【インタビュー】BAND-MAID、“らしさ”と“新しさ”満載のEP『Unleash』完成「文字通り解放っていう感じの作品になった」

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■「Sense」はBAND-MAIDの色が全開で出ている曲

──そんなインストから始まり、畳み掛けるように「Balance」に繋がっていきます。「今回はやさしい曲がひとつもない」という発言が先ほどありましたが、歌詞も冒頭からいきなり「I can shut you out」なんて強烈です。

小鳩ミク:突然突き放すっていう。ツンデレもいいところですっぽね(笑)。この曲に限らず、今回はなんか攻撃的な曲が多いので、気持ちもそうなっちゃったんでしょうっぽね。

SAIKI:確かにこの制作をしてた当時は、気持ち的に尖ってたかも(笑)。

小鳩ミク:いろいろ溜まってたのかもしれないですっぽね、ホントに。

──「全てをBet Now!! Everything to me」という歌詞もすごく強いです。「もう全部私に賭けなさい!」と命じているわけで。他のものには目もくれるな、と。

小鳩ミク:かなり強い感じですっぽね。曲を聴いた時に、あんまり他の曲との兼ね合いとかバランスについては考えてなかったんですけどっぽ、メロディも演奏もカッコいい曲だし、強い言葉でやりたいなって思ったんですっぽ。で、ちょうどこれを書いていた時期、他の曲の歌詞では日本語に重きを置いたものが多かったので、ちょっと英語多めでリズム感強めの感じがいいなと思って、この曲に対しては書きましたっぽね、はい。

KANAMI:跳ね系の曲が欲しいって前から結構言われていて、そのイメージから作り始めたんです。あと、イメージ的にちょっと近未来っぽい感じの曲にしたいなっていうのもあって、ちょっと実験的なテイストも入れてみたり、新しさを出そうとした曲でもあります。自分的には10年後でも人気になるような曲というか……10年後にどうなってるかなんてわからないですけど(笑)。この先、お給仕が始まった時にパンチのあるものというか、雰囲気をいい意味で崩せるような楽曲になったらいいなあって思ってます。

AKANE:「Balance」はドラム的にはレコーディングでいちばん苦戦した曲で。A、B、サビと、セクションごとに3連符のノリだったり8分のノリ、16分のノリっていう具合にどんどん移り変わっていくので、そのノリを表現すること、次のセクションの頭でパッと切り替えることというのがすごく難しくて。レコーディング前に楽器隊で「ここはこうで、次はこうなって」という共通認識を確認したうえで、それから録りに臨みました。サビのドラムは8分ノリなんですけど、そこでの竿隊は3連のノリを出していて。「どっちかに合わせる?」みたいな感じで話し合ったりもしました。

KANAMI:そこも、ちょっと新しさを出したかったところで。「ドラムはこうなんだけど竿(ギター、ベース)は3連符で行きたいんだー」みたいな話をした記憶があります。

AKANE:うん。ただ、8分なんだけどちょっと3連に寄り添ったような、ちょっとだけ後ろ目のノリにして叩くニュアンス付けをしましたね。バキバキに合わせるんじゃなくて、気持的に寄り添うぐらいの感覚で。ある意味、人間的なノリを重視した感じです。

MISA:録っていて大変だったのはやっぱりそこですね。8分で叩いてるサビに対して竿は3連で行くってことになると、やっぱり8分のノリに引っ張られそうになっちゃったりとか。そこではちょっと苦労しましたけど、聴いたらすごくカッコよかったので、そこに挑んでみて良かったです。


──いい感じですよね、そのノリが。そしてヴォーカル的には結構キーが高め。前回のインタビューでは「Unleash!!!!!」の歌い出し部分の高さについての話になりましたが、この曲もすごく高い箇所が多いし、実はこの曲に限らず今回は……。

SAIKI:全部そうなんです(笑)! これまでが常に全力疾走だったのに対して、今回は全力のまま長距離を走っているイメージですね、私の感覚としては。「Unleash!!!!!」もそうでしたけど、この「Balance」とか「influencer」も特にそういう感じになってます。従来の曲でも使っていたキーではあるんですけど、それがこんなに長く続くことはなかったので。

──ピンポイントで使っていたものが今回は長く使われているということですよね?

