【インタビュー後編】TENSONG、ジャンルにとらわれない音楽性と歌詞表現がさらに洗練された「東京イリュージョン」

ツイート

“聴いた人それぞれに寄り添うことができる、十人十色の音楽を届けたい“というコンセプトを掲げて活動している、ヴォーカル、ギター、DJの3人組ユニットTENSONG。彼らが8月4日に、2022年4作目のデジタルシングル「東京イリュージョン」をリリース。“眠らない街で夢を見るんだ”という強い思いが込められている楽曲だ。ジャンルにとらわれない音楽性も歌詞表現もさらに洗練され、ステップアップを感じられる楽曲に仕上がっている。

■失恋ソングでも応援歌でもどの楽曲でも正解なんてないと思う
■自分の価値観で、自分なりにありのままで生きていってねと伝えています


――たか坊さんの東京生活の苦悩から生まれた“答え”が描かれた「東京イリュージョン」ですが、歌詞を書き始めたきっかけというと?

たか坊(Vo):歌詞にも書いたように、僕の心のなかに《なんとなく抱えてる無名の悩み》が渦巻いていたので、まず思っていたことをバッと書き出していたんです。だからAメロやBメロに、東京の不満や不安をめちゃくちゃ書いてるんですよね。そうしていると自分が東京に対して期待してるところ、嫌なところがはっきり見えてきて――というのも、まず僕は歌詞を書く前にWordで16~20ページくらいの小説にするんですよ。そこからそぎ落として歌詞にしていくんです。

――目標という意味合いの“夢”を、眠ったときに見る“夢”と掛けて“幻想”に置き換えたり、今の自分の行いが目の前の景色を変えるという意味で“イリュージョン”という言葉が機能したり、《眠らない街で夢を見るんだ》という歌詞もキャッチーですし、上京なさってからというもの歌詞は洗練されてきていますよね。

たか坊:わ、めっちゃうれしい(笑)。大分にいた頃よりも小説を読んだり映画を観たり、圧倒的に芸術やアートワーク的なものに触れることが多くなって。大学に取られていた時間を、全部音楽を高めるために費やせるようになりました。インプットがすごく増えたからこそ、今までにない言葉が出てくるんじゃないかな。




――ボーカリストとしてのスキルも上がっていますし。

たか坊:特訓というか、かなりのテイクを取りました。歌い出しの《どうしようもないくらい/だらしないセカイは》は歌がものすごく重要だなと思って、あそこのレコーディングだけで1時間半くらいかけました。逆にサビはテンション上がってすぐ録れましたね。ヴォーカルは前より上達したとも思うんですけど……もっとうまく歌えたらなあと思っているんです。理想の自分はいまだ幻想の世界です(笑)。それはふたりも同じじゃないかな? どれだけうまくなっても多分もっとうまくなりたいという欲求が生まれると思うし、僕も絶対そうだと思う。一生100点はないと思うんです。

――メンバー全員がそこまで音楽に対してストイックになれるのはなぜでしょう?

たか坊:3人とも形のないものに触れたのが、音楽が初めてだったんですよ。僕も拓まんもスポーツという勝敗がはっきりわかる世界にいたから、音楽に接して初めて点数がつけられない、勝ち負けがつけられない、形のないものを知ったんです。答えがないからずっと探し続けちゃう。


▲Vo. たか坊

――「東京イリュージョン」に綴られた《“今”何が正解かわかんなくて》という心情ともリンクしますね。おふたりはたか坊さんのデモを聴いて、どう感じましたか?

アルフィ(DJ):最初は良いとか悪いとかではなく、まず“これをリリースしてもいいのかな?”と思いました。いろんな印象的なフレーズやコードが入っているけど、これがうまく合うのかな?という不安があったんです。

拓まん(G):圧倒的に難しい曲だったんだよね。コード進行が複雑だし、キャッチーなメロディラインやフレーズを作りたいけど、コードに対してどう合わせたらいいのか悩みました。それがアルフィの言っている不安だと思いますね。歌詞はたか坊が上京してから書いたんですけど、オケのデモは上京する前からあったので、アルフィの家に2日間くらい寝泊まりして“どうする!?”とひたすら話し合って。もうキャッチーなものを作ろうとせず、遊ぶしかないなと思って。遊びまくって遊びまくって、結果良い曲できたらいいじゃんぐらいの感じで固めていきましたね。

アルフィ:3人でサビメロを何パターンも作ってそのたびに録音して。結果的にたか坊の作ったものが採用されたんです。

拓まん:そこでやっと“これだ!”と思うものが作れたんですよね。それを上京後に詰めて、ようやく完成しました。


▲Gt. 拓まん

――たか坊さんはなぜそれだけ複雑なコード進行にしたかったのでしょう?

