【インタビュー】HAZUKI (lynch.)、1stソロアルバムに挑戦と発見「制約は一切なし。アイデアに対して遠慮はしない」

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lynch.が活動を一時休止したは2021年末のこと。葉月(Vo)はHAZUKI名義によるソロプロジェクトの本格始動を2022年2月に発表した。以降、3月の初ライブ<HAZUKI 1ST ONEMAN NITE “NEO XANADU” -XANADU MEMBERS ONLY->を皮切りに、シングル「XANADU / HEROIN(E)」「+ULTRA / AM I A LØSER?」の2ヵ月連続リリース、5都市7公演に亘る全国ツアー<TOUR’22 “AM I A LØSER?”>と絶え間なく動き続けてきた。そして、ついに1stフルアルバム『EGØIST』が8月31日にリリースされる。

◆HAZUKI 画像

獰猛なブレイクビーツを基調としたインスト「EGOISM」で幕を開け、アグレッシヴなユニゾンリフが印象的な「C.O.M.A.」やシンセサウンドに彩られたダンスナンバー「七夕乃雷 -Shichiseki no rai-」、目映い光に包まれるようなバラード「LIGHT」、ライブでキラーチューンになること必至の「BABY, I HATE U.」など、多彩な楽曲群が並ぶ全13曲。lynch.や葉月名義のソロ『奏艶』で積み重ねた経験とスキルを核に、まさにタイトルどおり、作曲家として、作詞家として、表現者として、ヴォーカリストとして、HAZUKIの“エゴイズム”が目醒めたフルアルバムの完成だ。

彼を支えたのは、HAZUKIとはPay money To my Pain時代から交流があり、HYDEやLiSAのサポートギタリストとしても知られるPABLO。lynch.という確固たる牙城から一歩踏み出したHAZUKIは、今どんな景色を見て、何を感じているのか? 現在地から未来の展望まで、じっくり訊いた。

   ◆   ◆   ◆

■楽しさを今、求めてみたい
■発見だらけですよ、本当に

──2022年2月にHAZUKI名義でソロ活動を本格始動してから半年間駆け抜けてみて、率直な手応えはいかがですか?

HAZUKI:いや、大変でしたね。既発曲以外はスケジュールの合間を縫ってレコーディングしていったので、ミックスがギリギリの7月末に終わってホッとしました、というのが今の率直な感想です。このソロプロジェクトのコンセプトは、とにかく制約を持たせたくないというもので。自分が思いつくアイデアは全部やりたいと。「なんでlynch.だとできないの?」ってよく聞かれるんですけど……たとえば、アルバム収録曲の「ROMANCE」はホーンセクションが豪華に入ってて、ギターサウンドは全体の土台でしかない。でも、lynch.はギタリストがメンバーなので、やっぱりメンバーより上回ってくるものをメンバーじゃない人にやってほしくないし、5人の音で完結させたいという思いもある。もちろんlynch.でやりたいことができてないわけじゃないけど、lynch.でできることはある程度限られているし、僕は限られているべきだとも思っているんです。なんでもかんでも取り入れろ派ではないから。

──なるほど。

HAZUKI:ソロに関してはそういう制約は一切なし。今、例に挙げたアレンジ面もそうですし、最初は曲ごとにドラマーを変えていこうかなと思ってたほどで。今回そこまでは実現しなかったけど、そういうチャレンジが無限にできるのですごくおもしろかったし、やっぱり大変でした。


──「初めて自分だけの為に音楽を作っています」とソロ始動の時にコメントされていて。それだけHAZUKIさんはlynch.というバンドのスタイルとかファンのことを考えて活動されてきたと思うんですが、今回、ファンに対する気持ちとしてはどうでした?

HAZUKI:そこは何も考えなかったですね。自分がやりたいようにやらないと意味がないし、気を遣ったりすると、逆に失礼になっちゃうと思ったので。そこに、怖いという気持ちは全然なかった。だから最初はワクワクしてたんですね。だけど、いざ実行しようとすると本当にいろんなことが大変で。マネージメントもlynch.とは違うので、“あれ!? CDってどうやって出すんだっけ?”みたいなところから始まり(笑)。ソロとしては葉月名義の『奏艶』があったとはいえ、やっぱり別のものだから。

──2022年3月の初ライヴ<1ST ONEMAN NITE “NEO XANADU” -XANADU MEMBERS ONLY->からアルバムリリースまでの計画は立てていたんですか?

