【ライブレポート】リトルブラックドレス、愛とリスペクトにあふれた<CITY POP NIGHT>第3弾
Blue Note Tokyoを舞台にシティポップの名曲を届けるリトルブラックドレスのライブシリーズ<CITY POP NIGHT>。その第3弾が10月28日に行なわれた。
◆ライブ写真
前回から約8ヵ月ぶりの開催となった本公演。その間、劇場アニメ『怪盗クイーンはサーカスがお好き』主題歌「逆転のレジーナ」、テレビアニメ『異世界薬局』エンディングテーマ「白雨」とリリースを重ねるなど、リトルブラックドレスがさらなる成長を遂げてきたことも手伝って、Blue Note Tokyoにはたくさんのオーディエンスが詰めかけた。ここでは、1stセットの模様をレポートする。
ベルボトム仕様の青いベルベットスーツや銀のハイヒール、イヤリング、ヘアカフなどを纏って煌びやかに現れたリトルブラックドレス。オープニングは男性ボーカル曲に絞ったメドレー“City Pop male vocals Medley”で、つい先日放送されたNHKの音楽番組『うたコン』の鉄道ソング特集でも演奏した、彼女の疾走感あふれるアコギが際立つ「さらばシベリア鉄道」(大瀧詠一作曲)からライブが始まった。一段と頼もしくなった魅力的な歌声によって、早くもBlue Note Tokyoの場内が温かみで満ちていく。
この日はリトルブラックドレス(Vo,G)をセンターに、土方隆行(G)、バンマスの御供信弘(B)、越智祐介(Dr)、堀仁一郎(Key)、佐々木久美(Org,Cho)、鈴木明男(Sax)が脇を固めるという7人編成。前回に続いて出演する佐々木と鈴木以外のメンバーを一新し、またタイプの異なる名プレーヤーたちを集めて臨むあたりが、チャレンジングな姿勢を持つリト黒らしい。
これまでの<CITY POP NIGHT>にはなかった新たな選曲も楽しく、リトルブラックドレスの歌とテレキャスターに加え、堀のキーボードや佐々木のオルガン、そして“キュン!”の合いの手がカラフルかつキュートに絡むYMOのテクノ歌謡「君に、胸キュン。」になれば、その明るいグルーヴに併せてフロアからハンドクラップが巻き起こる。山下達郎の「BOMBER」では、御供の切れ味鋭いスラップをはじめ、土方と鈴木も華麗なソロを奏でるなど、快活なバンドサウンドに心がときめくばかり。
最初のメドレーを終えたリトルブラックドレスは、「私の大好きなシティポップをひたすらカバーするというライブ、ここBlue Note Tokyoで3回目の開催となりました。みなさんのおかげです。今日は本当にありがとうございます! 思う存分、飲んで食べていってください」と挨拶し、薔薇が添えられたこの日限定のカクテル“逆転のレジーナ”を紹介。公演テーマであるシティポップについても、「曲のルーツを探っていくのが楽しい」「贅沢なレコーディングをされていた時代の空気は、Z世代として憧れる」「華やかなサウンドとは裏腹に、都会やバブル特有の孤独感とか日本の哀愁みたいなものが歌詞に詰まっているところが好き」と、自身の視点で愛すべきポイントをわかりやすく伝えてくれた。
続いては、康珍化が作詞を手がけた安部恭弘の「アイリーン」。オリジナルバージョンのレコーディングに参加している土方のギターを、約38年の時を超えてこうした形で味わえるのも<CITY POP NIGHT>の大きな見どころだ。越智の軽妙洒脱なドラムや堀の裏打ちで響くエレピなどが洗練されたAORフィーリングを醸し出す中、リトルブラックドレスは椅子に腰かけながらハンドマイクで情感たっぷりに歌う。さらに、Twitterでのリクエスト募集でいちばん票が多かった竹内まりやの「駅」をカバー。御供がウッドベースを弾き、鈴木がフルートを吹くというレアなサウンドに乗せて、今度は女性ボーカル曲を、先に述べたような深い哀愁を込めて表現する。原曲の憂いと水っぽさを丹念に汲み取ったり、気持ちが昂るにつれ立ち上がって歌唱したりと、この2曲は彼女のシンガーとしての凄み、演じ分けのスキルがとりわけ光り輝いていたと思う。
