【対談】中島卓偉×来夢(キズ)が語る、<VOCAL SUMMIT>と交錯する音楽愛「最後は人間力しかない」

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■白塗りメイクで卓偉さんの横に並んで
■撮影するよりは簡単そうです(笑)

卓偉:バンドのコンポーザーは来夢くんなんだよね? メンバーはスタジオに一日中入っていられるということは、音楽論的なところはメンバーのほうがわかってるってこと?

来夢:僕のほうがわかってますね。ピアノをスパルタでやらされていたんです。まずそこが嫌だった。ピアノ教室には他に男がいなくて、男ひとりでピアノをただただやらされる。それから親父の影響でX JAPANのYOSHIKIさんが好きになって小学校のときにドラム、ギターを始めた。ひととおり全部の楽器はライヴハウスで演っていました。それこそメロコアだったのでベース/ヴォーカルもしたし。

卓偉:メロコア好きな感じは伝わってた。そういうパンク要素を感じる。

来夢:ROTTENGRAFFTYとかも大好きだったり10FEETとかマキシマム ザ ホルモンとかも大好きだった。いろんな音楽…クラシックも含めて知ってはいるんです。でもそれを自分でこうしようとかこのフレーズにこだわろうというのは無理です。

卓偉:ピアノの経験があったから、和音とかハーモニーが染み込んでいるんだね。

来夢:そこはまあ感謝してます。


▲中島卓偉

卓偉:あなた天才ですよ。僕は親父がジャズとかブラックミュージックばっかり聴いてたけど、その中で数少ないポップなものにザ・ビートルズがあって、常に3声でハモってるからザ・ビートルズで和音が身についちゃったんですよ。だからずっと音が和音で聴こえたからハモれたし、街でかかった曲のコードがわかる。わかるでしょ? それができればミュージシャンなんだと思うよ。もっと言うと、それがわからないミュージシャンもごまんといるんだよ。たぶん僕らは曲を聴けばその曲を一発で弾けるよね。僕は音符も譜面も読めないし小節数も数えられないけど、それを動物的に理解できるのがミュージシャンだと思っちゃう。来夢くんは「音楽に興味ない」「いやだ」と言うけど、根本には純粋に音楽を愛しているもうひとりの自分がいるはずだと思うんだよね。しゃべっていて、ふたりいる感じがする。

来夢:…それに気付いてはいるんですよ。

卓偉:エンターテインメントの自分とコンポーザーの自分の距離が、たぶんちょっと遠いんだよ。

来夢:自分でも気付いていたことのひとつに、結構メンバーのために曲を書いたりするんですよ。“このギターがこういうフレーズで弾いてたらライヴでカッコいいだろうな”とか、そういうのを考えるのが好きなんですよ。

卓偉:それはプロデューサーだよ。それでスポークスマンでありパフォーマーでもあるから、ぜんぶ凝縮したものを全部持っているんですよ。だからこそ企画力があるんだと思う。パンクとかYOSHIKIさんとか好きでピアノもギターもドラムも全部できて…。メイクしようと思ったのはどういうきっかけ?

来夢:白塗りですか? これは裏切りでしかないんです。前のバンドが結構ポップな感じだったので、僕とギターが同じ事務所で次一緒にやるってなったらメイクは落としてくるだろうと思われていたので、逆にしてやろうと。

卓偉:前のバンドはメイクはしてたの?

来夢:していたんですけど、普通に最近のメイク。白塗りしているバンドも結構昔から好きだったけど、それを押し隠していた自分がいたんですよ。ヴィジュアル系はやっぱり好きだしHIPHOPも好きだし、好きなものそのままでこうなっちゃいました。X JAPANの影響もありますね。

卓偉:ちょっと古い言い方だけどミクスチャーだよね。みんな結局「何系ですか」ってカテゴライズしたがるけど、来夢くんを見てると、そういうの関係ねえって突っぱねてきた世代だと思うから、すごくいいと思っちゃいますね。

