【対談】うみくん × you&kiyo [Nicori Light Tours]、ボカロ曲と動画配信を語る「Janne Da Arcからの影響は今の音楽制作に全部役立ってます」

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■ジャンヌを聴いてくれてた人が今第一線で活動を
■本当にありがたい。気持ちが新たになるから

──そのドッキリ企画ではおふたりの演奏をバックに歌われたわけですが、そもそもうみくんが歌の道に進んだきっかけとは? うみくん自身は3歳の頃からピアノを習い始めたということですし、中学校時代にはギターをはじめとする全バンドパートもこなせるようになっていたんですよね。

うみくん:本当は高校を卒業したら、上京してピアノや楽器の専門学校に行きたかったんです。だけど、ちょっと厳しい親でして、「上京して音楽をやるなら大学で教員免許を取らないと許さない」と言われてしまって。だったら音大を目指そうと。それしか選択肢がなかったんですよね。でも、ピアノで音大受験の準備を始めるには年齢的に遅かったし、同時期に体育の授業で指を骨折してしまったりしたので、ピアノ科は諦めて。そのときに、「声楽だったら、声変わりしてから始める人も多いらしい」ということを聞いたんです。それならワンチャン間に合うかもって、先ほどお話したように、声楽レッスンに車で片道2時間かけて通って頑張りました。だから、歌をやりたかったというより、東京に行くための条件をクリアするために始めたんです。

──上京して音楽の道に進みたいというところにブレはなかったわけで。

うみくん:はい。東京に行けば、自分がやりたいことがもう少し具体化されるだろうし、チャンスも増えるかなと思ってましたね。で、音大で師事した先生が、「なんでも楽しいことをやればいい」っていうタイプの方で。入学当時僕はバリトンっていう低いパートだったんですよ。でも、その先生に「高い声も出るからやってみたら?」と言われて、ハイトーンの楽しさに目覚めたんです。


▲you (Nicori Light Tours)

kiyo:それで出るようになったのがすごいですよ。練習したからって誰にでも出せる声じゃないですから。

うみくん:もともとクイーンが大好きでしたし。

you:なるほど。クイーンはオペラやクラシックの要素も曲構成に入っているよね。

うみくん:そうなんです。音大でクラシックも学べたのは良かったと思います。

──うみくんが注目を集めたのは2014年4月、ニコニコ動画に初投稿した「Let It Go ~ありのままで~」のカバー動画がカテゴリーランキングで2位を獲得したときからですね。現在までYouTubeチャンネルは登録者46万人越え、総再生回数は1億回を突破しています。まず、「Let It Go ~ありのままで~」は鮮烈でした。

うみくん:先ほどお話したように、大学でオペラやミュージカルを多少学んでいたので、自分の歌い方に合いそうだと思ったことと、当時「アナと雪の女王」って日本でひさしぶりに音楽が中心となって起こったムーブメントだったじゃないですか。それで選ばせていただきました。

──うみくんのように、ニコ動やYouTubeで“歌ってみた”や“弾いてみた”文化が広がったことについて、youさんとkiyoさんはどのように感じてましたか?

you:単純にYouTubeというツールは、“僕らの若い頃にもあったらよかったのに”と思います。たとえば僕の時代は、いろんな雑誌とか教則本や教則ビデオを買って、練習のために時間もお金も費やしてたんですよ。あれはなんだったのか?って思いますよね(笑)、特にYouTubeの出現には。無料で観られるわけですから。そのおかげもあってか、僕らがデビューしたのは20代の頃ですけど、比較してやっぱり、同じ年齢の今の人たちのほうが総じて演奏レベルが上がってると思います。


▲kiyo (Nicori Light Tours)

──それこそ、うみくんが教則DVDを購入したように、youさんやkiyoさんのプレイをYouTubeで観てコピーしたという方も少なくないでしょうし。

you:そういう若い方々から、「Janne Da Arcに影響を受けた」と言ってもらえる機会が最近すごく増えていて。もしみなさんの技術向上に僕の演奏が役に立った部分があるなら嬉しいです。……嬉しいんですけど、同時にちょっと悔しくもあります(笑)。