たか坊:実はこの曲のオケ、今までとちょっと作り方が違うんです。というのも、僕らの事務所のピアニストの方が即興でピアノを弾いているのをたまたま見掛けて。その人は曲として完成させるつもりではなく、伴奏を弾いてただ遊んでいただけだったんですけど、そのフレーズがかっこよくて、これを曲にしたいなと思ったんです。

拓まん:だからそのピアノソロを軸にして音を足していったんです。そのピアノのフレーズがイントロのピアノなんですよね。

――リリースのたびにサウンドのアプローチが広がっていますよね。

たか坊:やっぱり“十人十色”がTENSONGのコンセプトなので、ジャンルにとらわれたくはないという思いから、いろいろなアプローチをかけていこうと思っています。彼がDJだからどんな音でも出せるのも強みなので。今回のアルフィのスクラッチも、めっちゃかっこいいし。

アルフィ:DJも家でずっと練習しています。拓まんのギターもテンポ感とかすごく良い。

拓まん:今回のギターはカッティングがめちゃくちゃ多いからね。“こういう音を出したい”というニュアンスを出すことに苦戦するので、音楽理論を基礎から勉強したり、作曲に関してもいろいろな音楽を聴いたり、自分たちの楽曲を作るためにできる限りのことはやるようにしています。

アルフィ:そのためにも制作をずっと続けているのも、今の僕らには大事だなと思いますね。

たか坊:結構新しいことに挑戦しましたね。ライブでアガる曲になりました。


▲DJ. アルフィ

――様々な音楽性を取り入れるTENSONGにとって、曲を作るうえでこれだけは譲れないものとはどういうものでしょう?

たか坊:多分1年前のインタビューでも同じことを言っていると思うんですけど、“聴く人一人ひとりに寄り添う”ですね。“みんな違ってみんな良い”という言葉のとおり、正解なんてないと思うんです。「東京イリュージョン」に限らず、失恋ソングでも応援歌でもどの楽曲でもそういう思いを込めているので、これが自分のいちばん伝えたいことなんだろうなと。自分以外の誰かにとらわれてほしくない。“自分の価値観で、自分なりにありのままで生きていってね”と伝えています。

――「嫌われる勇気」はまさにそういう曲でした。

たか坊:おっしゃるとおり、その思いをストレートに書いたのが「嫌われる勇気」ですね。「東京イリュージョン」も舞台が東京になっているけど、“答えを探してるあなたが答えなんだよ”というメッセージを込めたので、言いたいことは同じなんだろうなと。僕らが聴いてくれる人の背中を押すきっかけになったらいいなと思って曲を作っています。あとは、やっぱり聴いてくれる人が答えだと思うので、それぞれの気持ちを大事にしてほしいです。



――TENSONGの楽曲は“自分はこう思っている”と堂々と提示することで、人に寄り添っているのが特徴的だと思います。

たか坊:自分の思いを届けつつ、聴いてくれる人が喜怒哀楽どんなものを抱えているときでも、感受性を刺激する言葉遣いやフレーズを考えながら作っているっていう感じですね。どんな感情にもフィットする曲を作るのは難しいけど、僕らの考え方のベースは“答えは存在しない”なので。悲しいときに“悲しいよね、そうだよね”と言うのではなく、悲しいと感じているあなたも、喜んでるときのあなたも、正解かどうかはわからない。でもあなたがそう感じるなら、それが答えじゃない? と言いたいんですよね。というのも僕らは絶対同情だけはしたくないんですよ。

――ああ、なるほど。今の言葉で腑に落ちました。だから聴き手の価値観を何よりも大事になさっているんですね。

たか坊:“寄り添う”と一言で言っても、その実態には“共感”のパターンと“同情”のパターン、どちらもあると思うんです。でもこのふたつは全然違う。僕らは悲しんでいる人たちに同情したいわけじゃないし、世の中は十人十色だからすべての悲しみに共感できるわけがない。“それでいいの?”と意義はとなえたいけど、否定はしたくない。

――TENSONGは音楽を通してその人それぞれの持つ価値観に訴えかけることで、問いかけをしているのかもしれない。

たか坊:たしかに問いかけですね。ありのままのその人でいてほしいから、“本当にそれでいいんだね? お前がそう思うならそれでいいと思うよ”と歌っているんですよね。今後もたくさんリリースを予定しているので、今後も唯一無二の寄り添い方、TENSONGでしかできない寄り添い方をしたいです。

取材・文:沖さやこ

リリース情報

New Digital Single「東京イリュージョン」
発売中
https://linkco.re/FPR0HgDp?lang=ja

ライブ・イベント情報

<FM802 MINAMI WHEEL 2022>
2022.10.8 Sat. 9 Sun. 10 Mon.
※TENSONGの出演 : 2022.10.9 Sun.
■イベントオフィシャルサイト
https://minamiwheel.jp/
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス