【ライヴレポート】LUNA SEA、GACHI SEAコラボも飛び出した<復活祭 -Silky Voice->で「武道館!会いたかったよ!」

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LUNA SEAが8月26日および27日に日本武道館で<復活祭 -A NEW VOICE->と題した2DAYSライヴを開催した。その初日公演のレポートをお届けしたい。

◆LUNA SEA 画像

奇しくもなのか、今回のライヴはメジャーデビュー後の29年前、LUNA SEAが初めて日本武道館で単独ライヴを行った日程と同じである。2日目は大型台風襲来のため、急遽延期(ネットが発展途上だったため、会場に駆けつけたSLAVEも大勢いた)になり、“嵐を呼ぶバンド”と称される伝説に繋がった。しかしこの夜は、声帯にできた静脈瘤(微小血管病変)を除去する手術やリハビリを乗り越えたRYUICHI、そしてLUNA SEAの復活を祝福するかのように天候にも恵まれた。

初日26日のコンセプトタイトルは<Silky Voice>。2日目27日が<Naked Voice>なので、初日は絹のように滑らかで艶やかなRYUICHIのヴォーカルをフィーチャリングしたバラードやミドルテンポの曲で統一するのかと想像していたが、LUNA SEAは想像の遥か上をいくライヴを見せてくれた。


急遽、WOWOWオンデマンドでの配信が決まったこの日、まず、多くのファンを驚かせ、感涙させたのは第一部のオープニング。ステージに登場したのがRYUICHIひとりでいきなり、「WISH」をアカペラで歌い始めたことだった。歌っている最中にメンバーがスタンバイし、真矢のドラムのカウントとともに銀テープが会場に降り注ぐ<復活祭>ならではの幕開け。LUNA SEAのライヴを締めくくってきた「WISH」がこんな形で演奏されるのはバンド史上ありえなかったことだ。武道館全体が希望の光で満ちていく中、さらにスケールを増した強く温かい音で鳴らされたのは東日本大震災チャリティシングルとして配信された「PROMISE」。ファルセットを混じえたRYUICHIのヴォーカル。“♪君に会いたくて 早く”と歌う歌詞が想いをまっすぐに届ける。

「武道館! 会いたかったよ! 今回はメンバーが<復活祭>と名付けてくれて、僕の声が復活するのを待ってくれてました。今日、ここに集まってくれたみんなもずっと待ってくれていたと思います。新しい楽器、新しい声、ずっと変わらない想い。もちろん、今、溢れている新しい想いも含めて、今夜5人でLUNA SEAの想いをしっかりみんなに届けたいと思います」──RYUICHI


第一部のセットリストは新鮮な驚きの連続だった。RYUICHIの艶のある低音が堪能できる「TWICE」<1996年発表)は何年ぶりに演奏されたのだろう。非対称にセットされたキャノンタムが特徴的なプロトタイプのドラムセットを初披露した真矢とJの太く心地いいグルーヴ、壮大な風景を紡ぎ出すSUGIZOとINORANのギターワークに、遠くに連れていかれるような心地よさを覚えた。25年以上前に生み出された楽曲が新曲のように響くのはLUNA SEAが今を更新し続けているロックバンドだからだ。後半でRYUICHIがシャウトし、ドラマを生み出す展開に圧倒され、「MARIA」に移行する展開も美しかった。LUNA SEAの鳴らすサウンドには不純物が洗い流されていくようなカタルシスがある。

武道館に至るまでの道のりには不安も手術への恐怖心もあったことを明かしながら、自分の声について「あとは自分の新しい楽器をいかに使えるようになるか、乗りこなすか、弾きこなすか。そして新しい楽器が得たさらなるパワー、新しい自分の歌を見つけていく世界をこれから楽しんでいきたいと思います。これだけたくさんの人たちが待ってくれている。そして応援に来てくれる。今、マスクをしたり一緒に歌えなかったり、苦しい想いをさせてると思うんですよ。それでもこうやって武道館を埋めてくれる」と感謝を伝えたRYUICHI。