うみくん:僕ら世代の半分以上は影響を受けていると思いますよ。今でも、アレンジャーに投げる前のデモは、ラフのギターを自分で弾いたりするんですけど、“youさんの教則ビデオでギター練習しといてよかったなー”って本気で思いますし、“kiyoさんはストリングスのアレンジをどういうふうにやってるんやろ?”と思って分析したりしたことが、今自分のDTMでの音楽制作のときに全部役立ってます。

kiyo:そう言ってもらえると嬉しいですね。

うみくん:だから、僕らからしてもありがたい時代なんです。おふたりが公式YouTubeチャンネル(you・kiyoチャンネル)を開設されて、「FINAL FANTASY VII」を演奏してる動画を見られたり、新プロジェクトNicori Light Toursさんの曲も聴けますから。Nicori Light Toursとして最初に発表された「蜃気楼Girl」を聴いた時、“めっちゃエモい!”と思いました。頭から“この感じ、youさんとkiyoさんだー!”って。リフのニュアンスとか、ド頭にストリングスみたいなアタックが入ってるところとか。

you:嬉しいですね、ちゃんと聴いてくれてて。

kiyo:こうやって、当時Janne Da Arcを聴いてくれていた人が、今はご自分が第一線で音楽活動をされている。そういう方の意見を直に聞けるのは本当にありがたいんです。気持ちが新たになりますから。



──うみくんの最新作『【ボカロ曲を原キーで】高音厨で有名な総再生数1億超えのうみくんがベストアルバムを出した件について【歌ってみた】』は、そのタイトルどおりボカロカバーベストアルバムですが、そもそもボカロ曲にはどう親しんでこられたんですか?

うみくん:まず、僕は邦楽のバンドものを起点に、洋楽も含めていろいろな音楽を聴くようになって。その中で出逢ったのがボカロ曲なんです。ボカロ曲って、たとえばAメロ→Bメロ→サビみたいな一般的な曲展開じゃなくて、いきなりサビ→サビ→ちょっとAメロが入って→サビ終わり、とか構成から結構変則的なんですよね。なんでもありな曲があって、それを受け入れるユーザーがいる。そういう土壌がある。“カルチャー全体として面白い”と思って聴くようになったんです。

──youさんとkiyoさんは以前、ボカロユニットのオーディションに審査員として参加されましたが、ボカロ曲についてはどんな印象を?

you:そのオーディションに携わらせてもらったことで、聴くようになりました。いろいろ聴かせてもらって、音楽的に自分に近いものもあったし、“すごいな、最近の子は”っていう刺激ももらってます。というのも、ある意味、ボカロが日本の音楽を変えたんだろうなと思っていて。今の若い世代はボカロ音楽を当たり前に聴いてきているので、いざ本人が発信したり表現する側に立ったとき、ベースにそれがあるんですよ。僕らの世代がボカロをベースに持っていることはもちろんないので、違いがすごく表れる。それが面白いんですけどね。

kiyo:ボカロ前とボカロ後って違うよね。現代は、スマホアプリで打ち込みできちゃう時代なので、昔ほど音楽制作に対するハードルはないし。ハードルが下がって入りやすくなったぶん、音楽のレベルもすごく上がってるなと思います。たとえばJanne Da Arcのときって、僕が作るメロディが「難しい」ってよく言われてたんですよ。実際のレコーディングでも、まわりから「メロディの起伏が難しい」って言われて、旋律を少しなだらかに修正することもあったんです。ところがそういう旋律も、“今の時代だったら普通に通ったんだろうな”、“難しいメロディとかみんな普通に歌えてるからな”って思うんです。きっと、若い人の脳みその回転スピードも昔と今では違うんでしょうね。


▲うみくん


うみくん:kiyoさん作曲の「WILD FANG」とかそうですよね。聴いているときは歌えそうなんですけど、実際にカラオケで歌ってみたら、ピッチが半音当たらなくて苦戦した記憶があります。

kiyo:僕は鍵盤でメロディを作るから、半音とかよく使うんですよ。それに音符の高低が飛び飛びなメロディーとか、いつも怒られてました(笑)。

うみくん:それがオシャレに聴こえてカッコいいんですけどね。最近の音楽って、譜割がさらに細かかったり、“いきなりそこ転調するんや?”みたいな曲も多いですよね。

kiyo:そうそう。'90年代は「なるべく自然な転調にしたほうがいい」って言われたんですけど、最近の転調って唐突だから。

you:そうやったな。でも、急な転調もドキッとする効果があって全然いいと思います。

kiyo:うん。それに僕は昔から譜割が細かいのは好きだったので、今の音楽って聴いてて気持ちいいんですよ。

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