【インタビュー】植田真梨恵、11年越しの“ユーフォリア計画”完遂「死ぬまでに作り上げたいと思っていました」

ポスト

■自分にできる音楽への誠意
■リアルな気持ちを音楽として書けた

──アレンジ面やレコーディングで、今回は特に手触りや聴き心地、感触にこだわっているように感じます。先ほどもお話しましたが、サウンドやアレンジは時代性を意識して採り入れられたものではなく、普遍的なものに仕上がっているというか。植田さんのレコーディングは過去、iPhoneで録ったり(「distracted(ボイスメモ)」)、オールドのジャガーが登場したり、サウンド的にも興味をそそられるのですが、今回、レコーディングでこんなマジックがあったとか、こういうところにこだわったとかありますか?

植田:レコーディングは実験的なことをいっぱいしたんです。ドラムのレコーディングでは掃除機のホースを使ったり。

──え、叩くんですか?

植田:いや(笑)。ドラムに立てるマイクだけでなくて、いろんな方向へマイクを立てたんです。たとえば、床に向いているマイクとか、壁の方を向いちゃってるマイクとか。ドラムの前に置いた掃除機のホースの中にマイクを入れて、そのエアーを録ったり。

──オンマイクもアンビマイクもいろいろな録り方を試してみたという?

植田:はい。曲によってそのミックス具合を変えたりしているんです。だからドラムレコーディングは生音にこだわりながら、いろいろ挑戦しました。

──それって、特定の楽曲ですか?

植田:全曲で試しました。なので、混ぜ具合によって聴こえ方が違うと思います。



──すごいこだわり。さすがです。続いて、「モアザンミューズ」などは、それこそいろんな音や周りにある空気感も封じ込められたもので、歌もすぐそばで歌っているような曲ですね。

植田:ガットギターで弾き語りをしているんですけど、それこそレコーディングの手法でいえば、iPhoneのマイクと定番SUREの57マイクを立てて録ったのかな。なるべく一発録りの雰囲気が伝わるように、生々しくそばで歌っている感じがするように作っていますね。この曲を書いたとき、“私、このアルバムを絶対好きになるなって思う曲ができたな”って、より愛が深まった曲でしたね。

──そうだったんですね。

植田:これはアルバム全体に言えますし、最近の私のモードでもあるんですけど、小さな生き物に胸を打たれることが多いんです。思っていたより、動物が好きだったんだなって。小さな子どもとか虫もそうですけど、自分も含めて小さな生き物だなと感じたりもしていて。そんな歌だなと思っています。

──小さきものに対する愛情の大きさが出ていますね。

植田:なんかわからないけれど、甥っ子の手を握っていて涙が出そうとか、そういうレベルのことなんですけどね。言葉にするのは難しいけれど、すごく大好きな曲だなと思ってます。

──そしてアルバムのラストを締めくくるのが「ユートピア」。最後の曲ですが、でも、ここからもなにかを見つける旅をしていくんだなっていう印象を抱きました。

植田:そうですね。最初にお話した、夢見ていた音楽世界というか、子どもの頃に見ていた歌番組や終わっちゃった歌番組たちみたいな世界がユートピアなんです。あの頃は、CDが100万枚売れるようなユートピアの世界だったんですけど、その頃の夢はもう夢ですから。自分はやっと、その近くにたどり着いたような雰囲気がしていたけど、噂によるとそこはもうない。けれど手を動かして漕いでいく、ということでしかないよねっていう。答えはなく、模索しながら終わっていくという感じです。

──かといって、それが悲しいわけじゃないというところだと思うんですね。なくなってしまったものへのノスタルジーはあるかもしれないけれど、そうじゃないところでの探求心や、旅するワクワクを感じたり、そういうベクトルがある曲だなと。

植田:まさにこの“ユーフォリア”の一連がそうなんです。実際どんなふうに次の音楽を作っていこうかと迷いに迷っていたときに、マネージャーさんの「ユーフォリアやってみたら?」というところからはじまって。模索しながら手作りで小さなユーフォリアを見つけて、という。その様子がそのまま前向きに描かれたのが、この曲になっているなって思います。

──ということは、この曲はいつ頃できたんですか?

