【インタビュー】COUNTRY YARD、葛藤が導いた驚きと豊潤の5thアルバム「壮大だけどきゅっとしている」

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自らのルーツにこれまで以上に肉薄しながら、以前から言われていたメロディックパンクに収まりきらない音楽性を発展させた『The Roots Evolved』から2年7ヵ月。COUNTRY YARDが完成させた5thアルバム『Anywhere, Everywhere』は、前作のアプローチをさらに推し進めた充実作となっている。

◆COUNTRY YARD 画像 / 動画

『The Roots Evolved』からの延長上にある作品には違いない。だから順当な前進なのかと思いきや、バンドのフロントマン、SitことKeisaku Matsu-ura (B, Vo)はその言葉に、前作から今作の間に外的および内的要因によるさまざまな葛藤がメンバーそれぞれにあったことを滲ませる。そんな葛藤から新たな音像やファンを驚かせるに違いない日本語の歌詞が生まれたことが重要だ。作品からはもちろんだが、なぜSitが今作で、川の流れに逆らう魚の視点で、「River」「Where Are You Now?」「Umi」の歌詞を書いたのかそのわけを、彼の発言からも聞きとった上で、“荒れ模様 海 堂々泳げ”と「Umi」で歌ったCOUNTRY YARDの今後に期待していただきたい。

ところで、今回、インタビューを担当させていただいた筆者はアーティストと、アーティスト本人や作品のバックグラウンドにある音楽について語りあうことに歓びを感じるタイプの人間なのだが、このインタビューでもCOUNTRY YARDが持つ幅広いバックラウンドと『Anywhere, Everywhere』のリッチな音楽性が文字からも伝わるように敢えて具体的なアーティスト名を多めに引用している。なお、今回はスケジュールの都合で参加できなかったHayato Mochizuki (G, Cho)を除く、Keisaku “Sit” Matsu-ura、Yu-ki Miyamoto (G, Cho)、Shunichi Asanuma(Dr)の3人でのインタビューとなっている。

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■“何を作るの? 何を作りたいの?”
■そういう問いから始まっている

──『Anywhere, Everywhere』、とても聴き応えがありました。前作『The Roots Evolved』のアプローチをさらに推し進めているという印象がありましたが、みなさんはどんな作品になったという手応えがありますか?

Sit:これが3本目のインタビューなんですけど、インタビューで話を聞いたりとか、普段、自分も車で聴いたりとかして、今は客観的に見ているところもあって、そこからの発言になるんですけど、この2年、昔から好きだった音楽が気づいたらさらに奥まで好きになっていたんですよ。たとえば、ビートルズだったら、ゲット・バック・セッションが『ザ・ビートルズ:Get Back』という形で発表されたこともあって、自分が好きだったりとか、憧れていたりとかしていたミュージシャンのバックグラウンドまで知ることができたっていうのもあって。もちろん、ビートルズだけじゃなくて、細かいものも含め、そういうことがいくつもあって、自分の原点を見つめ直すみたいなことをやっていたんです。自分がやりたくて。そういう自分の子供心と言うか、変わらないものと言うか、こういうことをバンドでやりたかったんだよなと思ったものを、デモとしてバンドに持っていったとき、それぞれがしっかりと受け取って、アレンジしてくれて、らしい作品がやっとできたのかな。今は、そんな壮大な気持ちになってますけどね。


▲Keisaku “Sit” Matsu-ura(B, Vo)

──とても興味深いお話です。MiyamotoさんとAsanumaさんも手応えを聞かせてください。

Miyamoto:『The Roots Evolved』を出した後すぐコロナ禍になって、音楽ってものが一瞬にして崩れちゃうじゃないけど、ミュージシャンがいったん露頭に迷った感じになったじゃないですか。それを機に自分にとっての音楽とか、バンドとかについて、改めて考え直して、この先、どうやってバンドをやっていこうか考えたとき、毎回毎回、これが最後になるかもしれないぐらいの気持ちにならないといけないなって。もちろんそれは決してネガティヴなものではないんですけど、これまで以上にすべてを注ぎ込んで、自分自身がどれだけ納得できるか、どれだけ新しいことに挑戦できるか。そういうことを考えさせられた2年だったので、やっぱり音楽的に突き詰めたい、音楽人生的に後悔しないように──。だから、Sitが持ってきたデモに対してもこれまで以上に意見を言いながら取り組んだアルバムですね。

Asanuma:もうやり尽くしたとまでは言わないまでも、バンドを長く続けていると、そういう時も来ると思うんですよ。ミヤモ(Miyamoto)も言っていたようにコロナ禍になって、いろいろ考えさせられた中で、曲を作るSit自身に明確にやりたいことがあったというのは、それだけでもバンドにとっては良いことだと思うんです。大袈裟に言えば、それは救いだったんじゃないかって。指針を示す人は絶対必要だし、それが活動内容云々じゃなくて、ちゃんと音で示せるっていうのは健全なことだと思うし。それに対して、おのおのがいろいろなことを感じたと思うんですけど、自分は特に今回は自分の原点も含め、曝け出したものになったと言うか、よりシンプルになったという手応えがありますね。

──ありがとうございます。それぞれに大きな手応えを感じていることがわかりました。ところで、さっき「好きなバンドをさらに奥まで好きになった」というくだりでビートルズが出てきましたが、他にはどんなバンドをこの2年間、掘り下げたんですか?

