【コラム】Mrs. GREEN APPLE、映画『ラーゲリより愛を込めて』主題歌「Soranji」に見える“生きること”への独白

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Mrs. GREEN APPLEが11月9日、約3年半ぶりの10thシングル「Soranji」をリリースした。表題曲「Soranji」は映画『ラーゲリより愛を込めて』主題歌として書き下ろしたもの。第二次世界大戦終了後、零下40度を超える厳冬のシベリアの強制収容所(ラーゲリ)で、死と隣り合わせの日々を過ごしながらも家族を想い、仲間を想い、希望を胸に懸命に生きた男・山本幡男の壮絶な半生を描く感動大作の主題歌であり、Mrs. GREEN APPLE自身を投影した新曲でもある。

◆Mrs. GREEN APPLE 画像 / 動画

“貴方に会いたくて”という一節で始まるMrs. GREEN APPLEの新曲「Soranji」。歌は“私はただ” “私はまだ…”と続いていく。主語は“私”。その“私”とは一体、誰を指しているのか。間違いなく、言葉を紡ぎ、メロディを生み出した大森元貴だ。ただこの楽曲は、多くのポピュラーソングとは歌の根源、すなわち“私”の持つ意味合いや重み、次元が異なっているように感じられる。

一般的にポピュラーソングは、シンガーソングライター自身が主語となり、リスナーに伝えたいこと、想い、感情をメッセージとして伝えることが多い。同時に、その主語は聴き手の1人1人であるとも受け取れるようにすることで、多くのリスナーに“まるで自分のことを歌っているようだ”という共感を呼び起こす。それを実現できている歌は、間違いなく作品として素晴らしいものであるし、作詞というクリエイティブにおいても、非常に高度な技術が要求されるものである。


ところが、大森がこの曲で歌う“私”は、聴き手が“自分のこと”と受け取ろうとするには、何とも言えない敷居の高さがある。別の言い方をするならば、この歌は、聴き手の共感を得ようとか、もっと言えば、聴き手にメッセージを伝えようというエンタテインメント的な意識は希薄なように感じられるし、聴き手からしても、この曲で歌われる“私”と自分とを簡単にダブらせてはいけないような、ある種の緊張感すら感じてしまう。実際にこの曲を最初に聴いた時、ファンであっても“そうそう、わかるわかる”とは、簡単にはならなかったのではないだろうか。

なぜか。「Soranji」はまさしく、“私=大森元貴”の極めてパーソナルな精神性に根付く感情の吐露だからなのではないだろうか。つまりこの歌は、聴き手のレスポンスを求めない、大森自身による、大森自身のための、独白なのだ。

しかし、独白と巷にあふれるお気軽なつぶやきとは、言葉が持つ密度が圧倒的に違う。独白には、その言葉を発するうえでの覚悟、責任、人生が自ずとのしかかってくる。もちろん、音楽は聴き手が自由に解釈をし、楽しんでいいものだし、結果的に大森も、この曲を歌っている内容を聴き手がどのように受け取り、解釈しても、そこに異を唱えることはしないだろう。しかし、この歌を生み出した彼には、一字一句、なぜこの言葉を使い、この言い回しでなければいけないという、確固とした理由が存在しているはずだ。少なくとも、そう思わせるに足りる密度がこの歌には凝縮されている。それはきっと大森が、そしてMrs. GREEN APPLEが、彼らにとっての“生きること”について歌っているからだろう。


▲通常盤ジャケット

大森にとって“生きること”とは、現状においては間違いなく“Mrs. GREEN APPLEを続けていくこと”とイコールのはず。もしかしたら途絶えるかもしれないという状況にも陥りかけたバンドを、彼は、若井、藤澤と共に3人で続ける決断をした。そこには明確な希望光は見えていなかったかもしれないし、Mrs. GREEN APPLEを続けていける確信は持てていなかったかもしれない。それでも3人は、Mrs. GREEN APPLEとして“生きること”を選んだ。「Soranji」は、その独白のように思えてならない。

そんな一人の男 (極論を言えば、自分とは直接関わりのない赤の他人)の独白が、どうして聴き手の心に深く沁みるのか。それは、たとえどのような状況であっても、“生きること”は前提なく尊いことであり、そして彼が“生きよう”としているからにほかならない。

人は自分の意志で生を受けたわけでもなく、そしていずれ誰もが天寿を全うする。しかも時として、生きることは死ぬことよりも辛い。なのになぜ、人は生きるのか。その答えは永遠に見つからないかもしれない。それでもMrs. GREEN APPLEは、“希望を信じて欲しい” “生きて欲しい”と歌う。


ただ、その返事は求めていない。だからこそ、聴き手は“自分はどう生きるべきなのか”を考える。まさしく、映画『ラーゲリより愛を込めて』の主人公であり、最後まで生きる希望を捨てなかった日本人捕虜・山本幡男が、家族や仲間に残した言葉と同じように。

