【インタビュー】MIYAVI、20周年キックオフ「振り返るだけじゃなく、さらに新しいチャレンジをしたい」

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MIYAVIが『MIYAVIVERSE – Anima -』を11月23日にリリースする。

◆MIYAVI 画像 / 動画

本作はMIYAVIによる5曲のアニソンカバーを収録。「Get Wild」(TM NETWORK/『シティハンター』ED テーマ)、 「魂のルフラン」(高橋洋子/映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』主題歌)、「銀河鉄道 999」(ゴダイゴ/『銀河鉄道 999』OP テーマ)、「ETERNAL WIND 〜ほほえみは光る風の中〜」(森口博子/映画『機動戦士ガンダム F91』テーマ) 「ブルーバード」(いきものがかり/『NARUTO -ナルト- 疾風伝』OP テーマ)という何れ劣らぬ名曲がMIYAVI流のアプローチでヴィヴィッドに鳴らされている。

コロナ禍も、映画、テレビ、配信コンテンツやCMへの出演、バーチャルライブや清水寺でのスペシャルライブなど多忙を極める活躍ぶりを見せているMIYAVIだが、20周年イヤー突入を目前に控えた今年6月、ユニバーサル・ミュージックからバンダイナムコミュージックライブへの移籍を発表。その動向が注目されていたなか、11月11日にはYOSHIKI、HYDE、SUGIZOとのバンド、THE LAST ROCKSTARSへの参加を電撃発表し、世間を賑わせたばかりだ。

今回、BARKSでは北米ツアー中のMIYAVIにリモートインタビューを敢行。移籍の経緯、本作のメイキング、そして本作から始動する20周年プロジェクト『MIYAVI 20th & Beyond』へのビジョンなど様々な質問をぶつけた。途中、UNHCR(国連難民高等弁務官事務局)親善大使の立場から、ロシアによるウクライナ侵攻への率直な胸中も語られている。20周年プロジェクトのキックオフを飾るロングインタビューとして、ぜひご一読いただきたい。

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■全く新しいMIYAVIの音像世界に連れていく
■今回の『MIYAVIVERSE - Anima -』は第一弾

──北米ツアーはどんな感じですか?

MIYAVI:どこもいい感じで盛り上がってますよ。コロナ禍でバーチャルライブやNFTへの取り組みもしてきたし今後も続けるつもりですけど、やっぱりライブミュージックでの「生の音楽体験」の良さを体感しちゃっている世代としては、完全な意味でこれに代わるものは当分ないだろうなと感じますね。ツアーのセットリストは20周年イヤーのキックオフも掛けているので、昔の曲も織り交ぜながらワイワイやってますね。

──MIYAVIは6月にユニバーサル・ミュージックからバンダイナムコミュージックライブが運営するレーベルPurple One Starへの移籍を発表し、新曲「Futurism」を配信リリースしました。まずは改めて移籍の経緯やモチベーションについて聞かせてください。

MIYAVI:ユニバーサルのチームは常に熱かったし、藤倉(尚)社長含めユニバーサルには公私共に本当にお世話になりました。海外での活動に関しても全力でサポートしてくれたし、その恩は絶対に忘れない。何かで揉めたわけでもなければ何かが嫌だったというわけでも全くないし、正直、移籍自体、本当に全く考えていなかった。たまたまアニメのタイアップ含め、新しい座組みでのお話も出てきた中で、自分でもユニバーサルに対して付き合いが長くなった分、いつの間にかチームとの信頼関係に甘えている自分に気付いた瞬間もあったんですよね。ここでもう一度、自ら新たな環境に身を置くことでまた自分を奮い立たせられるのかな、って。20周年でただ振り返るより、新しいチャレンジに打って出てみようかと。

──なるほど。

MIYAVI:しばらくの間、日本で過ごした時間が長かったことも大きかった。オリンピック前に帰国して、コロナが発生して、京都・清水寺でのライブや映画への出演も含めて、国内でのメディア出演も続くなか、20周年を迎えるにあたって、ここからどういう展開をしていくべきなのかと考えた時、あとじゃあもし自分のキャリアが何年かしかなかった場合、自分は何ができるのか? それを深く考えるようになって。

──バンダイナムコミュージックライブという移籍先を意外に感じたファンも多かったと思います。

MIYAVI:Jeff Miyahara(音楽プロデューサー)との縁で繋がりが出来ました。バンダイナムコミュージックライブのIP(知的財産)にはアニメやゲームなどの豊富なコンテンツがある。僕のカタログには自分からメッセージを発信する曲もあれば、映画『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』の日本テーマ曲や『無限の住人』の主題歌のように、オファーや音楽以外の作品からインスピレーションを受ける作り方もあって、そこに対する新たな切り口がバンダイナムコミュージックライブとの座組にはたくさんあるのかなと。


▲カバーアルバム『MIYAVIVERSE - Anima -』

──まさにその言葉通り、『MIYAVIVERSE - Anima -』は人気アニメの主題歌5曲のカバーになりました。

MIYAVI:僕はこれまでも「Tomaranai ha-ha」(矢沢永吉)、「TOKIO」(沢田研二)、「Smells Like Teen Spirit」(ニルヴァーナ)、「Over The Rainbow」(ジュディ・ガーランド)と洋楽邦楽問わずいろいろなカバーをやらせてもらっていて。自分で言うのも何だけど、僕がカバーすると結構がっつりMIYAVI色に変わるじゃないですか。こってりお好み味ソースマヨ、さらにワサビまでついてきます、みたいな。

