【インタビュー】みゆな、「歌詞を書ける曲があるおかげで今自分が生きていられる」

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中学3年でギターを手にして曲作りをはじめ、17歳のときに<FUJI ROCK FESTIVAL 2019>に出演を果たし、3作のミニアルバム『眼』、『ユラレル』『reply」のリリースのほか、ドラマや人気アニメ主題歌も担当してきたシンガーソングライター・みゆな。

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10代という多感で鋭敏な感性だからこその想像性や鋭い真理を描き、またクールな低音も響くヴォーカルは憂いを帯びて、大人の哀愁をも感じさせ、年齢問わず多くのリスナーを掴んできた。そのみゆなが、初のフルアルバム『ガイダンス』をリリースする。

2021年9月から連続で配信リリースされた「神様」や「奇術」、またテレビ東京ドラマ『赤いナースコール』の主題歌としても話題の「凝視」など、全12曲が収録となった今作は、シンガーソングライターみゆな独自の、ポップで毒っぽく迷宮的な頭のなかが覗けるような、そして一方で激流のような血潮のリアルな熱さや孤独でいてあたたかな空間が感じられる作品となった。

その曲は、バンドサウンドから無機質なエレクトロなど様々なタッチで織り成され、エモーショナルな歌からエフェクティヴなヴォーカル、ゾクゾクする語りなど様々な表情で描かれていく。「それぞれの環境や心境によって、聴いている音楽の印象は変わってくる。どんな色であれ、この『ガイダンス』を聴いたときに生まれた感情が、それぞれの道標やひとつの“鍵”になってほしい」。今作にはそんな思いがこもっているという。ストーリーテラーとしての精度を上げながら、型にはまらず、より自由に自らのエネルギーを解き放っているからこそ、その曲はリスナーの心を鮮烈に捉えるものになった。待望の1stアルバム。その道のりや、曲作りへの思いを語ってもらった。

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■今は、みんながいるから音楽できているんだっていう気持ち

──1stアルバム『ガイダンス』がついに完成しましたが。これはきっといい手応えを感じているのでは、というアルバムになりましたね。

みゆな:ありがとうございます。それは本当にそんな感じでございまして。初めてのフルアルバムというのもあって、嬉しさ半分、不安半分という感じだったんですけども。無事に12曲仕上がって、やりきったなというか。わりと全曲テンポ感が速いのもあって(笑)。

──そうですね。でもそれぞれに世界観もサウンドもちがう濃い物語が詰まっていて、面白いし、聴きごたえのある作品です。

みゆな:歌い方とかもわりと1曲、1曲こだわりました。あとは、これまでは思っていることを歌詞に書くという感じだったんですけど、最近は流れている音に合う、最適な言葉みたいなものを書くようにしているので。今までよりも聴きやすくなったところもあると思います。

──それによって、独特のグルーヴが生まれている感じですかね。すんなりと曲にドライブして入っていって、スピードに乗りながら色とか景色とかが鮮明に浮かび上がってくる感覚で。カラフルな色味ではないはずなんですけど、すごくカラフルにも感じる作品だと思ってます。

みゆな:ありがとうございます。

──みゆなさん自身は、初のアルバムとして、どういうイメージを抱いて作っていったんでしょう。

みゆな:1stアルバムを作るぞってなってから今まで、とんでもないスピード感だったんです。とにかく目まぐるしくて(笑)。なので考える暇もなくで、ただ初めてのフルアルバムにふさわしい楽曲をたくさん作ろうっていう感じでしたね。一方で、中学校3年生のときに書いた楽曲が、今ここで出てきていたりもしていて。それが「願い」という最後の曲なんですけど。

──「願い」という曲だけ他とは雰囲気がちがって、シンプルでストレートなのはそういうことだったんですか。

みゆな:そうなんです。ちょっと前向きで、ストレートすぎて、自分で聴くと青臭いというか恥ずかしいところがあったんですけど、コロナ禍でみんなが苦しんでいるなかで、この楽曲を届けるには今がいちばんいいタイミングなのではないかなっていう思いからここで掘り返してみたんです。

