【ライブレポート】VIRGE、「俺らはこの先も変わり続けます」

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VIRGEが8月より始めた<VIRGE ONEMAN TOUR「苦界」>。全17本に渡る同ツアーのファイナル公演を、9月24日に池袋harevutaiで行った。ツアーの千秋楽公演の3日前には、7thシングル「Mother」をリリースしたばかり。最新シングルを手に行う形にもなった、今回の公演。満員の観客たちで埋めつくされた当日の模様を、ここにお伝えしよう。

◆ライブ写真

闇に支配された空間へ響く鐘の音。荘厳な音色とフロア中から響くクラップの音へ導かれるように、一人一人がゆっくりと舞台へ姿を現した。

「どうか このまま触れていて 僕はまだ弱いままでもいい」

アカペラで歌う遼(Vo)の声が会場中に鳴り響き、ライブは「Le ciel」から幕を開けた。冒頭からVIRGEは祈りと救いを求める激情のナンバーを叩きつける。グロウルした煽り声に合わせ、フロア中の人たちが頭を振り乱せば、その場で大きく飛び跳ねる。「もっと! もっと!」と熱を求める遼。ライブは、最初からクライマックスにも似た熱狂の景色を生み出していた。


MCを挟むことなく、ライブは場内に生まれた熱を膨らませるように進むVIRGEのライブ。「万華鏡」を煽るように歌う遼へ向かって無数の手が伸び、「揺らせ!」の言葉へ従うようにフロア中の人たちが身体を揺さぶり、その場で大きく飛び跳ねる。その振動が、後ろにいてもガンガン響いていたことが、この日の観客たちの興奮ぶりを示していた。

豪快な音を撒き散らす「醜劣」に合わせヘドバンをし、飛び跳ねる観客たち。先に伝えておくなら、この光景は、最後までほぼずっと続いていた。そもそもVIRGE自体が、ラウド&ヘヴィな楽曲を軸にしながらも、感情的かつメロディアスな歌で心を揺らす激音/美メロ系のバンド。どの楽曲でも、身体のみならず心を揺らしてくれたのが嬉しい。


これまで以上に、その場で高く飛び跳ねる人たちが生まれた「家族ごっこ」。メロディアスな歌とサウンドがシンクロしたスタイルも気持ちを熱く騒がせる。メンバーが上げる声に合わせフロア中の人たちが力強く拳を振り上げる景色が、この空間を支配してゆく。「お人形遊びをしよう」の声を受けて歌った「お人形遊び」でも、VIRGEはこの空間に熱情した景色を生み出していく。高陽した気持ちへ導くサビで、フロア中に咲き誇る手の花が揺れていた様も華やかだ。

熱いクラップのやりとりから幕を開けた「ベラドンナリリーにナイフを添えて」では、スリリングな演奏と雄々しい歌声を突きつけ、観客たちにヒリヒリとした刺激を与えていく。が、一転してサビでは胸を優しく抱きしめるような美メロな歌を届ける様もVIRGEらしい。ヒステリックかつスケールあふれるVIRGE流のスタジアム系ロックナンバーとして描きだした「マーマレード」は、今年発売したVIRGEの最新スタイル曲。雄大で雄々しい曲調の中から、心揺さぶる歌が響く。その甘酸っぱい衝動が、心を痛く揺さぶり続ける。


短いブレイク時間を挟み、ライブは次のブロックへ。ギターのアルペジオの音が優しくフロア中に響き渡る。言葉のひと言ひと言を噛みしめるように、遼は「夜明け、灰色の呼吸」を歌い始める。奈落へ堕ちてゆくようなミドルヘヴィな音も印象深い、心の内側へ哀切な思いを響かせる楽曲だ。祈りにも似た歌に、フロア中の人たちの視線が釘付けになっていた。光を求めるその姿は、闇の中でも輝きを放つ。

