【インタビュー後編】高瀬統也「どんなに小さな粒でも一つひとつ拾って芽を出して咲かせていきたい」

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「どうして(feat.野田愛実)」などのヒットで知られ、精力的に活動を続けるシンガーソングライター高瀬統也。彼が完成させた初のフルアルバム『13月2日』は、まさしくベスト盤とも言うべき内容だ。“活動のターニングポイントになった楽曲が入っている”とのことで、高瀬統也の歩みが反映された同作を通して、彼の立つ現在位置を探るインタビューの後編だ。

■過去を見せられる初のフルアルバムと香港でのライブ
■結果的にすごく良い流れが出来上がりました

――『13月2日』はベストアルバムのような選曲になりましたね。

高瀬統也:僕の過去を知ってほしいと思って選曲していきました。自分でも特に聴いていたいと思う曲だったり、活動のターニングポイントになった楽曲を入れています。ちなみに「備忘録(Self cover ver.)」の直前には、新宿のユニカビションの前で大泣きしたというエピソードがあって。


――何があったのでしょう?

高瀬統也:ちょうど『Now the Won』が香港で注目を集めて、高瀬統也として初めて結果が出た時期だったので、僕が少し調子に乗ってたんです。そんな時期にとある現場に遅刻をしてしまって、無自覚だったんですけど、その場にいてくださった方々へ誠意を見せるよりも、自分の正当性を主張することを優先してしまったんですよね。そんな僕の態度に呆れたチームの仲間が、ユニカビジョンの前で“お前があそこに映るくらいのアーティストだったとしても絶対に応援したくねえわ”とボッコボコに言ってくれて。



――そこで大泣きを。

高瀬統也:すっごいいろんな人に見られました(笑)。でもそこで、今の自分のままじゃだめだと心を入れ替えて、そのあと出した1発目が「備忘録(Self cover ver.)」だったんです。あらためて自分の気持ちや自分を俯瞰しながらの制作だったので、だから結果が出たのかなとも思っています。そういうストーリーがある楽曲しか入っていません。

――「I can’t stop loving you」と「毒のあるA」は再録で、前者は「I can’t stop loving you(feat. 野田愛実)」にリニューアルされています。

高瀬統也:「I can’t stop loving you」は野田愛実との縁が生まれたきっかけの曲なんです。僕が「I can’t stop loving you」をリリースしたころに、愛実ちゃんも「あまくてにがい」というターニングポイントの曲を出していて、全然会ったこともなかったけどお互いなんとなく意識をしていたんですよね。そこから交流が生まれて、愛実ちゃんのYouTubeで「I can’t stop loving you」のカヴァー動画をアップしたんです。だからアルバムでは、「どうして」を経たふたりで歌う「I can’t stop loving you」を収録したかったんですよね。

――「毒のあるA」は歌詞がリライトされています。

高瀬統也:この曲を作った当時はチェインスモーカーズやファイヴ・セカンズ・オブ・サマーにハマっていたので、英語ができないなりに英語で歌詞を書いたんです。文法が変なところもあったので再録にあたりリライトして、日本語のパンチラインを増やしました。「I can’t stop loving you」と「毒のあるA」は今回を機にMVもリメイクしたので、新しい感覚で観てもらえると思いますね。

――MV監督が同じ方だからできることでもあり、時を経てリメイクできるとは感慨深いものがありますね。

高瀬統也:はい、本当にそうですね。

――新曲として収録されている「TWI LIGHT(feat. N.O.A)」ですが、まずこのN.O.Aさんとは何者なのでしょう?

高瀬統也:彼女はInstinct of Sightという香港で活躍するラウド系のバンドのヴォーカリストです。「備忘録(Self cover ver.)」がきっかけで僕を見つけてくれて、“いつかコラボレーションしましょう”というメッセージをくれたんです。いつかやろう、いつかやろうと言い続けて、その“いつか”が今回ですね。僕も今年は「どうして」が伸びて、N.O.Aもバンドで香港の音楽賞で大賞を獲ったんです。お互いにとってすごくいいタイミングでコラボレーションができました。

――制作はどのように進みましたか?

高瀬統也:先ほども話題に出たRaytuckerと一緒に制作を始めました。僕が日本語で歌ったものに対して、“英語でその意味を歌うとこういう感じになるよ”と彼が翻訳してくれました。それをN.O.Aに送ったら、彼女もクリエイティブなアーティストなので“統也がくれた歌い回しもかっこいいけれど、わたしだったらこういう歌い方をする”と言って、自分で歌う箇所の歌詞を変えて返してきたんです。Raytuckerがイギリス英語に精通しているので、N.O.Aとの意思疎通がすごく良く取れたんですよ。

――香港の英語はイギリス寄りですものね。かなり綿密に意見交換ができた制作になったと。

高瀬統也:すごく面白い制作でしたね。N.O.Aの声の倍音成分というか声の粒感も見事だし、英語の発音も僕とは全然違う。海外のアーティストと一緒に歌うから僕も最初全部英語で歌ったんですけど、N.O.Aから“統也の英語の発音は可愛らしくて聴きやすいんだけど、わたしは日本語で歌う統也が好きだし、日本語で歌ったらどうかな”って、ものすごくオブラートに包まれました(笑)。12月24、25日の香港公演でN.O.Aとも初めて会えるので、すごく楽しみです。

――ところで、高瀬さんは最近楽曲がインドネシアにもリーチしてるようですね。

高瀬統也:そうなんですよ。全然実感はないんですけど、いろんな国でランクインしていて。なかでもインドネシアは好成績ですね。Instagramにもインドネシアの人からのコメントがすごくて。こういう思わせぶりなことされると僕は本気になっちゃうので、来年あたりにはインドネシアに行くと思います(笑)。

――(笑)。このタイミングで高瀬統也の過去をフルアルバムにコンパイルするというのは、非常に意味深いものになりましたね。

高瀬統也:そうですね。冒頭でフルアルバムの制作を提案してもらったという話をしましたけど、もっと言うと“もし感染症の関係で香港に行けなかったとしても、2022年を良いかたちで締めくくるためにもアルバムを作ったらどうですか?”という理由からだったんです。だから過去を見せられる初のフルアルバムができて、信頼するプロフェッショナルな仲間と香港に行けるという、結果的にすごく良い流れが出来上がりました。

――お話を聞けば聞くほど、良い追い風が吹いているんだろうなと思います。

高瀬統也:すべての始まりはふとしたきっかけだと思うので、それをいかに見逃さず拾っていくかが大事だと思っていて。どんなにちっちゃい粒だろうが一つひとつ拾って、その種から芽を出して咲かせていきたいですね。僕はすごく出会いにも恵まれているので、この先もそれを大事にして、2023年も地道に頑張っていきたいと思っています。

取材・文:沖さやこ





















リリース情報

『13月2日』
2022年12月7日 配信リリース
https://lnk.to/jyusangatsufutsuka
M1. 13月1日
M2. I can't stop loving you(feat.野田愛実)
M3. らりるれ
M4. Make you high
M5. All or Nothing
M6. どうして(feat.野田愛実)
M7. 毒のあるA
M8. Don't stop me lyrics
M9. Tears Tears
M10. センチメンタルじゃ終わらない
M11. TWI LIGHT(feat. N.O.A)
M12. FAKER
M13. I'll be right there
M14. MINT
M15. 備忘録(Self Cover ver)
M16. どうして(feat.野田愛実)Remix by RINZO

ライブ・イベント情報

<TAKASE TOYA LIVE 2022『Road to 香港』>
12月24日(土)香港・Music Zone @ E-Max
12月25日(日)香港・Music Zone @ E-Max
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