──優しくあたたかな手を差し伸べるような曲は、まさに今のための曲のように聞こえてきますね。

みゆな:何年も前に書いた曲ではあるけど、温め続けた理由というものが多分ここにあったんだろうなと思います。最初はアルバムに合うのかなっていう不安はあったんですけど、最後の曲にぴったりとハマって。最初は嫌だなって思っていた気持ちが、今はすごく収録してよかったなって気持ちになっています。

──普段曲を作るときと、この「願い」とでは書き方がちがっているんですか。

みゆな:基本的に歌詞は本音を書かないスタイルなんです。もちろん本音を入れることもあるんですけど、私の歌は一人称で話が進んでいくんじゃなくて、物語、小説や漫画のように登場人物A、B、Cとかがいて、そのなかで繰り広げられていくもの。自分ではない誰かというのを頭のなかで想像して、例えばその女の子はこういうキャラで、体が細くて、美人さんで、でもやつれていて、お酒とか好きで……みたいに想像をしてから、どういう経緯でそうなっているのかを探って歌詞を書くのが好きなんです。そうやって想像から入って、それをそのまま歌詞に書いたり、たまに嫌味を書いたりとか(笑)。日々の鬱憤をそこで晴らしたりもしているんですけど。

──なるほど。

みゆな:登場人物に八つ当たりができるのが好きなんですよね。本当の人間相手だったら八つ当たりする方もされる方も嫌じゃないですか。でも自分の頭のなかで作った人間だったら、いくら八つ当たりしても誰も悲しまないし。だから、自分の日々の苦しみだったり、曲を書こうって思ったきっかけがあったときに、その子に全部ぶつけてしまう気持ちで書いてます。


──「願い」では、言葉がよりストレートに表現されていますよね。心をそのまま映している感覚というか。

みゆな:「願い」を書いたのは中学校3年生で、もう何年も前になっちゃうから記憶がないんですけど。多分、母が喜ぶような曲を作ろうって思っていたときかなって思います。

──その当時、誰かに喜んでもらえる曲をというのが多かったんですか。

みゆな:「ふわふわ」と「進め」と「願い」という曲を同時期に書いてたんですが、「進め」と「願い」は、不登校だった自分のなぐさめみたいな感じですかね。中学生のときに不登校だったので、どこかで味方を作ろうとしていたのかな。言い聞かせるための曲だったのかな、と今になって思います。無理やりにでも明るい曲を書いて自分に頑張るんだって思わせることが、その当時はその方が学校に行きやすくなるんじゃないかとか、そういう感じだったんだと思います。

──ひとりで、いろんなことを考えて過ごしていた時期ですね。

みゆな:そうですね。誰かに届けっていうよりは、まだその当時は音楽の世界にいなかったし、宮崎の自分の部屋でひとりで黙々とギターを触っていた時期の曲だからこそ、完全に自己満足で。これがもし、音楽の世界に入っていたらみんなのためにってなるんですけど。このときは“みんな”という存在がいなかったので。完全に自分の世界のなかで作っていたからこそ、今ちょっと恥ずかしいなってなってます。

──今の年齢になって、冷静に過去の自分を見ることができるとも思いますが。この曲書いたことを褒めてあげていいと思いますよ。

みゆな:ほんとですか、嬉しい。私、すごくストレートな曲が苦手なんです。無理に“頑張れ”って言われている気がしていて、苦手な部分があったんですけど、でもそのストレートな歌詞に救われていた自分もいるんですよね。だから、「願い」という曲は自分が恥ずかしいと思っているだけで、今は誰が聴いてもきっと元気付けてくれる存在になりうる子なのかなとは、時間が経って聴いて思いました。こうしてリリースされるとなって、いろんな人に聴いてもらえるとなったときに、独り立ちした子どもみたいな感じで、やっと客観的に見れるようになりました。最初は出したくない、出したくないって言っていたんですけど(笑)。

──そういうことで、“1stアルバム”としてみゆなさんのソングライターとしての歴史が詰まっているものにもなっていますね。最初の頃に、いわば自己満足的なものから、主人公を立てて物語を書いていくものへという変遷があったんですか。

