかえり」として歌われた。「彩り」、そして続く「口笛」が7万人の胸にしみていくのが感じとれた。











「車の中でかくれてキスをしよう」は、1992年の『Kind of Love』の収録曲にして、デビュー前から演奏していたという楽曲だ。ファンの近くに行きたい、と桜井、ギターの田原健一、SUNNYがセンターステージで演奏し、そのアコースティックなバラードが、初夏の空に溶けていった。初期からすでにソングライティングのレベルが非常に高かったことを痛感させる一曲でもある。続く「Sign」では、ベースの中川敬輔と鈴木もセンターステージへ。中川のベースがないというハプニングでも、桜井は「いろいろリラックスしすぎだよね」と笑いに変えていた。

Mr.Childrenが、同時代を生きるロックバンドとしての顔を見せはじめたのは、「タガタメ」からだった。「子供らを被害者に / 加害者にもせずに」と歌われるこの楽曲は、ロシアによるウクライナへの侵攻が続く状況を念頭に置いての選曲とも思えた。躍動する演奏は、まるで叫ぶかのようだった。「Documentary film」から続いて披露された「DANCING SHOES」もシリアスな雰囲気。苛立ちが歌われる「LOVEはじめました」では、緊張感に満ちた演奏が展開されるなか、ステージから火が吹き上がった。ロックバンドとしてのギラつきが、「LOVEはじめました」では特に強く感じられたのだ。アグレッシヴな姿勢は「フェイク」でも続く。花火が打ち上げられた「ニシエヒガシエ」は、ハードな演奏と桜井のシャウトのなかにブルースをも感じさせ、「Worlds end」でもダイナミックな演奏を聴かせた。

「永遠」は、30周年記念ベスト・アルバム『Mr.Children 2015-2021 & NOW』に収録された新曲。みずみずしい恋を描くソングライティングの魔法を見せられるかのような楽曲だ。「others」では、中期ビートルズを筆頭とするブリティッシュの香りが濃いサウンドを聴かせた。





そして、「Tomorrow never knows」のイントロが奏でられると、無言の歓声が起きるのを感じた。会場はファンのクラップで満たされていく。野外で聴く「Tomorrow never knows」は、強烈なカタルシスをもたらした。「光の射す方へ」では、冒頭からクラップが起き、さらに夜空に花火が打ち上げられた。「fanfare」でも、ハードな演奏のなかで銀テープが会場に噴射された。

「GIFT」では、桜井はコロナ禍でもツアーが実現したことに触れ、「本当にラッキーなバンドです、誰かに言われました、Mr.Childrenって音楽に愛されてるんじゃないかって。なにより、みなさんにこうして愛してもらえてると実感します、本当にありがとうございます」と感謝。そして、「ありがとう!」という桜井の叫びとともに本編は終了した。



空模様は、なんとか小雨程度で持ちこたえていた。そして、アンコール1曲目で歌われたのは「エソラ」。「天気予報によれば 夕方からの / 降水確率は上がっている」という歌詞は、この日のためのもののようだった。続く「HANABI」には、声なき大歓声が響き渡っているのを感じた。

最後のMCでは、メンバー紹介が行われた。ドラムの鈴木は茶目っけの塊のようであり、ベースの中川は朴訥とした語り口、そしてギターの田原はスタイリッシュかつダンディに語る。そこに桜井を加えた4人の個性は、絶妙なバランスだとライヴを見るたびに感じる。桜井は、ステージで楽しすぎて3回ほど意識が飛びそうになったと語り、今後も自分たちにハッパをかけていくので、またみんなに来てほしいと呼びかけた。「早く7万人の歌が聴きたいです」と。



最後の最後に歌われたのは、『Mr.Children 2015-2021 & NOW』に収録されていた新曲「生きろ」。コロナ禍の影響が濃い楽曲にして、7万人のファンへのメッセージとして鮮烈に響いた。それは、2022年という「今」を生きるバンドのライヴにふさわしいラストだったのだ。

文:宗像明将
撮影:渡部 伸、樋口 涼

※ライブ写真は2022年6月11日公演と12日公演が混同

■セットリスト

<Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス>
2022年6月11日@神奈川県・日産スタジアム
OPENING
M1.終わりなき旅
M2.名もなき詩
M3.海にて、心は裸になりたがる
M4.シーソーゲーム 〜勇敢な恋の歌〜
M5.innocent world
M6.彩り
M7.口笛
M8.車の中でかくれてキスをしよう
M9.Sign
M10.タガタメ
M11.Documentary film
M12.DANCING SHOES
M13.LOVEはじめました
M14.フェイク
M15.ニシエヒガシエ
M16.Worlds end
M17.永遠
M18.others
M19.Tomorrow never knows
M20.光の射す方へ
M21.fanfare
M22.GIFT
〜アンコール〜
E1.エソラ
E2.HANABI
E3.生きろ

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