SAIKI:そうですそうです。以前の曲ではサビ終わりに高くなっていくことが多かったのに対して、その頭から高くなっている感じ。しかもその高いキーがずっと続いていく展開がめっちゃ多いので。ある意味、身体作りをしてきたからこそ対応できるようになったところもありますね。ただ、今後のお給仕では、そういう曲ばかり続かないように「間を空けてくれ!」って言うだろうと思います(笑)。

小鳩ミク:確かに、この曲順ではできないねっていう話をしてたっぽね。

SAIKI:そうそう。このEPのままの曲順はないかなって(笑)。

小鳩ミク:ないそうですっぽ(笑)。

──曲はその勢いに加速度を付けていくようにしながら「Unleash!!!!!」に続いていきます。具体的に言うと、「Dan! Dan! Di,di,dan! Dan!」のところで特にスピードが増していく感じがあって。

AKANE:実際そこで速くなってるわけじゃないんですけど、ビートが頭打ちになってるからなんでしょうね。それでスピード感が増してるのかなって思います。この曲は私、めっちゃ好きですね。出だしの一発目から新鮮さがあるし、制作中からずっと「この曲カッコいい!」と思ってました。しかもスッと耳に入ってくる聴きやすさがあるのに、展開も豊富で聴き応えがあるというか。他の曲に比べたらシンプルというかそこまでテクニカルなことはしてないんですけど、フレーズ的にはシンプルめに作っているので、耳に馴染みがいい。この曲はきっと人気出るだろうな、と。

MISA:その中にあってベースの音も耳に残りやすいものにしたくて。よく使用しているメインのベースがあって、今回のEPはほとんどそれで録ったんですけど、ちょっとキャラを変えたいなと思って、初めてフロントロッドだけの設定にして録ってみたんです。その甲斐あって、聴感的な感触も攻撃的ですごくカッコよくなったと思いますし、音のキャラの違いを自分でも楽しめましたね。もちろん全曲カッコいいんですけど、これは最初から耳に残る感じがあったし、人気曲になりそうだなと感じてました。だからベースでも耳に残る何かを残したかった。

SAIKI:爪痕を残す、みたいな?

MISA:うん、そうそう。

──疾走感をもって駆け抜けていくだけじゃなく、しっかり個々の音にもキャラがあって、それがフックになっていますよね。作詞に関しては小鳩さんとSAIKIさんの連名になっていますけど、共作の時って、あれこれやり取りをしながら作っていくんですか?

小鳩ミク:この曲に関しては、お互いそれぞれにまず一回書いてみたんですっぽ。世界征服第二章、解放、というテーマは先にあったので、それに沿った形で。そのあとで、双方のいいところを組み合わせたというか、合体させていった感じですっぽ。

SAIKI:小鳩の書いてきた歌詞の内容がとても良かったんですね。まさに世界征服第二章、鬱憤を晴らしたいっていう感じで。なので内容的な部分ではそれを軸にしながら、私が耳ざわり感、アタック感みたいな部分、それこそ「Dan! Dan! Di,di,dan! Dan!」とかを作ったんです。

──良い形でチームワークが機能していますよね。

小鳩ミク:そうですっぽね。以前は私だけでまず書いてみて、SAIKIが気になるところだけ直していくっていう感じだったのに対して、SAIKIも書くようになったことで、両方のいいところを組み合わせることができるようになって。そこがすごく新しいなあっていう感覚はありましたっぽ。

──KANAMIさんにも改めて訊きたいんですが、この曲の出来栄えには今も満足していますか?

