【ライブレポート】chilldspot、“楽しくて”実のある1stツアー

ツイート

chilldspotの初となる全国ツアー<One man tour "Road Movie”>の最終公演が10月26日にZepp DiverCityにて開催された。

◆ライブ写真

ライヴ中に比喩根(Vo,G)も触れていたが、ツアータイトルになったロードムービーとは旅で起こる出来事を通して登場人物が成長していく物語のこと。豊かな音楽性を誇る彼女たちではあるが、キャリアとしてはまだまだ浅い。本ツアーを通してどんな成長を遂げたのか、満員のオーディエンスが期待していると、定刻を少し過ぎたところでゆったりと比喩根、玲山(G)、小﨑(B)、ジャスティン(Dr)の4人が姿を現す。


まだ薄暗い中、ゆったりと玲山がカッティングを響かせ、そこにジャスティン、小﨑と音を重ね、比喩根が伸びやかな歌を乗せた「music」からライヴは始まった。勢いづける為の派手な装飾は必要ない。とにかく曲へフォーカスしたスタートを切り、深くグルーヴィーなサウンドを放っていく。気負いや焦りは感じさせない。ツアーで培ってきたのだろう、堂々たる立ち姿だ。

惹きつけられたオーディエンスは思わず比喩根が「いい夜になりそう」と声をはずませるほどの歓喜のクラップを鳴らし、熱い後押しを受けて妖艶な「line」へ。的確に音を紡ぎ、スタイリッシュなムードをさらに高めて音数を絞って歌が引き立つ「yours」につながっていく。いい高揚感がみるみるうちに広がっていくのだ。


比喩根が「お越しいただいて本当にありがとうございます。一緒に最後まで楽しい時間を作っていきましょう!」と感謝の意を述べた後も感情のわずかな揺らぎを投影した歌声が沁み渡り、ひとつひとつ丁寧に鳴らした音の余韻も味わえる「hold me」、星空のように広がるライティングとロマンティックな世界観がマッチした「shower」といったじっくり噛み締められるナンバーをドロップしたように、この日の彼女たちは決して焦らない。中途半端にアッパーなアプローチも駆け引きもせず、丁寧に丁寧に会場の隅々まで自分たちの世界観で染め上げていく。


ここで4人で呼吸を整えてから、玲山の空間的フレーズも高らかに鳴り、後半になるにつれてスケールアップしていった「flight」で熱気を高め、新曲「Sailing day 」へつなげる流れも見事だった。軽やかでコクのあるメロディーに抜けのいいサビ、自然とクラップも大きくなり、より華やかさが加わっていったのも当然だろう。

「結成して3年目になるんですけど、初めての全国ツアーを今回やっておりまして、この4人が主人公になって成長していけたらいいなっていう想いでタイトルを“Road Movie”とつけました。この公演中もそうだし、このライヴが終わってからまたchilldspotに会ったときに『あっ、成長したな』って思ってもらえるような、“楽しくて”実のあるライヴにしたいと思います」──比喩根


序盤からスローなナンバーが続き、一見どこかシリアスなムードだったと想像するかもしれないが、ヒリヒリするような緊張感はなく、漂っていたのは心がじんわりと温かくなる空気。真摯に音楽と向き合いながら、比喩根が“楽しくて”と強調して話したように、楽しそうにプレイする4人の姿がたくさん見受けられた。

そんな気持ちをより分かち合おうと、ここから比喩根が「みなさんに近づきたくて」と話し、ハンドマイクで「夜の探検」からライヴを再開。彼女たちが注目されるポイントとして、R&B、ソウル、ジャズやロックといったサウンドを独自の感性でブレンドした高い音楽性やハイトーンからこぶしがきいたような歌いまわしまで自在にこなす比喩根の歌唱力が挙げられることもあり、どちらかと言えばクールな印象を持たれるだろうが、ライヴではキュートな一面も随所に見られたりもする。


この日もそうだったが、特にハンドマイクを持った比喩根は細かくステップを踏んだり、足を蹴り上げたり、身振り手振りを交えながら自らを開放するように歌い上げるし、時には歌詞の一部を会話のトーンに落として、オーディエンスへ語りかけるようにも歌ったりもする。イメージとはまた違う雰囲気が可愛らしくもあり、より惹きつけるフックにもなっているのだ。

