【インタビュー】KAYO.、さまざまな感情が墨流しのように融合した深みのある歌の世界が広がる1stフルアルバム『シリウスの集合体』

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名古屋発の5ピースロックバンドKAYO.の1stフルアルバム『シリウスの集合体』は、バンドが新しい世界へと踏み出していく瞬間の開放感や躍動感が詰まった作品だ。収録曲10曲はどれもバラエティーに富んでいて粒ぞろいで、みずみずしいエネルギーがほとばしっている。アルバムという形になることで、KAYO.の個性も可能性の大きさもよりはっきりと見えてきた。自分たちの感覚を信じて、やりたい音楽を追求し表現しているところが素晴らしい。リリカルでリアル。叙情的で衝動的。力強くてせつない。さまざまな感情が墨流しのように融合した深みのある歌の世界が広がっている。夜空の星々が人々の胸の奥までを照らしてくれるように、KAYO.の『シリウスの集合体』は、聴く人々の内面にも、その光をもたらしてくれるだろう。作詞を担当しているボーカルのSAAYAと作曲を担当しているドラムのWAKAに、1stフルアルバム『シリウスの集合体』について話を聞いた。

■1曲目の「新世界メランコリック」から10曲目の「ゆれる」までの流れは
■アルバムでしか伝えられないものなのでしっかり伝えたいという意識で作りました


――2016年のバンド結成当時から“カヨ”という表記で活動してきていましたが、バンド名をカタカナ表記の“カヨ”からローマ字表記の“KAYO.”に変えたのはいつですか?

WAKA(Dr):1年ほど前です。はっきりとした理由はないのですが、直感的に変えたくなったというか。

SAAYA(Vo):曲作りにしても、音楽活動全般にしてもそうなんですが、私たちは直感を大事にしていまして。結成からずっとカタカナの“カヨ”で活動してきたのですが、ふとした時に、“カヨ”は“カヨ”であり続けたいけれど、ちょっと進化していこうよという気持ちが芽生えてきたんです。だったら新しく“KAYO.”にしてみようかということで、変えました。ドットが付いているのは、ちょっと進化した、みたいなニュアンスを出したかったからです。

――何かきっかけはあったのでしょうか?

SAAYA:コロナ期間だったというのが大きくて。家にいると、バンドに関して考える時間が増えるんです。“何かやりたいけれどできない”という時間が長くて、その中で何かしら動きたいという気持ちが強くなって、表記を変えることにつながったんだと思います。

WAKA:今回のアルバムの制作期間とも重なっているので、バンドの新しいスタートを象徴している部分もありますね。

SAAYA:表記を変えた頃から楽曲制作が動き出したというか。ふいに始まったという感じです。

――アルバムを作ろうという意識で制作した作品なのですか? それとも1曲1曲制作して、曲が溜まったから、アルバムとしてまとめたということですか?

WAKA:アルバムを作ろうという意識でスタートしました。盤になっていない曲、配信だけの曲もいくつかあったので、それらの曲に新たな曲を加えて、アルバム制作を進めました。


――最近はサブスクが全盛で、曲を単体で聴くリスナーも増えています。アルバムという形態で作るうえでのこだわりは?

SAAYA:物語性を伝えるということです。1曲目の「新世界メランコリック」から始まって10曲目の「ゆれる」で終わる流れも含めて表現しています。この流れはアルバムでしか伝えられないものなので、しっかり伝えたいという意識で作っていました。

――10曲あることで、バンドの音楽性の豊かさをさらに楽しめる作品になっていると感じました。

WAKA:僕らはもともと曲の振れ幅はかなりあるほうだと思っています。今回のアルバムではその振り幅を維持しながらも、ストーリー性や統一感にこだわって作りました。

――開放感あふれるバンドサウンドも魅力的です。ギター2本を使ったアンサンブルも、音響的な広がりと深みがあって、光や空気の質感までもが伝わってきました。

WAKA:そこは意識しているところですね。ギタリスト2人の個性がまったく違うので、それぞれの良さを活かすことを意識して作っています。アレンジは僕が中心となって作っているのですが、洋楽が好きなので、その影響が出ている部分もあるかもしれません。

――曲の作り方は、WAKAさんがメロディを作るところから始まるんですか?

WAKA:そうですね。僕がメロディの大枠を作って、みんなでアレンジして、最後にSAAYAが歌詞を作るという流れです。

――サウンドが完成してから、歌詞を書き始めるのですか?

SAAYA:歌詞にしたいことは常々書きためています。この曲にはこの歌詞を当てたいなと考えることもあるのですが、曲が上がってきてみたら違うなと感じることもあるので、歌詞は最後に付けるようにしています。もともとイメージしていた歌詞と上がってきたサウンドがぴったりだったら、それはそれでうれしいですし、まったくイメージの違う曲ができあがってきて、その曲に対してまったく別の歌詞を付けるのも楽しいんですよ。毎回、でき上がりを楽しみにしています。


▲SAAYA

――曲に刺激を受けながら、歌詞を書くのもとてもクリエイティブな作り方ですよね。

WAKA:僕もそう思います。

――1曲ずつ伺っていきます。「新世界メランコリック」はアルバムのオープニングにふさわしい始まりのパワーが詰まった曲です。この曲はどんなところから生まれたのですか?

