【インタビュー】アイドルでもある演歌歌手・望月琉叶、5人のボカロPとタッグ「自分にしかできないことをするのが使命」

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演歌歌手、アイドル、グラビアアイドルの三刀流として活躍する望月琉叶。2020年のメジャーデビュー以降、2021年には『第63回輝く!日本レコード大賞』で新人賞を受賞し、2022年2月にリリースした3rdシングル「ピンクのダイヤモンド」ではロック調の昭和アイドル風の歌謡曲に挑戦するなど、演歌歌手としてのアイデンティティを高めながらも演歌歌手の枠にとらわれない活動を精力的に続けている。

そんな彼女が、5人の有名ボカロPとタッグを組み、5ヶ月連続で新曲を配信リリースする。その第1弾となる「MONSTER」は、Adoとのタッグでもよく知られるjon-YAKITORYが作詞作曲編曲を担当。芸能界で生きる望月琉叶と、ひとりの人間としての望月琉叶の間に生じるギャップを、エモーショナルに表現したロックテイストの楽曲に仕上がっている。このインタビューでは、彼女とVOCALOID楽曲との関係や「MONSTER」にフォーカスしながら、彼女の抱えてきた葛藤を探っていった。

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■わたしにとっては、演歌もボカロもあんまり変わらない

──これまでも演歌歌手という肩書きに縛られず大胆な活動を多くしてきている望月さんですが、VOCALOIDクリエイターさんとのコラボレーションはかなり予想外でした。

望月琉叶:わたしは演歌歌手なんですけど、演歌だけでなく洋楽もロックもK-POPも聴くし、いろんなジャンルの音楽をよく聴いてきているんです。VOCALOIDも昔から大好きで、出会ったのは小学校高学年の頃でした。人が歌わないような音域や歌い方がすごく新鮮で、どんどんのめり込んでいって。親のパソコンでニコニコ動画やYouTubeを観て、いろんな曲をあさっていました。「トリコロール・エア・ライン」など、好きな曲がたくさんあります。

──ジャンルにとらわれず、好きなものは好きというスタンスであると。なかでも好きになる曲に共通点はありましたか?

望月:イケイケで明るい曲というよりはちょっと切ないバラードとか、闇を感じる曲、あとはジャズっぽい雰囲気や要素がある曲が好きです。ボカロにハマったのはそれもあるかもしれません。学校が終わったあと、毎日のようにカラオケに行って、フリータイムでボカロ曲をいっぱい歌っていて。ボカロ曲は歌うとスッキリするんですよね。嫌な気持ちも悲しい気持ちも全部忘れられたんです。

──胸のうちを吐き出すような。

望月:そうです、そうです。だからボカロにはすごく感謝しています。初音ミクちゃんが大好きだったので、当時からミクちゃんの真似をしながら歌ったりもしていました。

──YouTubeにアップしている“歌ってみたシリーズ”の1曲である「裏表ラバーズ」で、初音ミクのものまね歌唱が入っていますよね。

望月:はい(笑)。「裏表ラバーズ」は10年くらい前からずっと知っていて、歌ってきた曲なので、歌ってみた動画でもその感じがそのまま出ていると思います。いつかボカロ曲が歌えたらいいなと当時から思っていたんですけど……まさかボカロPさんに書き下ろしていただいて、それをリリースできるなんて思っていなかったので、夢が叶ってとてもうれしいです。


──望月さんのVOCALOID楽曲への思いを聞いていると、望月さんがもう演歌を歌わなくなるんじゃないかと心配する人も一定数いらっしゃるかも、と思いました。

望月:演歌歌手をやめるつもりはまったくないです(笑)。わたしの歌手としての軸は演歌にあるので。

──いろんなものに興味があっても、軸が演歌であることは譲れない?

望月:そこは揺るぎませんね。やっぱり、母がずっと夢見ていた演歌歌手になれたことで、母の夢を引き継げたという大きな喜びを感じているんです。それにわたし自身も小学生の時に美川憲一さんが「柳ヶ瀬ブルース」を歌っている姿を観て、直感的に美川さんの色気や艶やかさに魅せられたので、その原体験が自分のなかに色濃く残っていることも大きいと思います。あとはわたしが演歌を歌っていると、親戚がすごく喜んでくれるんですよね。だから演歌歌手としての自分は大事にしたいんです。


──となると今回のVOCALOIDクリエイターとのタッグも、これまで望月さんがグラビアをやり始めたりなど、演歌に軸足を置いて様々な挑戦をしていることと同じ文脈なんですね。

望月:ずっと同じものばかり食べて生きるより、辛いものの次に甘いのを食べたいし、冷たいものを飲んだらあったかいものを飲みたくなるような感じで、今回は昔から大好きなボカロを歌わせてもらうっていう感じです。だからわたしにとっては、演歌もボカロもあんまり変わらなくて。ミクちゃんも演歌が歌えるし、好きな音楽を歌っているという意味では同じなんですよね。

──VOCALOIDの楽曲と演歌は、じつは相性がいいですよね。小林幸子さんが「千本桜」をカヴァーなさったのが象徴的ですが、VOCALOIDには和メロの楽曲が多いですし、歌い手として世に出たAdoさんのうなりが効いた歌唱は演歌に通ずるものもある気がしています。

望月:ああ、確かに。わたしがYouTubeにアップしている“歌ってみた”も“演歌風に歌ってみた”と書いてあるんですけど、それはわたしが歌いたいように歌っているから演歌風になっているだけなんですよね。やっぱり演歌歌手なので(笑)。だから歌ってみたを聴くのが好きな人にも望月琉叶の歌が届いてほしいですし、演歌歌手としての望月琉叶を好きな人がこれをきっかけにボカロに触れてくれたらすごくうれしいなと思っています。


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