【インタビュー】Mrs. GREEN APPLE、約2年ぶり『Unity』完成「嘘がないように、今のありのままを届けたい」

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Mrs. GREEN APPLEが7月8日、ミニアルバム『Unity』をリリースする。約2年ぶりとなる同作だが、この春の活動再開からわずか4ヵ月足らずのうちに、新曲「ニュー・マイ・ノーマル」MVは約700万再生、続く新曲「ダンスホール」はフジテレビ系『めざまし8』のテーマ曲として連日番組内で放送され、新曲「ブルーアンビエンス(feat. asmi)」がABEMAオリジナル恋愛番組『今日、好きになりました。初虹編』主題歌に起用、新曲「延々」がスマートフォン向け新作ゲーム『炎炎ノ消防隊 炎舞ノ章』テーマソングに決定するなど、その勢いはまさしく怒濤。これら4曲に「君を知らない」「 Part of me」を含む新曲全6曲が収録される作品が『Unity』だ。

◆Mrs. GREEN APPLE 動画 / 画像

タイトルに冠された“Unity”とは、“単一性、統一性、結束すること、不変性、結合体”などの意を持つ言葉だ。曰く、「このジャケットデザインのように、異なるものが1つのオブジェのようでオブジェになり切ってない様。それは結局バンドも一緒だなって。バンドが人と連なるってこういうことだなって思う。それをあえて"Unity"と呼ぶのがこの作品です」とのことだ。BARKSでは、先ごろ公開した「ダンスホール」コラム&コメントに続いて、大森元貴(Vo, G)、 若井滉斗(G)、 藤澤涼架(Key)の3人にじっくりと“フェーズ2”について、『Unity』について訊いた16,000字越えのロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■今までのミセスらしさとこれからの希望
■すべてを感謝の気持ちから作っていけたら

──今日は、7月8日に行われるライブ<Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia”>のリハーサル前の時間にお邪魔していますが、こうやって音源作品が完成し、いろんなメディアの取材を受けて、ライブリハーサルがあるという日常も、きっと随分と久しぶりのことかと思います。今、そんな日々をどういう気持ちで過ごしていますか?

藤澤:本当に久々で、改めて「“フェーズ2”が始まったな」っていう感じがします。ありがたいことに、みなさんが“フェーズ2”を待ってくださっていて、一気にいろんなことが始まって、自分たちでもビックリしているんです。でも今は、それが本当に楽しいですし、嬉しくも思っています。

若井:“始まった感”はものすごくありますね。ミニアルバム『Unity』も完成して、こうやって取材もしていただいて、ライブのリハも始まって。しかも“フェーズ1”の頃とはまた違う新鮮さも感じています。

──そんな中で、怒涛のようにミセス関連のさまざまなニュースが届いてきて、僕らも驚かされっぱなしです。ちょっといきなり働き過ぎなんじゃないかとも思ったりもして(笑)。

大森:“そうそう、こんな感じだったな”って、いろんな意味で思い出すことはありますよね(笑)。しかも“フェーズ1”の頃より、さらにいろんな面で密度が濃くなっているというか。仕事の密度も濃くなっているけど、メンバー間でクリエイトしていく時に大事にすることの密度も濃くなっているし、中身がギュッと詰まっているという手応えは、最近、すごく強く感じてますね。


▲『Unity』完全生産限定盤

──では、改めて。今回のBARKSインタビューは、ミニアルバム『Unity』の音楽面を中心にお話しを伺いたいと思っています。とは言え、時系列を整理するうえでも、まずは3月18日の“フェーズ2”開幕と同時にデジタルリリースされた「ニュー・マイ・ノーマル」から話を聞かせてください。発表から2ヵ月以上が経って、この曲を少し客観的に見られるようになったかとも思いますが、今、「ニュー・マイ・ノーマル」はミセスにとってどのような曲になったと実感していますか?