KANAMI:はい! 皆様のご協力のおかげでとてもカッコいいものになりました。曲についてはいつも私がいったん作って渡すんですけど、みんなでアレンジして、ヴォーカル入れて、コーラスもいい感じにしてくれて……そうやって進めていくからこそ、こうやっていいものが生まれるというか。ホントにこのメンバーだからこそできる曲だなあって思いまして……。

小鳩ミク:思いまして? 思いました、ですっぽ(笑)。


──僕もそう思います(笑)。そして続くは「Sense」。シングルとして発表されてからは時間も経過していますが、今現在はこの曲についてどんなふうに感じていますか?

SAIKI:今はちょうどツアーの準備をしていて、『Unleash』の収録曲を中心に合わせてるんですけど、やっぱり「これ(Sense)は結構前からあったんじゃ?」みたいな感触がありますね(笑)。

小鳩ミク:大御所感があるっぽね、曲自体に。

SAIKI:大御所感(笑)! でも、確かにそうかも。あのイントロの印象も相まって。

──もはや代表曲の風格を漂わせているというか。

AKANE:確かに。セットリストを作る時、曲名がばーっと並んでる中に「Sense」があると“ドン!”と存在感が(笑)。

小鳩ミク:だからもはや、新曲感はないっぽね。

AKANE:むしろ安心感というかどっしりした頼もしさがありますね。何故なんだろう?

SAIKI:曲自体のキャラがそうさせてるっていうのもあると思います。BAND-MAIDの色が全開で出ている曲だし、構成的にもこれまでと結構近いと思うんですね。

──つまり、このバンドにとって王道的な曲ともいえる。

SAIKI:それが理由のひとつではあるんじゃないでしょうか、はい。

KANAMI:ああ、そういうことなんだな……と思って今の話を聞いていました(笑)。

小鳩ミク:あと、出してから10ヵ月経っているので、単純に時間の経過もあると思いますっぽ。

──ただ、リリースから時間を経てはいても、それからの期間、お給仕で消化されてきた曲ではないわけですよね。それでもそんなふうに思えるというのは、この曲がリスナーに受け入れられているという実感があるからでもあるのでは?

MISA:それはあると思います。

SAIKI:皆さんから「Sense」を高評価していただけてるので。「やっぱBAND-MAIDはこういう曲でしょ!」とか「こういう曲を待ってた!」みたいな声が多かったんですね。リリース当初からすごく“待ってました感”があったというか。当時、SNSでそういうリアクションを見てすごく嬉しかったのもその理由のひとつだと思います。

AKANE:あとはやっぱりTVアニメ『プラチナエンド』の効果もあって、この曲を切っ掛けにBAND-MAIDを好きになってくれたっていう声もSNSで目にしていたので。新たな代表曲っぽい感じがすでにありますよね。

小鳩ミク:あとはあのオーケストラ始まりの印象がやっぱり強いので、それが曲の大御所感に繋がっているんじゃないかと思いますっぽ。

SAIKI:そうそう。ベテラン感があるというか(笑)。

AKANE:オーケストラの音が聴こえてくると、ちょっと身構えちゃうようなところがあるじゃないですか。


──確かに背筋が伸びる感じがありますよね、ストリングスが聴こえてくると。

小鳩ミク:そうですっぽね。やっぱりここまでオーケストラでがっつり始まるというのは「Sense」が初めてだったので、ご主人様お嬢様もびっくりしたはずですけど、「これって合うんだね!」と受け止めてもらえてたと思いますっぽ。

AKANE:しかもそれがすごく曲に合っていたことで、気持ち的にも強くなれたみたいなところがあって。

小鳩ミク:武器が増えた!みたいなところがありましたっぽ。

MISA:うん。絶対ライヴ映えするだろうな、とは思ってましたね。ステージ上のみんなのたたずまいが見えてくるような始まり方でもあるし。

──しかもあのイントロの存在によって、お給仕でも必然的に重要な場面に配置されることになるはずだし、これはきっと大事な曲になっていくぞ、という予感めいたものを最初から抱かせてくれた曲だったともいえそうですね。そして次は「I’ll」です。KANAMIさんとしては、この曲はどんなことを意識しながら作っていましたか?

