【インタビュー】みゆな、「歌詞を書ける曲があるおかげで今自分が生きていられる」

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■自分もガイダンスを経て次に行こう

──曲ができることで、心のベクトルがわかりますね。

みゆな:あとは、しんどい時ほど歌詞が浮かんでくるんですよね。歌詞が浮かんでくるというか、情景と言葉がブワーッと出てくる。それをスマホに書き留めるのに指が疲れるっていうくらい情報量があるんです。出てくるときは本当にびっくりするくらい出てくるんですよね。だから、一生不幸なんじゃないかなっていう、不幸にならないと曲が作れないんじゃないかなってみたいなことは考えるんですけど。でも人生、不幸があってこそですからね。面白いし。それを大事にこれからも曲を作っていきたいなと思いますし、アルバムの楽曲もそういう“しんどい”が詰まったものですね。

──だからこそのテンション感ですね。言葉が強くもあり、鋭くもあり、でも胸に飛び込んでくるとその鋭さが、じわっとあたたかなものに変わる瞬間もありという。音と言葉のマジックがあるなと思います。1曲目の「埋葬」もそうですね、一見歌詞だけを読むと非常にざわざわとしますが、音と一体となって音楽となったときに様々な聞こえ方をしていくものになっている。この「埋葬」はライブでずっとやってきた曲ですね。

みゆな:そうです。だからこそ音源化するにあたってはすごいプレッシャーはありましたね。ライブの「埋葬」が好評なので、いちばん期待されていると思うんです、「埋葬」の音源化が。やっとここで出すという選択肢を取った自分にプレッシャーがあって。



──ライブではどんな感じでやってきていたんですか。

みゆな:バンドで、ロックっぽくやっていたんです。今回真逆な感じになっているので余計に不安なんですけど、真逆だからこそ一周回っていいのかなと感じながらやっていました。バンドでやるのはライブならではみたいなところがあるので。音源は音源でちがったテイストを作った方が、ちがう顔が見れて面白いんじゃないかなっていうのはありました。

──サウンドや曲の展開やドラマ性を聴いていると、すごく映像的なものを感じます。先ほど妄想癖なんておっしゃっていましたが、映画やドラマ、ミュージカルといったものって好きだったりしますか。

みゆな:昔は、好きじゃなかったです。唯一中学生のときとかに読んでいたのは赤川次郎作品くらいでしたね。ただ、コロナ禍で小説を読んだり、映画をめっちゃ見まくりました。どれも面白くて、コロナ期間にインプットしたなって思いましたし、いいものをいっぱいもらったなって思ってます。1か月で5冊とか読んだり、1日で映画10本見たりとか、そのくらいやっていたんです。

──話を聞いていると、結構極端ですね(笑)。

みゆな:ゼロか100かなんです(笑)。

──「埋葬」はいつ頃できた曲なんですか。

みゆな:これはだいぶ前ですね。ミニアルバム『ユラレル』のツアーの頃だから、2019年の秋のあたりとかだったと思うんですけど。そのときは1コーラスくらいしか作っていなくて、多分何も考えずに作り出して──最初に“バタンキュー”っていうワードが出てきたのかな。そこからつなげていく感じで、あまり深く考えていなかったですね。それこそそんなに活動をしていなかったときなので、何にも囚われずに作れていた曲で。楽しい曲ではないし──私は、自分でこういう曲なんですって共有するのが苦手なんですけど。相手がどのタイミングで聴くかによっても、曲の感想はちがうと思うので。ただ、しんどいときに聴いたら頑張ろうってなったりすると思うし、そういう人に届けたいというか。

──そういう考え方になったのは?

みゆな:「願い」を書いたときからもですけど、助けたいって思う人がいたからだと思います。自分がどうこうというよりは、どうにかしたら助けられるんじゃないかなっていう人がいたので。その人のために音楽をやりたいなというのがありましたね。


──それゆえに、言葉への思いも強そうですね。みゆなさん自身、いちリスナーとしてはどういったものに心惹かれますか。

みゆな:歌うのが嫌になってくるとピアノの曲ばかり聴きますね。3歳から小学校6年までピアノをやっていたんですけど。ショパンとかベートーヴェンとかを聴いて、めっちゃピアノいいなって思って。ピアノって、なんでかわからないけれど、しんどいのが収まるんですよね。それこそ昨日も流してたかな。

