【ライブレポート】defspiral、「新体制でココに帰って来れたことを嬉しく思ってます」

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去る5月28日、バンド結成12周年ライヴのアンコールで、defspiralは約半年間サポートドラムを務めた和樹を正式メンバーとして迎え入れることを発表。その後、4人体制となった新生defspiralとして<defspiral TOUR 2022-ALTER VISION->で全国を回り、ライヴを重ねるごとに4人は“音の絆”を深めてきた。

◆ライブ写真

そして迎えたツアーファイナル、Spotify O-WEST。思い返せば1年前、ココは涙で溢れていた。その悲しい記憶を払拭し、笑顔溢れる場所へと塗り替えるべく、4人は晴れやかな表情で華やかにステージに現れた。

ステージ上にはクリアな赤のドラムセット、そのバスドラムのヘッドにはdefspiralのロゴ。そんなちょっとした変化に、和樹はサポートではなくメンバーなのだ、とあらためて実感する。新体制で全国ツアーを行ってきた彼らがツアーで1本1本ライヴを重ねてきた成果をどう魅せてくれるのか? 期待に胸を膨らませ集まったFreaks(※defspiralファンの呼称)に、彼らがまず放ったのは銀色の矢、「SILVER ARROW」。疾走感と攻撃性に富んだ演奏、MASATOからRYOへと繋がれるコーラスのバトン、溢れんばかりのステージにかける情熱の矢でFreaksのハートを打ち抜く。これまでとはちょっと違うドラミングに新しい血を感じつつ、その変化は楽曲の進化だと素直に受け取れるのは、和樹の有無を言わさぬ演奏力と華やかなパフォーマンス、それによってフロントの3人が突き動かされ、ステージでの動きやプレーも活性化しているのが見て取れるから。


言葉を選ばず言えば、defspiralは確実に若返っていると感じる。爆発するバンドのエネルギーは、時としてTAKAの曲中での煽りやフェイク、鬼気迫る表情や、MASATOやRYOの激しい動きとなる。例えば5曲目「Babylon」。昨今ではMASATOがアームを駆使しつつギターを掻き鳴らすインプロヴィゼーションから始まるスタイルで披露されているが、今夜はいつもに増してギターがエモーショナル、感情剥き出しの噛みつくような雄叫びはFreaksを熱くさせているようだ。

しかし、そういった尖ったエネルギーだけがdefspiralの魅力ではない。それは、ミディアムテンポの裏打ちのリズム、RYOの奏でるアップライトベースというロックの枠に収まりきれないムーディーな「カナリア」の演奏を見れば一目瞭然。歌謡曲のような耳障りのいいメロディーを今夜も感情の赴くまま、タクトにとらわれることなくTAKAは高らかに唄い上げる。そこに美しい所作をプラスして豊かに表現していく様は、まるでミュージカルの1シーンのようでもある。そんな一筋縄ではいかないdefspiralの楽曲、音楽を深く理解し、しばしば歌詞を口ずさみ、時に切ない表情でた時にははち切れんばかりの笑顔で、しっかりとサウンドの土台を支える和樹。正式メンバになってわずか2か月なのに頼もしい限り。

中盤、「花とリビドー」の演奏では、吐息混じりの唄でTAKAはFreaksを翻弄する。こういった甘美な音楽でオーディエンスを酔わせることができるのも百戦錬磨のバンド・defspiralだからこそ。


「あらためまして、ようこそ渋谷! defspiralがまたこの場所に帰って来ました。(感動の)気持ちでいっぱいです。皆さん、楽しんで帰ってください。ツアーでぐるっと全国を回って、いろんな想い出のあるSpotify O-WESTに帰って来ました。今回はご覧のとおりシンプルなステージ。幕(=バックドロップ)と、4人と、みんながいるだけです。我々の音楽と、唄と、みんなのエネルギーで最高な夜にしましょう。楽しんでいきましょう!イけるか!」──TAKA

どうやらライヴ中盤にしてTAKAは感極まっているように見える。けれど、MASATOが弾く個性的なコードのリフから「PARADISE」が始まれば、ファンもメンバーも一気にヒートアップ、手を掲げて踊り狂う。感情の高ぶりは「HYSTERIA」のイントロから吠えまくりのTAKAを見れば明らか。そうかと思えばファルセットを多用する唄で「PHANTOM」の美しい世界観へと導き、伸びやかな声が心地いい「HALO」ですべてを包み込む。多種多様、良質な演奏で我々をdefspiralの世界へと引きずり込み、どっぷり浸らせてくれる彼らに対して、曲と曲との狭間で沸き起こる拍手はメンバーが正面を向いて話をはじめる鳴り止まない。


それを見たTAKAは「凄いね。ありがとうございます。今日もたくさんの想いのこもった拍手、ありがとうございます。(その拍手をTAKAが手で合図し湧かせたり、ストップさせたりしつつ)お昼のリーダー(=『笑っていいとも』のタモリ氏)みたいになってる(笑)」と、ちょっとおどけてみせたりする一場面も。

「ファイナル、遂にやってきましたね。地方を回って最後は東京、とてもとても大好きな会場に帰って来ました。何度も何度も節目でステージに立ってますけど、本当に気持ちいいです。今日、ここに立たせてくれてありがとうございます。ツアー・ファイナル、今日も思い残すことなくみんなで騒いで帰りましょう。新しい歴史をココに刻んでいきましょう!」──TAKA


