【インタビュー前編】FINLANDS、ごまかしのきかない恋愛の切なさを書いた新曲「like like」

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2022年の11月に結成10周年を迎えるFINLANDSが10月19日に新曲「like like」を配信リリースする。結婚、出産という経験を経て初めてリリースする楽曲はずっとレコーディングをせずに大切にとっておいたナンバー。塩入冬湖のギターとボーカルには吸い込まれるような魅力があり、シンプルなアプローチだからこそ彼女の存在感が際立っている。母親になってもFINLANDSの恋愛篇は終わりそうにないと言う塩入。インタビュー前編では10周年を迎えた心境や解散しないバンドにしたかったというFINLANDSへの想い、2ヶ月連続の第1弾となる「like like」について話を聞いた。

■夢中になって気がついたら朝になっていたり
■楽しいと思えるものが人生の中に見つかってよかった


──もうすぐ結成10周年ですが、塩入さんにとってどんな日々でした?

塩入冬湖(以下、塩入):「早かったな」っていうのが素直な気持ちなんですが、思い返すといろいろなことがあったので、きちんと手応えのある10年間だったと思います。

──音楽を始めたばかりの頃、今のような未来を想像していましたか?

塩入:してなかったですね。というか、今も1年後のことも5年後のことも想像できないんですよ。きっと10年前もそうだったと思うので、今の自分に驚いているわけでもないし、予想と違うっていう感覚も全然ないんですよね。

──では、ずっと音楽をやり続けるんだっていう感覚でもなかった?

塩入:その感覚はありました。漠然とですけどね。以前、やっていたバンドが活動を休止するタイミングで始まったのがFINLANDSだったので、始動する時から“私はずっとFINLANDSに身を置いて音楽を作っていく”っていう決め事だけは自分の中にありました。

──FINLANDSを続けていることは想定内だったわけですね。

塩入:そうです。解散しないバンドを作ろうと思って立ち上げたのがFINLANDSなので、そこは揺るがないです。

──前のバンドが活動を休止したからなのかもしれないですが、なぜ解散しないバンドを作ろうと思ったんでしょうか?

塩入:私、すごく面倒くさがり屋で且つせっかちなんですよ。

──(笑)どんなところが?

塩入:ずーっと自分が身を置ける場所にいたいとか、ずーっと付き合っていける人と一緒にいたいとか。コロコロ場所を変えたくなくて、新しい環境や新しい関係に順応することが面倒くさいんですよ。だから、「ここじゃない」と思ったら、早く自分が腰を据える場所を見つけたくなるんです。「一生、いないんだったら、早く次の場所を探さないと」って思うところがすごくせっかちですね。そういう自分の性格を加味して、私みたいな人間は長く音楽をやれる場所を作るのがいちばんいいんじゃないかと思ったから、解散しなくていいバンドを最初の目標に掲げていたんです。

──そう思ったのってかなり若い時ですよね。

塩入:そうですね。22歳です。

──めちゃくちゃ自分を客観視してますね。

塩入:はははは。

──自分のことってなかなかわからなかったりするじゃないですか?

塩入:はい。ただ、前のバンドをやっている中、わからないなりに自分の良くないところや良いところが見えたんです。面倒くさがりでせっかちって欠点だと思うんですけど、裏を返せば1つの場所をどこまでも掘り下げていけるとか、1人の人とどこまでも一緒にいられる努力ができる。プラスに捉えられる面もあるんじゃないかと思っていたんです。


──そういう意味では、音楽自体も塩入さんが見つけた掘り下げられる大好きなものだったのでは?

塩入:そうかもしれないですね。なぜ音楽を好きになったのか明確な理由はわからないですが、曲が1曲できると自分の世界が変わるような気持ちになるし、アルバムを1枚作ると自分の人生も世の中も一変するんじゃないかって。期待するというか、毎回、新しい興奮を覚えるんですよね。だから、好きで続けてこられたんだと思うし、おっしゃっていただいたように掘り下げていくほど、また出てくるものがあるところに面白さを感じているのかもしれないです。

──創作することは塩入さんの人生に密接に関わっているんですね。

塩入:密接ですね。夢中になって気がついたら朝になっていたり、それぐらい楽しいと思えるものが人生の中に見つかってよかったです。

──10年続けるって大変だし、いろいろ超えてきたものがあった上での今だと思います。先ほどの質問とかぶるかもしれないですが、続けてこられた理由というかモチベーションは何ですか?

塩入:やっぱり、1曲できたら世界が一変するんじゃないかっていう根拠のない自信と期待ですね。

──その根拠のない自信は今も変わらずに?

