【インタビュー】平岡優也、アップテンポナンバーを中心に新たな表情を見せる1stミニアルバム『∞ - infinity -』

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自身の20代を閉じ込めた前作『20s』から約1年。シンガーソングライターの平岡優也が、1stミニアルバム『∞ - infinity -』を完成させた。本作では、これまで定評のあったミディアム~スローバラードとは打って変わって、アップテンポナンバーを中心に収録。また新たな表情を見せる挑戦作に仕上がっている。自身初の東名阪ツアーを目前に控えた彼に、本作の収録曲についてじっくりと話を聞いた。

■バラードの印象を良い意味で裏切りたいし
■武器を2つ持つという部分を持っておきたい


──平岡さんは10月17日生まれなので30歳になります。前作『20s』は、20代のご自身を閉じ込めた1枚だったわけですが、実際に30歳を目前に控えた今の心境というと?

平岡:心境的にあまり変わったところはないんですけど……でもなんか、ニュースになったら「平岡優也(30)」って出るんだろうなって思ったりとか(笑)。

──はははははははは(笑)。

平岡:そこはちょっと悲しいかもしれないですね(笑)。俺も何かしたらこうやって書かれるのかな……って思ったりとか。

──20代の自分をまとめた作品を出した後、ご自身の中でモードが変わってきたところはありますか?

平岡:秋田から東京に出てきて曲を作り始めたときと比べると、最初の頃は曲を作ることも、歌詞を書くことも、表面的な部分でしか物事を捉えてなかったんです。でも最近は、どんな人に届けたいのか、見えないところまで自分の頭の中で描いて、それならこういうワードが必要だなとか、こういうメロディとかテンポがいいなとか、いろいろと想像しながら作ることができるようになって。それをどんどんライヴで実現していきたいっていう気持ちが強くなっています。

──今回リリースされるミニアルバム『∞ - infinity -』は、アップテンポの楽曲が多いですよね。どんなことを想像しながら作っていたんですか?

平岡:僕はこれまでピアノの弾き語りでバラード曲が多かったんですけど、ここから30代に突入していく中で、バラードという自分の好きな部分も残しつつ、もっと明るくてアップテンポな曲だったり、疾走感のある曲だったり、バンドにも負けないようなサウンドの曲を作りたいと思っていました。

──いいですね。30代になってむしろ落ち着く様子がないっていう(笑)。

平岡:はははははは(笑)。そうですよね。確かに年々味が出てくるかと思ったら、どんどん活発になっていくという。

──そういったわかりやすくアクティヴなイメージの楽曲を作ることって、これまであまりやっていなかったことではあると思うんですが、作っていく中でどんなことを感じましたか?

平岡:なんていうか、「二度美味しい」じゃないですけど、まだ僕の歌を聴いていない人からすると、「ピアノの弾き語り」というフォームを見て、キレイな曲なんだろうなとか、感動するメロディと歌なんだろうなと思って入ってくると思うんですよね。そのときの先入観とか期待を、アップテンポが入ってくることで、良い意味で裏切りたいし、期待していたようにバラードも良いねって思ってもらえるように、武器を2つ持つというか。そういう部分を持っておきたいなっていうのは、作っていて思いました。


──2つあるからこそ、それぞれが映えるところもありますからね。収録曲についてお聞きしていこうと思うんですが、まず1曲目は「パラレル」。それこそアップテンポではありますが、アカペラでしっかりと歌を聴かせてくるアレンジも素敵だなと思いました。いつまでも追いかけ続けていきたいものがあるという意思の強い曲になっていますけども、この曲はどういったところから作り始めたんですか?