KANAMI:これはちょっと低めの曲で。低音感から始まって何かぼそぼそ言ってて「なんだろう?」みたいな感じの曲が欲しかったので、それをイメージしながら作りました。ただ、リフは2~3回変えたのかな?

MISA:うん、そうだった。

KANAMI:リフについて、「前の曲とちょっと雰囲気が似てるところがある気がする」みたいな指摘があったので、何回か変えてみて、結果的にこのリフが採用されました。

──この曲はキー的には低めですけど、強い声が求められる曲ですよね?

SAIKI:そうですね。

小鳩ミク:これはまた、高いのとは別の意味で大変そうだったっぽ。

SAIKI:なにしろ息をするところがないので(笑)。この曲に限ったことじゃないんですけど、今回、KANAMIには当初、メロの数が多すぎるって言ってたんですね。だから少しずつそれを減らしながら空間のあるような感じになりつつあったんです。ただ、そう言ってはみたものの、メロがたくさん詰まったあの感じって、BAND-MAIDならではの良さでもあるじゃないですか。そこで「最近そういうのがなかったね。だけどそれを嫌がってたのは私かぁ」と気付いて(笑)、そういうのをお願いしますって言ったんです。

KANAMI:「ここ変えていい?」みたいな提案から変えたところもあったしね。

小鳩ミク:このサビの頭のメロ感、メロの数とかも変えた記憶がありますっぽ。

KANAMI:「変えていい?」って聞かれて「どうぞご自由に」みたいな(笑)。そういう感じでした。全曲そうなんですけど、最初に原曲を作ってくるのが私なので、みんな私に気を遣って「変えてもいいですか?」って聞いてきてくれるんですけど、そのたびに「ああ、ホントにやさしいメンバーたちだな」って思います(笑)。


──そこはやっぱり、ある程度は気を遣いますよねえ?

SAIKI:ですよね。やっぱり勝手には変えられないですよ。「そこに意図があったらどうしよう?」とか思ったりもするんで。

小鳩ミク:そうですっぽ。たまに思いがけないところに意図があったりするケースもあったので。「ああ、そうだったんだっぽね!」みたいな。

──音のやりとりも会話と同じで、「実はあのさりげない一言がいちばん言いたいことだったんだな」みたいなところがあったりするわけですよね。それをお互いに汲みながら形になっていく。そして結果、この曲はこのEPの中にあってはちょっと異質な存在になったように思います。

MISA:そうですね。全体的に重たくてダークな感じで、ダークヒーローみたいなのが似合う雰囲気というか。ベースについてはそういったイメージを意識しながらも、サビはSAIKIのヴォーカルメロディが綺麗だから、それを際立たせるためにもベースはシンプルにしてみたり。

AKANE:ドラムもミドルに近い重ためな感じにしたかったので、やっぱり音の伸びとか重さ、テンポ感を表現するのに結構意識を集中させながら取り組みましたね。4分音符感をいかに出すか、バスドラのサステインをどれくらい伸ばすか、みたいなことを考えて、結構頭を使いながら作りました。

SAIKI:一個思い出したんですけど、KANAMIと話している中で「久しぶりに小鳩との掛け合いの部分を作って欲しい」って言ったことがあって。それがこの曲に入ってます。

小鳩ミク+KANAMI:(綺麗にユニゾンで)ああ!(笑)

SAIKI:そういうのがなかったんで、最近。インディーズ当時とか、メジャーの初期の頃に通じる感じの要素が欲しいっていう要望を出したのを、今思い出しました!

KANAMI:ありがとうございます(笑)。

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