【ライブレポート】GLAY、多幸感満ちるFC発足25周年ツアー「みなさんの笑顔が僕らの原動力」

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幕張メッセ国際展示場9・10・11ホールをぶち抜いた巨大空間のど真ん中にステージを組み、左右を「L席」「R席」に分けるという巨大スケールにまず度肝を抜かれる。GLAYのファンクラブ「Happy Swing」の発足25周年を記念するツアー<GLAY LIVE TOUR 2022~We♡Happy Swing~ Vol.3 Presented by HAPPY SWING 25th Anniv.>。


◆ライブ写真

本来は昨年2021夏、ファンクラブ会員限定として開催する予定だったが、コロナ禍による延期とその後の情勢変化を受け、会員以外も参加できることになった特別なツアーだ。15周年、20周年に開催された過去2回は、ファンクラブイベントならではの特別なセットリストが注目されたが、果たして今回は? 未知の期待と興奮の満ちた東京公演初日の模様をレポートする。


円形ステージをぐるりと取り巻く豪快なホーン隊と、華やかなカラーガードのパフォーマンスでオープニングを飾るのは、過去にもGLAYのライブに出演経験のあるマーチングバンド「YOKOHAMA ROBINS」のメンバーたち。GLAYのヒット曲をアレンジした演奏でぐいぐい盛り上げ、喝采を浴びてステージを降りると、いよいよGLAYの登場だ。笑顔で手を振りながらステージに現れたメンバーの姿は、通常のライブよりも心なしかリラックスしているように見える。1曲目に選ばれた「a Boy~ずっと忘れない」の、ゆったりとした穏やかな歌と演奏がその印象を強める。距離は遠いが心は近い、いつもとは一味違った親密なライブになる予感がする。

幕張メッセのある海浜幕張駅から二駅向こう、稲毛海岸が歌詞に登場する「summer FM」、そして「YOU MAY DREAM」。bayfmで放送中のTERUの番組『TERU ME NIGHT GLAY』を歌詞に盛り込む茶目っ気を見せながら、夏らしくアッパーな曲を連ねてぐんぐん飛ばす。ド派手なレーザーが飛び交い、スモークが吹きあがる。間奏をたっぷりと使い、花道に飛び出したTERUがコール&レスポンスの代わりに手振りで盛り上げる。この2年半で様々なことが変わったが、ライブの楽しさは変わらない。GLAYのパワーは変わらない。


頭上に据えられた巨大6面スクリーンが、「Happy Swing」25年間の懐かしい記録写真を映し出す。その間にステージが180度回転し、「L席」「R席」の両方でメンバーが正面を向けるという仕掛けだ。曲は「BLACK EYES SHE HAD」「風にひとり」「GONE WITH THE WIND」と、HISASHIのクレイジーでトリッキーなギタープレーが堪能できる曲がずらりと並ぶ。円形ステージから花道へ、TERUもよく動くが今夜のHISASHIはとてもアクティブで、ステージ全体を動き回りながら強烈に歪んだ音を叩きつける。真っ赤なライトや照明が妖しく光る。まだ6曲なのにすでに終盤のようなハイテンションでライブは進む。

再びのインターバルを経てステージの向きが変わる。TAKUROがアコースティックギターを奏で、ハジメタル(Key)がノスタルジックなムード溢れるアコーディオンを弾く「月の夜に」で、“幕張の夜に”と歌詞を変えて歌うのはお約束だ。「今夜はみんなの愛で心を光でいっぱいにしましょう」──TERUの言葉からの「ゆるぎない者達」、そして「HOWEVER」と続く、アコースティックなムードに包まれたロマンチックなバラード二連発。バラードなのにすさまじいパワーでシャウトを決める、TERUの歌声が広いホールいっぱいに鳴り響く。「HOWEVER」を歌う時には、いついかなる時でも最大限のエモーションを込めて歌わねばならない。そんな覚悟があるではないかと推測する、魂揺さぶる絶唱に感動以外の言葉が出てこない。


