【音楽ギョーカイ片隅コラム】Vol.141「TRAVIS来日公演で見えたコロナ禍の先の未来」

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ステージには海外から来日したアーティスト、久しく聴けていなかった彼らの生演奏が鳴り響くホール、そこには音と場の臨場感を全身で楽しむ超満員でひしめきあうオーディエンスの姿。あぁ…この光景!これを待っていた!コロナ禍となって初めてそう思わせてくれたのはスコットランドが生んだ2000年代を代表するバンドのひとつ、TRAVISでした。


5年ぶりとなった今回の来日ツアーは、3rdアルバム『The Invisible Band』 がリリース20周年を迎えた2021年から展開されている<The Invisible Band in Concert plus the Classic Hits>の一環で、このツアーに先駆けてオリジナルアルバムの最新リマスター、シングルB面曲、レコーディングセッションでの未発表曲、ボーナストラックが収録された20周年エディションが発売されています。オリジナル盤のリリース当時は<グラストンベリー・フェスティバル>や<レディング&リーズ・フェスティバル>のヘッドライナーを飾るなど、イギリスを代表するバンドとして広く認知された謂わば彼らの黄金期。そんな名盤を冠したライブのJAPAN TOUR最終日、10月15日にEX THEATER ROPPONGIで開催された東京公演の2日目に足を運びました。


この日は入場制限なしのソールドアウト公演で、B3アリーナ席は開演前からスタンディング客ですし詰め状態。そうした光景を見るのも熱気を帯びた空気を肌で感じるのも久々のこと! 懐かしささえ感じる生温く漂うその空気にとっぷりと浸かり、ステージ上に掲げられた『The Invisible Band』のジャケットを彷彿させる大樹があしらわれたバックドロップを眺めながら開演を待つこと十数分。周囲の人たちも同じ気持ちなのか、皆が皆とてもにこやかで、まだ始まってもいないのにこの時点で胸がいっぱいになっていました。それほど“この空間”に飢えていたんですね…、私たち。

そうこうしているうちにメンバーが登場してライブがスタート。ライブの内容はツアータイトルのとおりで、前半はアルバムの曲順通りの再現演奏、インターバルを挟んだ後に彼らのライブで外せないヒット曲が少し長めのアンコールのようなかたちでプラスされるという2部構成で、まさに人気のフルコースに美味しい定番デザートもしっかり付いてくるような完全メニュー。さらには、シェフが「こちらのお料理は○○産の…」と食材説明をするかのように、フラン・ヒーリー本人による曲解説が曲毎になされ、作品への理解を深めるとともに直後に奏でられる珠玉の楽曲をより一層堪能できるという、なんとも贅沢なショーでした。この日初めて彼らのライブを訪れた人も古参ファンも、居合わせた誰もがTravisの名盤を余すところなく振り返ることができたことでしょう。

中でもハイライトは、かねてより噂されていたオアシスの楽曲からのパクリ事件が実話であることが語られた「Writing To Reach You」での「Wonderwall」を組み込んだ演奏や、レコーディング時のアレンジは本来思い描いていたものと違ったという理由から長らくアコースティック・アレンジで披露されてきた「Flowers In The Window」がCD収録音源に近いバンド・サウンドで再現されたこと、そして近年なかなか聴けなかった1997年リリースの2ndシングル「U16 Girls」や、お決まりの全員総立ちでの雨歌ジャンプ、AC/DCのカバー「Back In Black」で締めたところまで実に見どころ満載でした。

しかし何よりも素晴らしかったのは、“海外アーティストのライブを楽しむ”という遠くなってしまっていた日常がほぼ戻ってきたと実感できたこと!やはり好きな音楽に直接触れる、好きな場にいるということは、かけがえのないものなのですね。国内アーティスト同様、海外アーティストの単独ライブもフェスで観るのとは違う良さがあるので、こうして再び海外アーティストの単独公演がフルキャパシティで観ることが叶うようになって本当によかったです。「Follow The Light」の時、真っ暗闇の中でもほんの小さな光が見えさえすれば前へ進めるとフランが話していましたが、今回のTravis公演こそがコロナ禍の先の明るい未来をようやくはっきりと見せてくれた、希望の光のようなライブでした。

また、Travisは作品もさることながら、フランを筆頭にアンディやニール、ダギーの人柄の良さや、メンバー間の良好な関係性がパフォーマンスを通して伝わってくるところもまた大きな魅力です。「私もいい人になりたい。素直で誠実でピュアに生きたい!」という真っ当な思いを毎回ライブで抱かせてくれるロックバンドは世界中でTravisだけかもしれません。

文◎早乙女‘dorami’ゆうこ


◆早乙女“ドラミ”ゆうこの【音楽ギョーカイ片隅コラム】
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