【対談】<うらしるべ>ワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS)×森澤恒行(株式会社近松)、「この30時間の中にとんでもないものが写っていると思います」

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去る6月4日(土)〜5日、北海道中標津町で行われた<SHIRUBE 2022>。THE BOYS&GIRLSのワタナベシンゴが制作委員会の代表を務め、地元・中標津を盛り上げるべく“仲間”と共に作り上げたアットホームな音楽フェスであった。その<SHIRUBE 2022>の言葉通りの裏側を30時間超にわたって映し出した<うらしるべ>が現在配信中だ。前代未聞の裏側を見せ(てしまっ)たワタナベシンゴと、マネージャーでもあり今回密着のカメラマンを務めたTHE BONSAI RECORDS/株式会社近松の森澤恒行に<うらしるべ>を振り返ってもらった。

◆<うらしるべ> 関連画像

■今回の開催はシルベクルーの功績だと思っていて
■彼ら彼女らがいなかったら成り立ってなかった(ワタナベシンゴ)



──本編である<SHIRUBE 2022>が終わった感想はいかがでしょうか?

ワタナベシンゴ 終わった直後はホッとしたというか、あー終わってよかったなという気持ち。今は2週間くらい経ちましたけど、余裕を持って振り返ることができるようになってきて、もっとこういうふうにやれたなとか、悔に似た悔しさみたいなものが出てきています。

森澤恒行 僕は純粋に楽しかった。ですけど、ズーッとカメラを回していたので実はあまり覚えてないです(笑)。終わった後にいろんな人に<うらしるべ>のことを話してます。今は毎日バー(ライブハウス近松)に立っていることもあって、いらしたお客さん全員に、こういうことをやってきたんだ、と。そうやって話していることを考えると、改めて楽しかったんだなと思います。

──シンゴさんは、その後悔というのはどんな点でしょうか?

ワタナベシンゴ 単純にもっといろんなことを考えて追求できたんじゃないか、というところですね。僕自身全力で頑張ってきたつもりではいるけど、結果論として例えばこういう宣伝ができたなとか、街の人にもっと知ってもらうやり方があったんじゃないかとか……そういうことを考えられるようになった。

──ところで<うらしるべ>の企画を最初に提案されたときはどんな気持ちでしたか?

ワタナベシンゴ 僕は面白いなと思いました。(こんな企画)聞いたことないし、多分どこもやったことがないだろうなっていうのもあったので、単純に面白いなと。ただ、どうなるか本当に分からなかったので、大丈夫かなという思いはありましたね。

森澤恒行 シンプルに「マジかよ」って思ったよね(笑)?

ワタナベシンゴ そうっすね(笑)。

森澤恒行 だってこの<うらしるべ>が持ち上がったのが2週間前ですよ? <うらしるべ>をやりたいというBARKSさんのパワーに圧倒されました。でもそれが結果的にめちゃくちゃよかった。とにかくこの企画をやろうというパワーが強くて、それでチームが活気付いたというのが本音で……準備が間に合ってなかったり心配もある中で、「これが正しい、これをやろう」というパワーをもらったと思っています。でもマジかよって半分くらいは思ったよね(笑)?

ワタナベシンゴ ホントにツネさんのいう通りですね。ズーッと同じメンバーで二年間(去年は中止になっちゃいましたけど)、続けてきた中で、どこか風穴を開けてくれたというか、そういういい機会ではあったので、マジかよと思ったけど、それによっていろんな意味でやるっきゃないという気持ちになれたというか……でもマジかよと思いました(笑)。

──<うらしるべ>を実行するにあたり一番心配していた点は?

ワタナベシンゴ ツネさん、どうですか?

森澤恒行 オレは、THE BOYS&GIRLSというバンドが、今までそういうところを見せてこなかった部分を今回見せてしまうという不安が大きかった。それに実働してみて感じたのが、シンゴの稼働がエグすぎて……本人は「全然大丈夫ッス、問題ないッス」って言うんだけど……全然大丈夫じゃないと思うんだよね。ステージに立ってこの後歌うっていうところも含めて、あの三日間、四日間、THE BOYS&GIRLSのワタナベシンゴをズーッと演じなくてはいけない。そのオンオフはもちろんシンゴにもあるだろうし。それが一番不安だったかな……事務所側の目線として。

