【インタビュー】加藤和樹、記憶とともに大人の魅力を積み重ねる新作ミニアルバム『Nostalgia BOX』

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昨年アーティストデビュー15周年を迎え、今年2022年からは春の野音ワンマン、6ヶ月連続のデジタルシングルリリースなど精力的な活動が続いている加藤和樹。今回リリースされるミニアルバム『Nostalgia BOX』は、故郷の景色や人生の原点となるような記憶をテーマに、大人の魅力あふれる豊かなアンサンブルが印象的な作品に仕上がっている。過去を懐かしむだけでなく、その先を生きる強さもしっかりと描かれた本作。自身が作詞を手掛けた楽曲はもちろん、それぞれのストーリーや歌声に込めた加藤和樹の想いを聞いた。

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■地元の友達や親、風景などを懐かしみ、そこに思いを馳せる
■自分と重なる部分もすごくありました

──6曲入りのミニアルバム『Nostalgia BOX』が完成しました。ジャケット写真なども含め、この季節にぴったりな仕上がりになっていますね。


▲ミニアルバム『Nostalgia BOX』TYPE-A


▲ミニアルバム『Nostalgia BOX』TYPE-B

加藤:今回のタイトルもそうですが、懐かしんだり振り返ったりというちょっと哀愁が漂うようなものにしたかったんですよね。僕自身秋生まれということもありますが、リリースされるこの秋という季節のイメージを、ジャケット写真やミュージックビデオなどでも表現できたらなと思いました。

──しかしこの"BOX"シリーズも定着してきましたね。6曲というサイズ感も、作り手はコンセプトが打ち出しやすく、リスナーにも伝わりやすいのかなと思います。

加藤:そうなんですよね。テーマが作りやすいですし、やはり作品の方向性がぶれない上にコンパクトで聴きやすいというのも利点としてあると思っていて。そういう意味でも、このシリーズは続けていきたいなと思いますね。ネタがある限りは(笑)。

──おもちゃ箱のような『TOY BOX』、刺激的な『EXCITING BOX』などこれまでもいろんな表情が詰め込まれてきましたが、今回の『Nostalgia BOX』はまさにこのタイトル通りの仕上がりになっていて。

加藤:今回のアルバムは正直言って自信作です。もちろんいつも自信作なんですが、すごくいいアルバムになったなと思います。月並みな言葉で申し訳ないですが(笑)。

──"いいアルバム"というのは、きっと加藤さんの心の状態と波動が合っているものがきちんと作れたからではないかなと感じています。今回、この『Nostalgia BOX』というテーマ/コンセプトに着地した経緯を聞かせていただけますか。


加藤:これは「ノスタルジックオレンジ」のMVでも表現されているんですが、やはりコロナ禍というのもあり、なかなか地元に帰れない方も多いと思うんですね。地元の友達や親、風景などを懐かしむこと、そこに思いを馳せることが出来るようなものになったらいいなという思いから、今回はどこかノスタルジーを感じさせるようなものはどうだろうかという話が持ち上がりました。そこから楽曲を集めていったんですが、僕自身が歌ってみて、または歌詞を読んでみてもうちょっとこうしてほしいみたいなところも作家さんとやりとりしながら作り上げていきました。僕自身が歌詞を書いている楽曲もあるんですが、その方向性をどうするかなども自身で考えながらでしたね。僕自身もなかなか実家に帰れていないので、歌詞を読んでいるだけで自分と重なる部分もすごくありましたし、「あぁ、みんなもこういう気持ちになってくれたらいいな」っていうことを自分自身がまず体感できたので、あとはその気持ちを曲や歌に詰め込むだけという感じでした。

──加藤さん自身の作詞が3曲、他の3曲はSIRAさんというシンガーソングライターの方の作品ですね。

加藤:僕、SIRAさんの楽曲がすごく好きで。心をふっと掬い上げてくれるような優しさがすごくあるんですよ。選曲会議でいろんな曲を聴くんですが、耳に残るのはやっぱりSIRAさんの曲が多かったので今回は3曲歌わせていただきました。ノスタルジーって割と直接的で範囲が狭いテーマだと思うから、ひょっとしたら歌詞も似たり寄ったりになるのかなと思っていたんですが、すごくバランスがいいものになりました。

──では具体的にお聞きしたいのですが、アルバムのラストに収められている「また明日」はすでにライブでもお馴染みになっている楽曲ですね。改めて、この曲ができたきっかけを聞かせてください。