植田:これはアルバムレコーディングが始まって、いちばん最後かもしれないですね。

──どうやってアルバムを締めくくろうというのは、作りながらも考えていたことですか?

植田:そうですね。制作時間が少ないなと思っていたので、流れとしては冒頭と最後はこんな曲とあんな曲があってということは考えていました。ちょっと悪魔的なイメージから1曲目が始まって、それが「EUPHORIA」という曲で。最後に「ユートピア」という曲で終わって。こっちはとても楽しげな曲で、と思ってました。素っ頓狂なくらい楽しく終わりたいって。


──いいアルバムができたなっていうことをすごく感じます。自然な温度で、タイム感で、何かをしようとしていない。でもこの感じがまた歌としていろんな人に届くものにもなるだろうなと思います。

植田:結果的に、残るものになればとても嬉しいです。自分としては自分にできる音楽への誠意みたいな気持ちで作ったアルバムなので、やっとできてよかったなと。いいもの…リアルな気持ちを音楽として書けた、そういうものができたと思ってます。

──11月からアルバムツアー<植田真梨恵 LIVE TOUR 2022 [Euphoria]>がスタートしますが、今回はどんなものになりそうですか?

植田:この感じをライブで、ですよね……難しいなと思ってますね(笑)。課題ですね。私は今回、レコーディングでもミュージックビデオでも、ずっと遊んでいる気持ちで作っていたんですよ。イエーイ!みたいな。じゃないと乗り切れないという部分もあったんですけど。仕事している感覚がゼロだったので、全然しんどくなくて。それをお客さんに見せるライブで、どんなふうにやるのか。これは正直、バンドメンバーひとりひとりの音楽への向き合い方も出ちゃうと思うので。どうなるかな?課題だなって、今は思ってます(笑)。

──遊びの気持ちじゃないと乗り切れないっていうのは、何か考えちゃったらそこで止まっちゃいそうな感じ?

植田:そうですね。深刻になってもしょうがないってすごく思っていて。とにかく制作時間が全然足りなくて、間に合わない、なら、こうしようかとか。気合いで頑張るとか、そんなふうに、趣味の延長で作っている感覚だったんです、今回。マネージャーとかスタッフだからと言って、あまり気を遣わずに、しんどいなら「しんどい!」って言いながらやらせてもらったし(笑)。バンドメンバーと音を鳴らす中で、どこまでいい空気感を作れるかなって思いますね。ちゃんとライブに活かせるかなっていうのが課題だし、活かしたいって思っています。

──それができたときに、また次の何かも見えてきそうですね。

植田:これから先、いずれにせよ大切なものになってくるアルバムなので。アルバムとツアーでそれを得られたらすごく大きいなと思います。

取材・文◎吉羽さおり


■4thオリジナルアルバム『Euphoria』

2022年9月21日(水)発売


【コレクション盤 (CD+Blu-ray)】GZCA-5314 ¥8,250 (税抜価格¥7,500)
▼特典Blu-ray収録内容
植田真梨恵 LIVE TOUR 2019 [F.A.R. / W.A.H.]
2019.6.30 恵比寿 ザ・ガーデンホール
01. Bloomin’
02. 夢のパレード
03. FRIDAY
04. さなぎから蝶へ
05. hanamoge
06. ロマンティカ
07. 勿忘にくちづけ
08. 花鬘
09. プライベートタイム
10. 灯
11. 悪い夢
12. 支配者
13. ふれたら消えてしまう
14. カルカテレパシー
15. FAR
16. softly
17. ひねもす


【通常盤 (CD ONLY)】GZCA-5315 ¥3,300 (税抜価格¥3,000)
▼CD収録曲(※コレクション盤共通)
01. EUPHORIA
02. 最果てへ (Sg「REVOLVER」のc/wにデモverを収録)
03. ダラダラ (Digital Single)
04. “シグナルはノー” (Digital Single)
05. プロペラを買ったんだ最近
06. HEDGEHOG SONG
07. BABY BABY BABY (Digital Single)
08. モアザンミューズ
09. 黎明
10. エニウェアエニタイム
11. ユートピア