ワタナベシンゴ オレはでも、THE BOYS&GIRLSのワタナベシンゴでいなきゃ、というのは結果的になかったんです。<うらしるべ>の趣旨としても全部見せるということに同意したし、ホントにいつも通りというか……ツネさんのいう通り、例えば今レコーディングしてますとか、こういう制作してますとか、バンドとしてはそういうところを見せないで来てました。だけど<うらしるべ>に関してはそういうのを取っ払ったもの。本当の底の底まで見せようと思ってたんです。だから自分が撮られることの不安はあまりなかった。トラブルとか、これは撮しちゃダメだとか、そういうのが絶対にあると思ったので、そうなったときどうしようか結局答えが出ないまま始まってしまった感じでしたよね。

森澤恒行 でもここは撮しちゃダメだ、みたいなリアクションしてたじゃん(笑)。ここはダメと言われてスーッとどこかへ行くみたいな。

──概ね、どこを撮られてもよかった感じですか?

ワタナベシンゴ そうですね。僕は逆にズーッとカメラを回し続けたのがよかったと思います。ポイント、ポイントで撮るところを決めて……とかやらずに。あのやり方が一番よかった。



──他の出演者の感想は届いてますか?

ワタナベシンゴ 僕は直接聞いてないですね。<うらしるべ>というより<SHIRUBE 2022>全体を通しての感想として、アーティストの皆さんが中標津の時間が最高だったって言ってくれてたのと、アーティストの皆さんがシルベクルーのことをよく言ってたのが印象的でした。シルベクルーはいわゆるボランティアスタッフですけど、今回の開催はシルベクルーの功績だと思っていて、彼ら彼女らがいなかったら<SHIRUBE 2022>は成り立ってなかった。出演アーティストの皆さんがステージでもバックヤードでも口を揃えて、シルベクルーのことを話してくれました。「あっ、こんなこと(出演アーティストがボランティアスタッフのことを話すこと)あるのか」って思いました。主宰の自分がシルベクルーのことを話すのはまだ分かりますけど、みんなが「シルベクルーお疲れさん」とか、「シルベクルーありがとうございました」とか言ってるのを見て……自分たちが思っていた“みんなで作っている”ところが出演者の皆さんにも伝わったし、お客さんにも伝わったんだろうな、という確信はあります。

──逆にスタッフさんの<うらしるべ>に対する感想はありましたか?

ワタナベシンゴ オレに言ってないだけで、届いてるんですかね(笑)?

森澤恒行 終わった後にまだコアスタッフとキチンと話せてないってのはあるけど……。

──Twitterで見ましたが、シルベクルーは自分担当以外の見えてない部分が見えてるから、<うらしるべ>をものすごく喜んでいる子たちが多い印象ですね。

ワタナベシンゴ 舞台チームとかはどうだったんですかね? テクニカルのスタッフさんはどう思ってたかわからないですけど。一度皆んなで話したいですね。

■表だけでは伝わらない魅力が
■少しでも伝わったのかなって思います(森澤恒行)



──今回<うらしるべ>を振り返ってみて、良かった点と悪かった点を教えてください。

ワタナベシンゴ 良かった点はだれもやったことがないことをやったこと。それは個人的に大きくて。まだだれもやったことがないことをやってみようという野望みたいなものって、実はアーティストとしてどこかで薄れてきてたんです。最近はそういうことを考えずに自然と出てきたもの、つまり自然と面白いものを考えることができて、それを実行するのがかっこいいなって思うようになってた。今回は明らかに絶対だれもやってない……<うらしるべ>みたいな企画は少なくとも僕の世界にはなかったものなので。それを僕らだけの満足で終わらずにいろいろな人が協力してくれて、皆んなも同じように楽しんでくれているのがよかった。ただのドキュメンタリー番組でもなく、ズーッとリアルが写っている……過去の出来事なのに今もリアルに感じることができるのは、<うらしるべ>ならではであって、台本がなくズーッとカメラを回し続けた結果なのかなと思う。<SHIRUBE 2022>を知るきっかけにも、中標津町を知るきっかけにもなると思うし。僕は悪かった点はあまり思いつかないです。

森澤恒行 今まで<SHIRUBE 2022>を作っていく中で、シンゴ自身が裏方に徹することがたくさんあったんです。本人は<うらしるべ>の中でも「オレは何もやってないっす」って言い続けてたんですけど、まったくそんなことはなくて。シンゴが裏方で中心となって、ひとつひとつチームで作っていくってところが映し出されていると思います。具体的にどうこうじゃないですが、作ってきた過程とかスタッフへに接し方とか、学生が出てくれたのもそういう裏での活動、表だけでは伝わらない魅力が少しでも伝わったのかなって思いますね。