そうして聴き進んでいくと、「Soranji」は、大森の独白だけでは終わらなかった。最後の最後、曲のエンディングで初めて、独白ではない、Mrs. GREEN APPLEからリスナーへのメッセージが歌われる。まるで苦悩の想いが昇華されたかのような神々しい響きで、“一歩ずつでいいからさ” “ズタズタになった芯もほら”と、我々にそっと語りかける。

言葉というものが、いつからか非常に軽々しい存在になってしまった。そんな時代にあって「Soranji」は、言葉の尊さを感じさせる映画『ラーゲリより愛を込めて』の主題歌に相応しい、そして楽曲単体として深みのある、言葉に宿った魂が聴き手の感情を揺さぶる稀有な歌として、これからも生き続けていくだろう。

取材・文◎布施雄一郎

■10thシングル「Soranji」

2022年11月9日(水)発売
【初回限定盤 (CD+DVD)】UPCH-89491 ¥1,980(税込)
・オリジナルスリーブ付き豪華特殊パッケージ
・「Soranji」MUSIC VIDEOの世界観を写真で伝える別冊PHOTO BOOK (24ページ)
【通常盤 (CD)】UPCH-80580 ¥1,320(税込)
予約:https://lnk.to/mga_soranjiec
▼CD収録曲
1. Soranji ~映画『ラーゲリより愛を込めて』主題歌~
2. 私は最強 ~映画『ONE PIECE FILM RED』提供曲セルフカバー~
3. フロリジナル ~香りと音のプロジェクト『PARFA TUNE』コラボソング~
▼初回限定盤特典DVD
Documentary -- Episode 1.5 “Utopia” (本作品の制作過程に密着したおよそ50分に及ぶドキュメンタリー)
●チェーン別オリジナル特典●
・UNIVERSAL MUSIC STORE:クリアファイル(A4サイズ)
・amazon:メガジャケ
・タワーレコード:ポスター(A3サイズ)
・楽天:ステッカーシート(A6サイズ)
・セブンネット:三つ折り卓上カレンダー
・応援店特典:ポストカード
※応援店特典は、オリジナル特典が付く店舗、オンラインショップは対象外となります
※特典は先着となり数に限りがございます
※特典は一部取り扱いのない店舗がございます。ご予約の際ご確認ください


■映画『ラーゲリより愛を込めて』

2022年12月9日(金)より全国東宝系にて公開
原作:『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』(辺見じゅん著/文春文庫刊)
監督:瀬々敬久 脚本:林民夫 企画プロデュース:平野隆
出演:二宮和也 北川景子 松坂桃李 中島健人 寺尾聰 桐谷健太 安田顕 ほか
制作プロダクション:ツインズジャパン
配給:東宝
(c)2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 (c)1989清水香子
公式サイト:http://lageri-movie.jp/


▼概要
「生きる希望を捨ててはいけません。帰国(ダモイ)の日は必ずやって来ます」──零下40度を超える厳冬のシベリアで、死と隣り合わせの日々を過ごしながらも、家族を想い、仲間を想い、希望を胸に懸命に生きる男が実在した。
 第二次世界大戦終了後、60万人を超える日本人がシベリアの強制収容所(ラーゲリ)に不当に抑留され捕虜となった。あまりにも残酷な日々に誰もが絶望する状況下において、ただ一人、生きることへの希望を捨てなかった人物...、それが山本幡男(やまもと はたお)である。ラーゲリでの劣悪な環境により栄養失調で死に逝く者や自ら命を絶つ者、さらには日本人捕虜同士の争いも絶えない中、山本は生きることへの希望を強く唱え続け、仲間たちを励まし続けた。自身もラーゲリに身を置き、わずかな食糧で過酷な労働を強いられていたが、仲間想いの行動とその力強い信念で多くの捕虜たちの心に希望の火を灯した。
 そんなラーゲリで一筋の希望の光であった山本幡男の壮絶な半生を、その高い演技力と豊かな表現力で俳優・アーティストとして、多くの人々に希望を与え続けてきた二宮和也が演じ、映画化されることが決定。そして、時代に翻弄されながらも愛する夫を信じて待ち続ける山本幡男の妻・山本モジミを、様々な役を演じ分ける実力派俳優として男女問わずに高い人気を得ている北川景子が演じる。そして、山本と共に極限のラーゲリを生き抜く捕虜仲間を熱演した豪華キャストとして、戦禍で友人を亡くしたトラウマから自身を「卑怯者」と思い悩む松田研三を松坂桃李、最年少でムードメーカーの新谷健雄を中島健人、昔ながらの帝国軍人として山本に厳しくあたる相沢光男を桐谷健太、過酷な状況下で心を閉ざしてしまう山本の同郷の先輩・原幸彦を安田顕が演じることが発表された。

