【ライブレポート】40周年すら、THE MODSにとっては単なる通過点

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<THE MODS 40TH ANNIVERSARY LIVE ENCORE「続・約束の夜」>最終公演、日比谷野外大音楽堂。天候にも恵まれ、時折涼しい風が会場を吹き抜ける。この日は、レコードデビュー40周年のアニバーサリーを締めくくると言った意味合いよりも、今の時代に警鐘を鳴らし、明日を見据えるといったデビュー当時から変わらないスタンスを目の当たりにした一夜だった。

「40周年は通過点」そうリーダーの森山が発言していたように、この記念すべき年にケジメをつけ、41年目に向けて、変わらず日本のロックシーンの最前線に居続けるという決意表明がこの日の野音だったと思う。

開演前、早い時間から、野音周辺を取り囲むファンたち。モッズが他のアーティストと圧倒的に違うところは、音楽とファッションをひとつのカルチャーとして連動させ、ファンが継承しているところにある。


リーゼントにラバーソール、ブラックデニムにボウリングシャツ…。各々がこの日のために、待ち侘びたこの日を最高の日にするため、ロカビリーやパンクロックなどのユースカルチャーに大きな影響を受けたファッションで着飾り集結する。その笑顔は煌めきに満ち溢れている。モッズと共に人生を歩んできたファンは50代半ばにはなっているだろう。それなのにライブ当日は一瞬にして少年少女に戻してしまうモッズのマジック。このライブ会場のドリーミーな光景は、他のアーティストではなかなか見ることが出来ない。モッズならではだ。

オープニングのSEが鳴り響きフロアの期待感がピークに達する。ステージに並んだ3本のマイクにロックンロールの神の幻影を見る。気持ちが昂っていく。メンバーがステージに足を踏み入れ、拍手がより強くなる。オープニングナンバーは「S・O・S」だ。30年前、揺れ動く社会情勢の中、森山が紡いだこのプロテストソングは、今の時代、より必然性を増す。


森山達也(Vo、G)

パンクロックの熱量を放出させるギターリフとハード・ドライヴィングなベース、決して派手ではないが堅固なドラムのリズムが野音の空に響き渡り、会場を包む。キツかった日々、こんなはずじゃなかったと拳を握りしめた日々が一瞬でチャラになるロックンロールマジック。これがモッズ。“This is THE MODS”なんだと思わずにいられない圧倒的なオープニングだ。

そして、「歪んだ世界の真ん中でロックしてやるぜ」と叫ぶ「F.T.W.」と続く。ロシアのウクライナ侵攻、度重なるウィルスの感染拡大、そしてこの前日には元首相が凶弾に倒れる。不協和音が鳴り響き、閉塞感に苛まれた今の時代へのモッズの痛烈なメッセージは、“ロックンロールは時代を映す鏡である”という普遍性を併せ持ちながら、根底では「何故だろう?」という人間の根源的な部分を訴えている。


5曲目、ギターの苣木がリードヴォーカルを取る場面では、こんなMCが添えられる。「ここに戻ってくると約束したのは自分自身だと思います。メンバー紹介をします」と。奏でられた「BOOGIE BOMB」のリリックはアレンジされ、メンバーの名前が織り込められる。ここに潜んだ真意は、この4人で、この日の野音までたどり着いた。これからもこの4人でやっていく。という強い意志だったと思う。苣木にとっても40周年は通過点。それは変わらないだろう。もちろんそれは苣木だけではない。メンバーの総意だということは、この日のバンドのグルーヴが代弁していた。


苣木寛之(G、Vo)

「SHE'S THE C」「ハートに火をつけて」という珠玉の初期ナンバーが続き、去年リリースされた「READ TO ROCK」のセカンドトラックとして収録された「涙のワンウェイ」へと続く。モッズ流パワーポップの新たな解釈とも言えるこのナンバーこそが、41年目へと向かうバンドの新たなアプローチだ。


昨年のアニバーサリーツアーが、森山が、「そこには歌詞が重要だった」と言ったように聴かせることに重きを置いたステージだったのに対し、この夜は、バンドに内包する熱量と衝動をダイレクトに体現させるという原点回帰の精神が垣間見られる。とにかく攻めているのだ。そして、何よりも、楽器を手にして自らの生き方に決断を下した若者のような弾け方。長きにわたる時間の中で熟成させた演奏力を持ちながら、このような精神性を感じられるバンド。これが41年目のモッズだ。


北里晃一(B、Vo)


佐々木周(Dr、Vo)

本編ラストは、ブリティッシュ・インヴェンションを踏襲しながら時代に即したアレンジを施した「パズル・シティを塗りつぶせ」。“混沌からの脱却”というテーマ性と楽曲の輪郭をくっきりと浮かび上がらせた森山のヴォーカルが夕闇に溶けていく。そう。この感じ、これこそが野音のモッズなんだと思わずにいられない瞬間だ。

そしてアンコールの1曲目は、ステージから放たれる赤色灯の光が再び緊張感を孕み、「UNDER THE GUN」がプレイされる。テレビの画面に映し出されたウクライナの状況を切り取ったようなリリックの世界が深く突き刺さる。しかし、そこで湧きあがった感情は、決して悲観的なものではなく、“この現状を打破するのはお前次第だ”という、それは、一筋の光のような希望だ。


「READY TO ROCK」「STAY CRAZY」「LET'S GO GARAGE」…2度のアンコールでは、新旧織り交ぜながらも明日を見据えるナンバーが続き、41年目の日比谷野外大音楽堂公演は幕を下ろした。圧倒的なステージだった。やはり、40周年は通過点だ。もしあなたが、たとえ一時期でも、これまで生きてきた中でモッズのナンバーに熱狂し、心の支えとしていた時期があるのなら、今のモッズを見た方がいい。現在のモッズは、よりタフになって、より熟成されてあなたを待っているだろう。モッズは継続していく。しかし絶対はない。それは今を生きるすべての人に言えることだ。だからこそ、声を強くして言いたい。今が最高だと断言できる日本最高峰のロックンロールバンドの勇姿をあなたの目に焼き付けて欲しい。

撮影◎斉藤ユーリ
文◎本田隆


<THE MODS 40TH ANNIVERSARY LIVE ENCORE 続・約束の夜>

2022年7月9日(土)
@日比谷野外大音楽堂
1.S・O・S
2.F.T.W.
3.MAYDAY MAYDAY
4.STORY
5.BOOGIE BOMB
6.SHE'S THE C
7.ハートに火をつけて
8.涙のワンウェイ
9.クラレンス+アラバマ
10.GO-STOP BOOGIE
11.バラッドをお前に
12.JOHNNY COME BACK
13.ゴキゲンRADIO
14.パズル・シティを塗りつぶせ
ENCORE 1
1.UNDER THE GUN
2.いつの日か…Doomsday War
3.READY TO ROCK
ENCORE 2
1.STAY CRAZY
2.KILL THE NIGHT
3.LET'S GO GARAGE


◆THE MODSオフィシャルサイト
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