HAZUKI:そうですね。でも、びっくりするくらい忙しかったです(笑)。それを望んではいたものの、最初は手探りの部分がやっぱり多くて。でも、PABLOくんがギターとか楽曲アレンジだけじゃなくて、サポートミュージシャンを紹介してくれたり、スケジュール周りのことも全部とりまとめてくれたから、めちゃくちゃ助かりました。

──遡ると、lynch.活動休止発表時のインタビューで、「lynch.以外の活動をやりたい気持ちがあった」ということをおっしゃっていましたけど、ソロでやる音楽のイメージはもともとあったんですか。

HAZUKI:その時はそんなにイメージが湧いてなかったですね。というか今でも、根っこ自体に違いはないと思っているんですよ。バンドもソロも両方自分の曲なので。“えっ、これlynch.でできるじゃん”っていう曲も何曲かあると思いますし、そんなに区別はしてないです。ただ、アレンジしてどういうふうに見せるのか、というところに大きな違いがある。そこで浮かんでくるアイデアに対してとにかく遠慮しないという。

──まさに『EGØIST』は、HAZUKIさんという幹から新しい枝葉が広がったというか、解き放たれてる感じがしました。ご自身としても、やりたかったことが実現できた感触があるんじゃないですか?

HAZUKI:そうですね。現時点では間違いなくベストを尽くせたと思います。一方で、lynch.として17年やってきて染み付いてる部分があると思うので、“そこからもっとぶっ飛んで、離れちゃってもおもしろいんじゃない?”とも思いましたね。それは次作のヒントとして取っておきます。



──ちなみに、アルバムリリースよりもライヴを先にやったというのは?

HAZUKI:結成したてのインディーズバンドって、音源を出す前にライヴをやって、ファンをつけていくじゃないですか。お客さん側もライヴで曲を覚えて、音源になった時に“あの曲がCDになった!”っていう、あの感じ。そういう経験はもうlynch.の最初期以来ないわけで。アルバムを出してからソロプロジェクトスタートというよりは、そういう楽しさを今、求めてみたいという気持ちがあったんです。

──ということは、完成しきってない新曲もライヴでやったわけですか。

HAZUKI:そもそもライヴをやるために曲を作らなきゃいけなかったという。やってみたらめちゃくちゃ大変で、やめておけばよかったと思いましたけど(笑)。発足したてのプロジェクトとはいえ、ファンの人から見た僕はそうじゃないわけで。結成間もないバンドとは期待値が全然違うんですよ。楽曲の歴史が一切ない状態で、ファンの人をちゃんと喜ばせなきゃいけないし、楽しませなきゃいけないんだなって。そのことを<1ST ONEMAN NITE>直前に気づいて、“これはヤバイかな?”と(笑)。そこへのプレッシャーはしばらくありましたね。でも、お客さんがみんなすごく協力的というか、盛り上げてくれたから、いいライヴが続いたんです。あと、初ライヴが始まってから、“お客さん全員が俺を観に来てるんだ”ってことにも気付いて。lynch.ではステージの上手を玲央さん、下手を悠介くんに任せてたけど、“あっちにもそっちにも行かなきゃ”っていうことも新たな発見でした。


▲<TOUR'22 “AM I A LØSER?”>FINAL_2022.6.15@LIQUIDROOM

──サポートメンバーとのライヴという意味では?

HAZUKI:もちろんみんな上手いから、最初からそれなりには揃いますけど、やっぱりタイム感とかクセとか呼吸を掴むまでは結構時間が掛かりましたね。たとえば曲に入る前、僕が煽ってから一瞬黙って客を見渡している時に、響くんのドラムがもう曲に入っちゃったとか(笑)。<TOUR'22 “AM I A LØSER?”>の終盤でだんだん出来上がっていった感じはあるかな。まあ、そのメンバーも固定っていうわけではないのでね。僕だけで成立させたいんですよ、臨機応変にしておかないとフットワークが重くなっちゃうから。“あのサポートの人がいないとダメだよね”っていう状態にはしたくない。

──17年のバンドキャリアを持っていても、新たな発見がたくさんあったわけですね。

HAZUKI:発見だらけですよ! 本当に。

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