次のセクションには、バラエティ豊かな曲調が揃った。TERUとHISASHIの絡みがかっこいいグラマラスなロックチューン「My Private“Jealousy”」、TAKUROが気迫溢れるコーラスで盛り上げる「ROSY」、TAKUROがキーボードを弾く柔らかくメロディアスな「時の雫」。誰も声を出していないはずなのに、会場いっぱいの♪ラララのコーラスが聴こえたような気がしたのは、心の中の声に聴覚が共鳴したからだろう。そしてダークで劇的なストリングスに彩られた新曲「クロムノワール」へ。9月21日リリースの60thシングル「Only One,Only You」のカップリングに収録される、内面的でヘヴィな曲だが確かな強さと優しさを秘めた繊細な曲。せつなさを秘めたTERUの歌の説得力がすごい。

巨大スクリーンに2000年代初頭の懐かしいメンバーの写真が現れては消え、ステージの向きが変わる。ライブはそろそろ中盤から後半だ。ヤバイヤバイ!を合言葉に、毒のある言葉を吐きまくる「百花繚乱」は、TAKUROの渾身のボーカルと、HISASHIのキレまくったギターソロが聴きものだ。続く新曲「GALAXY」も、エレクトロなダンスチューンとグラムロックが絡み合い、危ない刺激たっぷりのロックチューン。これも来たるべきニューシングルのカップリングだ。TAKUROが花道の最先端まで飛び出して、強力なソロを弾きまくる。HISASHIとのツインリードもばっちり決まった。TERUがオーディエンスに向かい手振りを煽る。外の暑さに負けず、場内の熱さもぐんぐん上昇する。


こうなったらもう止まらない。ナンセンスとかっこよさのブレンドが実にGLAYらしい「SHINING MAN」を演奏しながら、突然演奏を止めてオーディエンス全員参加で「青ボード」「赤ボード」を掲げる質問コーナーへ突入。JIROが出したお題「このまま現状維持で声を出さないほうがいいか/声を出して騒ぎたいか」の二択質問が、いつのまにか「隣に音痴がいて歌っていても許せるか」という選択になる展開がおかしい。TAKUROの出した「JIROを1年間預かるなら/5歳のJIROか/5人のJIROか/どっちか選べ」というシュールすぎる質問の答えが真っ二つに割れたのも、あとからじわじわ効いてくる。そんな自由すぎるフリートークで大笑いしたあと、何食わぬ顔で「SHINING MAN」へ戻る。GLAYは本当に変わってる。そしてGLAYは本当にわかってる。

さあ、ここからゴールまでは一直線の全力疾走だ。HISASHIの繰り出すギターとは思えないノイジーなフレーズと、JIROの鬼のようなダウンピッキングがかっこいい「ビリビリクラッシュメン」。そしてGLAYファンには特別な思いのこもる代表曲「ピーク果てしなく ソウル限りなく」。「懐かしの野外でやった曲です。一緒に暴れましょう!」とTERUが叫んだのは、もちろん1999年7月31日、20万人ライブを意識してのこと。あれから23年が過ぎたが、この曲を歌う時は、いついかなる時でも最大限のハッピーと笑顔を約束しなければいけない。そんな決意があるのではないかと推測する、TERUの歌にみなぎるパワーがすごい。


そしてラストを飾る「ACID HEAD」の、スクリーンで燃え上がる炎とシンクロする熱いパフォーマンス。それまでどっしり構えていたJIROも花道へ飛び出し、メンバー全員で全方位のオーディエンスに向き合うフォーメーションがかっこいい。「ありがとうHappy Swing。愛してるぜ!」──一番奥の一人にまで届くようにTERUが叫ぶ。音が消えても1万8000人の熱い拍手が鳴りやまない。

アンコール。黒の和装に着替えたTERUが、GLAYのライブにおける平和と連帯の象徴とも言える「GLOBAL COMMUNICATION」を歌う姿に、GLAYの長い歴史を思う。デビューから28年、ファンクラブ発足26年、「20万人ライブ」から23年が経ち、思い出に刻まれる楽曲は増え続ける。世の中で何が起きても決して止まらないバンドの生きざまが、すべての楽曲に刻み込まれている。