そんな表情を随所に見せながら、オーディエンスとともに大きく手を振り、強いリズムが胸を打った「weekender」、グルーヴ感でフロアを持っていった「夜更かし」と続けた後、再び比喩根がギターを持って突入した「dinner」の迫力はとても印象的だった。踏み込んだからこそ生まれる生々しさに溢れ、中盤からスイッチを切り替えたようにバンドのアンサンブルも覚醒し、小﨑とジャスティンも前のめりでリズムを叩きつけていく。
そして、そんな濃密な空気をより凝縮させた「Monster」は陶酔度が凄まじかった。赤と緑のライティングも相まって、カオティックな凄みを感じさせながら、真ん中には多彩な声でアプローチをする比喩根の歌。物語としても豊かに響き、彼女たちの奥深さを突きつけられているようでもあった。


目と目でメンバーがお互いを確かめ合うような、ライヴならではのコミュニケーションからドラマティックに加速した「未定」、「この曲でぶち上げていきましょう!」と比喩根が声を上げ、踊るようなフレーズを奏でた玲山がバンドのテンション感をステップアップさせた「Groovynight」と淀みなくライヴを展開。オーディエンスは感じるがままにリズムを刻み、手を上げ、彼女たちに身も心も委ねていく。

長丁場のワンマンらしく、改めての自己紹介とツアーを振り返る話を和やかに話し、そこから繰り出したのは「ネオンを消して」だった。比喩根がギターを鳴らし、歌い出した瞬間に一変する空気。感情を的確に描写した歌声、ハイトーンもそのかすれ具合も切なさを醸し出す。また彼女たちの音世界へ一気に引き込まれてしまい、やりきれなさと温かさのグラデーションがグッとくる「Ivy」、ライトを落とし、シルエットだけが映し出されるステージで鮮やかに奏でた「Kiss me before I rise」と続け、あっという間にもうラスト3曲。


「一夜限りだから、同じライヴはないから、楽しまないと勿体ないので、こっからギアを上げて駆け上がっていきます!」と比喩根の宣言もあり、ライヴはまさにクライマックスへ。爽快ながらどこか切なさも感じさせる「your trip」で会場全体をヒートアップさせ、その勢いのまま軽快なポップチューン「BYE BYE」へ。大きなクラップを受けて、より一層メンバーは熱を帯び、本編の締めくくりとして「Like?」をドロップ。ハンドマイク片手に比喩根はステージを自由に駆け回り、玲山、小﨑、ジャズティンもこのステージにすべてを置いていこうと熱演を繰り広げていった。


息も切れ切れのメンバーがステージを去っても盛大なクラップは鳴り止まず、すぐに比喩根が戻ってきて、いざアンコールかと思いきや、本編ですべての持ち曲をプレイしてしまったとのこと。だが、せっかくの気持ちに応えたいと1stアルバム『ingredients』に収録した弾き語りのナンバー「私」を心ばかりのギフトとして最後に披露してくれた。本当にスッカラカンになるまで出し尽くしたワンマン。内容に申し分なく、今後がさらに楽しみになったステージだった。

もちろん、ここでひと息つくことなく、彼女たちは歩みを進めていく。来年1月に公開される映画『恋のいばら』の主題歌として新曲「get high」が、「ネオンを消して」が挿入歌として決定しているように、活躍の場はさらに広がっていくだろう。そちらにも注目していきたい。

取材・文◎ヤコウリュウジ
写真◎Kana Tarumi

セットリスト

■プレイリストリンク
https://lnk.to/RoadMovie_ZeppDiverCity_setlist

1.music
2.line
3.yours
4.hold me
5.shower
6.flight
7.Saling day
8.夜の探検
9.weekender
10.夜更かし
11.dinner
12.Monster
13.未定
14.Groovynight
15.ネオン
16.Ivy
17.Kiss me before I rise
18.your trip
19.BYEBYE
20.Like?
EN. 私

<One man tour "Road Movie”> スケジュール
・9月23日(金・祝)名古屋 CLUB QUATTRO
・10月1日(土)福岡 BEAT STATION
・10月7日(金)札幌 mole
・10 月16日(日)仙台 Darwin
・10月23日(日)心斎橋 BIGCAT
・10月26日(水)Zepp DiverCity

Digital Single「get high」

2022年12月16日 Release
https://lnk.to/get_high
※映画「恋のいばら」主題歌
映画予告YouTube: https://youtu.be/xOcbhTkqppg

◆chilldspot オフィシャルサイト
この記事をツイート

この記事の関連情報