■<Mrs. GREEN APPLE ゼンジン未到とリライアンス〜復誦編〜 >

11月09日(水) 神奈川・KT Zepp Yokohama
open18:00 / START19:00
11月10日(木) 神奈川・KT Zepp Yokohama
open18:00 / start19:00
11月14日(月) 東京・Zepp Haneda
open18:00 / start19:00
11月15日(火) 東京・Zepp Haneda
open18:00 / start19:00
11月21日(月) 愛知・Zepp Nagoya
open18:00 / start19:00
11月22日(火) 愛知・Zepp Nagoya
open18:00 / start19:00
11月29日(火) 北海道・Zepp Sapporo
open18:00 / start19:00
11月30日(水) 北海道・Zepp Sapporo
open18:00 / start19:00
12月06日(火) 大阪・Zepp Osaka Bayside
open18:00 / start19:00
12月07日(水) 大阪・Zepp Osaka Bayside
open18:00 / start19:00
12月13日(火) 福岡・Zepp Fukuoka
open18:00 / start19:00
12月14日(水) 福岡・Zepp Fukuoka
open18:00 / start19:00
12月26日(月) 東京・Zepp DiverCity
open18:00 / start19:00
12月27日(火) 東京・Zepp DiverCity
open18:00 / start19:00

■LIVE Blu-ray / DVD『Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia”』

2022年12月14日(水)発売
【初回限定盤Blu-ray】 UPXH-29058 ¥7,480(税込)
【初回限定盤2DVD】 UPBH-29095 ¥6,930(税込)
【通常盤Blu-ray】 UPXH-20118 ¥6,380(税込)
【通常盤2DVD】 UPBH-20294/5 ¥5,830(税込)
※初回限定盤はオリジナルスリーブ付き豪華特殊パッケージ。ライブ写真を満載した別冊PHOTO BOOKを同梱
予約:https://lnk.to/mgautopia
▼収録内容
2022年7月8日(金)にぴあアリーナで開催された一夜限りの復活ライブを完全収録
OPENING
01. Attitude
02. CHEERS
03. L.P
04. アボイドノート
05. StaRt
06. 道徳と皿
07. PRESENT (English & Japanese Version)
08. 嘘じゃないよ
09. In the Morning
10. ブルーアンビエンス (feat. asmi)
11. 月とアネモネ
12. 延々
13. 君を知らない
14. 僕のこと
15. 青と夏
16. インフェルノ
17. うブ
18. ロマンチシズム
19. ダンスホール
20. Theater
21. Part of me
encore
en1. 我逢人(がほうじん)
en2. ニュー・マイ・ノーマル

*特典映像(初回限定盤/通常版共通):リハーサルから当日へと向かうメンバーに密着したドキュメンタリー







▲『ARENA SHOW “Utopia”』ジャケット

■<Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia” SPECIAL CINEMA VIEWING>

●舞台挨拶会場●
日時:2022年12月17日(土) 15:00開演
※舞台挨拶後、ライブ映像上映となります
会場:ユナイテッド・シネマ 豊洲
※東京都江東区豊洲2-4-9 アーバンドックららぽーと豊洲
登壇者:Mrs. GREEN APPLE (大森元貴、若井滉斗、藤澤涼架)
▼チケット
¥3,500(税込/全席指定)
※3歳以上有料/3歳未満で座席をご使用の場合は有料
※プレイガイドでチケットをご購入の際はチケット代以外に各種手数料がかかります
【一般発売(先着)】
2022年11月19日(土)12:00~
・イープラス:https://eplus.jp/mrsgreenapple-utopia-lv/
・全国のファミリーマート店舗
※おひとり様につき2枚までお申込みいただけます
※一般発売は先着順となりますので、予定枚数に達し次第受付を終了いたします

●ライブ・ビューイング会場●
日時:2022年12月17日(土)15:00開演
※舞台挨拶中継後、ライブ映像上映となります
会場:全国各地の映画館
https://liveviewing.jp/mrs-greenapple-utopia/
※開場時間は映画館によって異なります
▼チケット
¥3,000(税込/全席指定)
※3歳以上有料/3歳未満で座席をご使用の場合は有料
※プレイガイドでチケットをご購入の際はチケット代以外に各種手数料がかかります
【プレオーダー(抽選)】
2022年11月14日(月)12:00~11月20日(日)23:59
・イープラス:https://eplus.jp/mrsgreenapple-utopia-lv/
※おひとり様につき2枚までお申込みいただけます
【一般発売(先着)】
2022年12月10日(土)18:00~12月16日(金)12:00
・イープラス:https://eplus.jp/mrsgreenapple-utopia-lv/
・全国のファミリーマート店舗
※おひとり様につき2枚までお申込みいただけます
※一般発売は先着順となりますので、予定枚数に達し次第受付を終了いたします

(問)プレイガイドチケットに関して
イープラス:050-3185-6760(10:00~18:00 オペレーター対応)
※インターネットでのお申込みには、事前にプレイガイドの会員登録(無料)が必要になります
※プレイガイドでは、システムメンテナンスのため、お申込み・お支払い・お受取り等の手続きをご利用いただけない時間がございます。詳しくはプレイガイドのホームページにてご確認ください
※チケットご購入、ご来場前に必ずHP記載の注意事項をご確認ください


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