来夢:もう何がヴィジュアル系かわかんない状況で、それこそミクスチャーになっていたので、自由すぎて何をしていいかわからないから、自分の好きなものをすることにした。

卓偉:自由でいいよね。自由にやるべきだよ。もっと爆発させてもらいたいなと思う。

来夢:卓偉さんがそう言ってくれるならできるかも。でも、今はこれがMAX、それ以上できねえって思ってる自分がいます(笑)。

卓偉:ピアノもできるとなったら、ありえないくらいのクラシックバラードを歌うとかできると思いますよ。

来夢:白塗りのメイクで卓偉さんの横に並んで撮影するよりかは簡単そうです(笑)。白塗りのアーティストはたぶん卓偉さんにたどりつけないですよね。

卓偉:NoGoDの団長もいるけどね(笑)。でもキズというバンドに未来を感じるし、もっと破廉恥に自由に無政府にアナーキーにやってもらいたいなと思っちゃいます。


▲来夢(キズ)

──「音楽は好きじゃない」と言いながら、来夢が音楽の才に長けていることが明らかになりましたね。

卓偉:それは僕が烏丸統括編集長に「作詞は好きじゃないんですよ」っていうのと一緒ですよね。

来夢:作詞好きじゃないんですか?

卓偉:曲は書くのは好きだけど、詞を書くのはちょっと嫌だなって思ってる。苦手意識があって、締め切りまでにできないとむしゃくしゃするじゃないですか。それと一緒かなって。音楽が好きじゃないと言いながら、コンポーザーとしてピアノができるもうひとりの来夢くんがいて、そこの距離が遠いから嫌いと思うけど、近くなってくるとどっちも好きになるんだよ。

来夢:僕は詞を書くのは大好きなんですよ。逆ですね。言いたいことはいっぱい出てきて、詞はめちゃくちゃ早く終わるんです。今録ってるカップリングは歌詞を書く時間がなくて行きの電車の40分でバーッと書いたりしたけど、それでも満足しちゃえてる。曲を仕上げるのが無理。

卓偉:詞と曲、どっちが先?

来夢:どっちもだったりしますけど、だいたい同時です。

──それは紛れもなくミュージシャン体質ですよ(笑)。

来夢:悔しいですね。まっすぐ「嫌い」と言いたい。

卓偉:小説を書く作家さんが伊豆のホテルとかで缶詰になって編集者に圧をかけられて書かなきゃってなるけど、なかなか進まないって話よく聞くじゃないですか。それって、「あなた、好きで小説家になったんでしょ?」って言われたら何も言えなくなるけど、でもやっぱり書くのがイヤだっていう人って多いって聞くから、好きな職業だからこそイヤだっていう人は多いんだと思うんですよ。でも辞めない。自分しかできないと思うことをやるわけでね。

来夢:僕は、キーボードも何も持たずMacBookひとつで曲を作るんです。楽器もぜんぶ打ち込みで付属品も使わない。楽器とかにも愛がないから要らないんですよ。コードがバーッと並んでて、自分が理解してメンバーにもわかればそれでいいから、おもちゃみたいなんです。クオリティ高いデモとか作らないし、もっとこういうふうに弾きたいとかじゃないので、これってミュージシャンなのかな?て思っちゃう。やろうと思えばできますし、クオリティの高いデモでメンバーを喜ばせて、みんなイメージしやすいものも作れますけど…。

卓偉:それでいいと思う。遠回りせずに、いかに短い距離でそこに到達できるかっていうことを考える人のほうが今は絶対強いから。

来夢:短縮しようという趣旨じゃなく、めんどくさいからなんですけどね。

卓偉:スタジオに入って、その場で弾き語ってこんな感じって説明して仕上げちゃうことはないんですか?

来夢:それは恥ずかしいですね。「いいじゃんいいじゃん」ってめっちゃ褒めてくるんですよ。それが恥ずかしくて。メンバーに「この曲、いい」とか言われると、めちゃくちゃ嬉しいんですけど、いまだにどう返していいかわからない。ましてリアルタイムになると、褒められたくないからメンバーががっかりするようなレベルの低い曲をやるかもしれない。

──ははは。

来夢:だから僕の中で音楽は本当にツールなんですよね。その場にあったものをその場で出したいっていう人間なので、メンバーの前で何か作れと言われたら別の曲になっちゃいますね。

卓偉:いろんな葛藤があるってこと?

来夢:生まれた頃から身長が小さいんで、肉体的にできないこともあったから、できないことをどうやったら人に頼めるかなと補うことばっかりやったりもしてました。やんちゃしてたときもそうだったと思います、自分にないものをみんなが補ってくれるっていう安心感もあったと思う。曲がった人間に人はついて来ないし、その中でちゃんと生きてたから、そういうのができるのかなと。

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