Sit:ブラーとブラーのデーモン・アルバーンがやっているゴリラズかな。前のマネージャーが運転中にゴリラズをよく流していて、オアシスがずっと好きだった自分はそこに漬かることがあんまりなかったんですよね。それこそ、昔、ATATAと新宿ACB HALLでやったとき、ATATAによるブラーの「Song 2」のカバーでコーラスに呼んでもらったんですけど、めちゃくちゃ好きという気持ちで歌えなかったから、ちょっと心残りがあるくらいブラーはちゃんと通ってこなかったんです。そんな俺が今回のアルバムの手前の半年ぐらいはブラーをけっこう聴いていましたね。

──じゃあ、今回のアルバムはブラーからの影響も反映されているんですか?

Sit:いえ、もし反映されるとしたら、もう少し先なのかな。それよりもその頃は、何だろうな、ストーン・ローゼズも聴いていたし、スミスも聴き直したし。あと、フィーダーもそうなんですけど、自分が好きだったものを、さらにもう1枚、もう2枚捲ってみようとしているマニアックなゾーンだったんです。俺、この2年は。だって、それぐらいしかやることがなかったから。仕事とスタジオと、あとは家で絵を描いたりとか、こういう曲も作ってみようっていろいろな曲を作ってみたりとか。とにかくこの2年間、俺は音楽っ子でしたね(笑)。そこで気づいたものをメンバーに話すんですけど、言っていることは「オアシスのこの曲がマジ、ヤバくて」みたいなほとんど中学生レベルなんですけど(笑)、振り返ってみると、そんなレベルの会話しかしてなかったですね。UKロック好きすぎる俺とか、ミヤモだったらアメリカのエモとか、アメリカのアートとか。「これが熱いんだよ」「これがヤベえから」みたいな(笑)。だから、Shun (Asanuma)ちゃんなんかはそういうのを、ゆっくりすーっと吸収してくれてて。そのプロセスを振り返ると、時間はかかったけど、めちゃくちゃナチュラルだったなと思うんですよ。だから、聴いたものはぶっちゃけそんなに変わってないですけど、さらに好きなところを見つけられたって感じですね。


▲Shunichi Asanuma(Dr)

──そんな中、今回のアルバムの制作はいつ頃どんなところから取り組んでいったんでしょうか?

Sit:曲はけっこうずっと作ってたんですけど、『The Roots Evolved』のツアーがコロナ禍の影響で4回延期しちゃったことで、タイミング的に何て言うんですかね。『The Roots Evolved』を消化できてなかったんですよ。ライブでも正直、求めていた景色が目の前に浮かんでいたかと言ったらそうじゃなかった。バンドとしては必死に『The Roots Evolved』を完結させようとしながら、俺自身は次に行けないから、いろいろな曲を作ってみたりとか、ソロを作ってみたりとかして。でも、それだけ作っているのに、なぜ次に進めないのか。振り返ると、自分自身に自信がなかったんですよね。“何を作るの? 何を作りたいの?”──そういう問いから始まっていると言うか、何を作りたいのか一瞬わからなくなったから、いろいろな曲を作ったり、ソロをやったりしていたんです。でも、俺が作りたい曲って、ただ単に良い曲だし、カッコいい曲だしってすげえシンプルなところに辿りついた瞬間がスタートだったのかな。そういうプロセスが全部繋がっているんですけど、自分だけのものを自分勝手に思いっきり追求する音楽から、段々、COUNTRY YARDでやりたい音楽が生まれてくるっていう感覚が芽生えた時がたぶん今回のアルバムのスタートだったから、1年前とか1年半前とか。でも、そこに至るまでのプロセスを入れたら、『The Roots Evolved』のリリースツアーが延期になったぐらいから全部繋がっているのかなって気はします。

──今回の11曲の中で、今、おっしゃっていたCOUNTRY YARDの曲だと最初に思えたのは、どの曲だったんですか?

Sit:「One By One」ですね。

──「One By One」は、『Anywhere, Everywhere』のティーザービデオでも流れていますが、今回のアルバムのリード曲という位置づけなんでしょうか?

Sit:いえ、そういうことじゃないんですよ。リード曲って言うと、何だろう? たぶん、メンバーそれぞれに全然違うと思うんですけど。だから、ミュージックビデオもリード曲だから表に出したいという気持ちで作っているわけじゃなくて。今、「Strawberry Days」のミュージックビデオを作ってもらってるところなんですけど。


──えっ、サイケデリックな「Strawberry Days」ですか?

Sit:そう(笑)。ああいう曲をミュージックビデオにしても、メロディックのファンには刺さらないと思うんですよ。でも、バンドとしての手応えは「Strawberry Days」とか、「Umi」とか、「Dokoka」とかのほうがあるんです。種を植えるのは俺かもしれないけど、そこにメンバーが水とかやりながら育てる背景も見えると言うか、戦っている少年達の姿が見えるのは、そういう挑戦している曲。でも、それが推し曲かって言ったら、そういう感覚でもないんで、すげえ難しいところではあるんですけどね。ただ、客観的にこういう曲がCOUNTRY YARDの推し曲なんじゃないのっていうのは、俺的には「One By One」だったって感じですね。

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