【インタビュー】Petit Brabancon、京が語るアルバム『Fetish』「衝動的な勢いをファーストでは大事にしたい」
京(DIR EN GREY / Voice)、yukihiro(L’Arc-en-Ciel / Drums)、ミヤ(MUCC / Guitar)、antz (Tokyo Shoegazer / Guitar)、高松浩史(THE NOVEMBERS / Bass)によるPetit Brabanconが8月31日、1stアルバム『Fetish』をリリースする。いよいよモンスターバンドにしてドリームメンバーが全貌を現す瞬間だ。その音質は素晴らしく、収録された全13曲が重厚でエクストリームなロックチューン。想像を遙かに超えた音圧と圧倒的な個々の存在感の前では、もはやどんな形容も陳腐に色褪せてしまう。BARKSはアルバム『Fetish』を解き明かすべく、バンド本格始動時と同様にメンバーのパーソナルインタビューを試みた。
◆Petit Brabancon (プチ・ブラバンソン) 画像 / 動画
その第一弾は、京。バンドの発起人であり全曲の作詩を手掛けた彼が、盲目的崇拝物の意を持つ『Fetish』に封じ込めた言葉は鋭く、怒りや苛立ちをベースに叫びへと昇華されたメッセージが心を奮わせる。「衝動的な勢いとか、そういうものをファーストでは大事にしたいというのがあった」とは京の言葉だが、個々に揺るぎない経歴と主義を持つ5人が作り上げたサウンドは、まさしく真っ新で唯一無二の膨大なエネルギーを秘めたものだった。アルバムの手応え、制作秘話、Petit BrabanconとDIR EN GREYやsukekiyoとの違い、作詩のベースにある思想、音楽をやるモチベーション、そしてPetit Brabanconで目指すものについて訊いたロングインタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■ライヴで化けそうな曲ばかり
■音源だけで完結するバンドじゃない
──いよいよアルバムが完成しました。手応えはいかがですか。
京:良いと思います。はい。
──前にお話をお聞きした時はまだ3曲しか発表されておらず、ライヴもやる前の段階でした。Petit Brabanconがどういうバンドであるのか、まだ全貌がはっきりと見えている段階ではなかったと思うんです。アルバムが完成してみて、ライヴも2回やって、どういうバンドか見えてきましたか?
京:まだ正直分からないですね。"ライヴ"って言えるほどまだ丸々とやっていないので。1回目も3曲だし。2回目もシューティングがあったので。なので、もう少しライヴを重ねてようやく見えてくるのかなっていうのが正直なところですかね。
──なるほど。アルバムが完成した今もまだ見えてこないですか。
京:いや、曲とか、バンドの雰囲気はあるんですけど、ライヴで化けそうな曲ばっかりだったりするので、感覚的に。やっぱり音源だけ聞いて完結するバンドじゃない。(自分のやっているバンドは)全部そうな気がするけど。(Petit Brabanconは)よりそんな感じがある。ライヴバンドな気がする。なのでアルバムが出て、ツアーを回って、ツアーが終わってようやく一段落というか、一つ区切りがつくというイメージなので。
──その「ライヴで化けそう」な「ライヴバンドである」という感覚は、どういうところで感じられたんですか?
京:うーん…激しい曲も結構あったり、世界観というのもあるんですけど、ライヴで曲をやると結構、音源と変わってくるかなぁっていう感じがあるんです。なんだろう、いい意味でもっと粗さが出てきたりとか。勢いがもうちょっと出てきたりとか。そのまま音源通り綺麗にやるバンドじゃないと思っているんで。特に僕はその時のバンドの熱量とかにけっこう左右されるヴォーカリストなので。
──武道館イベントやクラブチッタのシューティングライヴではまだ、そこまで感知できなかった。
京:さすがに3曲じゃちょっとわからないかなぁっていう。自分のパフォーマンス的には満足はできているんですけど、メンバーを見ている余裕ももちろんないし、バンドサウンドを感じてどうとか、そういうところまではさすがに難しかったですね。で、シューティングの時も…シューティングっていうことのほうが頭にあったので、あんまりライヴっていう感じは、僕はしていなくて。
──でも武道館ライヴは衝撃的でしたよ、観ている側からすると。
京:そう…なんですかね。
──音がとにかくめちゃくちゃデカかったっていうのが。
京:あぁ、そうみたいですね。
▲<DANGER CRUE 40th Anniversary JACK IN THE BOX 2021 supported by MAVERICK DC GROUP>2021年12月27日@東京・日本武道館
▲<Petit Brabancon 1st Premium Shooting Live 2022「渇き」>2022年1月14日@川崎・CLUB CITTA'
──でもそれ以上にバンドのパワーが凄くて。先ほどyukihiroさんに話をお聞きしたんですけど、一緒にステージに立ってみて、京さんの凄さが改めて分かったみたいなことをおっしゃってましたね。
京:あ、そうなんですか。めちゃめちゃ嬉しいですね。
──でも実際に演奏してみた手応えは、まだそんなに掴めていない感じですか?
