【インタビュー】a flood of circle、初のホールワンマン直前に語る「使命みたいなものがどんどん見えてきた」

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■次のフラッドを感じさせたい
■自分たちも感じたい

──新曲「花火を見に行こう」はいつ、どういう状況で生まれた曲なんですか?

佐々木:今まではずっと曲を書いてきたのに、『伝説の夜を君と』を作ってからはこの1曲にしか取り組んでなくて、久々にこんなに時間をかけたなって。4ヵ月以上ツアーをしてきたんで、そのファイナルでは次のフラッドを感じさせたいし、自分たちも感じたい。今はまだ言えない話で秋ぐらいにやりたいことがあるんですけど、そのためにも象徴になる曲が欲しいなと思ったんですよね。だから、自分が好きなテイストでもマイブームでもなく、しっかり悩んでしっかり考えて、メロディとかコードにも徹底的にこだわって……自分の普段の生活とか日本の今の状況、ツアー中に戦争が始まったことから感じたものも全部盛り込まないとなと思って。合間にTHE KEBABSやソロをやってリラックスしようとかじゃなくて、本当にがっつり体重をかけて作ってましたね。この曲に懸けてた。

──常日頃オーバーワーク気味だとすら思う佐々木くんが、珍しく他のこともやらず一心に、しかもファイナルのLINE CUBE SHIBUYAどころか、その先を見ていた。

佐々木:あと、5月に<OTODAMA’22~音泉魂~ “BACK TO THE OFURO”>に出たのもすごくよくて。今年は“Closer”という立ち位置だったんで、俺らのライブが終わった後にわざわざもう1回花火を打ち上げてくれてイメージが湧いたのもあったし。そもそも主催の清水音泉の清水(裕)さんが、“とにかくフラッドが一番関西に来てくれてたから出したい”と言ってくれたのもあってのCloserだったんで。

──なるほど。花火というモチーフは、そこともつながっていたと。

佐々木:自分で勝手に結び付けてることがもう一つあって、ツアーの途中でカニエ・ウェスト(Ye)のドキュメンタリーがNetflixで公開されて。『Donda』というお母さんの名前を付けたアルバムが最近出たんですけど、カニエ・ウェストが今みたいにぶっ壊れちゃったのは、お母さんが亡くなったのがデカかったんだなと。そのお母さんがカニエ・ウェストに、“地に足を着けたまま高く飛びなさい”と伝えていて……“地に足を着けろ”も、Fly High的な“高く飛べ”もよく聞く言葉だけど、“地に足を着けたまま高く飛びなさい”って、確かにそれがカニエ・ウェストの一番いい状態のときだわと思って。メッセージもちゃんとあるし、真面目なだけでもない。それと花火を見に行く感覚が、今の自分にすごくフィットしたんですよ。いろいろと取り入れたことをいろいろとアウトプットするんじゃなくて、この半年とか1年の人生経験が全部反映された1曲にしたかったし、それぐらいパワーのある曲が作りたかったんですよね。

──佐々木くんはいろんなアウトプットを持ってるからこそ、一曲入魂はなかなか珍しい。

佐々木:THE KEBABSでもソロでもまだまだやることはあるけど、バンバン思いをアウトプットする時期から、一つ一つの精度やこだわりをもっと深めていきたかったし、それが次の自分の成長につながるんじゃないかと気付いたツアーだったんで。自分から自分への宿題、使命みたいなものがどんどん見えてきたというか。最初からみんなを巻き込むために曲を作るより、“すごい曲ができて、楽しいライブができてれば、みんながついて来てくれる”というほうに振り切ろうと。迷ってるときはつい色気を出して余計なことをしたりもするし、フラッドとしても自分の人生としても、そういう時期は過ごし切った感覚があったのかな。「花火を見に行こう」のジャケットが手書きになったのも、“もうちょっと自分をちゃんと打ち出そう”、みたいな。髪を染めたのも含めていろんな自分がいることを受け止めて、それをバラバラじゃなくて一つの作品で表現できるようになりたかったのかもしれない。


