【インタビュー】HISASHI、「やりたいことはGLAYでできている」

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GLAYから、記念すべき60枚目のシングルが届いた。タイトルは「Only One,Only You」。

◆撮り下ろし画像

ゴスペルクワイヤを配した壮大なメッセージソングに仕上がったタイトルチューンに加え、二人組エレクトロユニット・80KIDZとタッグを組んだ「GALAXY」(WOWOWテニス2022シーズンイメージソング)、憂いと翳りのスローバラード「クロムノワール」(テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』エンディングテーマ)、そしてこの夏に開催されたファンクラブライブ<GLAY LIVE TOUR 2022~We♡Happy Swing~ Vol.3 Presented by HAPPY SWING 25th Anniv.>のために書き下ろされた「WE♡HAPPY SWING」の4曲入り。楽曲の表情も歌詞のメッセージもまったく異なる4曲が描き出す、GLAYの現在位置はどこにあるのか? HISASHI(G)の話を聞いてみよう。

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■TAKUROが今一番伝えたい意志だと思うので、僕らは尊重しています

──今回の4曲で言うと、「GALAXY」はすでに前回のツアーで演奏していましたよね。『FREEDOM ONLY』ツアーの、2022年最初の神戸公演からセットリストに加わっています。

HISASHI:そうですね。あれはいつレコーディングしたのか……たぶんライブでやっていたのと同時ぐらいだったと思います。TAKUROは「できた曲は早めに(ライブで)やりたい」というタイプだから、ライブでアレンジを重ねて、スタジオに戻ってブラッシュアップして仕上げるという感じは、本当にアマチュアの頃からそんな感じでしたね。「GALAXY」は、80KIDZの前に俺がアレンジした段階があるんですよ。80KIDZに渡す前にあのリフはあったから。



──「GALAXY」はロックとエレクトロががっちり噛み合った強力なライブチューン。初めて聴く人でも一発で乗れる曲。

HISASHI:細かいフレーズや大事なメッセージよりも、大きな器の中で、アリーナとかスタジアムクラスのパッケージに似合う曲ですね。80KIDZの持つ世界とか、GLAYがやってきた大きなコンサートとか。そういうところではわりと得意な感じではありますね。

──ちなみに、80KIDZとはいつ頃から付き合いが?

HISASHI:昔から知っていて、間接的にイベントでご一緒させていただいたこともあるんですけど、GLAYとの関係性で言うと、この前のリミックス(「Into the Wild(80KIDZ Remix)」/2020年)ぐらいからですね。ちょうどコロナ禍でいろんな可能性を探っていた時期で、オンラインでのやりとりとか、DTMでできるような環境を整えていた頃だったので。そう考えると辻褄が合うというか、必然的な出会いでしたね。

──HISASHIさんから見た80KIDZの魅力って、どのあたりにありますか。センスを感じるところというか。

HISASHI:やっぱり一世代下なので、世代が変わるとプラットフォームもフォーマットも違う。そのへんはすごく面白いですよね。たとえば今のクリエイターが、スマホのGarageBandでトラックを作っているとか。それは僕らとは真逆の考え方だから。

──GLAYは生演奏が基本ですからね。

HISASHI:80KIDZも僕らとは違うやり方のトラックメイカーなんですけど、僕らが見る角度とは違う角度で、80年代や90年代のサウンドを独特の感性で作って行くところが面白いなと思ってます。あと、ポップですよね。

──世に出た順番で言うと、次が「クロムノワール」。これはニュース番組のタイアップということで。

HISASHI:完全にそこを目がけていますね。

──最初にTAKUROさんの曲を聴いた時の印象は?

HISASHI:「TAKUROって、こうやってずっと曲を作っているんじゃないかな」という、一人の男の苦悩みたいなところをまず感じました。僕は90年代からそういう彼の姿を見ているんですね。オンステージやみんなの前ではGLAYのリーダーとしてふるまっているけれども、実はすごく孤独で。90年代って、100万枚売ってからがスタートみたいな感じだったんで、そこで自分との戦い、さらに日本の音楽ビジネスとの戦いがあった。今思うとよくおかしくならなかったなというぐらいの時代を、彼は一人で引っ張っていた。最初に聴いた時は、そんな苦悩とか、バンドを引っ張って行くこととか、そういう印象を感じましたね。

──ああ……それは深いです。

HISASHI:その上で『ワールドビジネスサテライト』の最後にかかる曲ということを意識していると考えると、たぶん自分へのねぎらいに近いものも感じるし、でも悲しみや苦悩は晴れることはないという思いも背負いながら、そういう思いを番組のエンディングに乗せた曲のように感じましたね。