大森:デビュー盤のリード曲みたいな感覚ですね。僕らは2015年にミニアルバム『Variety』でメジャーデビューして、そのリード曲が「StaRt」だったんですが、今回、まさしく「ニュー・マイ・ノーマル」で再デビューしたような気持ちですし、そんな立ち位置の曲になったと思っています。「2022年の春に“フェーズ2”を始めようか」という話は、去年の秋頃にはみんなに伝えたんですけど、でも実際に「ニュー・マイ・ノーマル」が完成したのは、今年の1月。わりとギリギリだったんです。それで、いざこの曲を発信してみて……タイトル通りですけど、今までのミセスらしさと、これからの希望といった部分を、何らかの武装をするわけではなく、きちんと地に足がついた状態で、しかもすべてを感謝の気持ちから派生する感情で作っていけたらいいなと思っていました。それがいろんな人の元に届いてよかったなという想いが、今は一番強いですね。

若井:3月にこの曲を発表した時は、何よりも「おかえり」という声がすごく多くて。自分たちが2年間で培ったものを「ニュー・マイ・ノーマル」に落とし込めたと感じていたので、それに対して「おかえり」と言ってくれたことが本当に嬉しかったし、よかったなと思いました。

藤澤:僕も、みんなから「おかえり」という声を届けてもらえて嬉しかったし、「ニュー・マイ・ノーマル」で“フェーズ2”がスタートして、この曲がこれからのミセスのテーマになっていくんだろうなと感じています。今年の年始に、(大森)元貴からデモが届いた時に、この曲で“フェーズ2”が始まるんだって気持ちが高まったし、元貴も言っていたように、「StaRt」でデビューした時のような気持ちにもなって。「ニュー・マイ・ノーマル」で“フェーズ2”を走っていくんだという気持ちと、この曲で歌っている感謝の気持ちの両方を、これからもずっと大切にしていきたいなと思っています。

──「ニュー・マイ・ノーマル」を初めて聴かせてもらった時、間違いなく素晴らしい曲なんだけど、活動を休止していた2年間だけでなく、ミセスを結成してから、もっと言えばみなさんが音楽を始めてから今までの想いのすべてがこの曲に詰まっているように感じて、簡単に「いい曲ですね」のひと言では済ませられない、きらびやかなんだけど、ものすごく心に沁みるような重みと深みを感じたんです。しかもその曲で、感謝の気持ちを歌ったという点が非常に印象的で。その感謝というテーマには、どのようにしてたどり着いたのですか?

大森:いろんなことを考えましたよ。最初は派手な曲でなきゃいけないだろうとも思ったし、しんみりしたことは歌いたくないなという漠然としたイメージもあったんですけど、正直に言って3人とも、この2年間、すっかりミセスではなくなっていたので……。

──ああ、活動休止期間中は、そういう感覚だったんですね。

大森:はい。だからこそ、ミセスというバンドを外から客観的に見られるようになっていたんです。その目線で、“自分なら、どういう曲でミセスが復帰したら嬉しいか?”とか、逆に“どうだったら嫌か?”ということを、良くも悪くも一歩引いた所から見ることができました。そうした中で、ただただ“これからやっていくぜ!”っていう意気込みだとか、何らかの武装をするといった無骨なものではなく、誰に聴かれても恥ずかしくない、僕らが歌わなきゃいけないこと、歌うべき言葉を綴ることが大切だと思ったんです。


──その時に、これは敢えて聞きますが、以前のミセスがそのまま帰ってきて欲しいというファンと、新しいミセスを期待するファンの両方がいたと思うんです。そのどこに向けて歌うべきなのかといった点で、悩んだり、葛藤のようなものはありましたか?

大森:そうですね……「ニュー・マイ・ノーマル」ってちょっと不思議な曲で、僕らのことのみを歌っているんです。何て言えばいいのかな……誰に届けるとかではなく、僕らの想い出のアルバム、その1ページになるような曲なので、この曲が持つエネルギーは、僕らのことをもうちょっと知ってもらえると嬉しいなっていうところから来ているんじゃないかと思っていて。この2年間って、コロナの影響もあって、普通の2年間とはまったく違うものだったと思うんですよ。バンドにとっても、編成が新しくなったり大きな出来事もあったけど、世の中にはもっと大きな事があったという人はたくさんいるわけで。だからこの曲で、“生きていればいろんなことがあるよね、それを乗り越えていこうよ”っていうことをきちんと書かなきゃいけない、そこをとても大事に考えていたので、ファンのみんながミセスの“フェーズ2”に対して抱いている不安感だとか、どのファン層に対してどうこうといったことは、僕自身はあまり意識しなかったですね。自分が歌うべき根幹がはっきりしていれば、それで大丈夫だと思っていたので。

──なるほど。それをどう表現するかはいろんな試行錯誤があったとは思いますが、“何を歌うか”という着地点は明確だったんですね。

大森:ただ、“無敵な自信”というものがない状態で書き始めたので、その道筋を探す作業にはとても時間がかかりました。まずもってバンドの編成が変わったことで、どういう風に曲を作ればいいかわからないところから始まったので、作家としての不安感と、(メンバーに対する)友達としての不安感がありました。ただ最終的に、「ニュー・マイ・ノーマル」のすべてのフレーズが、結局のところ“今の僕らはこういうことしか言えないよな”と納得できてからは早かったですね。


▲『Unity』初回限定盤

──若井さんと藤澤さんは、最初に大森さんからこの曲のデモが届いた時、どのように感じましたか?