みゆな:でも「ふわふわ」を最初に作って、「進め」「願い」「生きなきゃ」とかも同時期なんですけど。「ふわふわ」の時点で、完全にフィクションなんですよ。13歳の女の子が、“強めのお酒で酔いつぶれて”とか完全にリアルではないでしょ(笑)。物語を作るっていうのは最初からあったんです。「願い」や「進め」「生きなきゃ」とかは……これも、きっと自分ではない誰かを想像して作ってはいるんです。ただ「願い」に関しては、“私が歌ってるその日には あなたが笑ってるといいな”って完全に私目線の歌。きっとこれは本音なんだと思います。大事な友だちがいて、その友だちが家庭環境に悩んでいてしんどい思いをしていたときに書いている曲なんですよ。その子が私の歌を好きでいてくれていたから、そういう気持ちで書いたのかなっていうか。本当に“願望”でしかない曲なんですけどね。


──改めて、自分で音楽をやろう、自分で曲を作ろうってなったきっかけも知りたいです。

みゆな:不登校になった時に母が急にギターを買ってきてくれたんです。小学校5年生くらいのときにも突然、500円くらいのギターを買ってきたんですよ。でも、私はその当時陸上を頑張っていて、なかなかギターを弾く時間がなくてほったらかしにしていたんです。で、中2くらいで不登校になったときに、親が1万円のギターを買ってきたんですよね。最初はふーんって感じだったんですけど、なぜかギターを練習してみようかなって。最初は、シンガーソングライターというよりはシンガーになりたかったんです。でもギターを持ったときに「ふわふわ」が勝手に出てきて。シンガーソングライターいいなって思ったのが、すべてのはじまりというか。歌おうじゃなく、作って歌おうという人になった瞬間かなっていうのはありました。

──もともといろんなことを想像したりするのは好きだったんですね。

みゆな:妄想癖ですね(笑)。お恥ずかしながら。

──(笑)。でもそれはどこか自分の気持ちの裏返しな部分を表していたり、鏡になっている部分もありそうですよね。

みゆな:そうですね。歌ってマジックミラーみたいな部分があるんじゃないかなってずっと考えていたときがあって。マジックミラーって自分からは外が見えているけれど、外からは見えてないじゃないですか。そんな感じで、閉ざしている部分というか。自分は周りに見られたくないから閉ざしているけれど、不安だから一応周りは見ておこうっていうか。そういうのもなのかなっていうのはずっと感じていたんです。自分が結構そういうタイプだったし、暗い曲を聴いて元気付けられていたり。あとは周りとあまり関わらないことによって、自分を守っていたのもあったので。だからこそ不登校にもなっちゃったのもあったけど。そのなかでも仲良くしてくれた友人もいるし、今はこういうふうにスタッフとも仲良くお仕事もできているし、もうマジックミラーだとか思わなくてもいいんじゃないかなって。前よりは前向きな思考になって、物事を見れるようになってきているんです。今回は、そういう変化が見られるアルバムになったんじゃないかな。前のミニアルバム『ユラレル』(2019年)のときはそれこそマジックミラー的な感じだったので、虚勢を張ってたというか。誰もわかってくれないんだって思考で曲を書いていたけど。今は、みんながいるから音楽できているんだっていう気持ちでできています。いろんな書き方というか、いろんな表現の仕方が見えてきたのはありますね。



──より楽しめるような?

みゆな:まったく怖くないと言ったら嘘なんですけどね。やっぱり曲に対してどうこういう人も絶対に出てくるだろうし、関係のないルックスのことまでどうこう言ってくる方もいるわけじゃないですか。その方に対して勝とうとは思ってなくて。ただ負けたくもないなって思ってはいて(笑)。ただやっぱり、言われちゃったら気にしちゃうタイプなので、そこはずっと弱いままだなと思っているんですけど、その弱さの怒りを楽曲に反映させることができているので、今は結構前向きなのかな。歌詞を書ける曲があるおかげで、今自分が生きていられると言ったら大げさですけど。難なく日々を過ごせているのは、それのおかげかなっていうのはわりとあります。

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