【ライブレポート】TOMOO、揺蕩う水の流れのように「ここからまた一緒に旅を」

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どこからが海で、どこからが川なんだろう? 幼い頃に河口近くに架かった橋の上で海と川を眺めながら、そう思ったことがあった。当時は白か黒かはっきりさせないと気が済まなくて結論は出せなかったが、ある程度年齢を重ねていくと世の中は白と黒が混じり合う灰色ばかりであることに気付いてくる。

◆ライブ写真

河口は海と川が混在する場所であり、川の水は海に流れ着くことで海の一部になる。<Estuary(=河口域)>をライブタイトルに冠した、TOMOO史上最大規模のワンマンライヴも、そのような光景が広がっていた。彼女の今までとこれから、ムービーで流れた“Estuary”のカセットテープをめぐった物語と彼女の人生、彼女と観客、彼女の音楽と強力なサポートメンバー、長く応援しているファンと初めて彼女のライヴを観に来たファンなど、異なる存在同士がTOMOOという音楽に集う。それらのグラデーションの中をたゆたうような時間だった。


ステージを包んだ斜幕にムービーが流れると、TOMOOのピアノをきっかけに、サポートバンドとホーン隊とともに「HONEY BOY」で軽やかにこの日の幕を開けた。続いての「らしくもなくたっていいでしょう」もハンドマイクでパフォーマンスし、「酔ひもせす」はバンド編成で披露。ダンスを取り入れながら歌う彼女の丸みを帯びた声は、ビブラートがこちらの心のひだをくすぐるようだ。続いてはキーボード前に腰かけ「雨でも花火に行こうよ」へ。コロナ禍でリリースした楽曲を立て続けに演奏し、自身の最新モードを繰り広げた。


きらめきと焦燥感がない交ぜになった「スコール」の後、3曲を弾き語りソロで披露する。10年近いキャリアのほとんどを弾き語りで活動していたと語る彼女は、歌とピアノで観客の心をまたたく間に引き付けていく。

アーティストも様々で、何よりも歌うことが大事な人物もいれば、ソングライティングを重んじる人物、プレイヤーとしての自身にアイデンティティを見出す人物もいる。だがTOMOOの場合は、歌、ソングライティング、ピアノがすべて同列なのではないだろうか。この3つが揃うからこそ彼女の音楽は生まれるのだ。そう思わせるほどの崇高な気迫が、彼女の全身から立ち上っていた。


ライブタイトルと掛けて披露した、近年ではライヴで演奏する機会のほとんどない初期曲「River」は、“初めてちゃんとセットリストを組んでライヴをした時に1曲目に歌った曲”とエピソードを語り、「レモン」の前には“(高校時代に『The 6th Music Revolution』にエントリーした際に)顔写真を求められたが諸事情で載せられなかったので、代わりに家の冷蔵庫にあったレモンに手持ちの小学生の頃に使っていた彫刻刀でTと彫り、その写真を送った”という17歳のエピソードを明かす。渾身の弾き語りとリラックスした様子で過去に思いを馳せる語り口は、我々を記憶の旅に連れ出すのに充分だった。


弾き語りのラストは未発表の新曲「窓」。昨夏、窓を眺めながら人の心を考えて過ごした時の思いから生まれた曲だという。1コーラスは“人前で弾くのが初めて”というウーリッツァーを使用し、静かでありながら強い思いを音に込める。心の機微がそのまま姿を現したような歌声は、歌詞に綴った心情をこちらの心臓へと焼き付けるようだった。


再び斜幕が降ろされ、オープニングムービーの続きが流れると、バンドとカルテットと共に9人編成で「泳げない」へ。隅々まで集中力の通ったサウンドスケープに加え、陽の光が差し込んだ海中で演奏しているような演出も、楽曲の感傷的な世界をより鮮明に描き出した。幕が上がると「風に立つ」で新しい芽吹きのエネルギーを生み、「ロマンスをこえよう」ではホーン隊がフルートを、ベーシストがアップライトベースを構えリアリティとファンタジーが融合した空間に染め上げる。TOMOOの弾き語りからここまでの6曲は、じっくりと彼女の心の中にじっくりと浸かるようなセクションだった。


あたたかい思い出も苦しかったことも含めて“今までのことを全部未来に持って行きたい”、“これまでのことはなかったことにできないけれど、どこかでオセロみたいにひっくり返って見える面が変わったらいいなと思う”と語ると、“ここからもう少しギアを上げていきましょうか?”と続け、リリースしたばかりのメジャーデビュー曲「オセロ」を歌唱。その後も“ここからはお祭りタイムですよ!”と笑顔を浮かべ、「Friday」「POP’N ROLL MUSIC」へ。

