【ライヴレポート】-真天地開闢集団-ジグザグ、初の武道館単独禊は全25曲約2時間半「みんなで楽しいお祭りにしたいと思っているわけです」

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-真天地開闢集団-ジグザグが11月15日、日本武道館で初の単独禊<慈愚挫愚>を開催した。

◆-真天地開闢集団-ジグザグ 画像

2022年春にZepp4会場を含む全国ツアー<全国悪霊退治 -夢幻->を敢行し、東京公演で日本武道館に立つことを発表した彼らだが、その時から禊(ライブ)に行きたくても行けない参拝者(観客)が続出していたこと、<ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022>への出演が話題となっていたこともあり、武道館は埋まるに違いないと思っていた。が、その勢いは予想以上。予定していた席はFCの先行販売でほぼ埋まり、あまりの反響にその後、注釈付き指定席(見切れ席)が追加販売されるまでに。それでも一般発売時に開放されたのはわずか10席のみだったという。涙をのんだ参拝者がそんなに日本全国に溢れることになるとは。まだ続くコロナ禍にあって、-真天地開闢集団-ジグザグ恐るべしである。


スクリーンに映写機で映し出されるような演出で編集した過去の映像が流れ、期待でザワめく日本武道館での禊は幕を開けた。意表を突くように命 -mikoto-のギターソロが鳴り響き、紗幕がかかるステージで演奏されたのは、「タガタメ」である。現世の不条理を叫ぶように禊は始まり、「Promise」ではハンドクラップが場内に響きわたる。爽やかさと疾走感、サビで開けるメロディ。

何度観ても、-真天地開闢集団-ジグザグの楽曲の持つ普遍的なキラめきには唸らされる。前回のZeppツアーレポートでも記したがジャンル無法地帯でありながら、不思議と散漫にならない魅力がある、いや、魔力なのかも。メンバー全員がメイドの格好をしているMVがハイビジョンに映し出された「メイドカフェに行きたくて」では世界が一転、「コノハ」では武道館に拳が突き上げられた。


「愚かなる者どもよ。よくぞやって来たな。武道館、禊へようこそ! 広いやね」──命 -mikoto-

命 -mikoto-が2階の最上段まで入った会場を見上げてこう語った。参拝者はまだ声は出せない状況のため、ハンドクラップで応える形でコール&レスポンス。FC会員でも席が遠いことに関してTwitter上で不満の声が上がっていたことに触れ、前述したように一般販売されたチケットが10枚で参拝者はほぼFC会員だと伝えると拍手が沸き起こった。

「何かの間違いじゃないかと。ジグザグですよ。ちょっと予想外でした。だから、後ろのほうもじっくり楽しんでもらえるよう、私、全力でそちらまで愛をぶん投げますので、FC辞めないでください」──命 -mikoto-

感謝と笑いを届けた命-mikoto-に続いて、艶やかな衣装の龍矢 -ryuya- (B)が武道館の景色を見た感想を急に振られると「いきなりすぎて」とフリーズしつつ「ホントにみなさん、ありがとうございます。正直、今日の朝まであまり実感がなかったというか、どこか他人事で。やっと今、実感が出てきて急激に緊張してきました」と笑顔。昂っている様子の影丸 -kagemaru- (Dr)は「こんな景色見られると思わなんだ!」と叫び、御三方とも、想像以上の景色に前半はやや緊張気味な様子だ。


しかし、ヘヴィなナンバーから正統派バラードまで自由自在に声を操る命 -mikoto-と容姿とギャップありの太いビートで柔軟な旋律を奏でる龍矢 -ryuya-、バンドの屋台骨にふさわしい安定感と力強さが頼もしい影丸 -kagemaru-のドラミングは広い会場を揺らせ、包み込む力量がある。

プログレッシヴロック的なキメキメの難易度の高いフレーズが盛り込まれた「僕ノ旋律」がレーザーが飛び交う演出の中で奏でられ、命 -mikoto-が熱唱したかと思えば、チャイナ色で攻めるキュートなナンバー「ニイハオ・ワンタンメン」では命 -mikoto-、龍矢 -ryuya-がステップを踏み、客席も踊らずにはいられないテンション。そのわちゃわちゃした雰囲気は切なくも儚いバラード「五月ノ雪」で一変。ステージと客席に降り注ぐ照明がまるで雪の結晶のようだ。たった数分で色を変え、曲の世界に引き込むのが-真天地開闢集団-ジグザグの禊である。


「バンギャ生きてるか!? 我々、ヴィジュアル系バンドなんです。知ってました? バンギャはヘドバンとか激しいのが好きな傾向にある方が多いんですけど、今、おかげさまでジグザグ、ヴィジュアル系にとどまらず、いろんな方のご声援をいただいております。そして、いわゆるバンギャさんが言うところのパンピ。私もパンピかもしれないんですけど、すごく増えたんですよ。たぶん、今頃、バンギャがものすごく肩身の狭い想いをしているんじゃないかと思っておりますけど。バンギャ! 自信持ってやっていいからな。大丈夫やから。ちゃんと見てるから。“頭!”って言って頭振ってたら気持ちいいからな。お祭りでも神輿を担いでワーッて楽しんでる人もいれば、それを見て楽しんでいる人もいるわけですよ。だから共存してね。みんなで楽しいお祭りにしたいと思っているわけです」──命 -mikoto-

