【対談】中島卓偉×来夢(キズ)が語る、<VOCAL SUMMIT>と交錯する音楽愛「最後は人間力しかない」
■来夢くんの魅力は天才的な才能と発想力
■卓偉さんがそんなことを僕に言っちゃ絶対にだめ
卓偉:不思議な話でね、ヴォーカリストに向いてないって思って歌ってる人が結構多いんですよ。向いてないし天職だと思ってないからこそ、天職にするために頑張っていこうと思ってやっているヴォーカリストのほうがわりと多い気がするんですよね。自分の気持ちの持ちようなんだけど。これを言うとファンが「えっ、そうなの」って言うかもしれないけれど、僕もよく“向いてないな、この職業”と思うことはある。ステージに上がるときはスイッチを入れてるんですよ。完全にスイッチ型なの。スイッチ入れないと何もできないんだよ。
来夢:ちなみに、Twitterだったりそういうときの文字打つときは?
卓偉:スイッチ入れないとできない。
来夢:僕もそういう感覚です。スイッチはあるんですけど、“どれ?” って感じです。どれを押していいかわかんないから、どれを押してもはまんないんですよ。
▲来夢(キズ)
──そのスイッチを持っているというのがアーティストである証なんですけども(笑)。
卓偉:デビューして最初の3年は、ライヴもすごく緊張してたの。でも緊張って不安から来るんですってね。不安を下げてテンションを上げると緊張しなくなるということを知って、それが理解できた瞬間があって「あ、全然緊張しねえわ」と思った日が来たのよ。ライヴとか、なんなら無なの。パッとスイッチ入れて出ていくんですよ。で、ステージ下りてきたらパッと切るのね。僕はアンコールをやらないんだけど、楽屋に戻るとスイッチが切れちゃうからアンコールができないの。なあなあのアンコールが好きじゃないというのもあるけど、スイッチを持続すると苦しいっていうのと、そういうふうにオンオフしていかないと、うまく表現できないの。生粋のエンターテイナーっているじゃない? どこ行っても人を笑かすことが好きだったり、歌ってって言われてすぐ歌ってくれちゃうヴォーカリストとか。僕は急に歌ってよって言われても全然歌いたくないし、ステージ以外で歌うのがイヤなの。
来夢:そうかな。僕は卓偉さんはどこに行っても絶対卓偉さんで、何していても卓偉さんだから、この人ってどこに行っても卓偉さんなんだなって思ってる。
卓偉:そんなことない。ひとりでぼーっと作詞しているときに、喫茶店とかで「卓偉さんですか?」って声かけられるともうイヤになっちゃう。もちろん礼儀正しくするけど。ミュージシャンも芸能人もちやほやされたい人と、そっとしといてくれって人の2パターンしかないと思うんだけど、ほんと後者なの。
来夢:僕、ちやほやされたいですね(笑)。
卓偉:あなたはパフォーマーとしてそういう素質がある。そこが違うんだな。ちやほやされたい、モテたいって気持ちはすごく重要だと思うんですよ。僕は中学校のときZIGGYのコピーを文化祭で演ったんだけど、このときもモテたいとは思ってないんだよね。純粋に音楽が好きでこれを奏でてやってることが楽しかっただけ。
来夢:僕はもう完全に“女にモテてぇー、文化祭やったるわー”って。
卓偉:それでいいんだよ。音楽好きで寡黙なやつと、とにかくアピールして女にモテたいってやつがいるからバンドっておもしろいんじゃないですか。基本的に僕は普段めっちゃ人見知りだからね。挨拶も礼儀もちゃんとするけど、なんなら普段は世の中にいないと思ってくれって感じだから。僕も反抗期のとき、兄貴がめっちゃ喧嘩強い人でね、どうやっても兄貴に勝てなかったの。僕は学校ではいじめられっこで、なんでいじめられるかというと、兄貴には本気で殴りにいけたんだけど、いじめてくる子に兄貴と同じレベルでやったらやっちまうんじゃないかなと思って外では人が殴れなかったのね。でも自分は喧嘩が弱いと思ってたわけ。ただ東京にひとり上京して親父がすぐ死んで兄貴とも疎遠になったとき、反抗期で糸が切れてしまったように、気に入らないことがあると喧嘩を買ってしまう3年間くらいを生きてたんだよね。その時はスイッチが入っちゃう。因縁つけられたら「何だおまえ」ってなっちゃう。“喧嘩っていうのは負けちゃいけない”みたいな感覚で生きてて、喧嘩売られて相手をやっちまうと、兄貴より弱いかもみたいな基準になっちゃう。僕もそういう心が病んでた時期もあってね、来夢くんのやんちゃしてたって気持ちもわかる。でもそれをたぶん音楽にもう一回変換して、今アピールできてるんだから、最高な成功例ですよね。
▲中島卓偉
来夢:「俺、音楽やるわ」って言って喜ぶ親っていなくないですか? 「音楽やってくれるの、嬉しい。あんたいつか人を殺すと思ってたから」みたいに喜んでくれて、「絶対いい女の人見つけなさい」みたいなことを言われてて、“なんや?”みたいに思ったり。振り返ったら相当ヤバいやつだったかもしれないなって。
