【ライブレポート】Mrs. GREEN APPLE、フェーズ2という新章に見た“かけがえのない場所”と“力強い宣言”

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Mrs. GREEN APPLEが、活動休止期間を経て約2年半ぶりとなる一夜限りのワンマンライブ<Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia” supported by PIA 50th Anniversary>を開催して約3週間が経つ。先ごろ公開したオフィシャルレポートに続いて、同公演の分析レポートをお届けしたい。

◆Mrs. GREEN APPLE 画像 / 動画

新編成での最初のライブということで、多くのファンと同じように“おかえり”という喜ばしい気持ちもあったし、純粋にライブパフォーマンスという点からしても、極めてクオリティの高いステージに感嘆したが、アンコールを含め全23曲を聴き終えた時、胸にこみあげてきたのは、歓喜とも爽快感ともまた違う、これまでに感じたことのない何とも不思議な感情であった。それが何だったのかを理解するために、事あるごとに“あの日”を反芻した3週間だった。




<Utopia>を観終えた直後、反射的に頭に浮かんだことは、このライブは5年後、10年後、あるいは20年後にMrs. GREEN APPLEの歴史を振り返った時、間違いなく“あの日”として取り上げられる重要な瞬間となるだろうということだった。

どのバンドにも必ず、その歴史を紐解いた時に、眩いばかりに光り輝き、そして大きく飛躍していくきっけかとなるライブがある。ある人は、後にそれを“伝説のライブ”と呼んだり、あるいは“このライブであのバンドは化けた”と言ったりもする。そうした“すごいライブ”は、イベント性の大きさやステージに臨むミュージシャンの意識とは無関係に起こり得るものであり、例え小規模な日常的なライブハウス公演であっても、いろんな要因がポジティヴな連鎖を起こすことで、とてつもない光を放つ一瞬が起こり得るのだ。

今回の<Utopia>は、当然ながらイベント性も規模的にも大きなものであったが、それとは別次元で、3人がとてつもなく光り輝き、その表情や立ち振る舞いに心底魅了されたライブであった。ただ、“いいライブだった”というだけの話なら、これまでの彼らのライブにも度々あった要素だ。なぜ自分はこの日、ここまでMrs. GREEN APPLEに惹きつけられたのだろうか。


<Utopia>から時間を経たことで、かえって印象が鮮明となってきた点がある。それは、“ストレートに音楽で勝負してきた”というある種の驚きと、“真っ白な光の世界”という強い印象、そして“人間・Mrs. GREEN APPLE”をひしひしと感じたという3点だ。

まず、音楽そのものについて。

Mrs. GREEN APPLEの活動休止期間中にはフロントマン大森元貴(Vo, G)のソロ活動で、そして活動再開後は、公開されたヴィジュアルやミュージックビデオにおいて、そのファッションやダンスとさまざまな話題を振りまいてきた。彼らの姿勢は、Mrs. GREEN APPLEがバンドの枠を超えたエンタテインメント集団に昇華していくというというポジティヴな期待感が高まる一方で、“バンドではなくなるのではないか”というネガティヴな声が少なからずあったことも、これまた事実だ。そんな中で行われる<Utopia>は一体どんなステージになるのだろうか。Mrs. GREEN APPLEはどこに行くのだろうか。誰しもが、大きな期待と不安を抱いて、その瞬間を待ちわびていたはずだ。

その注目のステージで3人が魅せてくれたのは、高らかに歌をうたい、ギターをかき鳴らし、ピアノを奏でるというミュージシャンとしての真髄を前面に押し出した堂々たる姿だった。しかも彼らの演奏力、サポートメンバーを含めたバンド力は、明らかに“フェーズ2”の始まりに相応しく、新たなステップへと歩みを進めていた。

誤解してほしくないのは、決して“フェーズ1”と比較してどうこうといった意味合いではない。推測するに、周囲が思う以上にメンバー自身が、バンド編成が変わってしまったことに対して大きな不安や危機感を抱いていたのだろう。それを乗り越えるための5人の結束力、あるいはこのステージにかける集中力が、この日の演奏を高い次元へと押し上げていた。

ミニアルバム『Unity』でのインタビューで大森は「ストーリーも大事だけど、やっぱり曲だよなって思っているんです」「再始動した一発目の新曲が素晴らしいものであるということが、僕らがファンに対して出来る一番筋道の通った責任の取り方だ」と語っていたように、ライブにおいても、音楽的に質の高い歌と演奏を披露することこそが、一番筋道の通った責任の取り方だと考えていたのだろう。まさしく新生Mrs. GREEN APPLEの音楽にかける覚悟といったものが、如実に聴き手に伝わってくるステージであった。




