【対談】椎名慶治×田澤孝介が語る、＜VOCAL SUMMIT＞と歌い続けるということ「闘わなあかん」

■コロナによる辛いことを忘れさせてくれる
■それが＜VOCAL SUMMIT＞です

──既にいろいろなことを達成なさっているおふたりだと思いますが、今後のヴォーカリストとしての目標と言いますと？

椎名：いやいや、全然達成できないですよね。自分より1日でも早くデビューした人が、みんなくたばってくれればいいなって（笑）。常にそう思って生きていますから。

田澤：あはは！

椎名：“これだけのことをやってきて、だから今歌ってる”みたいなことを言いましたけど、ということは、自分たちより1日でも早くデビューした人たちみんなが同じようにやってきているんですよ。上にはまだモンスターがいっぱいいて、皆さん元気じゃないですか。そのモンスターたちがやっぱり目標になっちゃいますよね。“こういうふうに歌いたい”ではなく、活動を続けていくということにおいて。そういう人たちが昔みたいに歌えなくなって歌唱法を変えていることも、聴けばわかるわけですよ。でも、上手い下手じゃなくて、今の歌い方に切り替えても“あぁ、この人の歌だ！”と思わせる力がある。俺たちもそうならなきゃいけないと思いますよね。

田澤：それはホンマにそう！

椎名：昔の自分のように歌いたくても歌えなくなる時がきっとくると思うんですよ。その時のために“自分はこういう歌い方ができる椎名でいたい”というところを模索して、やっぱり長く続けることが目標ですね。歌えるうちは続けたいですから。


田澤：僕はここにきて、何だかよくわからないものになりたいと思ってるんです。たくさんの歌い方をするし、いっぱいプロジェクトをやっている。それだけに、“何やコイツは？”という存在（笑）。

椎名：おもしろいね、それ田澤くんにしかできないよ。

田澤：歌が上手い云々じゃなくて、僕にしか出せないもの。いろいろ変わっていきたいなと思ってます、根本はどうせ変わらないから、チャレンジしたいし。端から見ると軸がブレてるふうに思えるかもしれんけど、自分を使い切りたい。どうせいつかは死ぬんだし、“あれもできたかもな”とか後になって思いたくないから。

椎名：これはまた今年が終わる頃に、新バンドを発表しますね。

田澤：新しいやつ？ せえへんせえへん（笑）。ホンマに自分のやりたいことをやるかもしれないですね。僕は結構、普遍的なものも好きなんですよ。民族音楽とかケルト音楽みたいな抒情的なものも好きだし。日本の歌謡曲とかと通ずる部分があると思うんです。メロディーもあって、ビートで心拍数を変えてくるとか。ヒットする／しないとは遠いところで、自分のやりたい歌をやってみたいな、突き詰めてみたいなと思っています。

──民族音楽にご興味があるとは、全く想像もつかなかったです。

田澤：でしょ？ それってもったいない気がしてきたんですよ。今こうして話してみて「あ、そうなの？」って言われるということは、出しきれてないってことやから。だから、形としてちゃんと出していきたいなって。

椎名：何千年という歴史があったりしますからね、民族のビートだったりには。例えば、あのビートをバックボーンに使いながら、その上から別の要素を重ねてね。

田澤：そうですそうです。そのまま民族音楽をやる、ということではなくてね。

椎名：また違う田澤くんを見られるかもしれないですね。

田澤：はい。自分が“うわぁ好き、たまらん！”みたいなもんを自分の手でつくってみたいんです。でもやっぱり、これも難しいんですよ。だって既にあるから。なんだけど、自分がそこに携わってみたいというか、自分をそこに溶かしたいというか。

──でも、それは田澤さんだけのものになりますよ、絶対に。

田澤：うん、そうかもしれない。もしかしたら“こうなりたい”と自分が目指しているものの一番の取っ掛かりが実はそこなんじゃないかな？という気がしてきているので。そこに落とし込んでいきたいですね。今日、椎名さんからお話を聞いて、点が線になった部分とか紐解けた部分もあったので、この対談はすごく糧になりました。