平岡:この楽曲は、舞台『あの夏の飛行機雲』-永南高校バスケットボール部-の主題歌として使っていただいているんですけど、主題歌を書くのは初めてだったんです。それで、舞台の内容やシナリオをざっくりと先にいただいて、頭の中で舞台を自分なりに想像しながら書き始めました。舞台の内容にちょっと触れてしまうんですが、青春モノで、学校生活の中で友情とか、熱いものが芽生えて、涙して、汗をかいてという物語なんですけど、主人公のお兄さんが交通事故で亡くなってしまうんです。主人公はそのまま20~30代ぐらいまで生きるんですけど、そこからタイムリープみたいな感じで過去に戻ってしまうんです。それで、高校時代にやり残したことはなかったかと考えて、お兄さんがやっていたバスケットボールを始めるという物語なんですけど。

──なるほど。

平岡:そういう「あの時できなかったこと」って、誰しもが考えることだと思うんです。僕だったら、中学校時代からギターをやっておけばよかったなとか(笑)。それはないものねだりみたいなところもあるんだけど、そこにファンタジーとかドラマもあるなと思っていて。だから「パラレル」に関しては、そういった青さみたいなものを、生き急いでいるぐらいのイメージで疾走感溢れる感じの曲にしようと思っていました。

──それで疾走感や爽快感があるんだけど、ちょっとした切なさとか、夢や希望が入り混じったものになっているんですね。

平岡:あと、楽曲を作らせていただくときに「飛行機雲」というワードを使ってほしいという話がありまして。舞台のタイトルにもそのワードが入っているんですが、飛行機雲が濃く見える日って、次の日に雨が降りやすいと言われているみたいで。たとえば、高校時代の友情とか、部活動とかで汗水流したりとか、大切な思い出ができたとしても、大人になっていくと、あの頃の記憶ってどんどん薄れてしまうじゃないですか。飛行機雲みたいに消えていってしまう。でも、まぎれもなくその瞬間は、確かな線を描いているんですよね。それをこの曲にもしっかりと落とし込みたいなと思っていました。

──次の曲は「ビギナーズ」。パワフルなバンドサウンドと、〈人生初心者〉〈人間初心者〉というインパクトのあるワードが耳を惹く楽曲になっています。

平岡:この曲は、リリースする前に、4月に東京でやったワンマンライヴのアンコールで披露していて。この3年間、ライヴだけじゃなくて、いろいろなことが世界的にできない状況でしたけど、これからも未経験なことがたくさん起こるだろうし、想像し得ないことに立ち向かっていかなきゃいけないときがあると思うんです。でも、人生ってそういうものでもあるなと思って。いろんな物事が起きるけど、自分にとって初めてのこともあるだろうし、どう対処したらいいのかわからない。その中で、光が満ちるような部分があってもいいんじゃないかなと思って書き始めた曲でした。初めてのことに対しても、怖気付かずに一歩踏み出してほしい。それは自分に対して言っていることでもあるんですけど、そういう曲ですね。



──〈マルかバツか分からないが あるがままだ〉という歌詞も素敵だなと思いました。

平岡:これは生きていて常に感じていることではあるんですよね。僕の人生の永遠の課題じゃないですけど、はたしてどれが正解なんだろうって、やっぱり考えてしまうんです。音楽活動もそうですけど、どうすればもっとたくさんの人に出会えるか、聴いてもらえるのか。何が正解で何が失敗かって、正直わからないじゃないですか。これをやったら必ず成功するとか、必ず出世するとか、そういうものなんてなくて。でも、その中でも、自分なりのマルとかバツをつけていく。ときには自分にバツをつけてしまってもいいと思うんですよ。ただ、結果的にそのバツがあったおかげでマルになったり、マルがあったおかげでバツも経験できて二重マルになるとか。人によって見方はいろいろ違うと思うけど、自分なりのマルとかバツをつけていって、より厚みのある人間になりたいと思っているので、そのことを書きました。

──おっしゃっていた通り、これをやったら成功するみたいな話はどこにもないですし、そういう答えっていつの時代も求められていたのかもしれないけど、特に昨今は失敗が許されないというか。合理的であること求められがちな場面も多くて、なんか疲れちゃうなって思うことが多いんですけど、平岡さんはそういう瞬間ってあります?