卓偉:だから「音楽でよかった」っていう人、多いですよ。
来夢:格闘技をずっとやっていたので、喧嘩がめちゃくちゃ強かったんです。たぶん仲間に頼られてたのは、ちっちゃいのにめちゃくちゃ強いみたいなことだったんですよね。仲間のために喧嘩も絶対負けられないし、自分の地位を確立するためにも負けられないものってあるじゃないですか。そういう根性みたいなものは、今のバンド活動にも助けられている。
卓偉:辰吉丈一郎さんもそうだよね。あの人も僕らと同じくらい背が低くて、だけどむちゃくちゃ喧嘩が強くて強すぎてボクサーになったんだって。そういう人が世界チャンピオンになれる。来夢くんは手段を変換できる力で今日まできていることが素晴らしい。変換できないまま刑務所入っちゃう人もいるじゃない? そういう人のほうが多いのかもしれないし。完璧な才能があるエンターテイナーなのに薬物で身を滅ぼす人もいるからね。
来夢:「僕はたぶんいきなり辞める」って事務所の社長さんにもファンにも言ってるから、飽きたら辞めるかもしれないってことを伝えてやっています。好きでもないことを無理にやったって誰も得しないってわかってるから。
──キズを辞めたら次は何を?
来夢:新しい人生ですかね。音楽はあくまで好きじゃないって公言してるんで、それでも音楽やったらもう認めます。「すみません音楽大好きでした」って(笑)。自分の中のロックって人生のはじっこというか、表現の一部…ロックに生きた人間の表現の一部だと思う。僕は音楽がすべてじゃないと思ってる人間なので、それこそ海外とか行って自分が何者なのかを知った上でね。
──音楽の前にロックがあるのか。
来夢:そうですね、人生がロックだったらいいかなって思います。スタジオで集めて自分にないカッコよさを出す音楽はドーピングみたいなもので、僕の中では嘘に近いんです。自分の人生がミスったとしてもそれが自分だから、そのまま出ていって「それが好き」って言ってもらえたほうが楽。なので、パッと出ていったときでも受け入れられる人になりたいなと思ってますね。
卓偉:来夢くんの魅力は天才的な才能と発想力なんだと思いますよ。
来夢:卓偉さんがそんなことを僕に言っちゃ絶対にだめです。
卓偉:いやいや。「俺、才能あるぜ。天才だぜ」って言うやつもいるけど、そういうやつのほうが薄いと僕は思うんですよね。
──才能は出てしまうもの。にじみ出てしまうもの。往々にして他人が気付くものですよ。
来夢:でもその他人がただの人じゃないから困ってるんです。飲み歩いていたらだいたいバンドマンの人ってどこかで会うんですけど、卓偉さんとは出会えないんですから。
卓偉:僕は飲みに行かないんですね。ジョギングしてます。飲み仲間っていうつながりがあるのか。なるほどですね。
来夢:そういう情報すら入ってこないんですよ。なので、ほんとまっすぐになる。卓偉さんだけはどうしても今日までにたどりつけて良かった。
卓偉:とんでもない。でもこれもいいきっかけでしたね。僕もいろいろ聞けてよかったです。
取材・文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)
撮影◎川端敏雄
■<VOCAL SUMMIT 2022>
open15:00 / start15:30
▼出演
森友嵐士(T-BOLAN)
来夢(キズ)
田澤孝介(Rayflower / fuzzy knot)
中島卓偉
椎名慶治 (SURFACE)
TAKUMA(wyse)
RYO (KING)
▼SPECIAL BACKBAND
三代堅(G)、Kenji(G)、Ju-ken(B)、kiyo(Key)、小柳“cherry”昌法(Dr)
▼司会
DAISHI (Psycho le Cemu)
▼チケット
全席椅子席 前売8,000円
一般発売:2022.07.16 (土) 10:00~
・イープラス https://eplus.jp/vocalsummit/
・チケットぴあ https://w.pia.jp/t/vsummit2022/
・ローソンチケット https://l-tike.com/vocalsummit/
■<VOCAL SUMMIT CLASSICAL>
open15:00 / start15:30
▼出演
田澤孝介(Rayflower / fuzzy knot)
椎名慶治(SURFACE)
TAKUMA (wyse)
▼チケット
全席椅子席 前売8,000円
一般発売:2022.07.16 (土) 10:00~
・イープラス https://eplus.jp/vocalsummit-cl/
チケットぴあ https://w.pia.jp/t/vsclassical/
ローソンチケット https://l-tike.com/vsc/
関連リンク
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