しっとりしたナンバーのあとは一転、聴く側が思わず首と腰でリズムを取ってしまうほどにファンキーなノリで魅せる吉田美奈子の「TOWN」へ。こちらもオリジナルに土方が携わっていて、彼のインパクト抜群のかっこいいカッティングギターを筆頭に、メンバー紹介を兼ねた各パートの熱いソロ回しなど、リトルブラックドレスが心底楽しそうに身体を揺らしつつ、伸びのあるスキャットもふんだんに入れては、全体のアンサンブルを引っぱっていく感じが痛快でたまらない。
ラストスパートには、2022年にアニメのテーマソングを担当できたこと、これまでアニソンでたくさんのボーカルオーディションを受けてきた経験があることにちなんで、“City Pop female vocals Medley”改め“シティポップなアニソンメドレー”を投下。『美少女戦士セーラームーン』オープニング曲として馴染み深いDALIの「ムーンライト伝説」に始まり、アニソンとポップスの融合の先駆けと言える杏里の「CAT'S EYE」を颯爽と届け、締めに映画『怪盗クイーンはサーカスがお好き』主題歌に起用されたリトルブラックドレスのメジャー3rdシングル「逆転のレジーナ」をフル尺で織り交ぜてみせる。自らの楽曲を本編に持ってくるのは<CITY POP NIGHT>史上初の試みだったが、このメンバーゆえの優雅なアレンジで見事に溶け込ませ、観客も“待ってました!”といった感じで大いに沸く。
そのまま<CITY POP NIGHT>の定番曲となっているアン・ルイスの「恋のブギ・ウギ・トレイン」へ繋ぎ、ウキウキと弾むような演奏とともにパワフルな歌声を存分に聴かせたリトルブラックドレス。彼女のシャウトするメロディを鈴木がサックスで返す、ライブ感満点のホットな掛け合いも決まり、フロアを華々しく盛り上げて本編を終えた。
アンコールでは、「令和のシティポップを」とメジャー2ndシングルの「雨と恋心」を披露。タンバリンを手に、エフェクトをかけたマイクを使い分けながら、どこまでも高く駆け上がるような難関ハイトーンを、以前よりも美しくスムーズに歌ってのけるリトルブラックドレスの姿を観て、ボーカルのレベルアップが改めて実感できた。間奏部をゾクゾクするほど不穏なムードで彩ったバンドの表現力も素晴らしい。
そして、最後はフィナーレにふさわしく、シティポップリバイバルによって世界的に人気が再燃した松原みきの「真夜中のドア〜Stay With Me」。いっぱいの光で辺りが照らされる中、Blue Note Tokyoに似合うドリーミーな歌とサウンドをうっとり響かせ、ライブは大盛況のうちに幕を閉じた。
今回も歌謡曲の伝統を受け継ぐリトルブラックドレスならではの愛とリスペクトにあふれた懐かしくも新しいイベントとなり、バンドメンバーの笑顔がとても眩しかった<CITY POP NIGHT>。第4弾の開催はもちろんのこと、この日出演した御供&越智がレコーディングに参加しているという、来年リリースに向けて制作中のアルバムの完成も楽しみにしておこう。
取材・文◎田山雄士
セットリスト
さらばシベリア鉄道
君に、胸キュン。
BOMBER
2.アイリーン
3.駅
4.TOWN
5.City Pop female vocals Medley
ムーンライト伝説
CAT'S EYE
逆転のレジーナ
6.恋のブギ・ウギ・トレイン
en1.雨と恋心
en2.真夜中のドア〜Stay With Me
◆Little Black Dress オフィシャルサイト
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