加藤:最初は「おやすみソング」っていうタイトルで、1日の終わりに聴くような、子守唄みたいな歌になったらっていうイメージで作り始めたんですね。でも書いていくうちに、自分自身もそうですが、誰かに「頑張ったね」ってちょっと背中を押してもらえるだけで明日も頑張ろうって思えたりする、そういう役割を果たせるような曲になったらという思いになっていったんです。こういう状況の中、みんなすごく頑張っているじゃないですか。明日が来るっていう当たり前のことが、意外と当たり前じゃなかったりする。日常を切り取っただけの歌ですが、小さなところに目を向けるだけで明日も頑張ろうって思えたり、少し優しい気持ちになれたり、誰かに「ありがとう」と言ってもらえただけで自分も優しくなったり。そういう日々の小さな幸せを噛み締めることが一番幸せなことなんじゃないかなって思うし、それがより大きな幸せにつながっていくんじゃないかと思って書いていきました。

──アルバムの幕開けの景色となっている「ノスタルジックオレンジ」はSIRAさんの作詞・作曲ですが、すごく素敵なタイトルですよね。

加藤:ピッタリだなと思いました。哀愁漂う感じもあるし、懐かしい故郷の景色を思うとやっぱり夕景が思い浮かぶんですよね。だからこのワードはとてもマッチしているなと思いました。

──加藤さんの故郷の夕景はどんな感じだったんですか?

加藤:僕は高校時代、自転車通学だったんですが川を2つ越えるんですね。本当に何もない田舎なので、陽が沈んでいくのがすごく遅くまで見えるんです。そんな学校の帰り道、何にもない田園風景です(笑)。

──いつでも帰っておいでと言ってくれる場所であると同時に、2度と帰らないと決めた場所でもある。この曲の中で、故郷は両方の思いが交差する場所として描かれていますが、加藤さんにとっては?

加藤:地元は本当に大切な場所ですし、僕は何かあったら帰りたいくらいの地元大好き人間(笑)。すごく元気をくれる場所です。「2度と帰りたくない」くらいの思いで街を出る人もいると思うけど、自分のルーツというのは絶対にそこにあると思うので、僕は切っても切り離せないものだ思いますけどね。

──親からだけでなく、土地から受け継いているDNAみたいなものもありますよね。

加藤:やっぱり育った場所ですからね。僕の場合は名古屋弁っていう、言葉としても如実に出ちゃいますし(笑)。名古屋のDNAを継いでるんだなっていうのは、すごく思いますよ。名古屋駅に着いた瞬間から空気の違いみたいなものも感じますしね。でも、見慣れた風景が年々変わっていく様を見てちょっと悲しくなったりもします。「知らない景色のように僕を置いていく」という歌詞もありますが、街も自分自身も、共に変わっていくものですからね。そんな中でも、変わらない気持ちでつながってるっていう素晴らしい絆があると僕は思ってます。

──「Still alive」そして「もしも」では、命というものにも正面から向き合われていますね。

加藤:まず「Still alive」に関しては、僕自身にもそういう悲しい別れというものがあって。コロナだけじゃなく、戦争も、日々の悲しい出来事もいろいろある中で、自分に何かを残してくれた人への思いというのかな。亡くなってしまった人にいつまでも固執するのではなく、その先で自分はどう生きていかなきゃいけないのか。その人の分まで生きるじゃないですけど、そういうことをすごく考えたんですよね。こういう思いをしたのはきっと僕だけじゃないと思うから、少しでも共感してもらえる部分があればいいなと思って歌詞を書いていきました。次に「もしも」、この"もしも"って希望でしかないんですよね。そうなったらいいなって思うことであって、そう思ってしまうのは人間しょうがない。自分自身もすごく考えます。あの時こうしていればな、なんてことは大小問わずいっぱいある。じゃあ、そう思わなくていいように自分はどうしていけばいいのか、っていうことを次は考えるようになる。つまり「もしも」は、"もしも"という言葉を言わないための曲だと僕は思っているんです。こうだったらいいなと思うことも時には大事だったりするけど、これを聴いた人が、「そうか、"もしも"にしてしまったらダメだな」って、そこに気づくような楽曲だと僕は思うんですよね。

──確かにそうですね。

加藤:この2曲は、すごく大事なことを教えてくれる楽曲です。自分自身いろんな経験をしたから歌詞に真実味が出るんじゃないかなと思うし、SIRAさんが書かれた「もしも」もまるで自分のことのように歌えました。と言っても、この2曲のレコーディングは大変だったんですけどね。途中で涙を堪えきれず、ちょっと感極まって歌えなくなっちゃったりもしました。

──それくらい自分の思いと重ねて歌えるものが、自分のオリジナル楽曲にあるのは素晴らしいことだと思います。

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