藤澤:元貴からこの曲が送られてきた時、他の曲たちとはちょっと違う気持ちになったんです。元貴の今のありのままの気持ちを聴かせてもらったような感じがして。

若井:“作品”に聴こえなかったよね。

藤澤:そうそう。ちょっとこれを言うのは恥ずかしいんですけど、元貴から送られてきた手紙のような気がして。だから、すごく温かい気持ちになったし、僕もまったく同じ気持ちだって思えたことがすごく嬉しくて。近くにいる人ほど、なかなか言葉にして伝えられないことってあるじゃないですか。でも、“ありがとう”の気持ちを伝えるって、本当に大切だなと思いました。だからさっきおっしゃっていただいたように、僕もデモを聴いて、この数年間のことだけじゃなくて、今まで自分の人生で関わってくれた人、出会ってきたいろんな物事があるからこそ今の自分があるんだなって、そう思えたんです。

若井:今までの曲とは違って、何よりも“僕たちの曲だ”って思いました。ミセスとして活動を始めてからもそうですし、活動休止期間もそうですし、全部をひっくるめた自分たちの想いが歌詞に詰まっていると感じて……泣いちゃいました(笑)。いや、でも本当に“いい曲だな”って。早くみんなに届けたいなと思いましたね。

藤澤:元貴は今回のミニアルバムを作る時に、「嘘がないように、今のありのままのミセスを届けたいね」って、その言葉をすごく大切にしていて。だから「ニュー・マイ・ノーマル」は、まさしく今のミセスというものが詰まった曲になっていると思うし、その気持ちを大切にしていくことで、自ずと“フェーズ2”でも、また新しいことと出会っていけるんじゃないかなと思えたんです。

大森:ただ実際問題として、バンドの編成が変わったことだったりって、僕らからも説明がしづらいし、周りからも気を遣われることだと思うんですよね。だからこそ、そういうのを見越して……というわけではないんですけど、すべてのことをこの曲を通して伝えようという気持ちが強かったんです。多くを語れないからこそ、これを聴いてもらえば全部わかってもらえる曲にしたかったし、わかってくれるといいなと思って作りました。アレンジしていく過程においても、今までは作詞、作曲、編曲と、僕がすべてをやっていて、全部出来上がった状態で曲を渡していたんです。だからメンバーからすると、ある程度まで曲が完成している中で、どういう風に自分のエッセンスを入れようか、表現しようかっていう、自分の居場所をサウンドの中で探していく作業がきっとあったと思うんですね。でも「ニュー・マイ・ノーマル」は、最早そういう次元の曲じゃなかったんですよ。さっき若井が「自分たちの曲だと思った」って言ってましたけど──別に今までも自分たちの曲だったんだぞ、とは思うんですけど(笑)──でもそういう感覚が、明らかに2人の中でナチュラルなマインドだったと思うし、ギタリストとしてこの曲をどうしよう、キーボーティストとしてという観点ではなく、自分たちの曲という観点で作っていけた作品だと思っています。

──だからこそ、雄弁に語らずとも、ファンの不安や外野の雑音までを払拭する力を持った1曲を生み出すことができたんですね。その時に、先ほど話をしてくれた「僕らのことのみを歌った」ことは、とても大きなポイントだったんですね。

大森:大きかったですし、僕らの決意、覚悟でもありました。ミセスって、ある程度はバンドのストーリーを見せてきたところがあるから、昔から僕らを応援してきてくれたファンの中には、一度そのストーリーが壊れたことに対しての戸惑いがあったんだろうなということは十分に理解しています。ただ、語弊のある言い方になっちゃうかもしれませんけど、ストーリーも大事だけど、やっぱり曲だよなって思っているんです。僕らが何を言おうが、あるいは何を言われようが、例えば「いつから再始動します」ってディザー動画を作ることがファンを安心させることではなくて、再始動した一発目の新曲が素晴らしいものであるということが、僕らがファンに対して出来る一番筋道の通った責任の取り方だし、この曲を書き始める段階から、そこへの覚悟を持って取り組んでいました。だからこそ、結構な難産でしたけど、やっぱりいい曲を書くしかないんだとすべてが腑に落ちてからは、迷いはなかったですね。

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