■4thオリジナルアルバム『Euphoria』初回限定アナログ盤

2022年10月26日リリース


【初回生産限定 (LP 2枚組)】GZJA-1001 / 1002 5500+税
※『Euphoria』収録全11曲(CD共通)+ボーナストラック1曲
※音質にこだわった2枚組 & 全曲リマスタリング
※デジタルダウンロードコード封入
※特典・植田真梨恵デザインのショッパーを封入
※additional trackとして、AL『Euphoria』の構想が生まれた2011年当初、アルバムのオープニングを担う1曲目としてデモを制作したものの収録が見送られた未発表曲「愛の交差点でファンファーレ」のデモ音源を収録


▼収録曲
01. EUPHORIA
02. 最果てへ
03. ダラダラ
04. “シグナルはノー”
05. プロペラを買ったんだ最近
06. HEDGEHOG SONG
07. BABY BABY BABY
08. モアザンミューズ
09. 黎明
10. エニウェアエニタイム
11. ユートピア
▼additional track
Demo Marie-100 愛の交差点でファンファーレ_agvo_130904

■LIVE Blu-ray『LIVE TOUR 2021 [HEARTBREAKER]』

2022年9月21日(水)発売
GZXA-8040 ¥7,700 (税抜価格¥7,000)


※ブックレットはライブ写真たっぷりの全24P PHOTOBOOK仕様
※ライブ当日の生配信とは全く異なる完全再編集映像
※リハーサルからツアー全公演に帯同した監督がまとめた70分におよびドキュメント付
※ドキュメントの中には大阪BIGCAT公演から大野愛果をゲストに迎えた2曲を収録
▼収録曲
01. まぜるなきけん
02. バニラフェイク
03. Black Cherry In The Dirty Forest
04. ザクロの実
05. Bloomin’
06. IN TO
07. Stranger
08. REVOLVER
09. スルー
10. 鍵穴
11. heartbreaker
12. コンセントカー
13. 眠れぬ夜に
14. 小さな恋の誓い
15. WHAT’s
16. きえるみたい
17. FAR
18. てとてとめとめ
19. my little bunny
20. センチメンタリズム
21. いいこのバースデーソング
22. I JUST WANNA BE A STAR
23. 憂うべき
EN. ERROR

▼LIVE TOUR 2021 [HEARTBREAKER]
2021.4.25 EX THEATER ROPPONGI
【GUEST VOCALS】
川島だりあ
植田真衣
【BAND MEMBER】
車谷啓介[Dr]
麻井寛史[B]
西村広文[Key]
渡邊剣太[G]

▼ドキュメンタリー収録
70 minutes DOCUMENTARY (HEARTBREAKER TOUR)
INCRUDING [2021.4.3 BIGCAT]
「眠れぬ夜に」
「小さな恋の誓い」
GUEST VOCAL:大野愛果

■アルバム『Euphoria』&映像作品『LIVE TOUR 2021 [HEARTBREAKER]』リリース記念イベント<おひさしぶりの久留米です>

2022年9月23日(金・祝) start14:45〜
イベント内容:ミニライブ & サイン入りポスターお渡し会
・ミニライブ会場:ゆめタウン久留米店 フードコート内特設ステージ
・ポスターお渡し会会場:タワーレコード久留米店

■<植田真梨恵 LIVE TOUR 2022 [Euphoria]>

11月04日(金) 愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO
11月11日(金) 東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO
11月17日(木) 大阪・UMEDA CLUB QUATTRO
11月20日(日) 福岡・BEAT STATION
▼チケット
¥5,500 (税込/別途ドリンク代必要)
一般発売日:2022年10月8日(土) AM10:00

■3ヵ月連続デジタルシングルリリース

▼第一弾
5月28日(土)「“シグナルはノー”」


▼第二弾
6月29日(水)「ダラダラ」


▼第三弾
7月24日(日)「BABY BABY BABY」



◆インタビュー【3】へ戻る
◆インタビュー【1】へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報