──自分の心を安定させてくれる一つの楽器なんですね。でも、あまりみゆなさんの曲のなかでピアノって使わないですよね。

みゆな:そこは自信がないので(笑)。

──それよりはギターが武器になってくれる感じですか。

みゆな:そうですね。武器というか、一緒に奏でて行く仲間という感じですね。

──曲を作るときもギターを触りながらというのが多いですか。

みゆな:そうですね、今までは暇なときに曲が作れたらなっていうテンション感で作れていたんですけど。曲を作らなきゃって思えば思うほど、うまくいかないときもあります。別に聴かせる感じじゃなくてもいいやっていうときの方が、大抵うまくいったりもするので。何が正解なのか、わからないですね(笑)。

──「秘密」や「凝視」などドラマの主題歌なども書いていたりしますね、そういうタイアップの場合は普段はちがう作り方やアプローチになるんですか。

みゆな:ドラマとかはほぼ書き下ろしとかになるので、一旦ドラマのあらすじであるとか、編集前の映像を見せていただいたり、原作があれば原作を読んで書いたりします。基本的に自分の感情というよりは、作品や主人公に視点を持っていって書いていく感じ。こういった場合は、ドラマから曲にそのまま入ってほしいので先入観みたいなものを大事にしていますね。やっぱり、自分の感情や想像で書くのとは変わってきます。ただ、難しいのが答えをかけないこと(笑)。

──ストーリーを紐解いてしまうのは、面白くないですもんね

みゆな:その塩梅がすごく難しいですね。

──「凝視」はドラマ『赤いナース』の主題歌ですが、とてもスリリングな曲でドラマにマッチしていました。

みゆな:たまたまドラマに合ってたというか。台本はいただいて、部分、部分ではドラマ用に変えてはいるんですけど、根本的にはそのまま自分のオリジナル曲だったんです。今Twitterとかでドラマと一緒に、私の曲まで考察してくれる方がいるので、ごめんって思ってますけど(笑)。実は、これは書き下ろしという感じでは書いてないんですよ。



──でもそれくらいドラマと合っているということですよね、主題歌にも何かドラマのヒントが隠されているんじゃないかと思わせるような。

みゆな:それはすごく嬉しいなって思ってますね。本当にたまたま合ったというか、これはもともとすっごい腹が立って作った曲だったんですよ。

──それでこそのヒリヒリ感とテンションがある。

みゆな:その感じが、たまたまドラマに合っていたんでしょうね。でもそういうのって嬉しいなって思って。それこそ、きっとこれボツになるんだろうなって腹いせに作った曲が、ドラマのタイアップになってくれたおかげでミュージックビデオまで撮ることができて、アルバムにも入ってっていう。そこでやっと報われた感じがしますね。こうやってフィットするドラマってあるんだなって思ったし(笑)。改めて、こういう報われ方もあるんだなっていうか。曲ってたくさん作るに越したことはないんだなって感じました。

──しかもこの「凝視」でみゆなさんを知って、このアルバムを手に取ってくれたら、全然また違う曲が11曲並んでいて、驚きもきっとあるでしょうしね。

みゆな:ギャップっていう感じですよね(笑)。

──ギャップということでは「彩色」もそうですね。サウンド自体は、キラキラな夏が来た!っていうくらい爽やかさがあるのに、内容はというと逆のものになってる。

みゆな:これも怒って作ってますね(笑)。アップテンポで明るい曲なのに、歌詞がめっちゃ怒ってるというのをやりたくって。そういうのがいちばん怖いなって思うんですよね、説得力あるし。“海が綺麗だった”とか言ってるくせに、後半は嫌味しか書いてない。

──歌詞のなかに、“瞋恚”(シンイ)という難しい言い回しがありますね。思わず調べちゃいましたけど──。

みゆな:フレーズが好きだったんですよね。小説でそういう譬えがあって、私もそのときに“なんだこの意味のわからない漢字? 字面ヤバ”って思って。調べたら、自分っぽいなって思って。怒ってるって書けばいいのに、遠回しに“瞋恚”ってわざわざ難しい言葉で書いてるのも嫌味ったらしいですよね。調べないと何の意味かわからないっていうのが、めっちゃ意地悪で好きなんですよ。