「RECALL」(アルバム『EDEN』収録)では曲名を告げた瞬間、会場にどよめきが起こった。第一部は“この曲をやってくれるなんて!?”の連続といってもよかった。アコギを弾くINORANがJと向かい合い、甘美な旋律を奏でるSUGIZOにRYUICHIが寄り添う。「I'll Stay With You」(シングル「Limit」カップリング)ではSUGIZOがヴァイオリンを奏で、RYUICHIがギターを弾き、豊かな時間が流れていった。盛大な拍手が会場に響く。

「武道館! 盛り上がっていこうか!」──RYUICHI

RYUICHIが初めて煽り、場内が明るくなった「SHINE」ではJが下手スロープ、上手スロープでSUGIZOとINORANが背中合わせでギターを弾き、センターに4人が集結する場面も。放たれる光の強さ、愛の大きさ、全てが歌に音に落とし込まれている。第一部の締めくくりは緑の光の粒がステージの床に散らばった演出も美しかった「absorb」。曲調はスローがメインではあるものの、歌や音に込められた熱量、この5人でSLAVEたちと再び時間を共有できる高揚感は格別のものであり、武道館は多幸感に包まれた。


20分の休憩を挟み、第二部のスタートはいきなりの「ROSIER」だ。打って変わってソリッドな爆音、燃え上がるようなアクトが武道館を熱くさせていく。英詞の語りの後に「行くぞ! 武道館!」とJが叫んでマイクスタンドを放り投げ、RYUICHIは「アリーナ! 1階スタンド! 2階スタンド! オマエら全員で飛ばして行くぞ!」と絶叫。1曲目から<Silky Voice>のイメージからはみ出しているのがLUNA SEAらしく、嬉しい裏切りである。そして、あの鋭角的なカッティングが響き、コロナ禍でなければ怒涛の歓声に違いない「Déjàvu」ではRYUICHIがみんなの心の声を聴くようにマイクを客席に向け、真矢の前に集合してのエンディングに拍手喝采。

事情があって会場に来られなかった人たちのことに触れ、そういう人たちにも見てもらいたかったと急遽ライヴ配信も実施したことに触れ、「IN SILENCE」が披露された。“♪空が海を抱いてた”というロマンティックなフレーズが象徴する世界観が空間に広がっていく至福の時間。ミラーボールの光が降り注ぎ、ステージの床に枯山水をイメージさせる模様が映し出された「銀ノ月」はRYUICHIのエモーショナルなヴォーカルが際立つ素晴らしい演奏。MCで話していたように新しい声を模索している最中なのかもしれないが、その声量、歌の説得力は復活を掲げるのにふさわしいと感じた。


第二部は緩急のある展開だ。浪漫あふれるゾーンから「STORM」へとアクセルを踏みこみ、テンションを上げていく。

「今夜は1日早く<Naked Voice>が始まりました(笑)。すごくすごく温かくてめちゃくちゃ今、楽しいので、今日はちょっと明日の予告編を聴いているみたいな。こうやって武道館に立つのも久しぶりですけど、やっぱりライヴを続けていかないと俺たちらしくない。どんな時代も共に信じた道を走っていきましょう!」──RYUICHI

嬉しい言葉のあとに投下されたのは、まさかのLUNA SEA初期のファストチューン「BLUE TRANSPARENCY」で、完全に<Naked Voice>ゾーンの剥き出しのヴォーカルと演奏。ラストはなんと29年前の武道館本編最後と同じく、1stシングル「BELIEVE」で締め括られた。


「本当に本当にどうもありがとう! 俺たちの留守中を温めてくれた。みんなもうわかってるよね」──RYUICHI

アンコールは、あらかじめ予告されていたこともあり、万雷の拍手の渦の中にバラエティ番組『かまいガチ』で結成されたGACHI SEA(かまいたちの山内と濱家、ジョイマンの高木、トム・ブラウンの布川、みちお、ドラムは本家LUNA SEA真矢)が呼び込まれた。2022年2月から活動休止期間に入ったLUNA SEAを盛り上げるために結成されたバンドだが、まさか武道館に参戦することになるとは。