そして、真っ白な光の世界。

実際のライブ演出そのものは、例えば、ゲストボーカルasmiが登場した「ブルーアンビエンス(feat. asmi)」ではヴィヴィッドカラーのグラフィックが展開したり、「月とアネモネ」では幻想的なピンク色の月がステージ後方のLEDスクリーンに映し出されたかと思えば、「延々」では緑、「インフェルノ」では赤い炎が立ち上り、「うブ」でのド派手なレーザー光線、「ダンスホール」のきらびやかなミラーボールなど、映像や照明によって多様な世界観が演出されていた。それでも、最も筆者の印象に残っているのは、真っ白な光に満ちた世界だった。

白があるからこそ、あらゆる色彩はより鮮明になり、そして影となる黒は、さらに深みを増していく。だからこそ絵を描くためのキャンパスは白い。音楽も同様に、バンドの基盤、あるいは軸と言ってもいいが、そこがしっかりあってはじめて、さまざまなテイストのメロディやサウンドが活きてくる。型があるからこそ、型を破っていける。

そう考えていくと、最新作であるミニアルバム『Unity』は、収録された6曲だけをミクロに見ると、実にバラエティに富んだ作品に感じられる。ただこの日のライブのように、Mrs. GREEN APPLEのこれまでの楽曲の中に混ざった全体像をマクロな視点で眺めてみると、6曲の新曲たちは、むしろ彼らのベーシックかつスタンダードと言えるような存在であることに気付かされる。『Unity』は、これから3人がMrs. GREEN APPLEという絵を描いていくための真っ白なキャンバスであり、同時に、3人からの“自分たちはこうなんだ”という告白だったのかもしれない。

“告白”、あるいは“独白”という言葉にも“白”という文字が使われているように、“白”には“話す”という意味も含まれている。この日の大森は、まさしく“歌う”というよりも、まるで歌を通して自身の想いを観客に語りかけているように感じられる場面が多々あった。それは若井滉斗(G)、そして藤澤涼架(Key)についても同様で、彼らもまた、ギターやキーボードの音色によって、自分の心の声を観客に届けていた。その際たるシーンが、本編ラストに届けられた静かに、それでいてエモーショナルな「Part of me」だったように思える。


“話す”という点で、もうひとつ印象的だったシーンがある。終始笑顔だった3人の表情が唯一引き締まった、ライブ終盤のMC。活動休止期間中、そして活動を再開し、この日を迎えるまでの時間に大森が心に抱いた気持ちを吐露した場面だった。

「あの……編成が変わりまして。5人から、3人になりました。すごく大きな衝撃を与えてしまったと思うし、すごく寂しく、すごくショッキングなのは僕らも一緒です。誰よりも寂しくてショックであると言えるくらい、大きな出来事でした。
 でも“フェーズ2”という新章が始まって、こうして僕らもいろんな不安の中、走り出せて、いろんな人たちが集まってくださって、ライブビューイングだったりとか、配信だったりとか、中継だったりとか(を見てくれて)、信じられないというか……どういうMCをしたらいいかわからないくらいの気持ちになっています。ありがとうございます」──大森元貴

こう大森が語ると、3人は深々と頭を下げ、会場からは、これまでにあまり耳にしたことがないほどに、とてつもなく大きく、そして長い拍手が送られた。その温かい拍手を受けて大森は、「あははは。そんな拍手しちゃうと泣いちゃうよ、2人が」とおどけてみせたが、一番泣いてしまいそうになっていたのは、きっと彼自身だったに違いない。


ライブ(LIVE)という言葉は、“生演奏”“実演”といった意味だが、それだけではない。同時に、“生活する”“暮らす”“生きる”という意味も併せ持っているように、ライブは、ステージに立つ人間の生きざまや、その時々の感情や意志、そしてパフォーマンスに込めた強い想いをリアルに感じとれる場所でもある。まさしくMrs. GREEN APPLEが作り上げた<Utopia>という空間は、本人たちにとって本意だったかどうかはわからないが、期せずして、大森、若井、藤澤という3人がどういう人間なのか、どういう人生を歩んできたのかという、これまで彼らのパブリックイメージからは見えなかった素顔の側面を、一瞬とは言え、垣間見ることができた、かけがえのない場所となった。

果たしてそれは、観る側にどのように伝わったのだろうか。その答えは、とてつもなく大きく温かい観客の拍手と、終演後のバックステージで目にした、彼らを支え続けてきた大勢のスタッフたちの喜びと安堵に満ち溢れた笑顔に詰め込まれていた。筆者がこのライブ後に抱いた何とも言い表せない不思議な感情は、きっとこの“人間・Mrs. GREEN APPLE”に心打たれたことによるものだろう。


