【コラム】時代を超えた多種多様な“ロック”という概念

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“異種格闘技”、“バラエティに富んだ”、“オールジャンル”…ライブイベントやフェスのラインナップを紹介する際によく使われる言葉である。だが<50th New Year Rock Festival 2022-2023>ほどノージャンルでありながら時代を超え、さらには“ロック”という概念を貫いた面々が揃ったフェスは、国内ではなかなかお目にかかれない。

<New Year Rock Festival>はロックンローラー・内田裕也が主催する、1973年から毎年開催されている年越し音楽イベント。内田裕也亡き後にカイキゲッショクのHIRØがプロデューサーへ就任し2019年も大成功を収めるも、コロナ禍により2020年と2021年はオンラインで開催。50周年を迎える今年は3年ぶりの有観客開催となる。半世紀にわたる歴史を持つイベントだ。


HIRØと内田裕也

だが筆者を含め若い世代にとって、年越しの音楽イベントは紅白歌合戦や<COUNTDOWN JAPAN>、アーティストのワンマンライヴ、大手芸能事務所のアーティストが一堂に会するカウントダウンライヴであり、長きにわたり続いているアーティスト主催フェスというとまず浮かんでくるのが10-FEETによる<京都大作戦>という人間が多いのではないか。内田裕也が年越しフェスを開催していたことを知らない音楽ファンも多いと推測する。

アーティスト主催フェスの特徴のひとつとして挙げられるのは、主催アーティストの思想や活動方針、信頼を置くアーティストなどが、フェスを通してダイレクトに見えること。前述の<京都大作戦>には10-FEETの同胞はもちろん若手も多く出演し、小粋なサブタイトルからも信頼する仲間たちとともに京都を盛り上げようとする気概を感じられる。

それに続くように京都の冬の風物詩に名乗りを上げたROTTENGRAFFTY主催の<ポルノ超特急>、“壁を壊す”を合言葉にライヴに特化したアーティストが集まるSiM主催の<DEAD POP FESTiVAL>が立ち上がり、同時期にアルカラが主催するサーキットイベント<ネコフェス>もスタート。さらに04 Limited Sazabys主催の<YON FES>も追随し、最近ではACIDMANが開催した<SAI 2022>も記憶に新しい。この20年で、各バンドの地元に根付いた“レぺゼン”的なフェスが多数開かれ、その先輩たちの背中を見て“いつか自分たち主催のフェスを開きたい”という夢を持つ若きアーティストも続々と増えている。それらの文脈のパイオニアが内田裕也であり、<New Year Rock Festival>なのだ。

だが<New Year Rock Festival>とそれ以外のアーティスト主催フェスで、決定的な違いがある。フェスを主催するアーティストは自身が出演者であることが多いため、年越しやお盆、GWといった大型フェスが開催される時期は避けられる。つまりトップシーズンに開催されるアーティスト主催フェスが存在しないのだ。

大型フェスはどんな客層でも楽しめるエンターテインメント性の高さがあるが、アーティストのカラーに特化したフェスを特別な日に体感したいという音楽ファンも一定数いるのではないだろうか。つまり<New Year Rock Festival>は時代を超えた多種多様なロックにまみれながら年越しをするという、ほかではできない経験ができるのだ。

HIRØが内田裕也の意志を継承しながらも自身の仲間の手を借りながら新たな<New Year Rock Festival>を築き上げていることは、ラインナップからも明白だ。また、この20年で過去の音楽を掘り下げられる手段が急激に増え、平成後期はヒットソングが生まれにくい時代が続いたこと、メディアの懐メロ特集などが加速していたこともあり、若い世代は過去の音楽に触れる機会も多かったのではないだろうか。<New Year Rock Festival>はそんな若者世代にとって、現地に足を運べばかなりフラットに新鮮な経験ができるはずだ。YouTubeの自動再生や関連動画にも近いかもしれない。


内田裕也





自分たちが生まれる前から開催しているフェスで、自分たちの生まれていない時代で音楽を鳴らしてきた熟練のアーティスト、長きにわたり第一線で活躍するロック精神を持ったアーティストたちのライヴを観ながら新しい年を迎える。当日東京ガーデンシアターには、ここでしか味わえない刺激的な瞬間が多数待ち構えているだろう。

文◎沖さやこ



<50th New Year Rock Festival 2022-2023>

2022年12月31日(土・大晦日)
@有明・東京ガーデンシアター
OPEN 18:00/START 19:00
プロデューサー :HIRØ(カイキゲッショク /湾岸の羊~Sheep living on the edge~)
Co Producer: Zeebra
・TICKET アリーナ指定/スタンド指定 各¥9,900(税込)~特典グッズ付き~
・VIP ROOM TICKET(専用ゲート・専用ルーム・特典グッズ付き)
・A ROOM ¥165,000(税込)5名様までご入場可能 ※SOLD OUT
・B ROOM ¥88,000(税込)4名様までご入場可能
チケットサイト

◆<50th New Year Rock Festival 2022-2023>オフィシャルサイト
◆<50th New Year Rock Festival 2022-2023>チケットサイト
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