──歌で飛び込んできて、耳から聞こえてきてまずこの字が浮かぶ人も少ないと思うんですよね。

みゆな:自分が大事にしてるのって、歌詞カードを見ていただくことなんです。今はサブスクとかでも歌詞を一緒に見ながら聴けたりするじゃないですか。あれすごくありがたくて。私、日本の映画でもアニメでも字幕を出して観るんです。そう言うと、映像見れなくない?って言われるんですけど、そっちの方が頭に入ってくるんですよね。あとは、自分が想像している漢字ではないときがあるんですよね。日本語って難しいからこそ、そこは字幕つけてみるべきだなって思ってて。そんな感じで曲も見てほしいですよね。アルバムの醍醐味は歌詞カードにもあると思う。歌詞を見ながら曲を聴いてもらって、“瞋恚って、これなんや?”ってなってもらいたいがためのものでもある。ちゃんと歌詞カードを見るんだ、みんな!って思ってます(笑)。

──怒りという意味もありますが、仏教用語として、自分の心に逆らうものを怒り、恨むことっていう意味があって。後者の感じはみゆなさんの作品自体に通じるものがあるなって思いました。

みゆな:ちょうど「神様」を書いているときくらいでもあったので、仏教にもはまっていたときだったんですよね、そのままぶち込んだっていうのもあるんですけど。



──単なる怒りともまたちがって、体の中をぐるりと巡ってふつふつと湧いてくる怒りというか。この感覚がまさにぴったりだなって。

みゆな:そうですね。ただ、歌を作るものとしてあまりやっちゃいけないことなんですけど、瞋恚、シンイってめちゃめちゃ譜割りがよくないんですよ。リズムがよくなくて。でも、入れました(笑)。最初はリズムが合わないし、何を歌ってるかわからないからやめようと思ったんですけど、でもそれがいいじゃないかと思って。嫌味な曲だし(笑)。それでこの曲で入れているんですけど、もう二度と瞋恚とか言わん、ライブが怖いもん(笑)。「凝視」も、ライブで歌いたくないくらい難しいので、みんなからのプレッシャー、圧力がエグそうですけど。

──(笑)。語感にこだわってるから今回のアルバムではグルーブがより生まれていますけど、一方で、こういう言葉選びの部分ってソングライターとして、自分を映すものとして外しちゃいけないところですよね。

みゆな:そうですね。これはいい意味でもあるし、もしかしたら語弊があるかもしれないんですが、ここまでたくさん曲を書いてくるとどこか業務的な歌詞の書き方になってしまうんですよね。体が自然と韻を踏もうとしたりとか、音のいいものだったり、破裂音とか発音のいいものばかり選んでしまったりとか。でも、例えば“ま”とかって言葉が丸いから音が曇っちゃうんですよ。そういうところを意識していたら、どんどん使える言葉がなくなってくるなって思って。漢字とかも何度も同じのをあまり使えないじゃないですか。同じテイストになったらいけないから、辞書で別の言い回しを探して書いたりもするんです。そんな感じで業務的になったりもするんですけど、ただ、そういうなかでいろいろ崩壊してきたのが、「頂戴」だったんですよね。



──ポップでシュールな香りのする歌詞ですね。

みゆな:歌詞の崩壊というか、遊んだのが「頂戴」。TSUGEさんと一緒に1コーラスぶん曲を作っていたんですけど、この1コーラスの歌詞を30分以内で書いて。そのまま、いじらずに曲になっていて。でもそれがいいってなったんですよね。今まで、難しかったりとか、型にハマった言葉みたいなものをめちゃめちゃ書いていた人間が、サビで“いただきます”って、しかも出だしが“美味しいお茶をください”って何?みたいな。しかも苦すぎるねって言わせたいがために、極限の苦みのお茶を差し出そうとするっていう、ヤバヤバな曲を作っちゃって(笑)。崩壊もたまには悪くないなっていうのは、ここでやっと感じたんですよね。

──初めての感覚でしょうか。

みゆな:今まで、しっかりかっこいい歌詞を書かなきゃ、難しいことを書かなきゃ、とかプレッシャーがあったんですけど。「頂戴」を書いて、いいねって言われたときに、これくらい気楽な曲もいいなって思えました。で、この前作った曲には、“お寿司食べたい”みたいな歌詞も出てきて、これは絶対ボツなんですけど(笑)。でも、それくらい気楽でいた方がいいな、ラクだなっていうのは業務的になっていたからこそ思えたし。この『ガイダンス』のおかげでわかったことではあるなって思いました。

──試行錯誤の末でなく、ひょんなことからそれができてしまった。

みゆな:そうですね。すぐにデモを録りたいからって、急いで書いたんですね。そういうのが良かったんじゃないかなって。ひとりで書くとなると、まず登場人物を作ってなんやかんやとか、韻を踏むとか考える時間が多すぎてだんだんと遠回りしていってるんですよね。この「頂戴」があってから、めちゃめちゃ歌詞を書くスピードが速くなったんです。なおかつ面白い歌詞もかけるようになってきて。『ガイダンス』で学べましたね。『ガイダンス』っていう名前どおり、自分もガイダンスを経て次に行こうみたいな感じになっています(笑)。


──意外と自分でルールがあったんだなって自覚させられたみたいな?