平岡:僕はもうシンガーソングライターというアーティスト活動を選んでいる時点で、自分の中では社会不適合者というか(笑)。いわゆる普通の道というか、学校を卒業して働いている方々とは違う道に行っているので。でも、逆も然りだと思うんですよ。こういう活動をしていると「すごいね」と言われることもありますけど、僕からしたら、朝起きて、出社して、定時まで働いて、もっと言ったら残業して、そうやって働いている人達のほうがすごいなと思いますし。だから、そもそも僕は合理的なことができないというか、常にファールボールみたいな人生なので。そこに風が当たって、たまにホームランになってくれればいいなっていう感覚ですね。

──3曲目は「春舞」。力強いバンドサウンドを、ストリングスがよりドラマティックなものにしてくれていますね。この曲も青春の日々を思い返すようなものになっていて。

平岡:(この曲を配信したのが)春だったので、卒業式と入学式とか、離任式と入社式とか、いろいろな出会いと別れが交差する時期だよなと思って。そういうことって誰しも経験しているじゃないですか。僕も上京組なので、その記憶を辿りながら書いていました。別れてしまったけれど、またどこかで交差したらいいなと思うし、そのときは笑っていたいなという希望を込めた曲でもあります。



──ここまでの3曲も、この後の2曲もそうなんですが、今作において希望は大事にしたかったんでしょうか。

平岡:そうですね。今回に関しては、バッドエンドじゃないですけど、湿っぽく終わる感じの曲ではなくて、何かしら最後にはちゃんと光を持たせて終わりたかったなっていうのは、どの曲にもありました。

──それは時世的な影響が強かったのか、30代という数字の部分が大きかったのか。

平岡:ああ……言われてみると、そこまで意図したところはなかったんですけど、やっぱりいま生きているこの時代の中から感じていたものがあったんじゃないかなと思います。曲を作っていて、終盤になってくると、このまま終わらせていいのかなって考えるんですけど、どの曲も陽のほうに、光のほうに向かっていく感覚で作り終えていた感じがしますね。あと、そこは『∞ - infinity -』というタイトルと関係してくるところもあって。無限大のマーク(∞)を付けているんですけど、そこにいろんな意味を込めているんです。

──どのような意味でしょうか?

平岡:ひとつは、無限大のマークってマルが2つ横に並んでいる形ですけど、この期間って会いに行きたくても会いに行けないことが多い人達も多かったので、常に隣にいるよという気持ちを込めて、マルを2つ並べているんです。そういうものもありますし、それこそ無限大って、永遠というか、ループでもあるじゃないですか。10代、20代、いまは30代になろうとしていて、まだわからないですけど、40代、50代になっても、きっといろいろな新しいことを始める僕がいると思うんです。そのなかでも、「やっぱりこれだよな」みたいな感じで、昔の自分を思い出して、同じことを何度もしていくんだろうなっていう想像が、僕の中にあって。そうやって同じことを繰り返す。無限大のマークをなぞればなぞるほど、それは濃くなっていくし、生きることってそういったことの積み重ねなのかなと思うんですよね。だから、いま新しい部分を描き出してはいるんだけど、この先もまた同じようなところをなぞっていけば、より濃い自分になれるんじゃないかという。それが自分にとっての光でもあるのかなと思います。

──確かに、続けていくことは難しいことですし、それが続いていくことはまさに光であり、希望ですね。

平岡:そうですね。

──あと、アレンジに関してですけど、アレンジャーの方と作業する際に、こういうイメージが浮かんでいるというのを細かくお話しされたりするんですか?

平岡:そうですね。最初にイメージを伝えさせてもらって、アレンジャーさんがこういう楽器の音はどうだろうとか提案してくださって、より近いものを入れていただいたりとか。どの曲もアレンジは堀倉彰さんにお願いしているんですが、ご本人はアレンジャーでもあり、プレイヤーでもあるんですよ。僕と同じでピアノを弾かれる方で、ここにこういう音が入っていたらこの音や歌詞が活きるとか、ライヴでファンの人に届ける場面まで考えてアレンジしてくださっています。

──どの曲も総じてバンドサウンドが耳に残るんですけど、鍵盤の音がずっと鳴っていますしね。

平岡:そこは平岡優也が歌う曲、平岡優也じゃないと歌えない曲という意味をしっかり残してくれているんだろうなと思います。僕が大きなハコでやれるようになったらサポートで入っていただきたいですし、僕としてはすごく信頼していつもお願いしてますね。

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