ワタナベシンゴ あと、僕や演者の裏を見れることは面白いと思うんですが、何より他の職種の人たちもバンバン写ったこと……例えば楽屋のケータリングを作ってくれる人がいて、そのケータリングを配置したスタッフたちがいて、廊下にあるドリンクもシルベクルーの手書きだったり、そういう細かいところにいろんな人が携わっている。僕らは当たり前かもしれないけど、見てる人にとっては全部新鮮だと思うから、可能性として、こういうお仕事もあるんだなとか、ひとつのイベントにこういうスタッフがいるんだな、そういうところを見たと思うんです。<うらしるべ>を見てくれた人はこれから好きなアーティストのライブに行ったりフェスに行ったりすると思うけど、無意識にそういうことを考えちゃうと思う。だからより楽しみ方が良い方に変わるんじゃないか、そう思ってます。

──それに関してはツネさんは何かありますか? 裏方を“見せてしまった”わけですが。

森澤恒行 札幌のチームと地元・中標津のチームと一緒に、北海道の中標津というすごく小さな街で、街ぐるみでやったフェスだと思っていて、そのあたりが少しでも、その場にいて楽しいだけじゃない部分が伝わればいいなと。特に見どころのところで、シンゴがフラカン(フワラーカンパニーズ)のライブ見てたじゃん? あれこそ<うらしるべ>だなって思ったんだよね。フラカンのライブ中に、流れ的に次の曲は「深夜高速」だろうなって、二人とも思ってたんですよ。二人とも大好きな曲で。でもそのタイミングで「シンゴさん、町長来ました」って呼ばれちゃって(笑)。

ワタナベシンゴ 街のCD屋さんが、もう帰られますって。

森澤恒行 町長もいらっしゃったんだっけ?

ワタナベシンゴ いや、そのときは観光協会の方が横にいて、そこで写真も撮るみたいな。

森澤恒行 そうだそうだ。その流れがあってこれこそ、“裏”というか、いつもだったらステージを見てるけど、<SHIRUBE 2022>の制作委員長として、走って、僕のカメラは追いつけなかったんですけど(笑)。マジで猛ダッシュしてたよね(笑)?

ワタナベシンゴ あれはすごかったですね。フラカン見てたら僕のマネージャーが来て「中尾書店さんが帰られるからご挨拶を」と。ステージ袖からしるべスクエアの端っこまで行ってご挨拶して、そしたらしるべスクエアにフラカンの本番の音が流れていて、それを聴きながらご挨拶して、その横の観光協会のブースで写真撮って……それくらいで「深夜高速」のイントロが始まったんです。あれはすごかった。

──マジックだったわけですね。

ワタナベシンゴ あれこそが<うらしるべ>というか……。10代のころ、中標津にいたときにフラカンに出会って、一番最初に聴いたのが「深夜高速」。個人的にはステージ横で「深夜高速」を聴くことだけは逃したくなかった。今まで共演させていただいたり、ライブ見に行ったところで「深夜高速」は何回も聞いてるんです。でも中標津で、<SHIRUBE 2022>で聴く、というところに意味があったので……だけど、ああいうシチュエーション(笑)。あれこそがリアルというか。生の「深夜高速」を聴きながらステージに向かって走って行ったときに、「こういうもんだよな……」って思って逆に良い経験でしたね。



──ちなみに、次も<うらしるべ>をやりたいですか? 本音で言うと……。

ワタナベシンゴ あー…………即答できないってことはちょっと(笑)。

森澤恒行 (笑)。

ワタナベシンゴ でも気持ち的には僕はやりたい。来年もし<SHIRUBE2023>をやることになったら、今年とは違ういろんなことがあるんですけど、恥ずかしいことは何もないってことにこの二日間で気づいたので。この人見せたくないとか、この人との会話は流したくないとか、一切ないってことを改めて痛感したし、<うらしるべ>をやることによって、新しい楽しみ方じゃないけど、そういうのもあるんだなということに気づけた。何よりもお客さんたちが楽しんでくれたし。だから僕は次もやりたいですね。ただ二人(30時間超すべての撮影を行なった森澤恒行とBARKS担当)が心配です(笑)。ツネさんは<うらしるべ>、次はどうですか?