みゆな:ルールというよりはとらわれ過ぎていたなというか。視野が狭かったのかなって。わたしB型なんですけど、几帳面なところがあって。どんなに近道を見つけても、自分が信じているところしか歩きたくないんですよ。例えば今日、Aという道を通って駅に行ったとしたら、帰りも絶対にその道で帰らないと嫌とか。お店がわからないから地図で調べて行ったときも、帰りも同じ道を帰らないと気が済まなくて。曲も、そんな感じだったんです。絶対にこういう行き方があって、こういうやり方があってというのが、ずっと私のなかでこだわりとして残っていたんですけど。それが「頂戴」で外れた瞬間があったというか。

──もうこの近道を行くしかないぞと。

みゆな:時間ないし、遅刻する!っていう感じでしたけど(笑)。でもなんだかんだで、道の癖に関してはまだ治ってないんですけど。曲を作る方法だけでも変えられたのは、すごくよかったなって思ってます。

取材・文◎吉羽さおり
撮影◎野村雄治

1stフルオリジナルアルバム『ガイダンス』

2022年8月24日(水)リリース
配信:https://asab.lnk.to/guidance
購入:https://asab.lnk.to/miyuna_guidance

[AL+DVD]
品番:RZCB-87078/B
価格:¥4,620(税込)

[AL+Blu-ray Disc]
品番:RZCB-87079/B
価格:¥4,950(税込)

[AL]
品番:RZCB-87080
価格:¥3,080(税込)

収録内容
[CD] 
・全12曲収録
[DVD / Blu-ray Disc]
・オンラインワンマンライブ『Delete→再開』(全11曲収録)
■収録曲
1.埋葬
2.凝視
3.奇術
4.頂戴
5.秘密
6.朝曇 
7.彩色
8.貪欲 
9.狂愛
10.甘苦
11.神様
12.願い

■特典
予約先着オリジナル特典
※各特典は数に限りがありますので、無くなり次第終了となります。
※一部取り扱いのない店舗、ECサイトもございます。
・タワーレコード「A5クリアファイル」
・HMV「ジャケットサイズステッカー」(3形態共通絵柄)
・TSUTAYA「A3ポスター」
・Amazon「メガジャケ」(3形態共通絵柄)
・mu-mo SHOP「アナザージャケット」
・その他CDショップ「ポストカード」
・みゆなオンラインストア / mu-mo SHOP「アナザージャケット」

<みゆな TOUR 2022『ガイダンス』>

2022年11月4日(金)大阪・LIVE HOUSE バナナホール
OPEN 18:15 / START 19:00
[問]サウンドクリエーター 06-6357-4400(平日12:00〜15:00)

2022年11月15日(火)東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO
OPEN 18:15 / START 19:00
[問]DISK GARAGE 050-5533-0888(平日12:00〜19:00)

料金:
特典付き全自由¥10,000
一般全自由¥5,500

特典付き全自由チケットについて:
※特典付き全自由チケットは先行受付期間のみの販売となります。一般発売での取り扱いはございません。
※特典内容は、限定デザインTシャツ、未発売音源(音源ダウンロードQRカード)、抽選でライブ当日のバックステージへの招待 となります。
※限定デザインTシャツ、未発売音源(音源ダウンロードQRカード)は当日会場での受け渡しとなります。後日発送の対応はできません。
※バックステージの招待は来場時にもぎったチケットの半券を用いて抽選。各会場各回20名が「バックステージ」に招待されます。ライブ終演後に時間の都合が合わない方、その他終演後に参加ができない方は、入場時に係員にお申し付けください。

チケット:
FC先行
8月1日(月)12:00 〜 8月16日(火)23:59
申し込み:https://fanicon.net/ticket/1609
入会:https://fanicon.net/fancommunities/4225
チケットのお申し込みはFC会員の方のみ可能となります。
新規入会の方も受付可能です。
直前に入会しても受付に間に合わない場合がございます。
余裕を持って手続きを行ってください。

◆みゆな オフィシャルサイト
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