──上手いこと言いますね(笑)。

MIYAVI:そうした色合いや熱量、ギターのスラップも含めて、カバーにおいてもMIYAVIサウンドのブランドが確立できてきているという自負があって。そういう意味でもカバーはもっとどんどんやってもいいんじゃないかと。アニメに限らず。“MIYAVIVERSE”というのは“メタバース(metaverse)”のもじりなんだけど、ストレートに、全く新しいMIYAVIの音像世界に連れていくという意味で『SAMURAI SESSIONS』のようにシリーズにできたら面白いんじゃないかなって。今回の『MIYAVIVERSE - Anima -』は第一弾。まだ何も決めていないけど、今後、アニメ以外のカバーも展開していけたらいいなと。

──それは楽しみです。今回の5曲の選曲はどのように決めていかれたのですか?

MIYAVI:新しいチームのみんなともがっつり議論しました。僕自身、自分の世代で個人的に好きなアニメはたくさんあるけど、それをMIYAVIとして歌うことに意義があるかどうかはまた別の話。一過性ではなく今後ライブで披露することも踏まえて、かなり入念に選曲しました。もっと若いリスナーに向けた選曲という話も出たけど、最終的な決め手としては自分のなかでのクラシック感だったのかなと思う。

──クラシック感、というと?

MIYAVI:例えば映画なら『風と共に去りぬ』をクラシックと感じる人もいれば『ゴッドファーザー』や『オーシャンズ11』がそうだと感じる人もいるだろうし、もっと若い世代からすれば、すでに『イカゲーム』のような作品に対してそう感じている人だっているかもしれない。その時代における作品の重要性やヒット性も重要だったけど、何よりリリックやメロディに備わっている普遍性やスタンダード性に惹かれるものを選ばせてもらいました。

──たしかに今回の5曲はライブで「TOKIO」と一緒にパフォーマンスしても何の違和感もなさそうですね。

MIYAVI:うん、まさにそれも基準でした。「Get Wild」も「魂のルフラン」も「銀河鉄道999」も何よりまずメロディがしっかりとしている。「ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜」のコーラスとかもそう、すごく秀逸。メロディが骨太だった時代の魅力というか。その中で「ブルーバード」も現代の楽曲だけど、クラシック。アレンジとしても、とてもいいバランスで着地することができたと思います。

──アレンジにあたって重視したポイントは?

MIYAVI:MIYAVI流にどうツイストする(=ひねる)か。メロディが骨太だとツイストし易いですね。歌うべきテーマと世界観、歌詞はすでに存在しているので、あとはMIYAVIとしてそこに存在する必要があると感じられる要素というか、楽曲に呼ばれるような要素を加えられるかどうか。どの原曲も原材料がすでに素晴らしいから、調理のアレンジもし易い(笑)。例えば原曲が良質なポテトだとすると、それを煮たり揚げたり様々な手法があると思うんだけど、どうやっても美味しくなる。でも、そこでバルサミコソースをかけてコリアンダーをつけて、みたいなことまでしちゃうと、面白いんだけど結局は最も必要な栄養素ではなくなってしまうというか。今の世の中、食も音楽も複雑なものが多くなってきているけど、自分はあまりそこには向かいたくないという気持ちがあります。

──例えば近年人気の『呪術廻戦』、『鬼滅の刃』、最近なら『チェンソーマン』といった人気コミックのアニメ化や『うる星やつら』のような昭和コンテンツのリブートを観ていて個人的に感じることがスピード感と解像度です。読者それぞれのスピードで読み進めていくマンガのコマをどんなスピード感と解像度で映像化するか。または一旦多くの人に届けたコンテンツの解像度をどう上げて届けるのか。そのバランスの采配がひと頃以上に作品の仕上がりの大きな鍵を担っているというか。

MIYAVI:僕も今回の『MIYAVIVERSE - Anima -』では楽曲の解像度を上げたつもりですが、それってただ単に現代的にするだけじゃないと思う。そもそも今回カバーさせてもらった楽曲って、良い意味でアニメに寄り添い過ぎていないというか。

──たしかに。でも、その解像度の上げ方で今回興味深い点がボーカルです。アニメソングをエネルギッシュに歌うのってある意味正攻法だと思うんですが、今回、MIYAVIはギターと同じくシグネチャーとも言える独自のハイトーンやシャウトを多用せず、どちらかと言えば中域におけるハスキーでスモーキーな声を基調にしている。MIYAVIのボーカルにおける新たなフェーズが感じられますね。

MIYAVI:ああ、そうかもしれないですね。一つはさっき話した通り、楽曲自体のメロディに対するリスペクトが大きかった。アレンジはガンガン変えるけど、ボーカルは癖が強過ぎると主旋律を壊してしまうし、そもそもニュアンスで殺しちゃうのはもったいない。だから自然とこういう形になりました。もう一つは指摘の通り、自覚的な変化ですね。最近は自分の時間と意識をかなりボーカルに注いでいます。限界ギリギリでがなるようなアプローチよりも、いろんな声の出し方を使い分けるようになりました。

──つまりボーカルにおける新たなツールというかウェポンが増えた?

MIYAVI:確実に増えたと思います。喉の使い方を変えれば歌える曲も変わるし、ツアーにおけるパフォーマンスの質とクオリティの持続性も上がる。そこには自信がありますね。今回のアメリカツアーも結局なんだかんだ毎日歌ってるから。

◆インタビュー【2】へ
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