「嘘ばかりの生き方に、わたしは疲れました」「わたしの人生は、あなた達に引き裂かれました」と、嘆くように言葉を零す遼。奈落へと身を投じ、哀しみに浸りながら闇で蠢くように、VIRGEは「憂鬱に裂く」を演奏。苦しみに囚われた心をさらに黒い鎖で縛るように、遼は絶望の淵に立ちながら嘆いていた。絶望に心を縛られているからこそ見える小さな輝きに、必死に手を伸ばす。足掻き、もがく姿が、胸に痛い言葉として響く。でも、絶望へ打ちひしがれる思いこそ、同じ匂いを持つ者たちには優しく寄り添う歌として響くのだ。


真紅の照明に包まれた舞台。ミドルヘヴィなナンバー「紅いドレス」が流れだすのに合わせ、フロア中の人たちが大きく身体を折り畳む。絶望が支配する空間で繰り広げる宴は、まるで儀式のよう。あざけり嗤い、猛り狂う遼。その姿を、このまま凝視していたい。さぁ「-ガラシャ-」の登場だ。理性を掻き消す轟音に身を捧げ、遼の呪詛のような歌声へ従うように身体を折り畳み、大きくその身を揺らす。熱狂導く寂れた子守歌とも言えるこの曲に合わせ、フロア中の人たちが、ふたたびその場で大きく跳ね始める。

「全力で、来い!」の煽りを合図に、4人は赤黒い轟音を撒き散らすように「かくれんぼ」を演奏。理性を壊し、荒れ狂う観客たち。気持ちを解き放つサビに触れた瞬間、フロアの景色が色鮮やかに変貌する。曲が進むにつれ気持ちが高ぶり、現実を消し去ってゆく。もっともっと幻惑した空間に身を浸し心も身体も乱してしまえと、VIRGEは「ワイセツCandy」を演奏。お立ち台の上から観客たちを先導する遼を筆頭に、楽器隊の激しいプレイスタイルも、甘くて卑猥な姿として瞼に焼きついた。その甘く熱い誘惑に向け、心の中の身悶える声を返したい。


「死ぬ気で来い!」というその言葉が相応しい「籠女」では、フロア中の人たちが全力で身体を揺らし、メンバーと一緒に狂乱の景色を描き出す。サビで遼の歌に合わせ、フロア中の人たちが同じ手の振りをしながら一体化した景色を作り上げていたのも印象的だ。 「とてもゆっくりな曲をやります」と口にしながら、これまで以上にテンポの速い「拒絶」を叩きつける場面も。なんと皮肉で、嬉しい演出か。

本編最後にVIRGEは、「悲鳴」を演奏。いきなり興奮のレベルをレッドゾーンまでブチ上げたと思えば、その後も熱情した演奏をぶつけ、この空間をカオスな宴の場に染め上げていった。遼の「掲げろ!」の声に合わせ、フロア中が突き上がる拳に染まりきった景色も胸を熱くさせた。ここまでで、すでに16曲1時間強経過している。でも、あっと言う間だ。あっと言う間過ぎる。もっともっと熱を求めたい。もっともっと自分の理性をひっぺがし、本能のままに生きる存在に変えてほしい。


「俺らはこの先も変わり続けます。変わっても置いていくつもりはないので、これからもついてきてください」

遼がそう伝え、アンコールの最初に届けたのが、最新シングルに収録した「オレンジ」。遼が掻き鳴らすアコギの音色と、胸を揺さぶる美しくも悲哀を込めた紫月(G)のギターリフが絡み合う。そこへ、心に抱えた思いを零すように歌う遼の声が響き渡る。とても胸を揺さぶる楽曲だ。泣かせる?確かに泣かせるだろう。だがそれ以上に、泣き濡れたい心へ寄り添ってくれる歌だ。遼の歌う言葉のひと言ひと言が胸を揺らす。いつしか心は、「オレンジ」にすっかり釘付けになっていた。進化し続けるVIRGEの姿を、この歌でもしっかりと示していたように思う。

と思いきや、ふたたび観客たちを煽りだすメンバーたち。「私ノ悪イ癖」に合わせ、フロア中の人たちがその場で天へ天へと飛び跳ねる。狂乱の宴の様を呈しだすフロア。その姿を見たメンバーらも頭を振り乱し、さらに熱情を加える。その空気を冷ますことなくVIRGEは「海月」を突きつけ、この空間にいる人たちを熱狂の海の中で揺らし続ける。そう、アンコールでは、改めて生きる意味を問いかける楽曲を歌い、その曲たちに合わせ騒ぐことで、生きている意味や喜び伝えていたのだ。