「何でもそうですけど、続けることが一番難しいし、大切なことだと思います。体が動く限り、サポートしていきます」(Toshi)

「Happy Swingのライブに出るのは初めてですが、とても楽しみました。ありがとうございました」(ハジメタル)

「今日は暑いね。プレミアムモルツがおいしいね。久しぶりにこんなにたくさんの人たちの前で演奏できて、なんて自分たちは幸せなんだろうなと思いながら演奏していました。いろんなところから来てくれてありがとう」(JIRO)

「さっきTシャツに着替えて、TAKUROに「何か変じゃない?」って聞いたら、「おまえはいつも変だ」と言われました。GLAYの凸凹コンビ、これからもよろしくお願いします」(HISASHI)

「いつも人に親切でいたいと思うTAKUROさんですけど、世界中でただ一人、HISASHIのことだけは「おまえ」と呼べます。そして今バンドの状態がすごくいいのはみなさんのおかげです。思い出の場所・幕張で、今日また素敵な思い出が一つ増えました」(TAKURO)

「いつもお返しは、いい歌といい演奏といいライブでしか返せないと言ってきましたが、今日はちゃんと言葉でもお返しをしたいです。心から本当にありがとう。みなさんの笑顔が僕らの原動力になっているし、作品作りの根本になっています。これからもGLAYは音楽と、みんなと真摯に向き合って楽しい時間を作っていきます」(TERU)


この日のためにTAKUROが作ってくれた曲を──。新曲「WE♡HAPPY SWING」は、軽快なスカビートに乗って明るく進むロックチューン。ニューシングル「Only One,Only You」のカップリングには、7月31日公演のライブバージョンが収録されるとのこと。ライブで理屈抜きで盛り上がる、新たな定番チューンの誕生だ。頭上を飛行船が飛び回り、花道では「YOKOHAMA ROBINS」のカラーガードたちがツアーロゴを染め抜いた大旗を振って踊る。TAKUROも楽しそうに旗を振っている。ハッピーなスウィングが音楽を通して会場内に溢れ出す。

最後のインターバルを超えると、あとは大団円が待つだけだ。新たな始まりに向けた希望と決意を綴る「はじまりのうた」の、力強く前向きなエイトビートはライブのラストシーンに良く似合う。そしてフィナーレを飾るのはやはりこの曲「HAPPY SWING」だ。アイロニカルな表現を盛り込みつつ、バンド全体で前進するビートと、TERUの圧巻の歌声がリードする希望の歌。Let me show your happy swing。それぞれのハッピーの形を持ち寄って一つになる、それがGLAYのライブ。終演後、記念撮影に臨むメンバーの表情の素直な明るさに、見ているこちらも思わず頬がゆるむ。

このライブを終えると、9月21日にはニューシングル「Only One,Only You」がリリースされ、GLAYは早くも次のフェイズへ突入する。周年イベントは終わったがバンドの勢いは止まらない。それぞれのHAPPY SWINGを持ち寄ってまたライブで会おう。GLAYと同じ時代を生きる喜びをかみしめよう。

取材・文◎宮本英夫
写真◎岡田裕介、田辺佳子

セットリスト

01. a Boy~ずっと忘れない
02. summer FM
03. YOU MAY DREAM
04. BLACK EYES SHE HAD
05. 風にひとり
06. GONE WITH THE WIND
07. 月の夜に
08. ゆるぎない者達
09. HOWEVER
10. My Private “Jealousy”
11. ROSY
12. 時の雫
13. クロムノワール
14. 百花繚乱
15. GALAXY
16. SHINING MAN
17. ビリビリクラッシュメン
18. ピーク果てしなく ソウル限りなく
19. ACID HEAD

en1. GLOBAL COMMUNICATION
en2.WE♡HAPPY SWING
en3..はじまりのうた
en4. HAPPY SWING

◆GLAY オフィシャルサイト
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