初期の頃からジグザグを支え続けてくれている参拝者に向かって呼びかけ、振り返ったのは3年前にメンバーが脱退した時のこと。動員が減り、オワコンと化したと思ったという辛かった時期について感極まった表情で言及した。

「“これは終わったな。わし、もう辞めようかな”と思いました。でも、辞めても何もないし、売れんでもいいから地道に続けて、でも、いつの日か…。止まない雨はないっていうんでね。今日みたいな、こんな景色を思い描きながら書いた曲があるので、みなさん聴いてください」──命 -mikoto-

話し終わる前に拍手が沸き起こり、「頭、行くぜ!」と冒頭で叫び、ヘドバン和風チューン「其れでも花よ、咲け。」に移行したのはあまりに感動的なシーンとなった。ヴィジョンには客席が映し出され、“絶望に潰されそうでも”、“春は来る”と歌う歌詞が刺さる。そして跳ねるビートと歌いたくなるポップなメロディの「兎girl」、イントロで命 -mikoto-が「踊ろうぜ!」と叫び、みんなが手を横に振って身体を揺らせた「ラスデイ ラバー」では武道館が開放感に包まれる。


続いてヘヴィゾーンへ突入。命-mikoto-がファルセットからデスボイスまで自在に操る「Requiem」、影丸 -kagemaru-のパワフルなドラミングと龍矢 -ryuya-のメロディックなベースがフックとなる「Guru」では武道館がヘドバンの海と化し、命-mikoto-が下手、龍矢-ryuya-は上手の欄干に移動した「顔が好き」、“どすこい”振り付けでおなじみの「あっぱれ珍道中」になだれ込むカオスで楽しすぎる展開。笑顔が溢れる中、命 -mikoto-のエモすぎるボーカルが突き刺さってくる目名曲「忘却の彼方」が照明が消えた演出の中、響き渡り、参拝者は喜怒哀楽を禊の中で昇華させられる。

単独禊では恒例の影丸 -kagemaru-のエンターテインメントで男らしくも緻密なドラムソロを挟み、早くも後半戦に。スモークが派手に噴射された「帰りたいけど帰れない」の後は、大きなステージを華やかに彩るダンサーたちが登場した。

「それでは全員集合! ね、武道館っぽいでしょ。ダンサーでございます」──命 -mikoto-

総勢14人のダンサーたちを迎え、新曲がTOKYO MX 新月曜ドラマ『デブとラブと過ちと!』オープニング主題歌に起用されたことを報告、ライブ初披露のこの曲の振りつけをみんなにレクチャーする。イントロ、Aメロと一生懸命、教えるもののサビの振りが難しいかもと途中で悩んでしまい、慌てているところも見せてしまうのも-真天地開闢集団-ジグザグらしい。そして客席も覚えたたての振りで参戦し、キュートに弾けるナンバー「スマイル★かわいいねん」が披露された。

無重力の世界に連れて行かれるようなエネルギーを放っていた「燦然世界」、興奮の坩堝にたたき込んだ「復讐は正義」、「オマエたち、辛いことや嫌なこと、それは人生つきものやからしゃあないな。そんな時は頭を空っぽにして」と命 -mikoto-が言葉を投げかけたお祭り騒ぎの「ええじゃないか」など終盤戦もめくるめく展開。鍵盤で始まる「傷と嘘」では間奏で命 -mikoto-が「みなさん、ここでお願いがあるんですけど、スマホのライトを点けてください。最高の景色を見せてくれ!」と呼びかけ、武道館に星空のような美しい景色が広がった。マイクを口から離して熱唱する命 -mikoto-と騒いで涙して浄化されていく場内。


命 -mikoto-曰く「滅多にやらない」という写真撮影もピースサインならぬ救いの手のポーズで飛び出し、キツネの振りでおなじみの超ポップでかわいい「きちゅねのよめいり」で単独禊<慈愚挫愚>を締め括った。終わってみれば、全25曲、約2時間半の大熱演。命-mikoto-は「愚かな者に救いの手を」と生声で何度も叫び、禊を終えた御三方はステージの中央の光の扉の中へ順番に消えていった。

鳴り止まない拍手。スクリーンには「スマイル★かわいいねん」が12月5日に配信リリースされること、<古 -いにしえ- 禊>が2023年1月にZepp Osaka Bayside、Zepp Haneda (TOKYO)で開催されることなど、今後の-真天地開闢集団-ジグザグの予告が次々に映し出された。

取材・文◎山本弘子
写真◎江隈麗志

■<日本武道館 単独禊「慈愚挫愚」>11月15日(火)セットリスト

01. タガタメ
02. Promise
03. メイドカフェに行きたくて
04. コノハ
05. 僕ノ旋律
06. 嘘つき
07. ニイハオ・ワンタンメン
08. 五月ノ雪
09. 其れでも花よ、咲け。
10. 兎 girl
11. ラスデイ ラバー
12. Requiem
13. Guru
14. 顔が好き
15. あっぱれ珍道中
16. 忘却の彼方
-影丸 Drum solo-
17. 帰りたいけど帰れない
18. スマイル★かわいいねん
19. 狙い投げ
20. 愛シ貴女狂怪性
21. 燦然世界
22. 復讐は正義
23. ええじゃないか
24. 傷と嘘
25. きちゅねのよめいり


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