京:そうですね。あの、僕は左耳があんまり聞こえなかったりするんで。そういうのもあってグルーヴを感じて気持ちよくライヴをして、とかそういうのもなくて。あとやっぱ外音がデカくて、自分のイヤモニの中の音より外音のほうがデカかったので、すごくやりづらくて。そのイメージから出られなかったですね。
──聴いている分には全く破綻なくやっているように聞こえましたけどね。
京:いやぁ……一応、ライン録音したものを聴いたんですけど、僕のプレイ的にはちょっとひどいなぁと(笑)。
▲『Fetish』完全限定盤
──そうだったんですね。ではアルバムについてお訊きします。アルバムの楽曲が上がってきた段階で、京さんとしてはどのようなアプローチでいこうと考えたんですか?
京:いや、特にそんな……こう、ぬるいものが出来てくるとは全然思っていなかったので。どの曲も良かったし。アルバムに入らなかった曲もいっぱいあったんで、どれもいいなって。どの曲が入っても結構……なんだろうな。ファーストらしいというか。勢いのある、バンド感が詰まったアルバムになるんだろうなぁという感じはしていましたけど。
──京さんがアルバムにおいて目指したものも、ファーストアルバムらしい勢いのあるものにしたかったと?
京:あぁ、それはあります。バンドを組みたての時でないと出せない粗さとか勢いとかあるじゃないですか。ああいうのってアルバムを出すごとに、すごくやりづらくなる、表現しにくくなると思っているので。そこはパッケージしたいなっていうのはありましたね。
──バンドの個性や方向性が固まってしまうと、やりづらくなることも?
京:うん。何なんですかね? そこ、わかんないですよね。なんだろう。衝動的に作ったとか、衝動的な勢いとか、そういうものをファーストでは大事にしたいというのがあったので。完璧に作り込んでどうとか、計算してどうとか、あんまりそういう感じじゃないほうがいいかなっていう。
──ミヤさんとかantzさんに「こういう曲を書いてほしい」みたいな注文はされたんですか?
京:うーんと……アルバムの1曲目にハマりそうな曲が自分の中でまだないなぁって思ったときに、それを軽く伝えたような気がします。
──ミヤさん作曲の「Don't forget」ですね。アルバム全体のバランスを考えながらこういう曲が必要である、あったほうがいいな、みたいな判断。
京:でも、それも言ったのは1曲目くらいかなぁ。
──皆さんがおっしゃるのは、京さんはとにかく作業が早くて、曲が出来たらあっという間に歌詩をつけて、なんならヴォーカルも全部入れちゃう。そういう作業がすごく早いってお聞きしましたけど、曲が出てくると、ご自分の中にイマジネーションがバーッと湧いてくる?
京:そうですね、うん。第一印象でサラッと歌ってみて、軽く直してっていうのが僕の今までのパターンなんですけど。でもミヤ君の曲って、もともとミヤ君が歌っているメロディがデモに入っていたりするので。それで、自分がつるっと歌ったバージョンと、ミヤ君のメロディバージョンと。ふたつ録ったり、良いとこ取りしたりとか。で、そういうのを自分で決めたり、ミヤ君と話して、「ここはこっちにしようか」とか。そういうやり取りくらいで。自分が作ったメロディとか歌詩は、だいたいオケが決まって尺が決まった段階で、ほぼ、95%くらいは完成形でありましたね。
──DIR EN GREYで出てくる曲とは作者も異なるし、違うと思うんですけど、具体的にどう違います?
京:もちろん全然違います。専門的なことは分からないですけど、音も違うし。うーん、なんだろう……空気感? 雰囲気? リフも全然違うし、うん……大雑把なことしか説明できないですけど。
──当然違う曲が出てくれば自分の違う部分が歌詩とか歌に出てくる?
京:そうですね。うん。出てきてる部分もあると思います。あまり考えないですけど。
──今回のアルバムを聴いて思ったんですが、Petit brabanconのほうが、感情がむき出しになっているというか。歌詩とかも、けっこう荒っぽい言葉遣いじゃないですか。
京:そうですね。
──そこらへんは、自分で自覚はあります?
京:確かにそうだなぁって思いますけど、だいたい歌詩は楽曲のイメージで出てきたものを書いているので、「まぁそれはそうなるよね」という。sukekiyoだったら女目線の世界観が多いので。降りてくるものがあるし。DIR EN GREYだったらああいう世界観重視であったりとか。うん。結構僕はそこらへんは自然な感じで、特に意図的に使い分けてはいないですね。
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