そう言った後、クレイジーなRYOの即興から「PULSE」へ。抑えきれない衝動とほとばしるエネルギー、血湧き肉躍る演奏でメンバーもファンの興奮も最高潮。伸びやかな唄の「METEOR」、力強い意志が感じられる「AURORA」とたたみかけ、本編最後は踊れる「IRIS」でメンバーとオーディエンスは喜びを分かち合った。

主役がステージを去った後、アンコールを求める拍手がトーンダウンすることなくずっと鳴り響く。それだけ心に響くライヴが展開できているということなのだろう。まもなくして、ツアーTシャツに着替えた4人が再び登場。

「本編で燃え尽きそうになるくらい楽しんでやってます。皆さんも、楽しんでくれてるかい? まだまだ、みんなの声を聴けない期間は続いていますけど、引き続き拍手と目の表情と、マスクで息苦しい中での素晴らしいジャンプで想いは届いてます。周年のライヴの翌週からツアーが始まりまして。今年は9か所、1本1本充実したライヴで、思い切り駆け抜けることができました。周年のライヴで新しいメンバーが加入することを発表されましたけど、どうですか?(と和樹を見る)」──TAKA

「楽しかったですよ、めちゃめちゃ」──和樹

「何か印象に残ってること、1つくらいあるんじゃないですか?」──TAKA

「いっぱいありますよ。全公演、想いを込めて叩いたんで、そりゃ~たくさんありますよ」──和樹

「じゃ、1つくらい具体的に言ってくださいよ」
──TAKA

「…えっ?(笑)」──和樹


ちょっとした関西風“和樹いじり”が、兄さん方(TAKA、MASATO、RYO)の間では流行っているらしい(笑)。けれど、それは和樹のキャラクターをより浸透させようという親心なのかも。

「僕、一発目がスゴく印象に残っているんですけど。加入して1週間くらいしてからのツアー、スゴく楽しみだった反面、怖さもあって。空き缶飛んでくるんじゃないかって。自分のバンドなんですけど、アウェイ感があったんです。でも、実際には全国各地でスゴく温かく迎えてもらえたし、ツアーの途中からホームって思っていいんだな、と思えました。ありがとうございます」──和樹

「ふと、新しいドラマーが入ったのかな?という不思議な感覚が残りつつ回り始めたこのツアーでしたが、ここまで一緒に演奏してきたら、もうファミリーですね。でも、本当にココからスタートなんで。音源作って、ツアーして、それで初めて新体制ってことじゃないかと俺は思ってるので”」──MASATO

一気にではなく、徐々に徐々に4人の絆は深まっているのだろう。それと比例するように演奏の一体感も増していると我々も感じている。

「ツアーのある週末が楽しみでした。充実したツアーだったと思いますよ。1年2か月前、ここで俺、号泣してたんですよ。まさか大号泣の1年後に、同じステージに笑顔で立ってるとは思わなかった。本当に和樹に感謝です」──RYO

そんな感動的なMCに大きく頷くFreaks。彼ら、彼女らも一緒に涙した仲間なのだ。ちょっぴりウルッとくる瞬間はあったものの、ロングMC中には、ライヴ前日に誕生日を迎えたRYOを、うまい棒を束ねて作った3段重ねのバースデーケーキならぬバースデーうまい棒(ロウソク代わりの電飾付き)で祝ったり、と大盛り上がり。Freaksは声を上げられなかったものの、要所要所、心の中では大爆笑していたことだろう。


そんなアットホームな時間を「BREAK THE SILENCE」で一気にライヴモードへと引き戻し、スリリングな「RESISTANCE」、やわらかで大きな世界観の「ESTRELLA」の演奏へと繋げていく。

「今日はツアーの集大成ともいえるファイナル、ここで一区切りになるわけですけど、怪我することもなく最後まで辿り着けたことが素晴らしいし、嬉しく思っています。この2年間、日常生活の中で困難なこともあったと思います。でも、こうやってかけがえのない時間を過ごし、ツアーを完走することができました。こうして4人で新体制defspiralとしてココに帰って来れたことを嬉しく思ってます。見届けに来てくれてありがとうございます。1年と少し前は思いもよらなかったけど、もう新生defspiralは動き出しています。この先も続いていくように精進していきます。のでよろしくお願いします」──TAKA

今、4人が伝えたいことをちゃんと話した後は、「Arcoromancer」「MASQUERADE」でアンコールを締め括ったが、まだまだ観たい!というFreaksの心の声が割れんばかりの拍手となり、メンバーを再びステージに呼び戻す。そして、ライヴで大人気のナンバー「LOTUS」で大盛り上がりに。


「最高のツアーでした。まだまだここからですよ。俺たちの物語はここから始まっていくので。俺たち4人とみんなとで、ここからワクワクする未来を作っていこうぜ!」──TAKA

オーラスで演奏された「CARNAVAL」の明るい曲調は、希望に満ち溢れた4人の気持ちを代弁してるかのように会場に響き渡った。この歌詞の言葉になぞらえるなら、新生defspiralの“始まりのファンファーレ”は高らかに鳴ったばかり。そんな4人を祝福すべく、会場のお客さんはマスクの奧で、配信で観ている人たちは画面の向こう側で、笑顔になって見守っていたことだろう。

年内には新しい作品のリリース、東名阪ツアーも予定されてるそうだ。明るい未来を、新生defspiral、この4人と一緒に作っていきたい、そう思わせるには十分すぎるくらいほと最高なライヴを魅せてくれた彼らに、会場のお客さんは惜しみなく拍手を送り続けた。

文◎増渕 公子[333music] 
写真◎@Lc5_Aki◆defspiral オフィシャルサイト
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