【インタビュー】ASKAが音楽で表現した“Wonderful world”とは?

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撮影:(株)フォトスタジオアライ 豊嶋 良仁

ASKAが3年ぶりのニューアルバム『Wonderful world』を11月25日にリリース。世界がコロナのパニックに襲われていた時期から現在まで、激変する世の中と向き合ってきたASKAが音楽で表現したWonderful worldとは、いったいどんな世界なのか。インタビューで今作についてASKAに聞いた。

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■難解な時代を経て、いま見えてきた自分たちの景色
■それが「Wonderful world」


──アルバム『Wonderful world』について、まずは感想から伝えさせてください。聴いているだけで温かい気持ちににどんどん包まれていって。おしゃれして、外に連れ出してくれる。そんな気持ちにしてくれる作品でした。

ASKA:なんか、表現がおしゃれだなぁ(笑)。ありがとうございます。いまはサブスクがメインの時代だけれども、アルバム1枚としての“価値”というのはすごく意識していて。CD1枚をトータルで僕が作る曲のバリエーションで聴かせる。それが、僕がいまの音楽業界のなかでの居場所だと思ってます。

▲アルバムCD『Wonderful world』

──まさに、この作品もトータルで聴いていくと、先に話したような気持ちにさせてくれる作品でした。今作なのですが「僕のwonderful world」を作った時点から、アルバムのタイトルにはこれをフィーチャーしたものになりそうだなという予感がASKAさんのなかにはあったのでしょうか?

ASKA:いやいや、そんなことはなかったよ。この曲を作ったときは世の中が真っ暗だったでしょ? そんなときに一瞬の幸せを見つけたという。それは小さな幸せなんだけど、そこには光が見えたという曲で。楽曲としてはちゃんと存在感が出せたから、作ったときはそのときの曲でしかなかったんだけど。ここにきて、まだ終わってはいないんでしょうけど、あの当時のようなコロナに対しての不気味な恐怖感はなくなったじゃないですか?

──ええ、そこの感覚は変わりましたね。

ASKA:この3年間に、僕ら人類には強さが備わったからね。あのときはああいう時期だったからこそ、あえてwonderful worldとつけたんだけど、いまは、そんな難解な時代を経て、いま見えてきた自分たちの景色がWonderful world。それが見えるアルバムになればいいなと思ってこのタイトルにしました。

──なるほど! 先が見えない時代はたしかにあった。けれども、それを乗り越え、どんどん日常が戻ってきてきたいまは、昔当たり前だと思っていたことがなんてきらめいていて、素敵で、やさしくて、愛おしくて、尊いものなんだろうと誰もが感じている。それがアルバムタイトルが示しているWondeful worldだったのですね。

ASKA:だってね、コロナと同時だったからね。(アルバムを)作り出したのが。それで、アルバムが出来上がった頃はもうみんなが随分元気になった頃だったから。その間ずっと(アルバムを)作っていたらこういうものになるでしょう。

──たしかに。

ASKA:いまちょうどプロデューサーの澤野弘之君の(「地球という名の都」の)詞を書いているところで、今日中に書き上げなきゃいけないんだけど。やっぱりね、「愛」と「勇気」と「希望」。これは、絶対無くしちゃいけない。常に、音楽が使命として持っておかなきゃいけないものなんだよ。それを無くさずにいたいなと思ってますね。

──音楽の使命なんですか?

ASKA:使命でしょう。愛と勇気と希望は音楽にとってなによりも大切なもの。その昔、“祈り”というものが音楽に変わっていったんだからね。その祈りを音楽で受け継いでいくには、愛と勇気と希望は必要だと思うんだよね。

──今作はその愛と勇気と希望を注ぎ込んでいる濃度自体が濃い気がするのですが。

ASKA:どうだろう。そこは僕はずっと歌ってきているつもりなので、聴いた人に任せるよ。どう受け取るかは。

──分かりました。アルバムは「太陽と埃の中で」で幕開けしますが。この曲の置き場所は最初から1曲目だったのですか?

ASKA:うん、1曲目。最初から決めてた。CHAGE and ASKAのアルバム(『SEE YA』)では最後に収録されてるんだよね。

──CHAGE and ASKAのセルフカヴァーアルバム(『STAMP』)でもラストでした。

ASKA:ああ、そうだね。

──だけど、それを今作ではあえてオープニングにもってきた。そこにはどんな意図があったのですか?