WAKA:ワクワクする高揚感のある曲を作りたいと思い、シンプルでありながら壮大さや豪快さを意識して、サビで広がる構成をイメージして作りました。SAAYAがそのイメージに沿った歌詞を付けてくれたので、さらにその特徴が色濃く出た曲になったと思います。



――《もっともっと遠く連れてってくれよ》という歌詞は、バンドの現在とも重なるのではないかと感じました。

SAAYA:この歌詞こそ、こういうことが歌いたいなと思って書いた歌詞の内容と曲とがぴったりハマった曲です。コロナ期間中にいろんな本を読みあさっていて、“こんな世界があるんだな”“もっとこんなことがしたいな”とあれこれ考えて、新しく始めたいという気持ちを表現しました。曲が上がってみたら、歌詞と曲とがぴったりだと感じました。

――同じバンドのメンバーだからこそ、共通するものがあったということなのかもしれませんね。

SAAYA:そういう部分もあると思います。

――ストリングス・サウンドも印象的です。

WAKA:ストリングスを効果的に使いました。ストリングスをここまでしっかり鳴らしたのは初めてなんですが、思い描いたように挑戦することができました。

――歌詞では《果てしないぜ》《喰らわしてやるぜ》など、力強い響きのフレーズが目立っています。これは?

SAAYA:最初はもっと柔らかな歌詞だったのですが、歌詞が出来上がって自分で歌ってみた時に、きれいにまとまるのは違うな、私の気持ちはもっと荒々しいものだなと思ったんです。コロナ期間もやもやしていて、立ち向かっていきたい気持ちもありましたし、“果てしないな”ではなくて、《果てしないぜ》だなって。

――新たな世界を切り開いていくパワーも伝わってきます。

SAAYA:リアルな自分を歌詞で表現したいなと思って、最後は《ぜ》にしました。アレンジではストリングスが入ってきて、きれいな感じがありながらも、歌詞は荒々しいところがあるところもKAYO.らしいかなと思います。


▲WAKA

――2曲目の「FANTASTIC」はフィーチャリングでjessicaさんのラップが入ってくる曲です。歌詞のテーマは二次元的な恋ということですか?

SAAYA:はい。これも私自身のことなんですが、家にいる時間が長かったので、画面で観てハマる瞬間があったんです。きっと私だけじゃなくて、みんな、何かにハマったことがあるんじゃないかなと思いながら書きました。家で映画を観たり、You Tubeを観たり、アニメを観たりして、アーティストにハマったり。そんな状況をおもしろおかしく、ひねって書いてみました。

――リアルでありつつ、コミカルなところもありますよね。

SAAYA:歌詞を書いていて、ちょいちょいふざけることがあるんですよ。そういうところもKAYO.らしいかなと思っています。

――jessicaさんのラップを入れたのは?

WAKA:ラップを入れたいなと思ったからです(笑)。音楽を作る時にはいろいろ考えるんですが、いちばん最初の部分では直感から、ということが多いんですよ。「ラップを入れたい」という話がSAAYAからあって、そこから曲を作り出したという順番です。

SAAYA:やったことのないことは全部やっておきたいというところはありますね。フィーチャリングすることによって、MVも楽しくなるんじゃないかなって遊び心を重視した曲です。

――「もう少し、あと少し。」はAメロのスモーキーな歌声とサビのせつない歌声との対比が魅力的な曲です。この曲はどんなところから?

WAKA:跳ねている感じと跳ねていない感じの微妙なニュアンスの間をさまようような感覚をイメージして、感情の“揺れ”みたいなものを表現できたらと考えながら作りました。その感覚がメロディにも歌詞にも影響を与えたのかなと思います。

SAAYA:歌詞は「もう少し、あと少し。」という題名どおりなんですが、ライブの後にすく悔しい思いをして、泣きながらとぼとぼと歩いて家に帰って、その直後に殴り書きした歌詞です(笑)。でも、満足しないこと自体は、良いことだと考えています。



――確かに満足しないことが次の成長につながりますよね。

SAAYA:そうありたいとは思っています。

――この曲ではSAAYAさんのボーカルの低音と高音、両方の魅力を堪能できます。WAKAさんはSAAYAさんの歌声をイメージして曲作りをしているのですか?

WAKA:SAAYAが歌うことを想像して作っていますし、SAAYAだけでなく、他のメンバーの演奏も想像して作っています。アレンジするうえでは、器用な人がいないところがKAYO.の良さだと思っているので、テクニカルなことをするのではなく、SAAYAの歌声をいかにシンプルに伝わるようにするか、を心がけています。

――SAAYAさんは歌う時にこだわっていることはありますか?

SAAYA:嘘をつかないことですね。本当に器用ではなくて、嘘がつけないので、歌詞を書く場合にも、思ったことをそのまま書くようにしています。そうすると、歌う時も自然なままで歌えるんです。自分にとって歌うことは、しゃべるような感覚に近いものだと思っています。それがいちばんこだわっていることですね。私は手紙を書くように歌詞を書いて、その手紙を読むように歌っているんだなと、レコーディングでよく思います。

――「微熱」はポップでファンキーなダンスミュージックで、バンドサウンドの魅力が堪能できる曲です。

WAKA:僕らは結構シーケンサーを入れることが多いんですが、今回のアルバムではバンドサウンドだけでやっている曲が3曲あって、これはその3曲の中のひとつです。このあたりは新しいですね。

――曲の冒頭のハイトーンの歌声も印象的でした。歌詞はどんなことをイメージして作ったのですか?

SAAYA:聴いている人が歩きながら聴いていて、主題歌っぽく感じてもらえたらいいなと思いながら作りました。

――サウンドはどのようにして作っていったのですか?

WAKA:メンバーそれぞれのクセをそのまま出せる曲だなと思って作りました。例えば、ギターだったら、オルタナ好きなギタリストがいるので、ファズっぽい音でフレーズを弾いてもらって、その対比として、もう1人のギタリストにはカッティングギターを入れてもらいました。ベースは休符を使ったりしながら、きれいなフレーズを演奏してもらったので、自分のドラムはシンプルに叩けば良い感じになるなとイメージして演奏しました。

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