ハンドマイクでステージを駆けたり跳ねたり、アウトロのギターソロにアップライトピアノを被せたりとハッピーなムードを高め、ラストは「Ginger」。客席からもあたたかいクラップが湧き、銀テープが会場にきらめいた景色も花火のように美しかった。


アンコールではあらためて会場に足を運んでくれた観客に感謝を告げ、“外で歌を聴いてもらうようになったいちばん最初の歩みの曲”と告げカルテットとともに「金色のかげ」を演奏すると、彼女はこの日に対する思いを語り始めた。

“知らない場所に漕ぎ出していくような気持ちもあるけど、初心に帰ってくるような気持ちもあって。今日この場所は、久しぶり、おかえり、はじめまして、行ってきます、そのどれもがあるような気がしています。ここからまた一緒に旅をしていけたらいいと思っています。水の循環みたいなイメージです”


水はかたちを変えていくけれど存在しており、姿が見えなくなったとしても終わりはしないと語った彼女は、“わたしも変わったように見えたとしても(根本は)変わっていない。それぞれのいいタイミングで聴きに来てくれたらいいなと思っています”と告げた後、フル編成で演奏したのは「What’s Up」と「恋する10秒」。豊かな音色とメッセージ入りのハート型の紙吹雪で、観客をあたたかい真心で包み込んだ。

ムービーのエピローグが流れると、全国5大都市を回る年またぎツアー<TOMOO 1st LIVE TOUR 2022-2023 “BEAT”>の開催が発表された。今回の“Estuary”のように、きっと“BEAT”にも何かしらの意味が込められているに違いない。河口に佇んでいた彼女はこれまでの思い出を胸に、翼を大きく広げて飛び立ち、新たな旅に出た。健やかな活力にあふれた今の彼女が目指す先には何があるのだろうか。その行方をこれからも眺めていたい。

取材・文◎沖さやこ
写真◎Kana Tarumi

セットリスト

1.HONEY BOY
2.らしくもなくたっていいでしょう
3.酔ひもせす
4.雨でも花火に行こうよ
5.スコール
6.River
7.レモン
8.窓
9.泳げない
10.風に立つ
11.ロマンスをこえよう
12.オセロ
13.Friday
14.POP’N ROLL MUSIC
15.Ginger

en1.金色のかげ
en2.What’s Up
en3.恋する10秒

<TOMOO 1st LIVE TOUR 2022-2023 "BEAT">

2022年12月16日(金)福岡・DRUM Be-1 Open 17:00 / Start 18:00
2022年12月24日(土)北海道・cube garden Open 17:00 / Start 18:00
2023年1月7日(土)愛知・THE BOTTOM LINE Open 17:00 / Start 18:00
2023年1月8日(日)大阪・BIGCAT Open 16:00 / Start 17:00
2023年1月15日(日)東京・Zepp DiverCity(TOKYO) Open 16:00 / Start 17:00

チケット料金
一般スタンディング ¥5,000(税込/整理番号付き)
2階席(自由席) ¥5,000(税込/整理番号付き)
*2階席(自由席)はZepp DiverCity(TOKYO)公演のみの販売となります。

チケット販売
オフィシャル最速先行1次(抽選)
受付期間:8月7日(日)20:30 ~ 8月15日(月)23:59
受付URL:https://l-tike.com/st1/tomoo
当落確認・入金期間:8月18日(木)15:00 ~ 8月21日(日)23:00

オフィシャル先行2次(抽選)
受付期間:8月18日(木)18:00 ~ 8月22日(月)23:59
受付URL:https://l-tike.com/st1/tomoo
当落確認・入金期間:8月25日(木)15:00 ~ 8月28日(日)23:00

ローチケプレリク先行(抽選)
受付期間:8月25日(木)18:00 ~ 9月4日(日)23:59
受付URL:https://l-tike.com/tomoo
当落確認・入金期間:9月7日(水)15:00 ~ 9月10日(土)23:00

ローチケプレリク先行2次(抽選)
受付期間:9月8日(木)18:00 ~ 9月19日(月・祝)23:59
受付URL:https://l-tike.com/tomoo
当落確認・入金期間:9月22日(木)15:00 ~ 9月25日(日)23:00

一般発売:10月1日(土)10:00〜

※入場時1ドリンク代別途必要
※未就学児入場不可
※チケットの転売/譲渡禁止

Major 1st Digital Single「オセロ」

2022年8月3日(水)配信開始
https://lnk.to/otthelo

◆TOMOO オフィシャルサイト
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