森澤恒行 面白かったし、またやりたいけど、そこに持っていくまでにより見せられるものがあるし、見せたいなと。それこそ技術チームとかはあまり認識ないと思うし……もちろん初めてやったことだし。でもあのチームの人たちがめちゃくちゃいいし、舞台とか作っている、外のテントを作っている、そういう人たち、楽しくやっているチームがすごくいいなと思った。みんなプロフェッショナルでキチンと仕事をしてくれてたけど、いい意味で仕事っぽくないというか、楽しんでた。<SHIRUBE 2022>をやる時点で仕事と思ってないかもしれないけど(笑)、あれが音楽の力なんだなって感じたな。ボイガルが引っ張った音楽の力というか……。



──最後にカメラおじさん二人が号泣したわけは?

ワタナベシンゴ カメラおじさん二人号泣ってなんですか(笑)?

森澤恒行 ボイガルのライブを見ていろんなことを思い出しちゃったな……。なんであんなに泣いたんですか(笑)?

BARKS シンゴくんの言葉がすごく心に刺さったし、自分の後ろでお客さんの泣き声も聞こえるわけ。あの場には皆んなのすごい思いがあって、それをとらえられている自分もすごくうれしかっし、あの場にいられたことがうれしかったし、<SHIRUBE 2022>ができたことがうれしかった。去年できなかった流れも遠まきながらズーッと見ていたので、シンゴくんやれてよかったね、という気持ちとかいろんな気持ちが溢れましたね。カメラのマイクにノっちゃうから嗚咽を我慢するのが大変でした(笑)。

森澤恒行 金曽(義仁/中標津町総合文化会館の館長で<SHIRUBE 2022>を共に作った人物)さんが泣いてたから、泣いちゃったってのもありますね。館内のいろんなところを撮影して回ってたんですけど、いろんなスタッフがグッと堪えているのを見て、自分もグッと来ちゃいましたね。

──<うらしるべ>の見どころを教えてください。

森澤恒行 絶対に見れないものを見せている。“生き様”じゃないですけど、それが<うらしるべ>の魅力です。写っているのは分からないことの方が多いと思いますが、それが後々分かってくるように……あのときってこういうことだったんだっていつか気づいてくれるような何かが、写っていると思います。

ワタナベシンゴ <うらしるべ>こそ、表の顔だったなと思っているし、なぜかというと結局皆んなが生きまくってるというか、命が燃えまくってる。皆んな必死で皆んな楽しんで、でも最後までもがき続けているようにも自分は感じて。そういうのを全部ひっくるめて、皆んな“生きまくってる”なと思ったんです。<うらしるべ>に出てくる登場人物の名前は知らなくてもめっちゃ生きてるのが伝わると思う。見ている人も、月並みな言葉ですけど、「生きよう!」って思ってくれるんじゃないか。いろんなストーリーがあった中で自分のバンドがライブするんですけど、それも込みで手前味噌ですけど、最後の最後まで生き続けた人間たちのノンフィクションが写っているので、ここが見どころというか、長いんですけど(笑)、<うらしるべ>のどこを見てもらっても構わない。この30時間の中にとんでもないものが写っていると思います。

「うらしるべ〜SHIRUBE 2022の裏側、全部見せます〜」

リアルタイム生配信1日目:2022年6月4日(土)11:00〜20:00
リアルタイム生配信2日目:2022年6月5日(日)11:00〜20:00
ワタナベシンゴ密着1日目:2022年6月7日(火)10:00〜(オンデマンド配信)
ワタナベシンゴ密着2日目:2022年6月7日(火)10:00〜(オンデマンド配信)
チケット ¥2,000
詳細:https://info.thumva.com/html/boysandgirls/index.html

<SHIRUBE 2022>

2022年6月4日(土)、5日(日)
北海道・中標津町総合文化会館しるべっと&しるべっと前広場
両日 開場11:00 / 開演13:00 / 終演20:00予定

出演アーティスト:
6月4日(土)
THE BOYS&GIRLS
金子智也
NOT WONK
四星球
HUSKING BEE 
SHIN50 MARTIN BAND

北海道中標津農業高等学校農高太鼓局
北海道中標津高等学校音楽研究部

6月5日(日)
THE BOYS&GIRLS
金子智也
KALMA
ズーカラデル
FREE KICK
フラワーカンパニーズ
BUFFALO SOLDIER

中標津町立中標津中学校吹奏楽部

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