ASKA:アルバムの1曲目って、みんなが一番聴く曲なのね。だからアルバムの1曲目、2曲目、3曲目は絶対外せないんだ。アルバムへのリスナーの期待感、想像がもっとも膨らむ場所がアルバムの1、2、3曲目だから、そこはすごく気をつけて曲を並べてるつもり。「太陽と〜」はフジテレビでも歌わせてもらったんだけど。

──『FNSラフ&ミュージック2022~歌と笑いの祭典~』のことですね。

ASKA:そう。あれがすごい反響があって。あのテレビで「初めて聴きました」という高校生とかからすごい反響があってね。そういうのを聴くと、改めて自分が歌うことの必要性を感じたので、もうこれは1曲目だと。アルバムのオープニングにふさわしいのはこれだと決めてからは、アルバムの曲順は悩まなかった。並べやすかったよ。

──「太陽〜」は1曲目にしようと思ったから、イントロなしの歌始まりのアレンジを施したのですか?

ASKA:ううん。アレンジしたときはアルバムの曲順はまだ決めてなかった。このアレンジはね、スタジオに入ったときにイントロをつけたいと。歌をフリーテンポで歌ったものを入れたいと僕がいったの。そのあとみんなの音がドンって入ってきたところで曲のイントロが始まる。そういうのをやりたかったの。

──壮大に幕開けしていく今作には、ここまで発表してきた楽曲に加えて、新曲5曲が収録されていました。それについてお伺いしていきたいと思います。まず「どんな顔で笑えばいい」なのですが。アルバムのなかで唯一のロックサウンドでしたね。これがまた転調につぐ転調で。

ASKA:うんうん。「組曲に聴こえる」ってよくいわれるよね。これね、じつは20年前からある曲で、ライブでは「いい新曲ができたんだ」っていって歌詞がないまま“ラララ〜”で歌ったりしてたの。横浜アリーナで。だけど、時間が経つごとに「サビが違うな」と思うようになって。それでサビをいじり始めたんだけど、なかなかいい感じのものができなくて。このアルバムには入れようと決めてたからさ。

──なんでですか?

ASKA:いまこの曲が必要だと思ったんで。それで、なんとしてでもサビを完成させたいという思いで仕上げた。

──AメロでヴォーカルがLRで掛け合いになっているのは?

ASKA:だって、CHAGE and ASKAでやろうと思って作ってた曲だから。でもね、ここで歌を右と左に振り分けた意味は歌詞のなかに出てきているんだよ。そこは歌詞を書いてるときは意識してなかったんだけれども、ちゃんとそうなっていった。

──「だからって」の歌詞は、久々に松井五郎さんとの共作。なんでこのタイミングで松井さんとやろうと思ったのですか?

ASKA:青山に個展を観に行ったときに会って。「アルバムやってるんだけど1曲やんない?」って声をかけたのがきっかけ。先に1番を書いて送ったのかな? それが歌詞になって戻ってきて。それを直してっていうのを何回か繰り返してできた。

──いままでも松井さんとはそういうやり方で?

ASKA:うん。だからね、ネットがない時代は大変だったよ。現場で会ってやるしかなかった時代に比べると、いまはいいよ。何度でもやり直せるから。アルバムにはもう1曲入れる予定だったんだ。それも2人でやろうとしてたんだけど「これは五郎、もうやめよう」って。「俺とお前ではいま出ない」っていって諦めた。

──うーん、ASKAさんのなかでその線引きというのはどういう基準でやられてるんですか?

ASKA:これは、誤解されるような言い方かもしれないけど、ASKAと松井五郎がやるのにこの程度じゃダメだろうってことかな。だから、次にしようっていうので諦めた。

──この「だからって」という歌詞は、1番ではだからって希望を捨てたわけじゃないといいながらも、2番ではだからって心が壊れてないともいえない、と心の微妙なポジションを言葉にしていく描写が凄いんですよ。

ASKA:うん。そこはよく書けたと思う。1番でそういってる自分を2番でさらに深掘りしていったらこんな自分もいた。こういうの、みんなあると思うんですよ。1番は無理をしてでもってところで、でも2番ではとはいえ本音ではってところ。そこがうまく出せたかな。

──しかも、その心理描写への持っていきかたとして、ASKAさんはカーテンの動きとかよく使われますが。この曲ではステンレスの流し台の音。こういうどこにでもある日常の1シーンを描くことで歌への導入を作るところは、本当に上手いなぁと思うんですよね。

ASKA:そっか。実際あったからね。歌詞を書いてるときに、寝落ちしてるときがあるんだけど。そういうときに、意味なく部屋で音が鳴って、それで目が覚めることがあったか。そこのところの歌詞はまさに実生活ですよ。

──そうでしたか。

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