──そういう意味でも、この曲はそのパイロットソングな感じもあるよね。フラッドがいい曲をシーンにぶち上げて、楽しむことで人を巻き込んでいく。あと、花火ってどこからでも見えるし、花火を見に行く行為自体にロマンとハッピーがある。

佐々木:モチーフとしてはベタ過ぎるかなと一瞬思ったんですけど、花火の曲ってだいたい花火を見てる人の曲なんですよ。まだ花火を見ていない人の曲はあんまりない。『伝説の夜を君と』というタイトルもそうですけど、普通の言葉なのに、ありがちなモチーフなのに、その組み合わせは聞いたことがない、検索しても同じような歌詞が出てこない。それが自分の中でのOKラインだなって。

──ロマンとハッピーがあるけど、どこか刹那的な物悲しさもある。めちゃくちゃ輝くけど、いずれ消えるところも含めて、面白いモチーフだと思う。

佐々木:普段生きていて、ずっといいと思えるものってあんまりないと思うんですよ。体調や環境が悪かったら何もいいと思えなくなったりもするし。だから、永続的にいいと宣伝されたり誰かに言われても信じられなくて。ただ、一瞬しかそう思えなくても、その一瞬が何度もあることが希望になる。自分が戦争のことを考えるときに思うのはそこなんですよね。ずっと仲良くするのは、分かり合うのは無理かもしれないけど、一瞬でも異なる文化がいいなと思う瞬間があるなら、それを大事にするしかないんじゃないかなって。一瞬しかないから虚しいとか悲しい感覚も分からなくはないけど、その一瞬の美しさを思ってライブをしたり3分の曲にしてるんだなと思った。言えば言うほど真面目過ぎるなと自分でも思うんですけど(笑)、自分が感じてる今の状況が、それぐらいシリアスだったのかも。

──ミュージシャンのみんながみんな世の情勢に触れるわけじゃない。何なら素知らぬふりをする人もいる。でも、フラッドの曲は常にそれと対峙する覚悟が見え隠れするからグッとくるし、“駆け出せよ 全力で転ぶために”と歌える人って、なかなかいないと思う。

佐々木:その前に、“くたびれてるカーブミラーに/それなりで暮らす男”とあるんですけど、自分もその場から動かないで、誰かに“気を付けなよ”と言うだけの存在になっちゃってないかと思うことがあって。自分の責任で物事を動かしていくときって、やっぱり転ばないようにしがちだと思うんですよ。ただ、生き延びることを意識し過ぎると、“今、生きてる!”という一瞬の輝きはなくなってしまう。バンドを15年以上やってきて、続けること自体が目標にもなってきてる。でも、やり続ける=転ばないようにする、じゃないはずで。“全力で転ぶために”は、15年以上やってきた自分の言葉でしかないから同じように響くかは分からないけど、これはメンバー、a flood of circleが好きなお客さん、2022年という時代に対しても思う。誰もが“みんなでもう同じものは見られない”と悟ったような顔をしてる気がして……。一瞬でもいいから、同じ花火を見上げるときが来る、希望があると思って生きてるほうがまだマシなことが起こるんじゃないかと信じたいんですよ。もう昔からずっと同じ話ばっかりしてますよね(笑)。

──いやいや、人が失ってないはずのピュアな部分に訴えかけることを諦めないのがうれしいよ。だからこそ、“夢が叶うのは/奇跡じゃないぜ”という歌詞が刺さるんだなと思った。

佐々木:全部が希望的観測なんですけどね(笑)。でも、ジョン・レノンの『Imagine』に感動したことがある俺は、やっぱり希望を持って生きてるんだなといつでも思い出すんです。想像力に意味があるというか、昨日よりマシな何かを生み出す力になりたい。結局、自分のスタイルはこれなんだよなという感じですね。

──“花火を見に行こうぜ”というフレーズを、またみんなでシンガロングできるようになったらいいね。

佐々木:そこはもう折り込み済みというか、声を出したりダイブができる日が戻ってきた瞬間に、絶対に感動するのは決定事項なんで(笑)。それが倍増するエッセンスのある曲になってると思うし、いつかみんなで歌えるのを楽しみにしてますね。

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