──世界で起きているニュースと個人的な思いとを、分かちがたく重ね合わせた楽曲。

HISASHI:「こういう曲をやりたいんだけど」じゃなくて、「この曲をやります」という感じで書いてきたんですよ。アルバムを作っても、数曲に1曲はあるんですよ、「この曲をやります」という曲が。それは彼が今一番伝えたい意志だと思うので、僕らは尊重しています。それが、今回はこの「クロムノワール」だと思います。セールスとか、バンドとか、ラバーソウル(事務所)とか、将来のこととか、何も考えなくていいから、自分が一番言いたいことを言える曲というところで、作った曲のような気がします。


──今の話は、すごく腑に落ちるところが多いです。そこにまた亀田誠治さんがすごいアレンジを乗せてます。ドラマチックで壮大で。

HISASHI:最初に『007』の映画とか、アデルとか、そういうイメージがあったんですよね。その二つのキーワードを聞いて、一瞬で理解しました。「ああ、わかった、そういうことね」って。その後の過程でアデルに寄りすぎて、ちょっと戻したりとかもしましたが(笑)。結果的に亀田さんの機転の利いたアレンジで「ここはどこの国なんだろう?」「ちょっと北のほうだろうな」とか、そういう匂いが残っている、不思議な着地点になりましたね。ヨーロピアンだけど、ちょっと日本も感じ取れる、北海道的でもあるみたいな。

──ああー、確かに、北国の寒さや空の大きさや、そういうものを感じさせるアレンジだと思います。

HISASHI:北海道の、ずっと見てきた景色と一緒。選ぶ音とか、テンポとか、温度感とかが、「Winter,again」にも似ているというか、メンバーの中では違和感がなかったので、すんなりできた曲ですね。

──このギターソロ、HISASHIさんですよね。エフェクトを強くかけた、すごく印象的なソロ。

HISASHI:これもアレンジに含まれたパートだったんですけど、亀田さんを完全に信じて、亀田さんの指揮のもとにこの曲を構成するというアプローチで取り組みました。かなりエフェクティブなことはやってますけど。

──この曲はGLAY=亀田チームの結束力の固さを象徴する曲だと思います。

HISASHI:どういうふうに受け止められるのかな?という不安もあったんですけどね。

──あ、そうなんですか。

HISASHI:あまりにも熱が入ってもダサくなるから、ちょうどいいところを探していったんですけど。でも今はTAKUROの気持ちがこういうフェーズにあるので、「にぎやかな曲が好きな人はちょっと待っててね」という時期ではあると思います。

──その代わり、と言っては何ですけど、もう1曲「WE♡HAPPY SWING」が超にぎやかな曲になっている(笑)。

HISASHI:これはロスのTAKUROと東京の俺とやりとりをして進めました。ICレコーダーで録った音を聴いて、俺が「たぶんこういうアレンジにしたいのかな」という骨組みを作って、みんなのアプローチを待って、ベースが入って歌が入って。歌が一番大変だったかな、直前になってAメロが変わったし。長い間、コール&レスポンスというものをやってこれなかったんで、どうやって盛り上げればいいんだろう?ということは、(<Happy Swing Vol.3>の)リハーサル中にずっと悩んでいたところでしたね。結果的にこういう形に落ち着きましたけど。


──これもライブチューンですね。盛り上がること間違いなし。

HISASHI:GLAYがメンバー同士でスタジオに入って作ると、こういう楽しい感じになるという曲だと思います。

──この曲、あちこちに往年のロック名曲のギターリフとかが見え隠れしている気がしたんですけどね。オマージュ的な意識もあったりしますか。

HISASHI:ああ、それはある。まあイントロは完全にTHE WILLARDの「THE END」なんだけど。

──なるほど! そうか。

HISASHI:元をたどるとThe Damnedになるんだろうけど。だからTAKUROが見るあの頃の東京アンダーグラウンドみたいなものが、鈍い光のように見えてくる感じ? TAKUROはあんまりコピーはしてなかったみたいだけど、俺らはがっつり好きでやってたし、イントロもすごく簡単なフレーズで、初期衝動ですよね。まあ、GLAYっぽい曲かな。

──これはスタジオ録音ではなくて、7月31日の幕張メッセ公演のライブ録音。最初からその予定だったんですか。

HISASHI:そうです。声は出せないけれど、お客さんの雰囲気込みの曲なんでしょうね。ライブで育てていく曲になると思います。

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