INORANがファン役のみちおとじゃれあったり、INORAN役のNUNORANこと布川が小学生の時からLUNA SEAのファンで初めて買ったCDが「DESIRE」だったというエピソードが披露されたり、J役のジョイマン高木が「嬉しい LUNA SEA」とネタを挟んだり、SUGIZO役の浜蔵こと濱家は、SUGIZOが「椅子に座って浜蔵の隣でGACHI SEAを鑑賞する」と言っていることにビビったり、わちゃわちゃした雰囲気の中、2ヵ月間にわたりメンバーが楽器の特訓を重ねたという「TRUE BLUE」がついに披露された。ほかの本家メンバーがステージ袖へ捌ける中、SUGIZOだけは本当にステージ上に置いた椅子に座って、扇子で仰ぎながらギタープレイを間近でチェックするという浜蔵受難の状況にも関わらず、短期決戦とは思えない歌と演奏で会場からも称賛の拍手が沸き起こった。その熱演にSUGIZOも拍手を送り、Jは高木とハイタッチ、INORANは布川の背中を叩いてねぎらった。

「すごい! 真剣度がめちゃめちゃ伝わってきたね」とRYUICHIが笑うと、山内はほぼ全員が楽器初心者だったと恐縮し、「みなさんにこの場を借りて発表したいことがあります」と、本家が復活したので「GACHI SEAは活動を休止します」と宣言。しかし「もうちょっと聴きたいな。せめてコラボとか」と残念がるRYUICHIの提案で、LUNA SEAとGACHI SEAの共演による「ROSIER」が披露されることに。そこでJにより、次なる受難者となったのはジョイマン高木。J自身から「Jさぁ、わかってるよね?」と、この曲のハイライトである英詞の語りとマイクパフォーマンスを担うように命じられたのだ。LUNA SEAとGACHI SEA兼任の真矢以外の楽器陣は2人1組となって、エアーながらもメンバーの背中を追う弟子のようにスロープをついていき、そして演奏された「ROSIER」は高木のおぼつかないマイクスタンド投げを含め、武道館の全員が心の中で爆笑していたはず。RYUICHIと山内のデュエットも一夜限りのスペシャルであった。こんなコラボが実現したのも<復活祭>ならではだろう。


GACHI SEAを送りだし、メンバー紹介の後は「武道館! 盛り上がっていこうか!」とモードを即座に切り替え、「IN MY DREAM (WITH SHIVER)」へ。

「やりたいことがたくさん浮かんでます。新しいLUNA SEAも。明日の夜も。また5人でみんなに想いを届けたいと思います。いろいろ心配かけてしまうかもしれないけど、もっともっと進化して強くなるので。最後に俺たち5人から愛を込めて」──RYUICHI

そして贈られたのは愛に溢れた旋律とメッセージが年を追うごとに深みを増す「I for You」だった。<復活祭>初日、LUNA SEAはどれだけ多くの人の心を癒し、エネルギーを与え、涙させ、笑顔にさせたのか。こんなバンドが日本にいてくれることに心から感謝したい。

取材・文◎山本弘子
撮影◎田辺佳子/岡田裕介/横山マサト

■<LUNA SEA 復活祭 -A NEW VOICE- Day1「Silky Voice」>2022年8月26日(金)@日本武道館セットリスト

【第1部】
01. WISH
02. PROMISE
03. TWICE
04. MARIA
05. RECALL
06. I'll Stay With You
07. SHINE
08. absorb
【第2部】
01. ROSIER
02. Déjàvu
03. IN SILENCE
04. 銀ノ月
05. STORM
06. BLUE TRANSPARENCY
07. BELIEVE
【ENCORE】
01. TRUE BLUE
02. ROSIER
03. IN MY DREAM (WITH SHIVER)
04. I for You


■<黒服限定GIG 2022 LUNACY>

12月17日(土) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ
12月18日(日) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ

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