アンコールを終えた3人は、肩を組み、そして手を振ってステージを去っていった。それは過去と区切りをつけるものではなく、清々しく、そして華やかに、今後もMrs. GREEN APPLEを続けていくのだという力強い宣言のようにも感じられた。

取材・文◎布施雄一郎
撮影◎上飯坂一

■<Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia” supported by PIA 50th Anniversary>2022年7月8日@神奈川・ぴあアリーナMM セットリスト

01. Attitude
02. CHEERS
03. L.P
04. アボイドノート
05. StaRt
06. 道徳と皿
07. PRESENT
08. 嘘じゃないよ
09. In the Morning
10. ブルーアンビエンス (feat.asmi)
11. 月とアネモネ
12. 延々
13. 君を知らない
14. 僕のこと
15. 青と夏
16. インフェルノ
17. うブ
18. ロマンチシズム
19. ダンスホール
20. Theater
21. Part of me
encore
en1. 我逢人
en2. ニュー・マイ・ノーマル

■ミニアルバム『Unity』

2022年7月8日(金)リリース
【完全生産限定盤(CD+DVD+GOODS)】UPCH-29432 ¥6,600(税込)
※BOX仕様:縦241mm 横193mm 高さ64mm
【初回限定盤(CD+DVD)】UPCH-29433 ¥2,530(税込)
※2折デジパック仕様:トールサイズ
【通常盤(CD)】UPCH-20620 ¥1,980(税込)

▼CD収録内容
1. ニュー・マイ・ノーマル
2. ダンスホール ※フジテレビ系全国28局ネット『めざまし8』テーマ曲
3. ブルーアンビエンス(feat. asmi) ※ABEMA『今日、好きになりました。』主題歌
4. 君を知らない
5. 延々 ※ゲームアプリ『炎炎ノ消防隊 炎舞ノ章』テーマソング
6. Part of me

▼完全生産限定盤GOODS
(1) ビッグシルエットTシャツ (ワンサイズ)
(2) スマホloopリボンストラップ&ステッカーセット(ステッカー7種)

▼完全生産限定盤 / 初回限定盤特典DVD
「ニュー・マイ・ノーマル」Music Video(Album Edition)、フェーズ2開幕への歩みを追ったドキュメント映像ほか収録予定


▲『Unity』完全生産限定盤


▲『Unity』初回限定盤


▲『Unity』通常盤



▼チェーン別オリジナル特典
・ユニバーサルミュージックストア:告知ポスター(B2)& クリアファイル(B5)
・タワーレコード:ポスター タワーレコードver.(B2)
・HMV:ポスター HMV ver.(B2)
・TSUTAYA:ポスター TSUTAYA ver.(B2)
・セブンネット:モバイルスタンドキーホルダー
・楽天:アクリルキーホルダー
・amazon:メガジャケ
・応援店特典:ポストカード
※応援店特典は、オリジナル特典が付く店舗、オンラインショップは対象外となります。
※特典は先着となり数に限りがございます。
※特典は一部取り扱いのない店舗がございます。ご予約の際ご確認ください。

■<Mrs. GREEN APPLE ゼンジン未到とリライアンス〜復誦編〜 >

11月09日(水) 神奈川・KT Zepp Yokohama
open18:00 / START19:00
11月10日(木) 神奈川・KT Zepp Yokohama
open18:00 / start19:00
11月14日(月) 東京・Zepp Haneda
open18:00 / start19:00
11月15日(火) 東京・Zepp Haneda
open18:00 / start19:00
11月21日(月) 愛知・Zepp Nagoya
open18:00 / start19:00
11月22日(火) 愛知・Zepp Nagoya
open18:00 / start19:00
11月29日(火) 北海道・Zepp Sapporo
open18:00 / start19:00
11月30日(水) 北海道・Zepp Sapporo
open18:00 / start19:00
12月06日(火) 大阪・Zepp Osaka Bayside
open18:00 / start19:00
12月07日(水) 大阪・Zepp Osaka Bayside
open18:00 / start19:00
12月13日(火) 福岡・Zepp Fukuoka
open18:00 / start19:00
12月14日(水) 福岡・Zepp Fukuoka
open18:00 / start19:00
12月26日(月) 東京・Zepp DiverCity
open18:00 / start19:00
12月27日(火) 東京・Zepp DiverCity
open18:00 / start19:00

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