塩入:あります。根拠のない自信がないと作曲者としては曲が作り続けられないと思いますね。バンドはメンバーだったりスタッフだったり、チームで作り上げていくものなので根拠を自分たちで作っていく面があって、具現化できた時に自信が湧いてきたりするんですけど、ソングライターとしては自分の感覚を信じて、良いと思った曲を選んでいく力がないと作り続けられないんですよね。

──では、新曲「like like」はどんなふうに生まれた曲でしょうか? 塩入さんのギターと歌が気持ちよく溶け合って、イントロやAメロは水の中にいるような心地良いサウンドだと感じました。

塩入:「like like」は2018年に作った曲でFINLANDSで形にしたのは2019年だったんですが、すごく大切にしていて、レコーディングしないでとっておいた曲なんです。曲も歌詞もスラスラ出てきて形になるのは早かったですね。最初から「こういう曲にしたい」「こういう言葉を使いたい」っていうイメージが自分の中にあったからなんですが、今回、レコーディングするにあたって感じたのは、さっきサウンドのことをおっしゃっていただいたように、ドラムのフレーズやベースやギターの音色、イントロの私が弾いているリフをちょっと変えるだけで顔色が変わっていく繊細な曲なんですよね。積み木を重ねていって、少し抜いて、また重ねていくような作業で大変だったんですが、いちばん良い形になりました。

──塩入さんが使われたエフェクターは?

塩入:リヴァーブと軽いクランチのエフェクターですね。サポートギターの澤井(良太)さんもリヴァーブを使ったり、いろいろな音色を作ってくれましたね。

──大切にとっておいた曲を世に出すタイミングは今だっていう気持ちだったんでしょうか?

塩入:というより産休に入る前にどうしても1曲、レコーディングしておきたかったんですよ。産休が明けたら、すぐにリリースしないと不安で仕方がなかったので。

──さっき面倒くさがりでせっかちという話を聞いたので、心境がなんとなくわかります。

塩入:(笑)そうなんですよね。すごくせっかちなので、自分がやることがないと人に迷惑かけちゃうんですよ。産休中は家にいたんですが、夫や家族から「お願いだから趣味を見つけてほしいんだよね」って言われたぐらい(笑)。とにかく落ち着きがなくなるんです。相手が真剣に仕事をしていても、むちゃくちゃ話しかけたりとか(笑)。でも、曲があったらやることはあるので「like like」は産休中の私の希望だったんです。

──納得です(笑)。歌詞の主人公は一緒にいても手放しで幸せって思えない恋愛をしているのかなと感じましたが、どうなんでしょうか?

塩入:人間って大人になっていくと自分が惨めにならない方法を覚えていくと思うんですよ。

──傷つかない方向に気持ちを持っていくというか?

塩入:自分にさえも嘘をつくことってあると思うんですよね。ホントに相手のことが好きでも“love”を“like”に置き換えてごまかしてしまうこともある。私はあったんですけど、ごまかしがきかない想いにぶち当たった時にはどうしたらいいんだろう?って。その、どうしようもなさ、止めたくても止められないものに切なさを感じて作ったのが「like like」です。自分のことさえもごまかせなくなったら、もうお手上げだなという気持ちで作りました。

──それが恋愛の醍醐味でもあり、面倒くささでもある?

塩入:そうですね。途方もなさ。

──タイトルに“like”を2つ使ったのはなぜですか?

塩入:ごまかしにごまかしを重ねたところで意味はない、みたいなニュアンスでつけたんですよね。両思いの恋人同士でも心のすれ違いや気持ちの一方通行はあると思うので、悲しかったり、切なかったりする想いをしている人に聴いていただけたら。自分をカッコよく見せようとすればするほどごまかしがきかなかったりとか。“どうしようもなさ”や“途方のなさ”は感じたことがある人が多いと思うので寂しい時に聴いてほしいですね。

取材・文:山本弘子

※アルバムインタビューの後半は後日公開予定



リリース情報

「like like」
10月19日(水)配信限定リリース

ライブ・イベント情報

<FINLANDS TENTH ANNIV. ~記念博TOUR~>
2022年11月22日(火)札幌PENNY LANE24
■時間:OPEN 18:30 / START 19:00

2022年11月25日(金)大阪 BIG CAT
■時間:OPEN 18:15 / START 19:00

2022年11月29日(火)名古屋 THE BOTTOM LINE
■時間:OPEN 18:30 / START 19:00

2022年12月01日(木)福岡 DRUM Be-1
■時間:OPEN 18:30 / START 19:00

2022年12月04日(日)仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
■時間:OPEN 17:30 / START 18:00

2022年12月06日(火)横浜 KT Zepp Yokohama
■時間:OPEN 18:00 / START 19:00
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