椎名：田澤くんと知り合って3年以上経つのに、今日この対談があって、僕も初めて田澤くんを知った気がします。さすがな生き様だなと思いましたよ。やっぱり、ヘラヘラしながらやってきただけで20年もここにいられるヤツはいないんだな、ということを改めて感じました。

──では最後に、9月19日の＜VOCAL SUMMIT CLASSICAL＞、翌週24日の＜VOCAL SUMMIT 2022＞に向けて、アピールをお願いします。

椎名：＜CLASSICAL＞のほうはヴォーカリスト同士のコラボはないんだよね？ 一切混ざらないで終わっていいんだよね？ 最後に3人で歌うとかもなし？

田澤：なしです。「一言どうですか？」みたいな、最後に集まって話す場面はあるかもしれないですけど、音が交わることはないですね。

椎名：そうすると、＜VOCAL SUMMIT＞との差別化がちゃんとできてるってことだね。

田澤：そうです。＜CLASSICAL＞のほうは音楽に没頭して、堪能していただく。かつ、カバーではなく自分たちの曲をやりますし、それがおそらくその日限定の特別なアレンジになります。なので、それぞれの世界を混じりっ気なしでお届けすることになりますね。

椎名：いいですね。＜CLASSICAL＞のほうは今回初めて出演するんですけど、あれだけシックでフォーマルな格好をして、ピアノと四重奏……今回は五重奏になったという噂もありますが、とにかく生楽器の音だけで歌ったことは僕、人生で一度もないので。間の取り方が全然違うんですよ。打点がない中で歌うことの難しさを味わえるのはワクワクします。去年の映像を観た時に、田澤くんが後ろをガン無視で、“もうこれ以上悦に入ることはない！”ぐらいの表現力で自由に歌い上げていたんですよ。これができるライヴってなかなかないから、相当気持ちいいんだろうなぁと思って。

田澤：今、打点とおっしゃったんですけど、意外と演奏者の皆さんがヴォーカリストに合わせてくれるんですよ。“呼吸をしてます！”ということがハッキリ伝わるぐらいの歌い方をしたほうが、その人ならではのグルーヴになる。伴奏に対して僕らが歌で乗っかっているという形じゃないんです。僕らの歌を伴奏が押してくれるというか。椎名さんの呼吸に後ろがついて来るという気持ち良さがあるはずで、これは堪らないですよ。

椎名：味わってみたいですねぇ。＜VOCAL SUMMIT＞では異色コラボをたくさん観られて、なおかつ、祭りなんだけど締めるところは絶対締めると思うんです。皆さん自分のセクションでコラボはするけど、そのセクションの最後は絶対自分ひとりで締めてる。大人なんですよね。大人がふざけているのですごく笑えるし、もしかしたら泣けるかもしれない。そのラストに今回はT-BOLANのギタリスト五味孝氏さんと森友嵐士さんが出演されるわけで。まだ分わからないですけど、もしかしたらみんなが知っている代表曲を歌ってくれるかもしれない。僕にとっては青春時代の憧れですし、“今の森友さんはこういう歌い方するんだ！”というのを見て感動すると思う。森友さんもいろんなことを乗り越えてきた人だから。想像するだけで、今から泣けちゃう……たぶん泣きながら、勝手に舞台袖でマイクを持って歌っていると思います（笑）。“何か声が聴こえてくるんだけど…?!”って客席がザワつくみたいな。

田澤：大怒られのやつや（笑）。

椎名：あとで土下座することになるやつ（笑）。いやぁ、楽しみです。コロナによる辛いことを忘れさせてくれるパーティーは間違いなく＜VOCAL SUMMIT＞です。ヴォーカルそのものを堪能するんだったら＜CLASSICAL＞ 。順番的に＜CLASSICAL＞が先で、その後ハッピーな＜VOCAL SUMMIT＞になるのもすごくいいですし、どっちにも来てください！

──本日は貴重なお話を伺うことができました。

椎名：いやぁ、こんなに楽しいヴォーカル対談はなかなかないと思いますよ。

田澤：うん、楽しかったです。ありがとうございました！

取材・文◎大前多恵
撮影◎川端敏雄




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