【速レポ】<SAI 2022>DAY2、the band apart「俺達も呼ばれた時はびっくりしたよ」
「あんた達、一体誰なんだって思うかも。俺達も呼ばれた時はびっくりしたよ」──3曲目の「酩酊花火」をじっくりと聴かせながら、徐々に熱を上げる演奏で客席を盛り上げた直後、荒井岳史(Vo, G)は、そんなふうに言って笑った。
◆the band apart ライブ写真
いやいやいや、ライブハウス・シーンで根強い人気を誇るthe band apartだ。この日、さいたまスーパーアリーナに足を運んだバンアパ・ファンも多かったと思うが、荒井が言ったように「あんた達、一体誰なんだ」と思っている観客が少なくなかったと仮定したとしたら、バンアパは人気や知名度に頼らず、楽曲と、それを演奏する4人の演奏、すなわち音楽そのものの魅力でアリーナとスタンドを埋めた観客を魅了したことになる。だからこそ、ACIDMANはバンアパに、荒井が言うようにある意味意外な出演オファーをしたんじゃないか。いや、「ACIDMANは昔、20何年前に下北沢のライブハウスで友達の企画で一緒にライブをやって以来の仲で。年齢もほとんど一緒です。もう長いつきあいになりましたけど」と荒井が言ったようにライブハウスでしのぎを削ってきた同世代の仲間としてシンパシーを感じているからというのが本当のところだとは思うが、なんとなく、そんな想像もしてみたい。
本番直前のサウンドチェックを念入りにやりすぎたせいか、「あと1分。このままここ(ステージ)にいて、(登場の)ジングルが鳴ったらそのままやります」と木暮栄一(Dr)が言ったとおり、彼らはいったんひっこまずそのまま「Eric.W」から本番に突入して、常にベストを追求する真摯さに由来する持ち前のマイペースぶりを見せつけると、そこからたたみかけるように「ピルグリム」に繋げ、アーバンな魅力もあるポップ・ソングを、ポスト・ロックを思わせるバンド・サウンドに落とし込んだような演奏で観客を踊らせていった。
「ACIDMAN、25周年おめでとうございます! これだけのメンツでやれて、僕達もとてもうれしく思ってます」──荒井岳史
「(最近)さいたまがとんでもない(笑)。僕はすごく地味なところに引っ越したと思って、ずっと埼玉県民やってますけど、このとおりACIDMANのおかげでさいたまが大騒ぎ。さいたまも成り上りましたね(笑)。素敵な舞台をありがとうございます」──原昌和(B, Cho)
「ピルグリム」でスラップを交えながら、グルーヴィーなベースを弾いた原が淡々とリズム刻むインディ・ロック調の「DEKU NO BOY」で流れにアクセントをつけると、続く「higher」でバンドの演奏は再びファンキーに。リラックスした声で荒井が歌うキャッチーな歌の裏では、テクニカルな単音フレーズを閃かせる川崎亘一(G)ら、3人がせめぎあうような演奏を繰り広げている。
「酩酊花火」同様、今年7月にリリースした渾身の最新アルバム『Ninja of Four』から披露した「The Ninja」はループする木暮のドラムの上で川崎と原がフリーキーなフレーズを応酬するファンク・ナンバー。アンサンブルのユニークさを印象づけながら、聴いていると、自然に体が揺れるグルーヴィーな魅力もあるところがいい。
「ACIDMANがこうやってコロナ禍とかいろいろ大変なことがあるけど、フェスとか、音楽とか、廃れさせないように一生懸命がんばってくれて、今日という日があって。我々もそれに賛同させてもらった仲間の一人として、ここに立たせていただいております」──荒井岳史
そんな荒井のMCを聴きながら、前述したように人気や知名度に頼らず、音楽そのものの魅力で観客を魅了するバンアパのようなバンドが、どれだけ音楽を廃れさせないことに貢献しているか、その大きさに思いを巡らせる。
荒井が奏でるファンキーなカッティングからなだれこんだラスト・ナンバーはキャッチーなサビを持つ「夜の向こうに」。いわゆるオチサビで木暮が立ち上がり、手拍子を求めると、観客がそれに応え、アンセミックな光景が生まれた。「あんた達、誰なんだ」と思った観客が本当にいたとしたら、その中の少なくない人達がこの日、バンアパのファンになった、もしくはがぜん興味を持ったに違いない。
取材・文◎山口智男
撮影◎藤井 拓
セットリスト
2. ピルグリム
3. 酩酊花火
4. DEKU NO BOY
5. higher
6. The Ninja
7. 夜の向こうへ
■<ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022」>
2022年11月27日(日) さいたまスーパーアリーナ
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