今年リリースのシングルに収録していた「斑」でもVIRGEは、進化したアグレッシブなラウドロックスタイルを提示。緩急した表情を巧み描きながらも、轟音パートでは,これでまで以上に尖った音と歌声を突きつけ、熱狂と高陽という刺激を観客たちに与える。高く突き上がったまま下ろすことのない腕の動きも印象的だ。「何もかもが壊れていく」と歌いながら、新たな姿を再構築してゆくVIRGE。さらにVIRGEはアグレッシブでラウドかつスピーディな「怨ミ言」を突きつけた。
 
そして「このバンドの意志をぶつけます」の言葉に続いて披露したのが、「千」。VIRGEの中でもひと際エモーショナルな楽曲だ。「生きて 強く生きて」という心からの叫びが苦しいほど伝わってくる。痛みを共有し、その痛みと同じ温度で寄り添い、生きる意志を与えてくれる。きっと、心に痛みを抱える人ほど、この歌に救われるのだろう。

そしてアンコール最後の曲として届けられたのが、最新シングルの表題曲「Mother」だ。直情的に煽るだけではない、そこにスケール大きな色を塗り重ねることで、楽曲はシンフォニックな様相を呈していった。懐深い豪圧な音で観客たちの全身と魂を揺さぶる様が、そこには生まれていた。心を熱く奮わせる、その姿が眩しい。

止まない観客たちの思いを受け、メンバーたちがみたび舞台へ姿を現した。「呼んだからには死ぬ気で来いよ!(ここに)全部置いて帰れ!」と、「二枚舌」。早口でまくしたてる遼の煽り声がサディスティックなほどに心へ突き刺さる。畳み掛けるように最新ナンバー「拒絶」へ。本編終盤に続き、この楽曲を改めて演奏したのも、今のVIRGEにとってこの楽曲が熱狂を作り上げる最高の武器になると信じているからだ。これからもきっとこの歌が、ライブ会場に足を運んだ人たちの理性をぶっ飛ばし、本能をむき出しにしていくのだろう。


「このバンドをもし忘れてしまっても、また何時か思いだしに来てください。明日から生まれ変わって、これからも1日1日変わり続けていきたいと思います。その姿を、これからも見てください」

最後の歌としてVIRGEが選んだのが、「遺言」。今日、この場に作り上げた忘れたくない景色へあえて別れを告げ、また新しい日々を始めようと約束を交わすように、この日の「遺言」は響いてきた。一つ一つの楽曲は、そのとき毎にいろんな意味を持ち、その場にいた一人一人の心にもさまざまな意味を与えてゆく。「遺言」に触れながら、考えていた。まだ見ぬ未来で、彼らはどんな忘れたくない日々を更新し続けるのだろうかと。でも、何時だって彼らと新しい刺激と興奮、感動を分かち合えるのを知っているからこそ、更新し続ける未来がたまらなく愛おしい。VIRGEはその約束を、この日もしてくれた。この興奮と高陽を胸に抱えながら、「おやすみ」と「さよなら」と残した言葉と一緒に、またVIRGEと熱狂を共にする未来へ思いを馳せようか…。

取材・文◎長澤智典

セットリスト

1.Le ciel
2.万華鏡
3.醜劣
4.家族ごっこ
5.お人形遊び
6.ベラドンナリリーにナイフを添えて
7.マーマレード
8.夜明け、灰色の呼吸
9.憂鬱に裂く
10.紅いドレス
11.-ガラシャ-
12.かくれんぼ
13.ワイセツCandy
14.籠女
15.拒絶
16.悲鳴

-ENCORE-
1.オレンジ
2.私ノ悪イ癖
3.海月
4.斑
5.怨ミ言
6.千
7.Mother

-W ENCORE-
1.二枚舌
2.拒絶
3.遺言

◆VIRGE オフィシャルサイト
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